連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第228回
『岬の兄妹』(2018)や『さがす』(2022)の片山慎三監督が、つげ義春のシュルレアリスム作品『雨の中の慾情』を原作に、独創的なラブスト―リーとして映画化した最新作『雨の中の慾情』。
映画『雨の中の慾情』は、2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて劇場公開!
台湾にてオールロケを敢行した本作は、異国情緒あふれるアジアの世界感が満載。
数奇なラブストーリーを展開する2人の男と1人の女は、成田凌、森田剛、中村映里子が演じ、加えてキーマンとして竹中直人も加わりました。
豪華実力派俳優陣が、表情豊かに奇抜なラブストーリーを紡いでいきます。
映画『雨の中の慾情』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本・台湾合作映画)
【原作】
つげ義春:『雨の中の慾情』
【脚本・監督】
片山慎三
【エグゼクティブプロデューサー】
英田理志、中西一雄、林之晨、鶴丸智康
【プロデューサー】
厨子健介 筒井史子 劉士華
【出演】
成田凌、中村映里子、森田剛、足立智充、中西柚貴、松浦祐也、梁秩誠、李沐薰、伊島空、李杏、竹中直人
【作品概要】
本作は、伝説の漫画家・つげ義春による『雨の中の慾情』を映画化したもので、2人の男と1人の女の切なくも激しい性愛と情愛が入り交じる、数奇なラブストーリーです。
長編映画デビュー作『岬の兄妹』(2018)で日本映画界に衝撃を与えた片山慎三監督が手がけ、メインキャストは成田凌、中村映里子、森田剛が演じます。
ほぼ全編台湾にてオールロケを敢行した日本と台湾共同制作で、2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門に出品されました。
映画『雨の中の慾情』のあらすじ
貧しい北町に住む売れない漫画家・義男(成田凌)。
ある日、アパート経営の他に怪しい商売をしているらしい大家の尾弥次(竹中直人)から、自称小説家の伊守(森田剛)とともに引っ越しの手伝いに駆り出されました。
そこにいたのは、離婚したばかりの福子(中村映里子)。艶めかしい魅力をたたえた福子に心奪われた義男ですが、どうやら福子にはすでに付き合っている人がいるらしいのです。
一方、伊守は自作の小説を掲載するため、怪しげな出版社員とともに富める南町で流行っているPR誌を真似た北町のPR誌を企画し、義男はその広告営業を手伝わされます。
ほどなく、福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、義男は福子への潰えぬ想いを抱えたたま、3人の奇妙な共同生活が始まります……。
映画『雨の中の慾情』の感想と評価
映画冒頭はいきなり激しい雨のシーン。どしゃ降りの雨のなか、田園の中の小さな屋根付きのバス停に一人の女が駆け込んできました。
そこへまた一人の男もやって来ました。雨宿りをする2人に激しい雷鳴が鳴り響きます。男は女に「金属を身に付けていると危ないですよ」と言いました。
魔法にかかったように女は身に付けていた装飾品をはずし、金属ボタンのついた服を脱ぎ、挙句の果てに金属フックの下着も取り去って行きます。
男も同じように金属のついた衣類を脱いでいき、やがて素っ裸に近い姿になった2人の頭上に雷が襲いかかります。
ビックリするような冒頭からのストーリーには、自然のなせる驚異を前にして本能のままに行動する人間の姿が映し出されます。
そしてそれは、これから主人公の義男が辿る、不思議な恋愛物語の序章でもあったのです。
目に見える出来事ではなく、夢や無意識、偶然といった人の意識ではコントロールできない領域を表現するシュルレアリスムの作家・つげ義春の描いた原作を、片山慎三監督が見事に映像化。
その舞台は台湾に設定され、ほとんどが台湾でのロケだったそうです。台湾での撮影には、『キングダム』(2019)、『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』(2019)といった作品で、台湾・中国・香港ロケに協力してきたキーマンとなる劉士華が、プロデューサーとして参加しています。
また、現地のロケーションを台湾スタッフが映画美術として具現化し、見事なコラボレーションが実現しました。
その他にも、日本と台湾、双方から集結した超一流のスタッフが、各々の才能を持ち寄りました。そこで構築された唯一無二の世界観は必見。
異国の美しい風景の中で展開する情愛と性愛の物語は、成田凌の「佇まいだけで物語れる役者」という存在感、中村映里子の濃密な色気を携えた儚げな人妻ぶり、森田剛の人情味あふれるオーラが一つになって、観客を不思議な恋愛世界へ導いています。
三人三様のそんな魅力も見どころとなっています。
まとめ
『岬の兄妹』(2018)や『さがす』(2022)の片山慎三監督が、つげ義春の原作を映像化した『雨の中の慾情』をご紹介しました。
映画『雨の中の慾情』は、2024年11月29日(金)よりTOHOシネマズ日比谷他にて劇場公開!
第37回東京国際映画祭コンペティション部門に公式出品された本作は、台湾と日本が共同制作した‟誰も見たことがない愛の物語”です。
本作が放つ独創性の強いラブストーリーを、どうぞ劇場で体験してみてください。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。