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映画『パロディスター』あらすじ感想と評価考察。奇才マッド・アマノがフォトモンタージュで”権力者との闘争”に笑いで臨む【だからドキュメンタリー映画は面白い78】

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第78回

今回紹介するのは、2023年7月8日(土)より新宿K’s cinema ほか全国公開の『パロディスター』。

写真を切り貼りして作品を制作するフォトモンタージュ技法で、半世紀にわたり社会を風刺し続けてきたパロディスト、マッド・アマノに迫ります。

【連載コラム】『だからドキュメンタリー映画は面白い』記事一覧はこちら

映画『パロディスター』の作品情報

【日本公開】
2023年(日本映画)

【監督・撮影・編集】
長棟航平

【プロデューサー】
飯塚冬酒

【撮影協力】
中田敦樹、敦賀零

【キャスト】
マッド・アマノ、長棟航平

【作品概要】
齢80を超えても、社会にパロディで警鐘を与え続けるパロディスト、マッド・アマノに密着したドキュメンタリー。

通算100本以上のインディーズロックバンドのミュージックビデオを手がけてきた映像作家の長棟航平がアマノを撮影。年齢の離れた2人の邂逅を描きます。

アマノとは25年以上の交友を持ち、初監督作『MOON and GOLDFISH』(2023)を発表したばかりの飯塚冬酒がプロデュースを担当しました。

映画『パロディスター』のあらすじ

1970年代から活躍するマッド・アマノは、写真を切り張りして作品を製作するフォトモンタージュという技法を用い、社会を風刺するアート作品を世に送り出してきました。

山岳写真家・白川義員の写真に巨大タイヤを合成したモンタージュ写真をめぐっては、1971年の提訴から87年の和解に至るまで16年もの長きにわたる裁判となり、日本社会における著作権の意識にも影響を与えます。

そんな彼に、ミュージックビデオ界で活躍する若手映像作家の長棟航平が迫ることに。しかし、長棟の思惑とは裏腹に、ドキュメンタリー制作は思うように進まず…。

総理大臣を怒らせ、喜ばせた男

1939年に東京で生まれた天野正之は、芸術家志望だった父親の血筋を受け継いだかのように東京藝大に入学。卒業後は家電メーカーに就くも、表現者への夢を捨てがたく、退社して家族と共にロスアンゼルスに移住します。

やがて写真や印刷物を貼り合わせて作品を制作するフォトモンタージュという技法を考案し、“パロディスト”マッド・アマノとして「FOCUS」、「創」、「紙の爆弾」などさまざまな雑誌に風刺コラムを連載。

嘲笑は権力への批判として、もっとも効果的である。権力を茶化すときのコツは作家のセンスによるところが大きいわけで。
(「ずっと書きたかった親への手紙」徳間書店・刊)

政治家や権力者、あるいは時の人をパロディで斬り捨てるその作風が、多くの読者の支持を得たアマノ。しかしながら、その過激な作風が物議を醸すのも当然で、「自作品を無断で利用され著作権を侵害された」として、写真家の白川義員による約16年にも及んだ民事訴訟は、パロディ表現のあり方に一石を投じました。

近年も安倍晋三の弁護士団からパロディ風刺を止めるよう通達されたのを皮切りに、政治家からの横槍を受け続けており、森喜朗も首相就任時に「FOCUS」で揶揄されたことにクレームをつけたといいます。

その一方で、自身が載った「FOCUS」のページを面白がり議員会館に飾っていたとされる中曽根康弘もいたりと、パロディストの風刺は歴代首相をも一喜一憂させてきたのです。

ドキュメンタリーの虚実皮膜

そんなアマノに密着したのが、幾多のロックバンドのミュージックビデオを手がけてきた長棟航平。

本作はインタビュアーが長棟に制作の裏側を聞くという体を取っており、「アマノの事は知らなかった」と言いつつ、彼が新しい作品を作る過程を追うというコンセプトでカメラを向けます。

「マッド(狂気)」という名を冠すアマノですが、その素顔はいたって物静かで温厚。当コラムで以前取り上げた『クラム』(1996)の漫画家ロバート・クラムと通じるものがあります。

しかしアマノは、どういう内容の作品を作るのか明確にしないばかりか、作業現場も見せない。時には作品づくりとは関連性が薄い場所に行くなど、長棟を煙に巻くかのような行動を取ります。

アマノの思惑が掴めず、想定していた撮影が進まない現状を打破すべく、長棟はあるプロジェクトを企画します。

しかしながら、全編にわたって漂うのは虚実皮膜、いわゆるフェイクドキュメンタリーの雰囲気。

「アマノの事は知らなかった」と語ったのは嘘で、本当は長棟はアマノのことを最初から知っていたのではないか?そもそもアマノは新作を作る気はあったのか?そして長棟のプロジェクトは最初から想定されていたのではないか?など、いつの間にか観ているこちらが煙に巻かれていくような感覚に陥っていく。

森達也が『ドキュメンタリーは嘘をつく』(2006)や『FAKE』(2016)で提示していたように、ドキュメンタリーにもフィルムメーカーの主観が働きます。

観る者の解釈や視点は観る者の数だけある。正解は1つではありません。

笑い者にしたくてもできないこんな世の中じゃ

ネットの普及で誰もが意見を簡単に言える今の時代では、政治家や有名人、事件事故を揶揄するとすぐバッシングされてしまいがち。コメディアンのちょっとしたジョークでも、「不謹慎だ」と叩かれ、炎上してしまう。

半世紀にわたってパロディ風刺をし続け、各方面からお叱りを受けてきたであろうアマノにとっては、ますます生きにくい世の中になっているはず。それでも今なお、彼は気を吐きます。

劇中、「その写真が持つ意味を、さらに強いメッセージで訴えかける。フォトモンタージュにはそういう力がある」と語るアマノ。

アマノが元となる写真や人物の影響を受け、パロディストとして自身のメッセージを表現してきたように、そのアマノの影響を受けていく長棟。パロディスターは新たなパロディスターを生みます。

もっとも、観る者にそう思わせること自体がフェイクであり、パロディなのかもしれません。

ただ確実に言えるのは、被写体こそマッド・アマノでも、『パロディスター』は表現者・長棟航平の作品ということ。そして『パロディスター』を撮了した長棟が次にどんな作品を放つのかという期待は、フェイクでもパロディでもないのです。

次回の連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』もお楽しみに。

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松平光冬プロフィール

テレビ番組の放送作家・企画リサーチャーとしてドキュメンタリー番組やバラエティを中心に担当。主に『ガイアの夜明け』『ルビコンの決断』『クイズ雑学王』などに携わる。

ウェブニュースのライターとしても活動し、『fumufumu news(フムニュー)』等で執筆。Cinemarcheでは新作レビューのほか、連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』『すべてはアクションから始まる』を担当。(@PUJ920219)


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