笑いと涙を届ける劇場版はついに“しん次元”へ!?
臼井儀人による漫画が原作のテレビアニメシリーズにして、もはや日本を代表するアニメ作品の一つに数えられる『クレヨンしんちゃん』。
また子どもから大人まで楽しめる劇場版シリーズは、笑えるだけでなく泣ける感動作も多く、ファンの間でランキングが作られるほどです。
そして劇場版第31弾となる『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』は、シリーズ史上初の全編3DCGアニメーション。果たして今回は、どんな笑いと感動を届けてくれるのでしょうか。
ヒット作を多数手がける大根仁監督と、CGプロフェッショナル集団「白組」がタッグを組んだ『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』のネタバレあらすじと作品の魅力をご紹介します。
CONTENTS
映画『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【原作】
臼井儀人
【監督・脚本】
大根仁
【音楽】
岩崎太整
【キャスト】
小林由未子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利、鈴木もぐら、水川かたまり、鬼頭明里、松坂桃李
【作品概要】
日本が世界に誇るテレビアニメ『クレヨンしんちゃん』の劇場版シリーズ第31弾であり、シリーズ史上初の全編3DCGアニメーション作品。
監督は映画『モテキ』、テレビドラマ『エルピス-希望、あるいは災い』などを手がけた大根仁監督。今回初のアニメーション作品に挑んでいます。
そして声優陣には、俳優の松坂桃李、人気芸人コンビ「空気階段」の鈴木もぐらと水川かたまりなどを起用するなど、幅広い層が楽しめる作品になっています。
映画『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』のあらすじとネタバレ
ある日、二つの光が地球に迫ってきていました。
その存在を確認し、慌てふためく二人の男女。ヌスットラダマスの予言書に記された通りの出来事が起きていると彼らは動揺を隠せません。
一方、そんな嫌な予感とは打って変わって、変わらぬ日常を送る野原一家。
朝、いつものように母親のブラジャーでふざけるしんのすけを母・みさえは街中追いかけ回します。そんな一家は、しんのすけの通うふたば幼稚園の運動会を翌日に控えていました。
夜。新橋でティッシュ配りをする青年・非理谷充(ひりや・みつる)は、アイドルの追っかけにしか生きる喜びを見出せず、さらに推しの結婚報道を目にして途方に暮れていました。
ガラの悪いサラリーマンに絡まれ、地面に倒れる充。たまたまそこを通りかかった野原ひろしが救いの手を差し伸べますが、充は見下されたように感じてしまい、ひろしの手を振り払います。
充の運の悪さはさらに続きます。警察がパトカーで追跡中であった強盗犯の服装が、今の充が着ている服装と完全に一致していたのです。
潔白の充は警官に疑いの目を向けられ、街中を逃げ回ることに。しかしフェンスに追い込まれ逃げ場を失ったところで、謎の黒い光が充に直撃します。
充は黒い光の影響により、謎の超能力を手に入れます。そして追いかけてきた警官をなぎ倒したのち、世の中への充の復讐劇を開始します。
しかし、超能力を手にしたのは充だけではありませんでした。なんと、たまたま家で留守番中だったしんのすけにも、白い光が直撃。彼がお尻に力を集中させると、サイコキネシスを使えるようになっていました。
翌日のふたば幼稚園での運動会、しんのすけはサイコキネシスを駆使して大玉転がし・綱引き・玉入れ驚異の活躍を見せ、ひまわり組を勝利へ導きます。大喜びする野原一家でしたが、それを見ていたのは一家だけではありませんでした。
運動会の後、家で手巻き寿司を楽しむ野原一家の元へ、二つの光を調査していた二人の人物が突如現れます。彼らは自らを「国際エスパー調整委員会」と名乗りました。
若い女性・深谷ネギコ、そして池袋教授はしんのすけの持つ超能力で「世界を救ってほしい」と頼みます。実は、謎の黒い光と白い光の存在は、予言書に書かれてあった「この世の終わりの前兆」だというのです。
黒い光を受けた人間は負の感情が増大し、超能力を使えるようになること。そして黒い光を受けた人間を止められるのは、白い光を浴びたしんのすけ以外いないことを告げる教授たち。
サイコキネシス、テレパシー、瞬間移動、透視……これらの超能力を駆使し、世界を救うことを頼まれますが、いまいち乗り気ではない野原一家。
しかしその頃、負の感情が増大した充は街で暴れ始めます。そして、充がふたば幼稚園の前を通った時、よしなが先生の姿が裏切った推しのアイドルと重なったことで彼の暴走は加速し、幼稚園で立てこもり事件を起こします。
野原一家と国際エスパー調査委員会の二人は、テレビでこの様子を目撃。現場である幼稚園には、風間くん、ねねちゃん、マサオくん、ボーちゃんの姿が……。
映画『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』の感想と評価
一味違う「全編3DCGアニメーション」の臨場感
本作では劇場版シリーズ史上初の「全編3DCGアニメーション」が採用され、アニメーション制作には『シン・ゴジラ』『STAND BY ME ドラえもん』などの作品を手がけ、CGのプロフェッショナル集団として名高い「白組」が参加しています。
そのため、今までの劇場版シリーズとも一味違う、臨場感あふれる演出が多く描かれています。映画冒頭のふざけるしんのすけをみさえが追いかける場面だけでも、瞬く間に変化する風景とアングルに観客は驚かされたはずです。
また、しんのすけたちが怪物から車で逃げる場面でも、ジェットコースターに乗り上げての盛大なカーアクションが繰り広げられ、3DCGだからこそできるアニメーション表現は子どものみならず、大人も釘付けにしていました。
映画に込められた「“マイペース”でがんばる」
「がんばれ」という言葉を素直に受け取れなくなったのは、何歳からでしょうか。現在の社会では「がんばれ」という言葉にプレッシャーを強く感じる人も増え、むしろ「無闇に使うべきではない言葉」になりつつあるといえます。
本作では「がんばれ」という言葉が一つのキーワードとして描かれています。その中でも、映画終盤にてひろしが充に対して放ったセリフは、多くの観客の記憶に残ったはずです。
「どんな未来だろうと、がんばれば未来は変えられる。誰かを幸せにするためにがんばれ」
それは、自分にとっての「誰か」=「野原家」を幸せにするために生き続けているひろしだからこその言葉であり、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』を含む過去の劇場版シリーズを振り返ることで、より深みが増す言葉といえます。
そして、ひろしが口にしたその言葉は、これからの未来を生きる子どもたち、そして『オトナ帝国の逆襲』が公開された2001年以上に「未来はすでに“過去”になった」と感じてしまっている大人たちへのメッセージでもあるのです。
いまや現在の社会で、希望を持って生きることは容易ではなくなりました。「真面目に働けば、必ず幸せになれる」という考えも前時代的なものとなり、自分の幸せの在り方が分からなくなっている人は増え続けています。
情報社会は人間の生きる時間を急かし、希望があるはずの未来にもエネルギー問題や食糧不足、人口減少などのいつか必ず訪れる社会問題ばかりが待ち受けている……もはや、前向きに希望を持とうとするだけで「楽観的だ」と批判されかねない時代といえます。
そんな時代だからこそ、「がんばる」というシンプルな言葉に立ち返るべきなのかもしれません。自分が信じられる誰かや何かのために、そして何よりも、しんのすけのような“マイペース”でがんばることが。
気を抜く時にはとことん気を抜いて、がんばる時にはとことんがんばる。おバカなところも、カッコいいところも同時に映画で魅せ続けてくれたしんのすけの姿は、子どもたちだけでなく「“マイペース”でがんばる」を見失いがちな大人たちの心にも刺さるはずです。
まとめ
全編3DCGアニメーションで制作されたことで、過去の劇場版シリーズとは一味違う臨場感でしんのすけたちの活躍が描写された『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司』。
また映画に込められた「“マイペース”でがんばる」というメッセージは、しんのすけが様々な冒険を経験してきた劇場版シリーズに通底するものなのかもしれません。そう考えると、本作は『クレヨンしんちゃん』を昔から愛し続ける人々にも向けられた作品といえます、
子ども・大人に関係なく、現在の社会を生きる人々全員が楽しめる“しん次元”な『クレヨンしんちゃん』を、ぜひお見逃しなく。