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Entry 2022/10/06
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【田村直己監督インタビュー】映画『七人の秘書THE MOVIE』木村文乃と玉木宏演じる“ロミオとジュリエット”な恋愛模様に注目してほしい

  • Writer :
  • ほりきみき

映画『七人の秘書 THE MOVIE』は2022年10月7日(金)より全国東宝系にてロードショー!

要人に仕える、名もなき「秘書」たちが理不尽な目に遭う社会の弱者を救い出すべく、ずば抜けたスキルや膨大な極秘情報とネットワークを駆使し、金や権力にまみれた非情な支配者たちを一掃する……。

“現代版・必殺仕事人”ともいえる世界観と、美女たちが悪いヤツらを片っ端から成敗していくという痛快な設定で話題を呼んだドラマ『七人の秘書』。その最終回から2年後の物語を描いた劇場版作品が『七人の秘書 THE MOVIE』です。


(C)Cinemarche

このたびの映画の劇場公開を記念し、田村直己監督にインタビューを敢行。

ドラマの企画立ち上げ時から参加してきた田村監督ならではの制作秘話をはじめ、「念願」の映画撮影への想いや自身の経験が活かされた瞬間、劇場版でのキャスト陣の見どころなど、貴重なお話を伺いました。

秘書たちを演じるに必要な「華」と「影」


(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

──本作は2020年秋に放送されたテレビ朝日のドラマ『七人の秘書』の劇場版作品であり、田村監督はドラマの企画段階から作品に携わられていたとうかがっています。

田村直己監督(以下、田村):内山聖子プロデューサーはかつて秘書をされていたという経験もあって、ドラマの企画に取り組まれていたそうです。一般的な女性たちが秘書でありながら、“影の軍団”という設定で悪人を成敗する。もともと僕自身、「必殺仕事人」シリーズはとても好きな世界観であったことから、お話を伺いすぐに興味を持ちました。

企画の開発会議は、本当に有意義でした。たとえば「秘書たちが作戦会議をする場所をどこにするか」という議題が持ち上がった際には、「ラーメンを食べながら話していたらどうだろう」とラーメン屋という設定を提案したところ、即採用となりました。

またタイトルも、大好きな『オーシャンズ11』になぞらえて「シークレット7」という案を出し一旦は決まったのですが、その後話し合いを重ねる中で現在の「七人の秘書」へと落ち着きました。しかし作品がヒットした今、それが正解だったのだと思います(笑)。

──メインキャラクターの七人を演じている俳優さんたちが、どなたもイメージ通りに感じて楽しむことができました。

田村:キャスティングについても、いくつかアイディアを出させていただきました。

秘書たちは、さり気なく裏の稼業をします。彼女たちには華と同時に影も必要であり、そのようなキャラクターを体現できる俳優はなかなかいないと感じていました。ただ企画の具体化を思案し続ける中で「脚本をより魅力的なものにできる俳優は、木村文乃さんを置いてほかにはいない」「彼女であれば、華も影のいずれも感じさせる魅力がある」と千代役に起用しました。

また五月役には、当初から室井滋さんが良いと思っていました。僕が監督として携わっていたドラマ『ドクターX〜外科医・大門未知子』に室井さんは出演されていて、信頼関係もできていたからです。内山プロデューサーも、室井さんの名前を上げると快く賛同してくれました。

また本作の脚本を手がけ、『ドクターX』も長きに渡って一緒に作ってきた脚本家の中園ミホさんは、女性を描くのがとても上手な方でもあります。くわえて、キャスティングの見通しが立ってから脚本を書き始めてもらったので、ある程度は起用した俳優陣であて書きをされていると思います。どの役も、俳優のみなさんにうまくハマっていました。

念願の映画撮影の現場へ


(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

──田村監督はこれまでテレビドラマの演出を中心にお仕事をされてきました。今回、映画の撮影現場ではいかがでしたか。

田村:僕は関わった作品がヒットするたびに「映画化にも挑んでみたい」と思ってきましたが、映画化のハードルは思いのほか高いようで、本作でようやく念願が叶って映画撮影という現場体験ができました。

予算やスクリーンの大きさがドラマとは格段に違うということもあり、これまでの作品以上に迫力が出せたと感じています。ただ、撮影現場に関しては基本的にほとんど変わりがないと感じています。いつも一緒にやっている同じスタッフと組めたからかもしれませんね(笑)。

映画化にあたっても、ストーリーは中園さんを中心にスタッフ皆でプロットを組み立てていきました。僕は『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(2019)に登場するスロンビー家のように、家族の誰もが怪しく、それぞれのキャラクターも際立っている家が好きなんですが、そういう家へ秘書たちが訪れ、親子・兄弟といった家族間に潜む謎を解き、悪事を暴いていくというアイディアを出しました。

そのほかにも「雪の中にひっそりと建つ大きなお屋敷は映画映えするから、北海道に行きたい」と作品の規模も考えずに、好き勝手なことも言わせていただいていました(笑)。ただコロナの問題などもあり、舞台設定は最終的に長野へ変えました。雪国で水資源を有するという共通点もあったためです。

企画は2021年の春ごろに動き出したのですが、内山プロデューサーをはじめ僕たちスタッフは、秋から新シーズンがスタートする『ドクターX』と同時進行での仕事でした。『ドクターX』の仕事が終わった翌日に長野へロケハンに行くという強行スケジュールを行っていました。

劇場版の物語はドラマ最終回の2年後の設定ですが、彼女たちのキャラクターは基本的には変わっていません。秘書たちそれぞれのキャラクターは8話あるドラマで確立していたので、映画化にあたっても、映画オリジナルである笑福亭鶴瓶さんや玉木宏さんたちのキャラクターをどう描くかに集中しました。限られた時間だったからこそ、かえって悩む時間もなく、自分とスタッフの感性と感覚で作り上げた気がしています。

千代の恋愛模様は『ロミオとジュリエット』


(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

──木村文乃さんをはじめ、広瀬アリスさん、菜々緒さん、シム・ウンギョンさん、大島優子さん、室井滋さん、江口洋介さんといったレギュラーメンバーの皆さんの続投が、映画化にあたっても揺るぎないキャラクター描写を生み出せたということでしょうか。

田村:作品をより面白くするために、実際にその役を演じる人間として「こういうことは言わないよ」と脚本を微調整してくださり、一方で新しいアイディアにも積極的に乗ってくれる。7人の仲も良く、プロフェッショナルが集まった現場だと感じています。

僕自身もとても撮影に取り組みやすく、本当に楽しい現場でした。素敵な七人です。

──劇場版におけるレギュラーメンバーそれぞれの見どころをお聞かせください。

田村:ドラマでは登場するメンバー全員が各々闇を抱えており、ストーリーと同調させつつ、それぞれにとっての決着をつけました。

ただ、主役である千代は彼女のお兄ちゃんの話を取り上げたので、彼女自身の人間臭い部分は描いていませんでした。そこで「今回は千代の話がやりたい。できれば『ロミオとジュリエット』にしたい」と中園さんに伝えたところ、中園さんは恋愛の名手なのでうまく盛り込んでくれました。僕も『ロミオとジュリエット』のつもりで文乃さんと玉木さんとの共演する撮影に臨んでいました。千代に関しては、切ない恋模様を見てほしいですね。

また七菜は単独行動が多く、七菜を演じたアリスさんにはいろんなことをやってもらいました。雪の中をウェディングドレスで走るなど大変な撮影も多かったのですが、どんな時でも笑顔で挑んでくれるプロの中のプロでしたし、キャストやスタッフからの信頼もあって人気者の彼女は、現場での姿を見ていると癒されます。アリスさんの奮闘した演技は、ぜひしっかり見ていただきたいです。

大島さんが演じた風間三和は剣道ができる設定でしたから、今回も棒を用いてのアクションを披露してもらいました。また菜々緒さんは身体が柔軟なのもあって、キックなどのアクションシーンが決まっていました。佇まい自体がカッコいいと感じられました。

シムさんも実はアクション大好きで、僕が「ブルース・リーをやって」と言ったら、映画でもノリノリでやってくれました。シムさんは細かいことでもアドバイスをすると、それを活かしどんどんやってくれる。いいキャッチボールができる女優さんです。

室井さんは昔からその場を楽しく、より深く、くだらないことも面白くしてくれる。流石としか言いようがないです。また映画では、萬の人間的な部分も挟み込んでいますが、江口さんがさり気なく色気を感じさせながら演じてくれました。

「ドラマだから」「映画だから」に囚われない


(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会

──劇場版の見どころの一つである秘書たちのアクションについて、木村さんや大島さんは「アクションのスケールが大きい」とコメントされています。

田村:短い尺ではありましたが、ドラマ最終回の撮影でアクションをやってもらったところ、皆さんお上手だったのはもちろん、ご本人たちも楽しかったのだと思います。「続編があったら、アクションをもっとたくさんやりたい」という話で盛り上がったほどだったので、映画で続編をやれる以上、せっかくなら大がかりなアクションをやろうと考えたのです。

アクション監督の和田三四郎さんに「こういうことをやりたい」と相談し、予告編にも登場するパーティーの場面と雪上での場面の二つに絞り、リハーサルをかなり細かくやりました。皆さん、運動神経がいいので本当に助かりました。またパーティーの場面はドレスを着るため、脚を上げても破けないようなデザインと素材の衣装をスタイリストさんに用意していただきました。

──田村監督は「仮面ライダー」シリーズ作品の現場で活躍されてきた経験がありますが、その経験はやはり本作でのアクションシーン撮影にも活かされたのでしょうか。

田村:本作のカメラマンの五木田さんは多くのドラマを一緒に作ってきた戦友で、僕が絶大な信頼を置いている優秀なカメラマンですが、アクションシーンの撮影経験はそこまで多くないので、アクションシーンならではのカット割りにあまり慣れていませんでした。彼をリードし安心して撮影してもらえたのは、「仮面ライダー」シリーズの演出を10年近くやってきたからこそだと思います。

また本作では牧場が火事になる場面があり、焼け跡を芝居場として使っています。火事そのものよりも焼け跡での芝居をメインに考え、焼け跡を作って撮影してから、焼け跡に外側の壁を付けて燃やして火事の場面を撮影し、CGで炎を足しました。「ここは本火でやったほうがいい」「ここはCGを足せばいい」という判断ができたのも、仮面ライダーでの経験があったからこそです。アクションとCGに関して「仮面ライダー」シリーズでの経験がかなり活きました。

──劇場公開にあたって、田村監督の現在のお気持ちを改めてお聞かせください。

田村:映画を撮ってみて、演出という点ではドラマも映画もそんなに違いはないということが分かりました。今後ドラマを撮る時も、「ドラマだから」と思わずに映画を撮っているような気持ちで臨みたいし、映画のチャンスがあれば「映画だから」と気負わずにドラマの延長で撮りたい。相乗効果が期待できるような気がします。

ただ「シネマスコープ」という画面サイズは、テレビとは全然違う。もっと効果的な見せ方があったのかもしれません。また音の奥行きも、テレビにはできない。スクリーンでの見せ方をもっと勉強しなくてはと思いました。テレビは細長い画面にはできませんが、映画でチャレンジしたことをテレビに反映させたら、テレビをもっと面白くすることができるかもしれない。ワクワクした気持ちでドラマにも映画にも取り組めそうです。

インタビュー/ほりきみき

田村直己監督プロフィール

代表作:【テレビドラマ】「平成仮面ライダー」シリーズ(2003~2009年)、「ドクターX~外科医・大門未知子~」シリーズ(2012年~)、「未解決の女」(2018年~)、「桜の塔」(2021年)、「六本木クラス」(2022年)

映画『七人の秘書 THE MOVIE』の作品情報

【公開】
2022年(日本映画)

【監督】
田村直己

【脚本】
中園ミホ

【キャスト】
木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介、玉木宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶

【作品概要】
理不尽な目に遭う社会の弱者を救い出すべく、ずば抜けたスキルや膨大な極秘情報とネットワークを駆使し、見事なまでに“裏仕事”をこなす秘書たちの姿を描いたテレビドラマ『七人の秘書』の劇場版作品。ドラマに続き、中園ミホが脚本、田村直己が監督を務める。

銀行や警視庁、大学病院、都庁のトップに仕える秘書たちを演じるのは、木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋。また秘書軍団が夜な夜な集うラーメン店の店主で、彼女たちの裏稼業の元締め・萬敬太郎を江口洋介が演じる。

映画には依頼人・緒方航一役に玉木宏、九十九家の次男・二郎役に濱田岳、九十九家の顧問弁護士・美都子役に吉瀬美智子、九十九家のドン・道山役で笑福亭鶴瓶がゲスト出演。

主題歌はmiletの「Final Call」(Sony Music Labels)。

映画『七人の秘書 THE MOVIE』のあらすじ

熾烈な戦いの末に政界のドンを辞任に追いやった秘書たちは、今日もラーメン萬で平和な日々をかみしめていた。そんな彼女たちのもとに新たな依頼が舞い込む。

今度のターゲットは信州一帯を支配する「九十九ファミリー」。表の顔は経済を潤してくれる地元の名家だが、実はその裏の顔は国家と繋がり私腹を肥やすためには手段を厭わない極悪一家だった…。

過去最大の悪人を懲らしめるため、雪深き地に向かった七人。

しかしそこで彼女たちを待ち受けていたのは、絶体絶命……史上最高難易度の任務と、決して知られてはいけないある秘密だった!

堀木三紀プロフィール

日本映画ペンクラブ会員。2016年より映画テレビ技術協会発行の月刊誌「映画テレビ技術」にて監督インタビューの担当となり、以降映画の世界に足を踏み入れる。

これまでにインタビューした監督は三池崇史、是枝裕和、白石和彌、篠原哲雄、本広克行など100人を超える。海外の作品に関してもジョン・ウー、ミカ・カウリスマキ、アグニェシュカ・ホランドなど多数。




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