初めて踏み入れた戦場で青年は戦争を知る
古代中国の春秋戦国時代を題材とし、累計発行部数9000万部を突破した原泰久による大人気漫画「キングダム」。
2019年には原泰久自身も脚本に携わった実写映画『キングダム』(2019)が公開され、興行収入50億を達成するほどの大ヒットとなりました。
そして2022年、原作の5巻までを描いた前作から地続きとなる続編作品が遂に劇場で公開。
今回はシリーズ第2作となる『キングダム2 遥かなる大地へ』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
CONTENTS
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【監督】
佐藤信介
【脚本】
黒岩勉、原泰久
【キャスト】
山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、濱津隆之、真壁刀義、山本千尋、豊川悦司、高嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋努、渋川清彦、平山祐介、玉木宏、小澤征悦、佐藤浩市、大沢たかお
【作品概要】
2006年から「週刊ヤングジャンプ」で連載が開始された原泰久による漫画シリーズ「キングダム」の映像化作品第2弾。
『アイアムアヒーロー』(2016)や『いぬやしき』(2018)を手掛けた佐藤信介と、世界的なヒットを記録した配信ドラマ「今際の国のアリス」で佐藤信介とタッグを組んだ山崎賢人が引き続き続投し、清野菜名や岡山天音などの実力派俳優が本作から参加しました。
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』のあらすじとネタバレ
時は春秋戦国時代、秦王の嬴政の部屋に彼の命を狙う暗殺者が現れます。
追い込まれた嬴政を部屋に駆けつけた信と河了貂が救い、暗殺者は死の間際に伝説級の暗殺者「蚩尤」の存在を匂わせ命を落とします。
暗殺者が自身の部屋に来たことで嬴政は国内に反逆者がいることを確信しますが、直後に隣国である「魏」が国境を越え侵攻を始めたとの知らせが入ります。
知らせを聞いた信は河了貂を王都に残し、一兵卒として初めての戦場へ向かうことを宣言。
戦場への道中、五人一組を基軸とする「伍」を組むように命じられた信は同郷の尾平と尾到、誰とも絡もうとしない少年のような体型をした羌瘣、そして頼りない外見によって誰とも組むことの出来ない伍長の澤圭と共に伍を結成します。
その頃、魏の将軍・呉慶は秦の軍隊に対抗するために「蛇甘平原」の戦略的用地となる複数の丘に布陣し、秦軍を待ち構えていました。
呉慶と相対する形で兵を布陣した麃公は用地となる丘を奪取するため、丘を守る魏の副将宮元への突撃を歩兵隊に命じます。
魏に対し後手に回る秦軍は統率が乱れており、信の所属する伍は勝つ見込みすらない突撃を千人将の縛虎申に命じられましたが、一番に敵陣に飛び込んだ信の活躍により歩兵隊は勢いづき、敵の第一陣を撤退に追い込みます。
しかし、その直後に地響きと共に土煙の中から現れた「装甲戦車」が歩兵を次々と轢き殺し、歩兵隊は壊滅。
信の所属する伍や戦闘経験豊富な沛浪の率いる伍などの数十人のみが辛うじて生き残り助けを待つ現状でしたが、麃公は彼等を助ける援軍を出さずにただ戦況を見守るだけでした。
羌瘣の提案した死体を積み上げ防壁を作る策が成功し、一部の装甲戦車を撃破した信は尾平や沛浪を逃がすために自身を囮とします。
運命共同体であるはずの仲間ですら救う気のない羌瘣でしたが、逃げるよりも追っ手の撃退を選択し、信を上回る身体能力で次々と追っ手を殺害。
呼吸を乱し窮地に陥る羌瘣を庇った信は2人で崖を飛び降り、追っ手を巻くことに成功しました。
夜、戦いの最中に顔を覆っていた布が取れ、羌瘣が女性であることを知った信は彼女が戦場にいる理由を訪ねます。
羌瘣は暗殺者「蚩尤」となるために育てられた一族の人間であり、「蚩尤」の座を奪う争いの最中に姉を慕っていた人物を謀殺されたことを恨み、魏にいるとされる現在の「蚩尤」を殺害するために生きていました。
魏への道を知るために戦に参加した羌瘣は復讐が終わり次第の死を決意していましたが、同じように大切な人間を失った経験を持つ信に生きることを諭されるのでした。
戦場の膠着状態に痺れを切らした宮元は自身を守る兵士を除いた配下の兵士全軍での突撃を計画。
一方で事態を静観する麃公は生き残りの歩兵隊の存在に注視していました。
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』の感想と評価
1人では太刀打ちできない真の「戦場」
奴隷から成り上がるために幼馴染の漂と剣の鍛錬をし続けた信は、漂の死の敵を討つために秦王の弟・成蟜によるクーデターを嬴政と共に制します。
仲間となった河了貂や楊端和たちと王都を奪還した信でしたが、王都での戦いは人と人とが正面からぶつかり合う「個の力」が重要視される戦いでした。
しかし、第2作となる本作で描かれた「蛇甘平原の戦い」は信にとって初めてとなる「戦場」。
「装甲戦車」が集団となって攻めかかる集団戦法に「個の力」は通用することなく蹂躙され、信たちは死の淵に立たされることになります。
本作で信が覚えることになる「初陣での絶望と再起」は「装甲戦車」の恐怖を映像で伝えることの出来る実写だからこそ描けると言えるほどに鮮烈であり、鑑賞者は信と同じ絶望を味わうことが出来ます。
この戦いで信は「戦争」の何を知り、何のために戦うのか。
実写だからこそ描けるド迫力のスケールで「戦場」を描写した、完璧とも言える「蛇甘平原の戦い」の映像化作品でした。
前作よりさらに進化した俳優陣の華麗な殺陣
本作では前作同様にアクションシーンの多くの部分を山﨑賢人を始めとした俳優陣が演じています。
山崎賢人による殺陣は前作以上に荒く力強い信のイメージに沿ったものとなっており、乱戦となる「蛇甘平原の戦い」での泥臭い戦いを殺陣でも表現出来ていました。
そして本作での見どころはやはり、原作でもトップクラスの人気を誇るキャラクター・羌瘣の登場です。
羌瘣を演じた清野菜名は『TOKYO TRIBE』(2014)や『東京無国籍少女』(2015)で激しいアクションシーンを自身で演じ話題となった日本人俳優の中でもトップクラスのアクション俳優。
そんな清野菜名は羌瘣の持つ「力」ではなく「技術」で敵を制していく華麗さをキレのある殺陣で表現しており、原作ファンも納得の行く壮絶な戦いが楽しめる作品となっていました。
まとめ
この後、原作では本作で描かれる「蛇甘平原の戦い」で初陣を経験し大きく成長した信と、後に始皇帝として中国を統一する嬴政が更なる激戦へと身を投じて行くことになります。
新たな仲間との出会いと偉大な仲間たちとの別れが繰り返される、未来の平和のために「戦争」を重ねた人間たちの生きざまが描かれる「キングダム」。
服装や舞台、アクションや小道具などを拘り抜き、前作よりスケールアップした「戦場」を見事に描いてくれた『キングダム2 遥かなる大地へ』。
本作のエンドクレジットの後には『キングダム3』(2023)の予告が披露され、作中でも特に人気の高い「馬陽防衛戦」の映像化が確実視されました。
原作とアニメ、そして実写映画などさまざまなメディアで広がっていく「キングダム」の世界からはまだまだ目を離すことが出来ません。