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『海鳴りがきこえる』映画あらすじ感想と評価解説。中村守里主演作は東日本大震災で全てを失った女性が“本当の幸せ”を求めて彷徨う

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『海鳴りがきこえる』は2023年10月28日(土)より新宿K’s cinemaにて公開!以降も全国で順次公開!

東日本大震災の記憶を胸に抱えながら母となった女性が、被災地である故郷へ戻る姿を描いたヒューマンドラマ『海鳴りがきこえる』

福島県相馬市出身で震災をきっかけに故郷の映像を撮り始め、2015年にドキュメンタリー映画『自然と兆候/4つの詩から』を手がけた岩崎孝正監督が初の長編劇映画を完成させました。

アルプススタンドのはしの方』(2020)の中村守里、『大和(カリフォルニア)』(2018)の内村遥が出演する本作。

震災で家族を失ったがゆえに「幸せな家族をつくる」という夢を抱き、夫と息子を大切に生きる主人公の理子奈。彼女が最後に手にしたのは、どのような未来だったのでしょうか。

震災の傷跡と再生を描く本作の魅力についてご紹介します。

映画『海鳴りがきこえる』の作品情報


(C)2023 TIMEFLIES Inc.

【公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本】
岩崎孝正

【キャスト】
中村守里、内村遥、指出瑞貴、川瀬陽太、木村知貴、小林なるみ、満園雄太、tamico.、橋口湊

【作品概要】
福島県相馬市出身の岩崎孝正監督による初の長編劇映画。監督は2011年3月11日の東日本大震災以降、故郷の映像を撮り始め、2015年にドキュメンタリー『自然と兆候/4つの詩から』を完成させるなど、災害や公害についての短編作品を送り出してきました。

震災ですべてを失った女性が母になり、幸せを求めて再び故郷の被災地に戻る姿を描きます。

アルプススタンドのはしの方』(2020)の中村守里が主人公・理子奈を、『大和(カリフォルニア)』(2018)の内村遥が夫・知久を演じます。

映画『海鳴りがきこえる』のあらすじ


(C)2023 TIMEFLIES Inc.

かつて写真家であった理子奈は、広告代理店に勤める夫の知久、幼い息子の大地と3人暮らし。東京近郊のマンションで育児をしながらも、空いた時間には夫の会社から広告写真の仕事を受けるという忙しい日々を送っていました。

東北の被災地出身の理子奈は震災で父親を失い、中学生の時に親戚に預けられ、母親とも疎遠な関係になっていました。そのためか“幸せな家庭”に執着してしまう彼女は、夫の知久とぶつかる日々が続いています。

そんな中、理子奈は父親のように慕い師事していたベテラン写真家の浩志から、戦場に接するベラルーシへ難民の取材をしに行くという連絡を受けます。彼女は突然の連絡に驚きと不安を隠せません。

また知久の帰りがいつも遅いことから、理子奈は彼の浮気を疑っていました。親友の栄子に相談しますが、真面目な人だから心配ないと言われます。しかし知久への疑いは日に日に募り、彼女は不安に苛まれることが多くなっていきました。

幸せな家庭を作ろうとする自分は間違っていないはずだと思いながらも、不安から逃れられない理子奈。そんな不安を払拭するために、母親の奈津美に数年ぶりに会おうと、彼女は東北の被災地へ車を走らせますが……。

映画『海鳴りがきこえる』の感想と評価


(C)2023 TIMEFLIES Inc.

震災で受けた深い傷跡が残る心を、正面から見つめた『海鳴りがきこえる』では、トラウマから抜け出すことの難しさを生々しく映し出します

自分がすべてを失ってしまったからこそ、「幸せな家族を作る」という強い思いを抱いて夫と息子に向き合う主人公の理子奈

父を震災で亡くし、中学から母と離れて親戚の家で育った彼女は、本当の家族というものを知りません。理想は肥大し続け、本当なら輝かしい夢であるはずの「幸せな家庭」という言葉は、理子奈を縛りつける呪縛となっていきます

すがりつくように息子に過干渉になっていく理子奈をたしなめる夫の知久。理想を求める彼女の激しい欲求を知久は受け止めきれず、いつしかふたりの間にはすきま風が吹き始めます。

普通なら母親に子育ての悩みを聞いてもらったり、アドバイスをもらいながら手探りで子育てするものでしょう。しかし、彼女は実の母・奈津美と疎遠になっていました。

自分が“母”になったことで、奈津美の気持ちを想像できるようになった理子奈は会いに行く決心をし、被災地の故郷を訪れます。夫と分かり合えずにいる理子奈が、母に救いを求めるのは自然なことでした。

震災で多くを失った理子奈には、何でも相談できる親友の栄子、親のように心配してくれるカメラマンの浩志という大切な存在がいます。耳の痛い言葉も、本当に自分を思ってくれている人からのものなら受け入れられるものです。彼らに導かれながら、理子奈は自分の道を進んでいきました。

しかし悲しいことに、家族を大切に思えば思うほど、理子奈は次第に追い込まれていきます

彼女が手にする光とはどんなものだったのでしょうか。どうぞ理子奈の姿を最後まで見守ってください。

まとめ


(C)2023 TIMEFLIES Inc.

東日本大震災で家族を失った主人公が、幸せを求めて再び故郷を訪れる姿を見つめた『海鳴りがきこえる』

震災以降、映画制作を通じて故郷や災害と向き合い続ける被災地出身の岩崎孝正監督の思いに、主演の中村守里をはじめ、内村遥、川瀬陽太ら実力派が、心の奥底をのぞき込むかのようなリアルな演技でこたえています

主人公の理子奈の人生は観る者の胸をしめつけるほどの苦悩に満ちていますが、手をのばせば光を手にすることができるという希望を与えてくれる作品です。

映画『海鳴りがきこえる』は2023年10月28日(土)より新宿K’s cinemaにて公開、以降も全国で順次公開されます。




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