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【大塚信一監督インタビュー】『Poca Ponポカポン』という小さな映画を“未知であり普遍”の世界で勝負できるクオリティへ《Road to『Poca Ponポカポン』監督作一挙上映イベントに向けて》

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  • Cinemarche編集部

ジャンル横断型社会派ミステリー『Poca Ponポカポン』の制作支援クラウドファンディングは、2024年11月15日(金)23時59分まで実施!

映画『Poca Ponポカポン』は、「《かつての猟奇殺人犯》が住んでいる」という噂が立っている地方都市の団地で、中学生の少年が《不思議な力》を持つ管理人の男に惹かれていく物語を描いたジャンル横断型社会派ミステリー。

監督は、前作『横須賀綺譚』(2020)が国内外の映画祭で評価された大塚信一。大塚監督の過去作『アメリカの夢』(2010)で主人公を演じた尾関伸次と、『サバカン SABAKAN』(2022)などに出演し名優・原田芳雄の孫でもある原田琥之佑がW主演を務めました。


(C)Cinemarche/映画『Kfc』K’s cinema上映トークイベントにて

菜葉菜、足立智充、木村智貴、川瀨陽太、山崎ハコなど実力派キャスト陣が揃った映画『Poca Ponポカポン』は撮影を無事完了し、2024年現在はポストプロダクション(仕上げ作業)が進行中。また映画が無事完成を迎えられるよう、制作支援のクラウドファンディングも実施しています。

この度の監督作一挙上映イベントに向けて、大塚信一監督にインタビュー。本作の制作経緯をはじめ、2024年11月9日(土)より新宿K’s cinemaにて始まる《Road to『Poca Ponポカポン』監督作一挙上映イベント》に向けた意気込み、また「未知であり普遍の映画」を作り出したい思いなどを伺いました。

監督作一挙上映イベントに向けて

──まずは、2024年11月9日(土)より新宿K’s cinemaにて始まる、監督作の一挙上映イベントについて伺わせてください。

大塚信一監督(以下、大塚):こういう機会をいただいて、ホントに嬉しいですね。実現に向けて動いていただいた関係者の方には感謝しかないです。『アメリカの夢』を撮影したのが2010年でしたから、14年間で3本の長編を撮ったということですね。もう少し撮りたかったですが……働きながらですと、この辺りが限界だったのかもしれません。

『横須賀綺譚』は海外の映画祭でも上映され、そこそこ評価されたと思う自信作なのですが、今回東京では初上映となる『アメリカの夢』は、かなり混沌とした映画となっています。最初の編集が3時間半だったんですよね……(遠い目)。志だけは死ぬほど高い映画だと自負していますが、上手くまとめられずに破綻の目立つ映画ですね。ただ、妙な力だけはあると思うので、みなさんにぜひ観ていただきたいと思っています。最新作の『Poca Ponポカポン』とはキャスティング的にも内容的にも地続きにつながった映画です。

──どうして、このタイミングでのイベントとなったのでしょうか?

大塚:最新作の『Poca Ponポカポン』は2024年6月に撮影しまして、今はポスプロの真っ最中でまだ完成していないんですが、できるだけ宣伝の期間を長く持ちたいという僕の希望からこのようなイベントを提案させていただきました。

『Poca Ponポカポン』の撮影には大きな手応えがあり、多くの人に見てもらいたいと願っています。しかし、僕がやっているようなインディーズ映画の規模ではそんなに大きな宣伝費をかけることはできません。お金がないなら、時間をかけるしかないですよね。そこで、公開予定の一年前からこのようなイベントを組んで、みなさんに知ってもらいたいと思っています。

『横須賀綺譚』『アメリカの夢』両作の上映後には『Poca Ponポカポン』の特別映像もご用意いたしますので、それも楽しみにしていただけたら嬉しいです。

『Poca Ponポカポン』に流れ込んだ日本映画史


(C)ポカポン製作委員会

──映画『Poca Ponポカポン』の企画のアイデアやインスピレーションは、どのようにして生まれたのでしょうか。

大塚:企画のスタートには、『アメリカの夢』(2010)で主人公を演じてくれた俳優の尾関伸次さんがいました。今回は主演としてだけではなく、共同プロデューサーとしても参加していただきました。

実は尾関さんと僕は、同じ1980年生まれなんです。その彼と何を描こうかと考えた時に浮かんだのが神戸連続児童殺傷事件、俗に言う「酒鬼薔薇事件」でした。ボクと尾関さんが多感な思春期の頃に起こった事件であり、「犯人のその後を、同い年である尾関さんと一緒に描こう」というアイデアが生まれました。

しかし下調べとして、犯人の『絶歌』などの自伝作品を読んだのですが、まったく興味が湧いてきませんでした。あまりに強い自意識で、なんというか「僕たちが思い描く酒鬼薔薇のその後」をそのまんまトレースしちゃっている感じがしたんですね。そこで、実際の事件から離れてゼロから物語を考えることにしたんです。

また本作で尾関さんとW主演を務めてくれた原田琥之佑くんは、ボクが世界一格好いいと思っている『ツィゴイネルワイゼン』(1980)のナカサゴこと、原田芳雄さんの孫なんです。

はじめはそれと知らずにキャスティングしたのですが、ある打ち合わせの後に、彼の自宅に招かれたんです。すると、リビングに原田さんのお写真が飾られていて……『Poca Ponポカポン』に日本映画史が流れ込んでくるような錯覚を覚えました。それと同時に、今回の映画制作における大きな責任も感じるようになりました。

運命の《その後》にまつわるドラマを描く


(C)ポカポン製作委員会

──大塚監督は本作を通じて、どのようなテーマやメッセージを伝えたいと考えられていますか。

大塚:テーマやメッセージを一言で説明できるのなら、そもそも映画を撮ろうとは思っていません。「何かこの辺りに、面白いことや描くべきこと、普遍的なこと、切実なものがあるんじゃないか」と直感した場所で、ずっと鍬で振るって・・・・・・・・・土を掘り返してきた感じです。ただ、それだと愛想がなさ過ぎですね(笑)。ですから、ちょっとだけ。

この映画の制作中、ずっと頭にあったのが『歎異抄』の「わがこころのよくて、ころさぬにはあらず。また害せじとおもうとも、百人千人をころすこともあるべし」という箇所です。

「良い奴だから人を殺さないんじゃない。殺したくないと思っても、百人千人殺してしまうこともある。すべては縁なんだ」という意味ですが、コレをヒントに人間の宿命、運命の手触りを描きたいと思っていました。

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』(2000)で主人公のセルマが警官を撃ち殺すシーンでは、セルマ自身がどうして引き金を引いてしまったのか分からず打ちのめされる姿が映し出されますが、《運命》みたいなものを実際に手に取り、触れることができる様を描けていたと思います。

本作では、この《運命》にまつわるドラマ、というよりも運命の《その後》にまつわるドラマを描きました。ギリシャ悲劇の後日談というべき物語なわけですから、特別なことじゃないです。あくまで、普遍的なことです。

また原田くん演じる健太と、尾関さん演じる駿一が登場するシーンでは極力、2ショットを撮らないように心がけました。同じ場所にいるのに、違う場所にいるかのような錯覚を演出したかったのです。この演出はラストシーンに収斂していきますが、どう収斂するのかは映画を観てのお楽しみにとっておいてください(笑)。

《縁》によって起こることを見守る映画作り

映画『Poca Ponポカポン』撮影メイキング写真より


(C)ポカポン製作委員会

──本作の撮影において困難だった点や、印象深いエピソードを改めてお聞かせください。

大塚:本作もしっかり胃を痛めながら、撮影にまでこぎ着けました。本当に面白いエピソードは……なかなか話せないことばかりですね(笑)。

ですが、本作の困難を乗り越えることができたのは『天然☆生活』(2018)などを監督した永山正史さんの力が大きいです。まず、撮影と美術とラインプロデューサーという三役を「予算内で収めるためにはそうするしかない」と永山さん自ら買って出てくださったのですが、本当に狂ってます!

部屋の美術も、永山さんのご実家、自分の家と兄の家から大量の物を運んで作っていただきました。結果、あの素晴らしい美術です。その上、ご実家には小汚いスタッフ(失礼!)を宿泊までさせていただいたんです。自分の監督作でもないのに!僕はどうして永山さんがここまでやってくれるのか分からず、少し怖くなりました(笑)。もう彼には足を向けて眠れません!

──本作の撮影を通じて、大塚監督ご自身が学ばれたこと・感じられたことはございますか。

大塚:改めて聞かれると、難しい質問ですね。ただ本作はキャスト、スタッフ、シナリオ、ロケ地など、様々な面において充分な手応えをもって臨むことができました。自信をもって現場を迎えられたので、本当に良い雰囲気で過ごせました。

しかし、その中で充分にコントロールできたのはシナリオだけで、あとは「縁」です。映画作りはコントロールしようとすることが、いかにダメなのかを毎回痛感させられます。人との「縁」を大事にし、その「縁」によって起こることをただ見守って、画面に定着させることだけを考えました。

小さな映画を、世界で勝負できる映画へ

映画『Poca Ponポカポン』制作支援クラウドファンディング・解説動画

──今回、映画『Poca Ponポカポン』が無事ポストプロダクション(仕上げ作業)を終えて完成を迎えるために、制作支援クラウドファンディングという方法をご決断された理由は何でしょうか。

大塚:僕と尾関さんでなんとか現場の制作費を集められたのですが、ポスプロ費用までには手が届かなかったんです。『横須賀綺譚』(2020)の制作時も似たような状況で、ポスプロ費用はほぼ残っていませんでした。ですから極力自分でやりましたし、どうしても自分ではできない部分は、スキルを持っている現場スタッフの方に頭を下げてやっていただきました。

しかし今回は、そのやり方ではダメだと思っているんです。

世界の映画はハリウッドを頂点に栄えてきたと思いますが、昨今、世界中の映画作品がネットの進歩によって鑑賞可能となったこと、そしてデジタルによる映画作りが進んだことで、映画のクオリティそのものはハリウッドにも迫る作品が増えてきました。

特にポスプロにおけるデジタル化は、世界の映画のクオリティアップに大きく影響しています。CGを含む映像効果の技術の深化はもちろん、映画の色調・色味の徹底追求、編集の自由自在化による徹底的な映画のリズムの追求、デジタルによる音効制作の広がりなど、ポスプロの進化は限りがありません。

しかしながら、現実は技術的には無限の進歩に見えても予算という壁が大きく立ちはだかります。昨今の他のアジア各国のエンタメに先をいかれているのは、ポスプロの差とも言えると思います。

本作は映像効果、音響効果、音楽などの要素が映画のクオリティに大きく影響を与える作品です。役者の演技、監督の演出を最大限に引き出す、映画のポテンシャルを最大限に引き出すのが昨今の映画作りの肝ですが、小さい映画はそのポテンシャルを発揮できずに終わることが多いのです。

脚本作り、撮影への強いこだわりをポスプロまで同様に持続し、質感においてはハリウッドや人気のアジアン・エンタメに並ぶものとすることが可能な時代です。皆様のご協力を得ることにより、それらを実現して世界と勝負させていただきたいのです。そのために、今回クラウドファンディングを実施する運びとなりました。

『Poca Ponポカポン』は、小さな映画ですが世界のどんな大きな映画と並べても遜色ないクオリティにまで引き上げたいと考えています。特に効果音と音楽の面で、音楽は菊地成孔さんにやっていただくことになりました。僕は20代の頃、東京ザヴィヌルバッハなどを通じて菊地さんの音楽のファンになった人間なので、どんな音源が届くのか心から楽しみにしています。

《未知であり普遍》の映画を完成させる


(C)ポカポン製作委員会

──2024年現在、大塚監督はどのような信念やモチベーションによって、映画制作に取り組まれているのしょうか。

大塚:上を見ないようにしています。足下だけを見るようにしています。

例えばシナリオを書いている時には「この一行の台詞をどう書くか」と、カット編集中なら「どうつなぐか」ということだけを考えて過ごすんです。そして、ふと顔を上げたら、一本の映画ができている。自分が辿ってきた道ができている。そんな感覚ですね。

上を見て映画作りをしていたら、とうの昔に心が折れて、やめてますよ。いつも下を向いているから、続けられたんだと思います。

──最後に、このインタビュー記事を読まれた読者の皆様に、メッセージをお願いいたします。

大塚:僕の映画は知っていることを確認し、消費する映画ではありません。未知との遭遇を約束します。しかし、その未知はよくよく見てみると、みんなが知っていることなんです。つまり、普遍でもある。特殊と普遍が同時に成立しているような映画を目指して、本作を撮りました。

「誰も見たことがないものを見たい」「誰も感じたことがないものを感じたい」という方にはオススメの映画へと完成させます。ぜひ楽しみにしていてください。よろしくお願いします。

インタビュー/出町光識
撮影・構成/河合のび

大塚信一監督プロフィール

1980年生まれ、長崎県出身。日本大学文理学部哲学科卒。

20代前半に長谷川和彦に師事。飲食店で働きながら『連合赤軍』のシナリオ作りを手伝い、『いつか読書する日』(2005/緒方明)などの現場に制作として散発的に参加。その後、映画の現場からは離れ、ラーメン屋での勤務で生計を立てながら、自主映画制作に取り組む。

自主制作した『横須賀綺譚』(2020)はカナザワ映画祭、網走映画祭、中国・重慶市で開催された重慶青年電影展「亜州視野」にて上映され、好評を博す。

また同作は日本国内では、2020年7月より新宿K’s cinemaでの3週間の公開を皮切りに、全国劇場で上映された。

《映画『ポカポン』制作支援クラウドファンディング・募集ページはこちら→》

映画『ポカポン』の作品情報

【監督・脚本・編集】
大塚信一

【撮影・美術】
永山正史

【キャスト】
尾関伸次、原田琥之佑、菜葉菜、大角英夫、松本太陽、足立智充、木村智貴、久田松真耶、牛丸亮、川瀬陽太、山崎ハコ

【作品概要】
「《かつての猟奇殺人犯》が住んでいる」という噂が立っている地方都市の団地で、弟・母と暮らす中学生の少年が《不思議な力》を持つ管理人の男に惹かれていく物語を描いたジャンル横断型社会派ミステリー。

監督は、東日本大震災をテーマに「震災は実際に起こったはずなのに、なかったような気がする」という人間の記憶が生み出す奇妙な心理を描いた前作『横須賀綺譚』(2020)が評価された大塚信一監督。

主演は、大塚監督の過去作『アメリカの夢』(2010)で主人公を演じた尾関伸次と、『サバカン SABAKAN』(2022)などに出演し名優・原田芳雄の孫でもある原田琥之佑。また共演には菜葉菜、足立智充、木村智貴、川瀨陽太、山崎ハコなど実力派キャスト陣が揃った。

大塚監督と俳優・尾関伸次にとって14年越しの企画となった本作は2024年現在、国際映画祭へのエントリーを目指して映画のポスプロ(仕上げ作業)が進行中。そして、より良い形で映画を完成させられるよう、制作支援を目的としたクラウドファンディングも実施している。

《映画『ポカポン』制作支援クラウドファンディング・募集ページはこちら→》

映画『ポカポン』のあらすじ


(C)ポカポン製作委員会

健太(13)と弟の祐二(10)、母親の朝子(34)の3人の母子家庭は、地方都市の団地で暮らしている。

生活は 厳しい上に、隣人の騒音に悩まされ毎日が息苦しい。その上、「かつて社会を震撼させた猟奇的な殺人犯がこの団地で暮らしている」という不穏な噂がささやかれてもいる。

健太は母と弟に少しでもマシな未来を約束するため、必死で勉強している。しかし、母親である朝子は「そんなことは無駄だ、今を楽しんで遊べ」と言う。

互いを思いやりながらも、どこかすれ違う親子。そんな家族を、団地の管理人である駿一は何かと気にかけている。

駿一はある《不思議な力》を持っている。健太はそんな駿一に惹かれていく……。

映画『ポカポン』制作支援クラウドファンディングの概要情報


(C)ポカポン製作委員会

【実施期間】
2024年11月15日(金)23時59分まで

【目標金額】
250万円

【特典】
寄付金額によって、9つのコースが用意されています。

【支援金の用途】
1:映像効果&カラー調整(スタジオ費込み)/70万円
2:音響効果&MA(スタジオ費込み)/50万円
3:音楽制作(スタジオ費込み)/50万円
4:翻訳・字幕付け/30万円
5:タイトル・グラフィック制作/20万円
6:ダビング(スタジオ費込み)/30万円
7:DCP制作/20万円
8:クラファン手数料+リターン諸経費/30万円
総額:300万円
*皆様からのご支援は、上記費用の一部に活用させていただきます。

【プロジェクトスケジュール】
2025年2月:完成予定〜海外映画祭へエントリー
2025年3月:関係者試写会予定
2025年9月:全国上映開始予定
*計画に遅延等が発生した場合は、アップデート記事やメールにて速やかに進捗をご報告いたします。

【備考】
・本プロジェクトでは目標金額の達成に関わらず、2024年11月15日(金)23時59分までに集まった金額がファンディングされます。
・特典コース内容などの更なる詳細は、映画『ポカポン』制作支援クラウドファンディング・募集ページをご覧ください。

《映画『ポカポン』制作支援クラウドファンディング・募集ページはこちら→》





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