大企業によるリコール隠しを巡る、さまざまな人々のドラマを描く、映画『空飛ぶタイヤ』は2018年6月15日から全国公開されました。
この作品は個性豊かな演技派の俳優が多数集結しました。
今回は映画『空飛ぶタイヤ』の魅力をたっぷりとご紹介します!
映画『空飛ぶタイヤ』の作品情報
【公開】
2018年(日本映画)
【監督】
本木克英
【脚本】
林民夫
【キャスト】
長瀬智也、ディーン・フジオカ、高橋一生、深田恭子、岸部一徳、笹野高史、寺脇康文、小池栄子、阿部顕嵐、ムロツヨシ、中村蒼、柄本明、佐々木蔵之介、和田聰宏、木下ほうか、浅利陽介、六角精児、大倉孝二、津田寛治、升毅、谷村美月、近藤公園、村杉蝉之介、渡辺大、矢野聖人、田口浩正、斎藤歩、岡山天音、矢島健一、津嘉山正種、毎熊克哉、加藤満、筒井巧、中林大樹、井上肇、小久保丈二、高川裕也、木下隆行、木本武宏、池上紗理依
【主題歌】
サザンオールスターズ
【作品概要】
走行中のトラックの脱輪事故により、主婦が亡くなる事故が発生。
整備不良を疑われ、会社の窮地に直面した運送会社社長の赤松を中心に、事故を巡る大企業のリコール隠しに戦いを挑む、人々のドラマを描く。
監督は『超高速!参勤交代』シリーズなど、数々の話題作を手掛けた、本木克英。
映画『空飛ぶタイヤ』のあらすじ
父親から運送会社を受け継いだ赤松徳郎は、従業員と、その家族の事を第一に考え、専務の宮代と共に「赤松運送」を経営していました。
ある日、「赤松運送」のトラックのタイヤが、走行中に脱輪し、歩道を歩いていた親子の母、柚木妙子に直撃、妙子が死亡する事故が発生。
トラックの製造元である「ホープ自動車」にて調査が行われ、整備不良が原因とされます。
事故は事件になり、「赤松運送」に刑事の高幡を先頭とした警察の内部捜査が入りました。
赤松は若い整備士、門田の整備不良を疑い、一方的に解雇しますが、警察の内部捜査時に、門田の整備ファイルが発見され、基準以上の細かい整備が行われていた事が分かります。
赤松は門田に謝罪し「赤松運送」へ復職させ、同時に整備不良ではない、他の原因を疑い始めます。
「ホープ自動車」カスタマー戦略課の課長、沢田は「赤松運送」からの度重なる再調査依頼にうんざりしていました。
ですが、品質保証課の室井が「赤松運送」からのクレームを探りに来た事が気になり、同期の小牧に探りを入れさせます。
小牧からの情報により、沢田は品質保証課の秘密会議、通称「T会議」の存在を知ります。
「T会議」の目的はリコール隠し、数年前にもリコール隠しを行い「ホープ自動車」の業績が悪化した事があり、同じ過ちを繰り返している事実に、沢田の怒りが爆発します。
「ホープ銀行」の井崎一亮は、「ホープ自動車」の次期社長と呼ばれている常務取締役、狩野威の融資希望を受けていました。
予定していた業績計画を平気で下方修正し、追加融資を求めて来る「ホープ自動車」に井崎は心底うんざりしていました。
井崎は、大学時代の友人で雑誌記者でもある榎本優子から、「ホープ自動車」のリコール隠しの情報を得た事により、狩野からの圧力を受けながらも、徹底的な調査を開始します。
独自に脱輪事故の原因を調査していた赤松は、数年前にも「ホープ自動車」のトラックが同様の事故を起こしていた事を知ります。
事故を起こした運送業者の社長、野村からトラックのハブに原因があった事を聞かされた赤松は「ホープ自動車」の、トラックそのものに不具合があった可能性を考え、独自にハブを解析する事を決意します。
映画『空飛ぶタイヤ』の感想と評価
映画『空飛ぶタイヤ』は、実話に着想を得た社会派作品でありながら、エンターテインメントに特化した作品です。
脚本を担当した林民夫さんは、「背景をあまり描かずに事象でたたみかける」という事を考え、「スピード感のある展開」を初稿脚本の段階から意識していました。
本作はスピード感がありながら、登場人物それぞれのキャラクターもしっかりと描かれており、素晴らしい作品になっています。
また、演出は抑え気味になっており、例えば会社の倒産に直面した赤松の苦しみを表現する為に、遠い目をした赤松が、運転している車のスピードをどんどん上げて行き、我に帰って急ブレーキをかけるというシーンで、自暴自棄になった赤松の心情を表現しています。
全体的に抑えめの演出が、作品全体に緊張感を与え、高い完成度となっています。
本作は、実際に起きたある大企業のリコール隠しがモデルになっており、「T会議」のように、全てを隠蔽しようと各セクションが動いていた事や、下請け企業が泣き寝入りするしかない状況など、実際にあったエピソードも盛り込まれています。
原作者の池井戸潤は、「これほど怒りに駆られて書いた作品はない」と語っており、中小企業の社長や、組織の一部である課長が「絶対に勝てない敵」に対して戦いを挑み、最後に逆転する物語は、実話を反映させた物語だからこその爽快感がありますよ。
まとめ
本作のメインキャラクターである、赤松と沢田、井崎は決して正義の為に動いた訳ではなく、それぞれの立場と、責任の為に戦っていました。
自身の保身と面子のみを守っていた狩野とは、最初から志が違っていたのです。
プロフェッショナルである事のかっこよさ、それを感じさせる作品です。
豪華キャストが揃った本作の中で、存在感が凄かったのが、狩野威役の岸部一徳さんです。
本作の最大の悪役とも言える狩野を、実に憎たらしく演じており、それ故のラストの爽快感に繋がっています。
ただ、スピード感を意識したからか、小説の井崎パートが少し削られすぎているような気がしまして、「ホープ自動車」の圧力に皮肉で対抗する井崎の姿も見たかったなと、個人的には思います。
映画が気に入った方は、原作もオススメですよ。
現在の邦画の本気を感じた、映画『空飛ぶタイヤ』は、2018年6月15日から全国公開中です。