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Entry 2022/10/01
Update

【ネタバレ】“それ”がいる森|結末あらすじ感想と評価解説。実在の怖い元ネタで描く「正体と真相」とは⁈

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

いわくつきの森で多発する失踪事件、その背後に存在する恐怖!

東京から田舎に引っ越してきた親子が、近くの森に潜む、正体不明の存在に遭遇する恐怖を描いたホラー映画『“それ”がいる森』

リング』(1998)で「Jホラーブーム」を巻き起こし、近年では『事故物件 恐い間取り』(2020)も話題になった中田秀夫が、新たに仕掛けた恐怖“それ”の正体は?

かなりの挑戦作といえる本作は、一切の情報を入れない方が、確実に楽しめる作品なので、記事をご覧いただく際はご注意ください

映画『“それ”がいる森』の作品情報


(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
中田秀夫

【脚本】
ブラジリィー・アン・山田、大石哲也

【キャスト】
相葉雅紀、松本穂香、上原剣心、江口のりこ、尾形貴弘、中村里帆、綾乃彩、松嶋亮太、吉本菜穂子、山下穂大、嶺岸煌桜、潤浩、眞島秀和、宇野祥平、松浦祐也、酒向芳、野間口徹、小日向文世

【作品概要】
東京から田舎に引っ越し農業を始めた主人公・淳一が、近くの森で起きた子どもの失踪事件をキッカケに正体不明の存在“それ”に遭遇するホラー映画。

謎の存在に立ち向かう淳一役を相葉雅紀が演じ、『デビクロくんの恋と魔法』(2014)以来の単独主演作となります。

共演にはNHK連続テレビ小説『ひよっこ』(2017)で注目を浴びた松本穂香、ジャニーズJr.の上原剣心の他、江口のりこ、宇野祥平、野間口徹、小日向文世など実力派俳優が出演しています。

映画『“それ”がいる森』のあらすじとネタバレ


(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

福島市の天源森に、東京でホストクラブを襲撃し、大金を持って逃亡したカップルが逃げ込んで来ます。森の中に強奪した金を埋めようとした二人ですが、謎の存在に襲われます。

一方、3年前から天源森の近くに引っ越してきた田中淳一。彼は妻の爽子、息子の一也と東京で暮らしていましたが、厳格な経営者である爽子の父親と考え方が合わず、追い出される形で福島市に単身引っ越してきました。

3年かけて、ビニールハウスでのオレンジを栽培進めていた淳一でしたが、細菌に感染してダメになったオレンジがあると知り落ち込みます。

その淳一の前に、突然一也が一人で訪ねてきます。

一也は中学受験を控えていましたが、成績が上がらないため、大好きだったサッカーを爽子に無理やり辞めさせてられていました。そのせいでストレスが溜まった一也は、逃げるように淳一を訪ねてきたのです。

爽子にも頼まれ、しばらく一也を預かることにした淳一は、近くの学校に一也を転入させます。

転校先の学校で仲良くなったクラスメイトに誘われ、一也は天源森へ行きます。クラスメイトの作った秘密基地で遊び、天源森から出ようとした際に、二人は謎の物体を発見します。

次の日、学校で謎の物体のことを話した一也ですが、全く信じてもらえなかったため、証拠の写真を撮影すべく、再びクラスメイトと共に天源森へ向かいます。

ですが、謎の物体が消えていたため、仕方なく天源森を出ようとした一也達の前に、素早い速さで動く、人間のような謎の存在が現れます。

謎の存在をスマホで撮影したクラスメイトが、目の前で襲われたのを目撃した一也は、そのまま気を失います。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『“それ”がいる森』ネタバレ・結末の記載がございます。『“それ”がいる森』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

夜になっても一也たちが帰って来ないことで、淳一は一也のクラスを受け持つ教師・北見絵里と捜索を開始。一也のスマホに入れてあった位置情報アプリにより、淳一は天源森で倒れていた一也を発見します。

一緒だったはずのクラスメイトについて淳一は尋ねますが、一也は何かに怯えたような様子を見せます。天源森には県警も捜査に入りますが、県警の刑事は「熊の仕業」と決めつけました。

一也は「入ってはいけない」と言われている天源森に行ったことを教頭に怒られ、クラスでも「熊を恐れて、クラスメイトを置き去りにして一人で逃げた」と、噂されるようになります。

完全に心を閉ざしてしまった一也に、困り果ててしまう淳一。

ある夜、淳一はビニールハウスが何者かに壊されている所を目撃。ビニールハウスに入った淳一は、小さくて不気味な、人間のような存在を目撃します。さらに一也の通う学校の女子生徒が、謎の存在に拐われ失踪するという事件も発生します。

翌日。一也がまた天源森に一人で入ったことを知った淳一は激怒しますが、一也から「“熊ではない何か”を撮影したスマホが、天源森に落ちている」と聞きます。

一也の代わりに天源森に入り、彼のスマホを発見した淳一は、スマホに残っていた謎の存在の姿を確認します。

スマホを持って帰った淳一は、ビニールハウスから謎のうめき声を聞きます。淳一がビニールハウス内に入ると、そこに不気味な人型の怪物が2体現れます。

怪物は淳一に襲いかかろうとしますが、腐ったオレンジに触れた瞬間、苦しみながら逃げ出します。助かった淳一は、多発している事件の原因が「正体不明の怪物の仕業」と県警に説明しますが、一切信じてもらえませんでした。

独自に怪物の正体を探り始めた淳一は、今から60年前にも、今回と同じような失踪事件が多発していたことを知ります。そして絵里と共に、60年前に起きた失踪事件の目撃者・児玉勉に会いに行きます。

児玉は失踪事件で目撃したものを誰にも信じてもらえなかったことから、長年口を閉ざしていましたが、独自に調査を続ける中で「宇宙人が天源森にいる」と考えていると明かしました。

児玉から話を聞き終えた淳一のもとに、村の駐在から「今度は、キャンプに来ていた家族が失踪した」と知らせる電話が。その家族の両親は何者かに殺され、子どもだけが姿を消したことから、淳一は「宇宙人の狙いは子どもでは」と考えます。

事態を重く見た県警は、事件が解決するまで、子どもを学校に避難させるように指示。そして県警総出で山を捜索しますが、全員が宇宙人に殺されてしまいます。

その夜、村全体に謎の停電が発生。子どもたちを避難させた教師たちが校舎の外を見てみると、3体の宇宙人が校庭を歩いているのを目撃します。

絵里は子どもたちを教室から逃がそうとしますが、宇宙人はすでに校舎に侵入しており、子どもたちを追いかけます。

クラスメイトの一人が、宇宙人に立ち向かっていったのを見た一也は、やがてそのクラスメイトを捕まえた宇宙人を追いかけます。

宇宙人を追いかけて天源森に来た一也は、前に見た謎の物体を発見します。そして、その物体の前で、宇宙人がクラスメイトを捕食し「分裂」する所を目撃します。

宇宙人たちは一也に襲いかかりますが、そこへ駆けつけた淳一が「腐ったオレンジの果汁を染み込ませた棒」を宇宙人に押し付けたことで、宇宙人のうちの1体を倒します。

以前、ビニールハウスで遭遇した宇宙人が腐ったオレンジを触り苦しんでいたのを思い出した淳一は、児玉に相談し「植物レベルの細菌に適応できていない」と仮説を立てていました。

宇宙人の1体は倒しましたが、もう1体が追いかけて来たため、淳一は一也に誘導され子どもたちが作った秘密基地へと逃げ込みます。

この秘密基地には落とし穴が仕掛けられており、宇宙人はその落とし穴に引っ掛かります。喜んだのも束の間、宇宙人が巨大な口を開き、淳一と一也は飲み込まれます。

体内に取り込まれた淳一と一也ですが、淳一が腐ったオレンジの果汁を染み込ませたナイフで、宇宙人のお腹を内部から割き、宇宙人を倒します。

一方、宇宙人から逃げ続けた果てに倉庫へと立てこもっていた絵里と子どもたち。絵里は子どもたちを守るために必死で抵抗しますが、淳一と一也により仲間の宇宙人が倒されたことで、他の宇宙人も撤退していきます。

1ヵ月後、学校にもすっかり馴染んだ一也は、爽子の理解も得たことで、東京には戻らずに友だちとサッカーに打ち込むようになります。

一也の姿を笑顔で見守る淳一。その上空では、謎の物体が飛行していました。

映画『“それ”がいる森』感想と評価


(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

森に潜む謎の存在と、“それ”が起こす失踪事件に立ち向かう親子の姿を描いたホラー映画『“それ”がいる森』

本作の前半では森に潜む謎の存在“それ”を、うめき声や一瞬だけ映る影、おぞましい腕の一部などで表現し、確実に存在する、凶暴な“それ”の恐怖を感じさせる演出となっています。

“それ”の正体と、“それ”による失踪事件の真相を中心に描いていく作品前半部。ただ、この辺りでも勘の良い方は気付くかもしれませんが、“それ”の正体は「人間の子どもを捕食し繁殖する宇宙人」です。

また作品前半部で描かれる、宇宙人の姿を一瞬だけ捕らえた影や、道路に出現する宇宙人の姿なども、アメリカなどで撮影された実際のホームビデオなどを連想させる部分があります。

監督の中田秀夫は『リング』(1998)の際に、心霊系の映像を徹底的に研究した上でホラーキャラクター「貞子」を作り出しましたが、今回の宇宙人も多くの映像に基づいて研究したのでしょう。

映画の内容からは、M・ナイト・シャマランの『サイン』(2002)を連想するかもしれません。ただ『“それ”がいる森』の印象は『サイン』というより、1984年に撮影され、UFO研究家の間で物議を醸した「ミッシェルさんの誕生パーティーに現れた宇宙人」の動画に感じる“意味不明の恐怖”に近いです。

おそらく中田監督が意識したのは、この「ホームビデオに撮影された、謎の宇宙人映像」の恐怖や不気味さではないでしょうか?

そして本作の後半では、宇宙人の理解できない気持ち悪さが、前面に出ています

特に体の中央が避けて巨大な口になり子どもを捕食する姿は非常におぞましく、「子どもを捕食し分裂を繰り返す、宇宙人の知能は高いのか?」「ただの“そういう生物”なのか?」と判断できない点も非常に不気味です。

また中田監督は『事故物件 恐い間取り』もそうでしたが、近年は「怖いだけではないホラー作品」を制作し続けています。今回の『“それ”がいる森』でも「大人の役割」についてのメッセージが込められています。

当初は宇宙人に遭遇した一也の話を、誰も信じませんでした。それどころか「入ってはいけない」とされる天源森に勝手に入った一也は、教師たちに怒られるだけ。その怒り方も「何かあったら、責任とるこっちの身にもなれよ」的な自己保身に走った考え方です。

一也の父親・淳一も、東京を離れるキッカケになったのは、義理の父親と考えが合わないことからです。それは東京に残される息子・一也のことより、自分のことを優先させた決断でした。

ですが、宇宙人に狙われた子どもたちの必死の叫びを聞き、淳一も教師たちも、子どもを守るために戦うことを決意します。「弱い子どもを守る」……それこそが、大人が最も全うすべき使命であることを描くのです。

特にラストシーンで描かれた「子どもたちが無邪気に遊ぶ姿を見守る大人たち」という光景からも、人間関係が希薄になった昨今で「理想的な共同社会とは?」という問いかけを感じられました

まとめ


(C)2022「“それ”がいる森」製作委員会

『“それ”がいる森』の予告を観て映画に興味を持った方の中には、「なんだ、結局正体は宇宙人か」と展開や設定に対し安直さを感じた方もいるかもしれません。

一方で、福島市は実際に「未確認飛行物体の目撃率」が高く、本作のエンドロールでも紹介された通り、天源森のモデルになった福島市・千賀森でも、未確認飛行物体が頻繁に撮影されています

さらに、実際に「謎の失踪事件」も起きているため、「宇宙人」という“それ”の正体は、あながち唐突な展開でもないのです。

中田監督は本作に向けたコメントにて、「Jホラーが誕生して30年近く経っている。いかに脱皮して新たなホラーを提供できるか?にチャレンジした」と語っています。

中田監督は『リング』の他にも『女優霊』(1996)などで、幽霊を扱った恐怖演出が秀逸であることは証明されています

『“それ”がいる森』も、そういったホラー作品へと仕立てること自体はできたはずですが、そこに甘んじることなく、エンタメ要素を入れたホラーへ、あえて挑戦しています

「呪怨」シリーズで知られる清水崇監督も、「従来のJホラーからの脱却」を試みている様子が近年の監督作からは感じられます。Jホラーを牽引して来た中田秀夫、清水崇が新たなホラーの扉を開くかもしれません

実験的かつ挑戦的なホラー作品という意味で、『“それ”がいる森』は必見の作品なのです。





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