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Entry 2023/12/01
Update

『屋根裏のラジャー』あらすじ感想と評価解説。スタジオポノックが贈る”見えない友だち”とのファンタジーアドベンチャー|映画という星空を知るひとよ180

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第180回

メアリと魔女の花』(2017)のスタジオポノックが、2023年の冬に贈るファンタジーアドベンチャー『屋根裏のラジャー』

2023年12月15日(金)より全国東宝系にてロードショーされる本作はスタジオジブリ作品で活躍したアニメーターの百瀬義行が監督を務め、アニメーション映画に初参加の寺田心が主役の声を担当しました。

少女アマンダの想像が生み出した少年ラジャーは、彼女以外の人間には見えない「想像の友だち(イマジナリ)」。

ある出来事でアマンダと離れ離れになったラジャーは、人間に忘れられたイマジナリたちが暮らす「イマジナリの町」にたどり着き、町の仲間たちとアマンダ探しに出かけます。

想像で生まれる友人との強い絆に驚き、「想像」の持つ意味を考えさせられることでしょう。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『屋根裏のラジャー』の作品情報


(C)2023 Ponoc

【日本公開】
2023年(日本映画)

【原作】
A.F.ハロルド『The Imaginary』(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)

【監督】
百瀬義行

【プロデューサー】
西村義明

【制作】
スタジオポノック

【キャスト】
寺田心、鈴木梨央、安藤サクラ、仲里依紗、杉咲花、山田孝之、高畑淳子、寺尾聰、イッセー尾形

【作品概要】
イギリスの作家A・F・ハロルドの小説『ぼくが消えないうちに(The Imaginary)』を映画化した長編アニメーション映画。少女アマンダの想像から生まれた「イマジナリー」の少年ラジャーを主人公に、現実と想像が交錯する世界で起こる冒険を描きます。

監督は高畑勲作品の『火垂るの墓』(1988)から『かぐや姫の物語』(2013)までの全作品に携わるなど、スタジオジブリ作品で活躍したアニメーターの百瀬義行。『メアリと魔女の花』(2017)のスタジオポノックのオムニバス『ちいさな英雄 カニとタマゴと透明人間』にも参加しています。

主役のラジャーは寺田心、アマンダは鈴木梨央と、それぞれが担当しキャラクターに命を吹き込みました。

映画『屋根裏のラジャー』のあらすじ


(C)2023 Ponoc

少女アマンダの想像が生み出した少年ラジャーは、彼女以外の人間には見えない「想像の友だち(イマジナリ)」。ラジャーは屋根裏部屋でアマンダと一緒に想像の世界に飛び込み、喜びにあふれた毎日を送っていました。

ですが、イマジナリには「人間に忘れられると消えていく」という、避けられない運命を持っています。アマンダに忘れられれば、世界中の誰からもその姿は見えなくなり、消えていくしかないのですが、自分の運命に戸惑いながらも、ラジャーは一縷の望みを抱いていました。

そんなある日、ラジャーの姿が見える謎の男が現れます。それから執拗にラジャーはその男から追われることになりました。

町でその男とバッタリ出会ってしまい、彼から逃げようとして走り出したアマンダとラジャー。ですが、不幸にもアマンダが交通事故に遭って入院してしまいます。

途方にくれるラジャーは、左右の目の色が違う猫ジンザンに助けられ、かつて人間に忘れさられた想像たちが身を寄せ合って暮らす「イマジナリの町」にたどり着きました。

そこでラジャーと仲間たちは、彼らの大切な人や家族の未来を懸けた冒険を繰り広げます……。

映画『屋根裏のラジャー』の感想と評価


(C)2023 Ponoc

もしも、自分にしか見えない友だちがいたとしたら。そしてその友だちは、自分が想像して作り出したモノだとしたら。それは自分にとっては忘れられない大切なパートナーなのかもしれません。

映画『屋根裏のラジャー』は、人間と想像から生まれた「イマジナリ」の二人の物語です。主人公のラジャーは、アマンダという少女の想像から生まれた少年で、二人はとても仲が良いのは言うまでもありません。

そんな二人を引き裂くかのような出来事が起こり、ラジャーは危うく消えてしまいそうになります。ラジャーの危機を救ったのは、同じイマジナリの仲間たちでした。

イマジナリは人間に忘れられたら消えてしまいます。ですが、ラジャーは自分の運命に逆らうかのように、アマンダの元へ戻ろうとします。

人間とイマジナリの強い絆と、イマジナリの仲間たちがラジャーの冒険を後押しします。そこへもう一人、物語の鍵を握るイマジナリが登場し、ラジャーの強い味方となりました。

人間が当時の大切な友人イマジナリを記憶の奥に置き忘れたとしても、イマジナリは人間を忘れません。いつか見た映画のワンシーンのように、過去の思い出とともにその姿は蘇ってくるのです。

大切なモノは無くしてはならず、大事なことは忘れてはならず……

『屋根裏のラジャー』は、子どもから大人になっても、自分のイマジナリはいつまでもそばにいて欲しいと願わずにはいられない作品に仕上がっています。

観る人はきっと、子どもの頃の空想の世界を懐かしく思い起こすことでしょう。

まとめ


(C)2023 Ponoc

想像することで生まれた少年ラジャー。彼の姿は生みの親であるアマンダにしか見えません。ですが、ラジャーはアマンダにとってはかけがえのない大切な友人でした。

ラジャーのように想像から生まれた友だちは、イマジナリと呼ばれて人間のよい仲間となるのですが、人間に忘れられてしまうと消えてしまう運命にあります。

幼い頃には、誰にでも空想の「見えない友だち」はいると思われます。それなのに、月日が経つにつれ、いつの間にかその友だちのことを忘れてしまっているのではないでしょうか。

本作は、想像が生む友だちの存在とその大切さを思い出させてくれる作品と言えます。

映画『屋根裏のラジャー』は2023年12月15日(金)より全国東宝系にてロードショー!

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。




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