映画『カモン カモン』は2022年4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショー!
NYでひとり生活するラジオジャーナリストのジョニーは、LAに住む妹から頼まれて、9歳の甥ジェシーの世話をすることに。しかし、突然始まった共同生活は戸惑いの連続でした……。
映画『カモン カモン』は、ぶつかりながらも歩み寄ろうとする叔父と甥の想定外の日々が愛おしさに変わるまでを描く感動のヒューマンドラマです。
『ムーンライト』『レディ・バード』『ミッドサマー』など、数々の話題作を生み出してきた気鋭の映画会社「A24」が製作した本作。
主演は、『JOKER/ジョーカー』で一躍その卓越した演技力を評価されたホアキン・フェニックスです。
映画『カモン カモン』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
C’mon C’mon
【監督・脚本】
マイク・ミルズ
【キャスト】
アキン・フェニックス、ウディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、モリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト
【作品概要】
監督・脚本は『人生はビギナーズ』『20センチュリーウーマン』など身近にいる大切な人をテーマに描き続けるマイク・ミルズ。
ミルズを反映させたジョニーを演じるのはホアキン・フェニックス。子供に振り回されるキャラクターを軽やかに演じて、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『JOKER/ジョーカー』の狂気のイメージを180度覆しました。
撮影監督は、ヨルゴス・ランティモス監督の『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞撮影賞にノミネートされたロビー・ライアン。モノクロの映像で現実世界と寓話を見事に調和させています。またサウンドトラックには、ミルズ監督が短編映画を手掛けたこともある人気ロックバンド「ザ・ナショナル」のアーロン・デスナーとブライス・デスナーが参加しました。
本作は2021年のナショナル・ボード・オブ・レビュー賞においてインディペンデント映画トップ10に選ばれた他、タイム誌やヴァニティ・フェア誌の有力誌がこぞって年間TOP10映画に選出。アメリカのオバマ元大統領が選んだベストムービーにも選ばれています。
映画『カモン カモン』のあらすじ
NYでラジオジャーナリストとして1人で暮らすジョニー(アキン・フェニックス)は、妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)から頼まれ、9歳の甥・ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を数日間みることに。
LAの妹の家で突然始まった共同生活は、戸惑いの連続。
好奇心旺盛なジェシーは、ジョニーのぎこちない兄妹関係やいまだ独身でいる理由、自分の父親の病気に関する疑問をストレートに投げかけ、ジョニーを困らせる一方で、ジョニーの仕事や録音機材に興味を示し、二人は次第に距離を縮めていく。
仕事のためNYに戻ることになったジョニーは、ジェシーを連れて行くことを決めるが……。
映画『カモン カモン』の感想と評価
着想のきっかけは監督自身の子育て経験
マイク・ミルズ監督は本作について「自身の子どもをお風呂にいれている時に着想を得た」と語っています。ミルズ監督はこれまでにも自身の体験を基に、『人生はビギナーズ』(2010)で父と子の関係を描き、続く『20センチュリー・ウーマン』(2016)では自身の母親との関係が物語のベースになっていますから、『カモン カモン』を撮ったことで「家族の三部作」が完成したといっても過言ではないでしょう。
ジョニーは妹ヴィヴに頼まれて、9歳の甥ジェシーをしばらく預かります。ただジョニーとヴィヴはしばらく疎遠になっていたこともあり、ユニークな性格のジェシーに戸惑いを見せました。
そこで会話を重ねたり、ジェシーにインタビューの録音機材を使わせたりして、ジョニーは距離を縮めようとします。多くの子どもは、「大人扱い」を喜ぶもの。ジョニーはシングルとはいえ、子どもたちにインタビューする仕事をしているので、子どもとの接し方を心得ているのが伝わってきました。
ヴィヴはトラブルを抱えた別居中の夫ポールの手助けをするためオークランドに行ったのですが、ポールの状況が芳しくなく、オークランド滞在を延ばすことに。しかし仕事のスケジュールが控えていたジョニーは、ジェシーを連れてニューヨークのアパートに戻り、子どもたちへのインタビューにも同行させます。
しかし、ジェシーはしっかりしているように見えても、まだ9歳。大人には思いもかけぬ行動をすることもあります。やがて「ホッキョクグマの親子」の例をはじめ、ジェシーが聡明であるがゆえに、そして「子ども」であるがゆえに抱える大きな不安とジョニーは向き合うことになります。
振り回されるジョニーの姿には、監督の経験が反映されているのがうかがわれます。また、主人公を「父親」ではなく「叔父」にしたことで、子どもという制御し難い存在にいきなり接したことになり、戸惑いがより強く感じられるようになりました。
子育てを通じて「人との繋がり」を見つめ直す
ジョニーとヴィヴの兄妹が疎遠になったのも、「親子」という関係性が深く関わっています。
「親子」としてどう向き合えばよかったのか……異性同士/同性同士の親子の関係性の違い、そしてそれぞれが接し続けてきた現実の違いも相まって、兄妹はかつて感情の衝突を起こしてしまったのです。
ジョニーはジェシーと接する中で、久方ぶりに再会した妹ヴィヴの「母親」としての姿を徐々に知ってゆき、妹に対する認識に変化が生じてきます。
劇中でのジョニーはジェシーの状況を伝えるため、ヴィヴと何度も電話やメールで連絡を取り合います。ジョニーが子どもの世話をすることに難しさを知ったことを伝えると、ヴィヴも自身の子育ての不安や愚痴を語ります。その内容は子育て経験者なら「あるある」のことばかり。ミルズ監督もパートナーであるミランダ・ジュライから聞いたのではないかと想像が膨らみます。
ジェシーもまた、自分のことをあまり語りたがらないジョニーに「なぜ独身なのか」「なぜママ(ヴィヴ)と疎遠なのか」と遠慮なく質問を投げかけます。子どもにとって「家族」は最初に育む人間関係。興味を持つのも当然です。
家族の問題から目を逸らしてきたジョニーは、ジェシーの問いという「声」を通じて問題へ真摯に向き合おうとします。そして自分にとって大切な人は誰なのか、その人とどうしたいのかを考え、人間関係を見直そうとしていきます。そうした物語の展開もまた、ミルズ監督自身の経験が反映されているのでしょう。
まとめ
独り者の叔父が甥を預かることで子育ての厳しさを知るとともに、その先に絆が結ばれていく喜びを描いた映画『カモン カモン』。
しかし、その絆は子どもとの間に育まれるものではありません。ヴィヴはジョニーを頼り、ジョニーもインタビューのときは仕事仲間にジェシーの世話を任せました。そこにも信頼という絆が存在するのです。
子育ては想定外のことも多く、一人で抱え込んだら大変です。時には誰かに頼ることも必要。そうすることで、信頼できる人間関係が育まれていくこともこの作品は伝えています。
映画『カモン カモン』は2022年4月22日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国ロードショーです。