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【大久保健也監督インタビュー】映画『Cosmetic DNA』藤井愛稀演じる主人公に託す想いと“超エンタメ”という目標

  • Writer :
  • 西川ちょり

映画『Cosmetic DNA』は2021年10月9日(土)よりK’s cinemaほかにて全国順次公開!

現代を生きる女性たちを取り巻く社会の不条理と理不尽を、独特な映像美でブラックかつパワフルに描き出した痛快作『Cosmetic DNA』。

撮影当時、若干24歳であった大久保健也監督が、脚本・撮影・照明・美術・編集も自ら手がけ、ユニークで大胆な完全オリジナルストーリーを完成。「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020」では北海道知事賞を受賞し、SNSを中心に大きな反響を巻き起こしました。


photo by 田中舘裕介

このたび劇場公開を記念して公開された大久保健也監督インタビューでは、撮影当時の心境や作品に込められた想いなどを語っています。

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ある映画との出会い

『Cosmetic DNA』のメインキャストたちと大久保健也監督


photo by 田中舘裕介

──映画監督になりたいと思われたきっかけを教えていただけますか。

大久保健也監督(以下、大久保):小学生の時から、漫画家やイラストレーターといったクリエイティブな仕事が出来たらいいなという漠然とした思いはあったのですが、それが映画へと傾いたのは中学2年生の時に公開された『アバター』(2009)の影響が大きいです。

3D版で観た時、その圧倒的な映像にものすごい衝撃を受けました。こういう作品を撮りたいと思った自分はハリウッド大作から邦画まで、主に映画館で映画を観るようになり、自主映画もその頃から撮り始めました。ストーリーのない実験映画的な作品もあわせると、これまでに60本くらい撮っています。

自分流のエンパワーメント映画を撮りたい!

東条アヤカ役を演じた主演俳優の藤井愛稀さん


photo by 田中舘裕介

──現代の日本社会において女性が受ける理不尽なハラスメントを題材にしていますが、この発想はどこから生まれたのでしょうか。

大久保:男でいることにどうしようもなく耐えられなくなった時、ふと「女性に生まれたかった」と思うことがありました。もし自分が女性ならどんな苦しみが待ち受けているのか。そこで受けた傷をどのように癒し、どのように日本社会と対峙していくのか。それが全ての始まりでした。

──影響を受けた映画はあったのでしょうか。

大久保:#MeToo運動が始まった頃から、ハリウッドでもリブート版『ゴーストバスターズ』(2016)のような女性のエンパワーメント映画が公開され、そうしたかっこいい女性が活躍する映画を自分も撮りたいと感じていました。

また今の日本社会に目を向けると、解決されていない女性差別の実態があちこちに見受けられます。そんな日本の現状をハリウッドのエンパワーメント映画につなげ、自分流に描けたらという思いがありました。

──タイトルの「cosmetic」にもある通り、本作では「化粧」が重要なモチーフとなっていますね。

大久保:最近は見かけなくなりましたが、僕が中高生だった頃には電車でお化粧をする女性がいて、それを見るのが好きだったんです。そして化粧という行為は、戦争映画などで兵士が戦地に行く前に銃に弾を込める行為に近いんじゃないかと思うようになり、それが本作の「cosmetic」な部分に繋がっています。

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魅力溢れるキャラクターたち

『Cosmetic DNA』の劇中写真


(C)穏やカーニバル

──主人公アヤカ役の藤井愛稀さん、サトミ役の仲野瑠花さん、ユミ役の川崎瑠奈さん女性3人の連帯感やその息遣いが生き生きと伝わってきますが、撮影前に何かお話しされましたか。

大久保:3人には「脚本から汲み取ったキャラクターを自由に、間違いなどというものは決してないので大胆に演じてほしい」とお伝えした記憶があります。

とはいえ、過酷な現場にも関わらずのびのびとお芝居をされて、休憩時間も仲良くお喋りをする……そんな3人を遠くから眺めて、寂しい気持ちにもなりましたね。そして、作中のみならず撮影裏でも育まれた3人の友情は、僕が体験したくてもできなかった青春だったようにも思えました。

──一方、プロデューサーも兼任されている西面辰孝さんの演技も鬼気迫るものがありました。西面さん演じられた柴島には、監督はどのような思いを込められたのでしょうか?

大久保:柴島は本作の最初の断り書きにもありますが、「今の日本に生きるクソ男共全員を煮詰めた、史上最悪なゲス野郎」をキャラクターとして描きたい、という気持ちからスタートしました。

しかし、書いている途中に段々と自分の闇の部分が顔を出し始め、自己嫌悪の渦の中で必死に柴島を書きあげました。そんな彼を、自分を投影させたもうひとりのキャラクターである東条アヤカがぶち殺す。そういう映画にしようと思っていました。

半年以上かけた「編集」


photo by 田中舘裕介

──本作の編集作業には、相当な時間をかけられたとお聞きしました。

大久保:半年以上かかりましたね。本当に試行錯誤の連続でした。例えばドアの閉まる音であったり、本のページをめくる音といった細かい日常の音や、カットの切り替わりのSEなども全て、基本的に何種類かいろいろ試してからベストな選択をするというように入念に作業していきました。

クロマキー合成も,詳しい方法がわからないままグリーンバック撮影をした素材を、編集でワンカットずつ背景を切り抜いて合成し、さらにそれらを音楽のテンポに合わせて細かくカッティングしていきました。そうした作業は楽しくもありましたが、かつてないレベルの地獄のような体験でもありました。

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「超エンタメ」作品を撮り続けていきたい


(C)穏やカーニバル

──大久保監督は本作と次作『令和対俺』で 2020年・2021年とゆうばり国際ファンタスティック映画祭での2年連続受賞を達成されました。今後、どのような映画監督になっていきたいとお考えでしょうか?

大久保:2年連続は本当に嬉しいです。自分のやってきたこと・考えていたことは間違っていなかったという喜びがある反面、ここまで自分に力があるのだったらもう逃げられない、映画をやり続けていくしかないという覚悟のようなものができたと思っています。商業映画のお仕事も心待ちにしております。

そしてその中でも、作品のジャンルに拘らず、変なプライドも持たず、驕らず、愚直に良い映画を撮りたいです。 映像技術や上映システムは、今度もどんどん飛躍を遂げていくことでしょう。だからこそテクノロジーに支配されないよう肝に銘じながらも、人間の感情の「核」に迫る超エンタメを撮り続けていきたいです。

インタビュー/西川ちょり
撮影/田中舘裕介

大久保健也監督プロフィール


photo by 田中舘裕介

1995年生まれ、大阪府育ち。中学時代に『アバター』を観て衝撃を受けたのをきっかけに映画監督を志す。近畿大学を中退後、フリーランスの映像作家としてインディーズアイドルのミュージックビデオ等を手がける傍ら、ジャンル問わず自主映画の制作を続ける。

2020年、初の長編映画『Cosmetic DNA』が、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2020」にて北海道知事賞を受賞。アングラ漫才師の葛藤を描く新作中編映画『令和対俺』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2021」に入選。2年連続のノミネートを果たした。

映画『Cosmetic DNA』の作品情報

【日本公開】
2021年(日本映画)

【監督・脚本・撮影・照明・美術・編集】
大久保健也

【プロデューサー】
大久保健也、西面辰孝

【キャスト】
藤井愛稀、西面辰孝、仲野瑠花、川崎瑠奈、吉岡諒、石田健太

【作品概要】
14歳から映画制作を続けてきた大久保健也監督が、撮影時24歳で作り上げた劇場デビュー作。2020年、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で北海道知事賞を受賞。

主人公アヤカ役には『血を吸う粘土〜派生』などで知られるの藤井愛稀。現代を生きる女性たちを取り巻く社会の不条理と理不尽を、ヴィヴィッドな映像美でパワフルに描いた注目の一作です。

映画『Cosmetic DNA』のあらすじ


(C)穏やカーニバル

コスメを愛する美大生・東条アヤカ(藤井愛稀)は、ある時「自分の映画に出演してほしい」とナンパしてきた自称・映画監督の柴島恵介(西面辰孝)に薬物を盛られ暴行されてしまいます。

泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれ精神的に病んでいくアヤカでしたが、大学院生のサトミ(仲野瑠花)、アパレル店員のユミ(川崎瑠奈)と出会ったことで少しずつ自身の心を取り戻していきます。しかし、柴島の次なる標的がユミであると知ったアヤカは突発的に柴島を殺害してしまうのでした。

愛と友情、そして破壊の先の未来とは? アヤカ・サトミ・ユミの「私たちの未来」のための革命が始まろうとしていました……。



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