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映画『私を殺さないで』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。ゾンビホラーの異色作として少女の自立を描き出す|Netflix映画おすすめ88

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第88回

映像配信サービスの普及によって、世界中の最新映画が映画館やDVDよりも早く日本で楽しむことが出来るようになりました。

そんな映像配信サービスの中でも特に世界の多種多様な映画を配信する「Netflix」。

今回は「Netflix」で独占配信された異質すぎる新感覚ゾンビホラー映画『私を殺さないで』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

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映画『私を殺さないで』の作品情報

【配信】
2022年(イタリア映画)

【原題】
Non mi uccidere

【監督】
アンドレア・デ・シーカ

【脚本】
アンドレア・デ・シーカ、ジャンニ・ロモーニ

【キャスト】
アリーチェ・パガーニ、ロッコ・ファサーノ、シルヴィア・カルデローニ、ファブリツィオ・オフェラケーン、セルジオ・アルベリック、ジャコモ・フェラーラ、アニータ・カプリオーリ、フェデリコ・イエラピ、エスター・エリシャ

【作品概要】
キアラ・パラツォーロによる小説『Non mi uccidere』を、数々のドラマを手掛けたアンドレア・デ・シーカが映像化した作品。

主演を務めたのは実際の買春事件を基にしたドラマシリーズ「Baby/ベイビー」でメインキャストを演じ、後に『LORO 欲望のイタリア』(2019)などに出演したアリーチェ・パガーニ。

映画『私を殺さないで』のあらすじとネタバレ


Netflix「私を殺さないで」

山道を目を瞑って運転手するスリル好きなロビン。

ガールフレンドであるミルタは親が堅物であり、不良チームに所属するロビンとの交際は認めていませんでしたが、彼女は家を抜け出し、ロビンと2人の時間を過ごしていました。

度が過ぎた暴走に怒ったミルタが車を停めると、ロビンは眼から注入する方式で利用する麻薬を準備し始めます。

ミルタは麻薬の経験がなくロビンも彼女には勧めませんでしたが、ミルタはこれを最後することを条件に一緒に使うことにしました。

危険の多い麻薬であり、ロビンとミルタは事前に「死んでも蘇り、一緒にいる」と誓い、麻薬を眼に注入。

その後、2人は息を引き取り遺体安置所に置かれ、そのまま埋葬されてしまいます。

しかし、突然ミルタだけが息を吹き返すと墓を抜け出し、ロビンの死を知り泣き崩れます。

家へと戻ったミルタは母のアマリアと再会しますが、自身の身体が異様に冷たいことと、父のピエロに見つかることを恐れ森へと逃走。

森を彷徨うミルタは自身が捜索されていることに気づき、人目につかないように逃げ惑います。

逃走の中で身体が黒ずみ壊死が進行していることを自覚するミルタ。

一方、ピエロは「ベナンダンディ」と呼ばれる秘密組織からの接触を受け、ミルタが蘇ったことやミルタは既に人間ではないことを知らされます。

ロビンと初めて会ったダイナーに逃げ込んだミルタは建築士のマリオのナンパにのり彼の家へとついていきますが、性行為を要求されると衝動的にマリオの首筋に噛みつき殺害してしまいます。

翌日、マリオの死体が発見されるとミルタは一人暮らしをしていた自身の家に帰ります。

しかし、その場にピエロとその浮気相手であるスージーが現れ、ミルタはまたも衝動的にスージーを噛み殺してしまいました。

すると家を見張っていた「ベナンダンディ」の人間がその場に複数人現れ、消音器付きの拳銃でミルタに発砲。

ピエロはミルタを庇おうとして彼等に射殺され、ミルタは何発かを受けたものの窓から飛び出し、助けにきた女性のバイクに乗り逃げ延びます。

女性はサラと名乗るとミルタと同じく「復活者」であると言い、「ベナンダンディ」は「復活者」を狩るために結成された組織であると話しました。

人を喰らうことで壊死を止めることが出来ると教わったミルタは、性犯罪者などを襲い喰らうサラと行動を共にしますが、同じ死に方であっても生き返ることのできない人間がいるとロビンの復活を否定されたことから、彼女のもとから去ることにしました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『私を殺さないで』のネタバレ・結末の記載がございます。『私を殺さないで』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

サラと別れたミルタは、ロビンの親友のアーゴの家に身を寄せます。

自身が人肉を喰らう怪物となったことを知りながらもミルタを受け入れるアーゴは、かつてロビンの親友パウロが「復活者」に殺されたことやその頃からロビンの様子が変わったことを話します。

アーゴはミルタへの恋心を伝え関係を求め、ミルタは一時は受け入れようとしますが、徐々に衝動が抑えられなくなりアーゴに襲いかかりそうになってしまいます。

その様子を見たアーゴは自分も蘇ることを信じカッターで首を切り自殺しますが、蘇ることはありませんでした。

我に返ったミルタはアーゴの死に絶望しロビンの墓へと戻ると待ち構えていた「ベナンダンディ」に捕獲されます。

拘束された状態で目を覚ましたミルタは、「ベナンダンディ」の指揮を行うルカから「復活者」でありながら「ベナンダンディ」に加わった男として紹介されたロビンと再会。

ロビンはパウロの仇を打つために「ベナンダンディ」に加わってはいましたが、ミルタのことを愛していることも事実であり「ベナンダンディ」へミルタを加入させ、ルカの捕縛から解放します。

2人は再び愛を確かめ合いますが、ロビンがミルタをわざと麻薬を使い死亡させ「復活者」として蘇らせたと知ったミルタは、心が揺らぎ始めます。

その頃、ロビンによって捕縛されていたサラはルカから執拗な拷問を受けていました。

サラの声を聞いたミルタはロビンのもとを抜け出してルカを襲いサラを救出すると、「ベナンダンディ」の構成員を次々と殺害。

脱出間近となった際に異常を察したロビンが現れ、ミルタを拘束しようとします。

「蘇って一緒にいる」と言う約束を果たしたと主張するロビンに対し、ミルタは「もうあの時の自分では無くなってしまった」と言うとロビンを跳ね除け、サラと共に車で逃げていきました。

失意に暮れるミルタに「生きていく方法を学ばなくてはいけない」とサラは言うと、「ベナンダンディ」との戦いを生き抜いたミルタは「そんなに難しいことじゃない」と呟きました。

映画『私を殺さないで』の感想と評価

ゾンビ視点で描かれる愛と自立の物語

主人公のミルタが一度死亡しながらも復活を遂げ、人を喰らわなければ身体が壊死するゾンビとなってしまう物語が展開される本作。

『ウォーム・ボディーズ』(2013)のような、いわゆるゾンビ視点の主人公を描いた本作には「庇護される存在だったミルタの自立」がテーマとして存在していました。

娘の交際相手ですら決めようとする過保護な両親と、親の不在によって破滅的に生きながらもミルタのことを一途に愛するロビンに庇護されるミルタ。

しかし、一度死亡しゾンビとなったことでこれまでの日常が崩壊したミルタは、自分の内にある暴力的な衝動に脅かされると同時に自分自身の「弱さ」を払拭していきます。

本作は一度死んだことで「別人」となったミルタが、ただただ守られる存在から変わっていく様子が丁寧に描写される新感覚のゾンビ映画でした。

蘇った人間を追い詰める「正義の組織」

作中で「復活者」と呼ばれるミルタたちは「ベナンダンディ」と呼ばれる組織に命を狙われます。

「善き歩行者」と言う意味を持つ「ベナンダンディ」は、世間に知られることなく秘密裏に「復活者」を捕縛していきます。

関係者や目撃者すらも殺害し隠滅する彼らの組織は残虐非道に見える一方で、「復活者」のサラは生きた人を喰らう自分たちこそが悪いと言いきっています。

異物を問答無用で始末する「ベナンダンディ」と生きるために人を喰らう「復活者」。

正義の答えが存在しない、生きるための壮絶な殺し合いの展開される本作は、正義の意味を改めて考えさせてくれます。

まとめ

主演のアリーチェ・パガーニが歌う主題歌と併せて、2021年のナストロ・ダルジェント賞において高い評価を受けた本作。

ゾンビ映画と謳われながらも、その内容は望んだわけではない第2の人生を迎えることとなった少女の愛と自立を描く、バイオレンスなヒューマン映画となっていました。

状況が目まぐるしく変わり、先を一切読ませない新感覚の映画『私を殺さないで』は、ゾンビ映画を見飽きたと言う人にこそ観て欲しい作品です。

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