映画『忌怪島/きかいじま』は2023年6月16日(金)より全国公開中!
2023年6月16日(金)より全国公開中のホラー映画『忌怪島/きかいじま』。
『犬鳴村』(2020)から始まる「恐怖の村」シリーズを手がけてきた清水崇監督が、絶海の孤島を舞台に「仮想世界」というVR技術がもたらす新たな“異界”の恐怖を描き出します。
このたびの劇場公開を記念し、本作でVR研究チーム「シンセカイ」のメンバーの一員であるプログラマー・三浦葵役を演じられた川添野愛さんにインタビューを行いました。
「初のホラー映画への出演」という挑戦を通じて知ることができたもの、“役者”としての在り方へと通じる“人間”として生き方など、貴重なお話を伺うことができました。
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清水崇監督の“人間が恐怖する姿”へのこだわり
──本作を手がけられた清水崇監督は「Jホラー」を代表する映画監督の一人として非常に知られていますが、川添さんの目から見て、清水監督による「恐怖」の演出はどのように映ったのでしょうか。
川添野愛(以下、川添):本作の中には、私が演じる葵が震えながら眠っている姿を映した場面が登場するんですが、その撮影時に清水監督は「この場面では、目を瞑った状態の中でも、眼球はひたすら動かし続けてほしい」と仰ったんです。
私がその演出の理由について尋ねると、「いわゆるレム睡眠状態の時に起きる『急速眼球運動』を再現することで、葵が半ば気絶するように眠ってしまったこと、眠りはしたものの極度の緊張や混乱状態のせいで深い睡眠ができていないことを表現したかった」と清水監督は説明してくださいました。
川添:そんな演技の演出は初めての経験で、場面ごとの叫び声や体の震え方なども含めて、清水監督の「人間が恐怖する姿」の演出のこだわりには毎回驚かされました。ただ、私が本作で初めてホラー映画に出演したこともあり、清水監督のこだわりにはとても助けられましたし、多くのことを学べたと感じています。
また、「その場面で、登場人物たちが恐怖する対象は何なのか」「その場面の時点で、登場人物たちはどの程度まで恐怖の感情を抱き、それを表に出すのか」という各場面でのお芝居のイメージの共有は、清水監督や他のキャストさんとともに現場でこまめに行うようにしていました。
ホラー映画への“勘違い”をなくせた
──川添さんは本作で初めてホラー映画にご出演されたと伺いましたが、今回の“初挑戦”を経て、ホラー映画に対する認識に変化は生じられたのでしょうか。
川添:クランクイン前の時点では、今回の『初のホラー映画への出演」は役者を続けていく上でとても重大な出来事だと考えていました。ただ完成した映画を観た今となっては、「どうして自分は、あそこまで身構えてしまっていたんだろう」と感じています。
今回の映画に出演させてもらえたことで、自分は「ホラー映画」というジャンルに対して大きな勘違いをしていたと気づけたんです。
少なくとも完成した『忌怪島/きかいじま』を初めて観た際には、「怖い映画」というだけでなく「切ない映画」「考えさせられる映画」という感想を強く抱きましたし、「清水監督は恐怖そのものではなく、恐怖を通じて人間を描いている」「ホラー映画も、他のジャンルの映画と同じように“人間”を描いているんだ」と理解できました。
そうして勘違いを自分の中でなくし、ホラー映画の本当の魅力を知ることができたのは、とてもありがたかったです。
役者として、人間としての可能性を縮めない
──ホラー映画に対する誤解の解消の他に、本作へのご出演によって得られた役者としての新たな学び、あるいは発見はございましたか。
川添:これは役者としてというよりも、人間の根本的なこととしてのお話かもしれないですが、今回の映画への出演を通じて「知らないのに、何かを言うのはダメだな」とは思いました。
「実際にやってみないと、何も分からない」というのもそうなんですが、やっぱり好きなものは増やしていきたいんです。苦手なものや嫌いなものがあるよりも、好きなものを増やしていった方が役者としての幅もより広げられるだろうし、生きること自体がより楽しくなるはずです。
今回、清水監督とお仕事をご一緒した中で、本当にいろいろなことを知ることができました。清水監督って、宇宙みたいなんです(笑)。脳の中に果てがないといいますか、私では想像もしていなかったアイディアをたくさん出されるので、「今、監督は何を考えているんだろう」とワクワクさせてくれる監督なんです。
もし今回、私がホラー映画に挑戦しなかったら、清水監督と出会うタイミングはもっと遅くなっていたかもしれないし、清水監督との出会いのおかげで好きになれたものも、一生好きになれないままだったかもしれない。
役者として、人間として、自分の可能性を自分自身で縮めることだけはダメだと実感できたのは、本作に出演したことで得られた最大の収穫かもしれません。
“役者”としてどう在るべきか以前に
──2023年現在の川添さんは今後、どのような役者になりたいと考えられているのでしょうか。
川添:「ちゃんと“そこ”にいられる人」といいますか、たとえ映画というフィクションの世界の中であったとしても「いる」と信じてもらえる人でありたいとは感じています。
何もしないで、ただ立っているだけなのに、お芝居における“説得力”を表現できる役者さんっているじゃないですか。それは結局、その役者さんが今までどう生きてきたのかが観る人に伝わってくるからなんだと思います。
お芝居をしている時は、自分を何も隠せないんです。自分自身の良いところも嫌なところも、観る人には全て伝わってしまう。その上で、自分という人間を全て観られても恥ずかしくないように生きたいんです。
「完璧な人間」ではなく、自分の嫌なところやダメなところも受け入れて、そういうところも含めて愛されるような人間になりたい。
その結果、自ずと役者としての“説得力”も得られると感じていますし、「“役者”としてどう在るべきか以前に、“人間”としてどう生きるべきか」が、全てにつながっていくんだと思います。
インタビュー/河合のび
撮影/田中舘裕介
ヘアメイク/光倉カオル(dynamic)
スタイリスト/土田寛也
川添野愛プロフィール
1995年2月5日生まれ。幼少期より杉並児童合唱団に12年間在籍。2015年に多摩美術大学在学中、WOWOW『贖罪の奏鳴曲』(監督:青山真治)で女優デビュー。
主な出演作に、映画『パパはわるものチャンピオン』(監督:藤村亨平)、『パーフェクトワールド 君といる奇跡』(監督:柴山健次)、『ミュジコフィリア』(監督:谷口正晃)、ドラマ『恋愛時代』(YTV)、『パフェちっく!』(FOD)、『限界団地』(THK)、『his ~恋するつもりなんてなかった~』(NBN)、舞台『セールスマンの死』(演出:長塚圭史)、『春のめざめ』(演出:白井晃)、『タイトル、拒絶』(演出:山田佳奈)など。
現在は丸源ラーメン「感動肉そば!」篇のCMに出演中。さらに2023年6月23日(金)より池袋シネマ・ロサで1週間限定上映される『アトのセカイ』(監督:天野裕充)、今秋公開予定の『緑のざわめき -Saga Saga-』(監督:夏都愛未)にも出演。
映画『忌怪島/きかいじま』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督】
清水崇
【脚本】
いながききよたか、清水崇
【音楽】
山下康介
【キャスト】
⻄畑大吾(なにわ男子)、生駒里奈、平岡祐太、水石亜飛夢、川添野愛、大場泰正、祷キララ、吉田妙子、大谷凜香、笹野高史、當真あみ、なだぎ武、伊藤歩、山本美月
【作品概要】
Jホラーを代表する映画監督の一人であり、2020年の『犬鳴村』から始まる「恐怖の村」シリーズを手がけてきた清水崇監督が、絶海の孤島を舞台に「仮想世界」というVR技術がもたらす新たな異界の恐怖を描き出したホラー映画。
人気アイドルグループ「なにわ男子」の西畑大吾が主演を務める他、「ザ・ファブル」シリーズの山本美月、元「乃木坂46」の生駒里奈、『キッズ・リターン 再会の時』の平岡祐太、『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』の水石亜飛夢、『ミュジコフィリア』の川添野愛、『水は海に向かって流れる』の當真あみなどが出演。
映画『忌怪島/きかいじま』のあらすじ
とある南の島でVR(バーチャル・リアリティ)を研究するチーム「シンセカイ」。
しかし、彼らが開発中のシステムに“赤い女”のバグが突然現れるとともに、不可解な連続死が発生する。
現実世界と仮想世界が交ざり始めてしまった……?
彼らは謎を解き明かし、閉ざされた島から抜け出すことができるのだろうか!?
編集長:河合のびプロフィール
1995年生まれ、静岡県出身の詩人。
2019年に日本映画大学・理論コースを卒業後、映画情報サイト「Cinemarche」編集部へ加入。主にレビュー記事を執筆する一方で、草彅剛など多数の映画人へのインタビューも手がける(@youzo_kawai)。