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『キラー・セラピー』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。サイコパス映画は殺人鬼によりスラッシャー・ホラーの愛に満ちる|未体験ゾーンの映画たち2022見破録9

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」第9回

映画ファン待望の毎年恒例の祭典として、通算第11回目を数える、“傑作・珍作に怪作”、そしてサイコスリラーなど様々な映画を上映する「未体験ゾーンの映画たち2022」。

2022年も全27作品を見破して紹介、古今東西から集結した映画を応援させていただきます。

連載コラム第9回で紹介するのは、サイコパス殺人鬼の誕生を描くサスペンス映画『キラー・セラピー』

少年は誕生した時から凶暴性を秘めていたのか、それとも家庭環境が彼に悪しき影響を与えたのか。

問題行動を起こした彼は、病院でセラピーを受けることになりました。しかしこの治療こそが、少年を恐るべき殺人鬼に変貌させたのです…。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら

映画『キラー・セラピー』の作品情報


(C)2018 Rellik Pictures, LLC All Rights Reserved

【日本公開】
2022年(アメリカ映画)

【原題】
Killer Therapy

【監督・脚本・製作】
バリー・ジェイ

【キャスト】
エリザベス・キーナー、トム・マシューズ、マイケル・ケリキ、ジョナサン・タイソール、ダエグ・フェアーク、P・J・ソールズ、エイドリアン・キング

【作品概要】
家庭環境の変化、そして秘密のセラピー…。少年を殺人鬼に変貌させた過程と彼の凶行を描いた、殺戮のサスペンス・スリラー映画。

『選ばれし者』(2015)・『ペイシェント・セブン』(2016)の脚本を書き、『Ashes』(2018)を監督したバリー・ジェイが誕生させた作品です。

主演は本作がデビュー作のマイケル・ケリキ。共演にキャサリン・キーナーの妹で『Ashes』、ドラマ『クリスマス・フロー』(2021~)のエリザベス・キーナー。

『バタリアン』(1985)・『13日の金曜日PART6 ジェイソンは生きていた!』(1986)のトム・マシューズに、『キャリー』(1976)・『ハロウィン』(1978)に出演したP・J・ソールズ。

ロブ・ゾンビ監督の『ハロウィン』(2007)で殺人鬼、マイケル・マイヤーズの少年時代を演じたダエグ・フェアーク、『13日の金曜日』(1980)・『バタフライルーム』(2012)のエイドリアン・キングらが出演した作品です。

映画『キラー・セラピー』のあらすじとネタバレ


(C)2018 Rellik Pictures, LLC All Rights Reserved

その日はラングストン家が、孤児のオーブリーを養女に迎える日でした。自転車を組み立てる母デビー(エリザベス・キーナー)に、息子のブライアン(ジョナサン・タイソール)は態度を露わにして不満を漏らします。

オーブリーには家庭が必要だとなだめても、少年は納得しません。父は自分より養女を愛するのでは、と不安を口にするブライアン。

そんな息子をデビーは優しく、あなたは私の小さく善良なモンスターと呼び、妹を好きになるよう努力してと言い聞かせました。

父のジョン(トム・マシューズ)が幼いオーブリーを連れて来ました。遠慮がちに挨拶するオーブリーに、硬い表情のブライアンは父に催促され、ようやく返事をします。

その夜、おやすみと声をかけたオーブリーに、ブライアンは返事が出来ません。母に促されようやく応えますが、そんな息子をデビーは心から愛していました。

新しい兄の態度にオーブリーは、ブライアンは私を嫌っていると不安を口にします。兄はあなたを嫌っていない、ただ馴染むのに時間がかかるだけだ、と言い聞かせるデビー。

そんな娘に彼女は、自分が持っていたぬいぐるみを与えます。母と新しい妹の姿を、ブライアンは密かに見つめていました。

4人になった家族全員で食卓を囲むラングストン家。しかし食事に手を付けないブライアンに、父親のジョンは食べるようきつく命じます。

学校のことを聞いた母に口答えし、オーブリーに冷たい態度を見せるブライアンに、テーブルを叩いて怒り出すジョン。

声を荒げる夫をデビーはなだめますが、息子は感情をコントロールできない、君もセラピストなら何とかしろ、とジョンは言いました。

寝室で父は僕よりオーブリーを愛している、と嘆く息子に新しい家族を受け入れる事を学びなさい、ママのためにそうして欲しい、とデビーは言い聞かせます。

そんな母に抱き付き泣き出したブライアン。息子をなだめるデビーの姿を、オーブリーは静かに見つめていました。

その日、デビーは自宅でセラピストとして少年にアドバイスしていました。同じ時、庭で絵を描いていたオーブリーに、ブライアンは声をかけます。

妹の絵にケチを付けたブライアンは、母が彼女に与えたヌイグルミを奪い引きちぎります。少年に父に本音を話せと諭していた時、オーブリーの悲鳴を聞き驚くデビー。

娘は腕から血を流していました。オーブリーはブライアンに噛まれたと訴えますが、息子は彼女が先に叩いたのだと叫びます。

その夜、事件のてん末を知ったジョンは、妻に娘を施設に返すべきだろうか、と呟きます。オーブリーは壊れたトースターではない、もう家族の一員だとデビーは夫に告げました。

ジョンは妻が息子を甘やかしていると考えていました。一方のデビーはブライアンの心に募る怒りの感情は、どこから来たのか考えるべきだ、と夫に訴えます。

息子が罰で尻を打たれても自業自得だと言う夫に、デビーは激しく反発します。自分の発言を謝ったものの、息子への接し方が判らないと弱音を漏らすジョン。

夫に理解を示し、それでも息子には父親が必要だ、とデビーは言い聞かせます。夫婦は皆が家族として問題を乗り越えようと確認します。

夫婦はブライアンを、精神科医のケラー博士の元に連れていきます。夫は半信半疑のようですが、デビーは博士は実績ある小児の精神科医だと信頼していました。

現れた博士は夫婦を待たせて、ブライアンと2人だけで診察を行います。君を助けたい、そのために友達になりたいとささやくケラー博士。

必ず君を助けるが、友達には秘密があってはならないと言って、博士は部屋の鍵を締めます。そしてケラーは少年に迫りました。

自分たちのセラピーは秘密にしないと効果がない、誰にも言ってはならないと告げ、ケラー博士は診察室からブライアンを送り出します。

しばらくは週2回セラピーが必要だ、2人の体が接触することも治療の一部だと言い聞かせる博士。

ラングストン夫婦の信頼の陰で、ブライアンに不快で残酷なストレスを与える、”秘密のセラピー”が続けられます。そしてある日、オーブリーの寝室に現れたブライアンは自分の過去の行為を謝罪しました。

妹にどうして私を嫌うの、と聞かれてもブライアンは何も答えず立ち去って行きます。

その日はブライアンの13歳の誕生日で、デビーは息子のためにパーティーを開きます。しかし友人の少ないブライアンのために集まる者はいません。

デビーの友人グロリアが訪ねてきましたが、彼女にカメラを向けられたブライアンは激しく拒絶します。息子は写真を撮られるのが苦手だ、と詫びるデビー。

その場を逃げたブライアンは、絵を描いているオーブリーの側に現れます。すると木に登ったグロリアの息子ネイサンが、彼女にパチンコ(スリングショット)を発射します。

命中し悲鳴を上げるオーブリー。彼が嫌がらせをするのかと問う兄に相手にするなと言いますが、また命中させられた彼女は母親に言いつけに行きました。

ブライアンは木に登ってネイサンに注意します。しかしお前は変わり者の吸血鬼だ、と反発し掴みかかってきたネイサン。

その手に噛みつくブライアン。はずみで転落したネイサンは打ち所が悪く死亡します。母と妹が呆然とし、グロリアが悲鳴を上げる中、ブライアンは冷たい表情をしていました。

補導されたブライアンを、裁判所に任命されたルイス博士(P・J・ソールズ)が精神鑑定します。原因を求めブライアン、そしてラングストン家の人々を追求するルイス博士。

厳しい調査が続き、ブライアンは緊張に耐えられず叫びます。博士は彼を双極性障害でソシオパス(社会病質者)的傾向があると診断しました。

彼には監督が必要で、私の施設で保護し治療することを裁判所に提案する、と両親に告げた博士。

母デビーはあれは殺人ではなく事故だ、と訴えます。しかし博士はブライアンを、自分の怒りをコントロールできない障害があり、他者への共感に欠ける善悪の区別がつかぬ人間だと告げました…。

それから6年の月日が流れました。青年になったブライアン(マイケル・ケリキ)と面談したルイス博士は、彼の社会復帰を許可します。

ラングストン家ではデビーとオーブリーが、彼を迎える準備をしていました。オーブリーは不満を感じているようですが、母は息子は治療で「変わったと信じていました。

施設から出る事に不安を感じるブライアンに、博士は教えたように自分の気持ちを他人に話し、自分が望むことを他人にしなさいと諭します。

しかしオーブリーは母の願いにも関わらず、兄の帰宅を望まぬ様子です。ブライアンも人院中に一度も訪ねて来なかったいもうとと、上手く付き合う自信がありません。

ルイス博士は、あなたなら上手く元気にやっていけると告げ、ブライアンを送り出しました。

父に連れられ帰宅したブライアンをデビーは抱きしめましたが、耐えられず家から飛び出すオーブリー。

ブライアンは母と共にドライブに出かけます。何かと気遣い話しかけるデビーに、自分がいるのになぜオーブリーを養子にしたのか、と訴えるブライアン。

デビーは彼女は妹で、家族の一員だと言い聞かせますが、それは彼に耐えがたい言葉でした。母の声、車内に流れる音楽…苦しんだブライアンは、衝動に駆られ運転中の母を突き飛ばしました。

運転を誤った車は事故を起こします。意識を取り戻したブライアンの隣で、デビーはうめき声を上げています。

オーブリーに優しく接する母の記憶が甦り、彼は怒りにまかせてシートベルトで母の首を締めました。

やがて、我に返ったブライアンは、母を車から出し助けを求めて叫びます。しかし、もう反応を示さないデビー。

一件は事故として処理されます。ハイスクールに通うブライアンは生活に馴染めず、スクールカウンセラーのパーキンス(エイドリアン・キング)と面談しました。

学校でも家庭でも上手くいかず、自分には自殺願望もあると訴えた彼に、パーキンスは前向きに生活する第一歩だと告げ、日記帳を渡します。

自分の感情を表現する安全な場所で、誰も読むことは無い。必要な期間だけ書けば良い。私は本当にあなたを心配しているとのカウンセラーの言葉を聞いて、日記を受け取ったブライアン。

学校で日記をつけているブライアンは、オーブリーと共にいる男女を見つめます。それに気付いた男子生徒のブレイク(ダエグ・フェアーク)がやって来ます。

彼を変人と呼んだブレイクは、自分のガールフレンドのリズを見つめたと因縁をつけ、彼のポットを奪って飲みました。

挑発したブレイクは去って行きます。続いてオーブリーが現れ、私の友人リズには恋人がいる、ストーカーじみた行為はやめて欲しいと訴えます。

否定するブライアンに5秒間だけでいいから、まともになれないのかと叫ぶオーブリー。

自宅でクラリネットを練習していたブライアンに、帰宅した父ジョンは家を片付けろと命じます。

オーディションが近く練習が必要だ、妹にも家事を手伝わせてくれと彼は訴えますが、オーブリーは進学費用のため働いていると、聞く耳を持たない父親。

ジョンに高圧的に迫られ、練習を断念するブライアン。結局学校でリズも受けたオーディションに落とされます。

ある日スマホで、ブレイクと一緒にいたリズを撮影したブライアンは、ブレイクに気付かれて追いかけられます。

ブレイクはブライアンを捕まえると暴力を振るい、彼の日記を奪うとリズへの思いを記した部分を読んで怒ります。罵倒すると日記を持って立ち去るブレイク。

打ちのめされたブライアンは、カウンセラーのパーキンスに日記を奪われたと訴えます。

取り乱してわめくブライアンを、パーキンスは落ち着かせようとします。カウンセリングなど役に立たない、と叫び暴れるブライアンにパーキンスも態度を荒げます。

自宅に帰ったブライアンは、自分のポットに何か薬を入れていました。そこに父が現れました。

パーキンスから連絡を受けた父は、息子を厳しく叱りつけます。母の死もお前が原因だ、と言い放つジョン。

その言葉を聞いたブライアンは思い詰め、恨みに満ちた表情になります…。

以下、『キラー・セラピー』のネタバレ・結末の記載がございます。『キラー・セラピー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 Rellik Pictures, LLC All Rights Reserved

その日、ブライアンはグラウンドに1人でいたブレイクを挑発し、後を追わせて林の中に誘い出します。

そしてノートを返して欲しい、代わりにポットに詰めたビールを飲ませる、とブレイクに持ちかけました。

応じる気の無いブレイクは、ポットを奪い取りビールを飲み干します。たちまち足元がふらつき出すブレイク。

何か飲まされたと身の危険を察し、彼はブライアンに謝ります。しかしブライアンは用意したロープを取り出し、彼の首にかけました。

ロープを枝にかけブレイクを吊るしたブライアン。やがてブレイクは動かなくなります。

その夜スマホに保存されたリズの写真を眺めていたブライアンは、殺害現場にポットのフタを忘れたと気付きました。

慌てて現場に戻り、フタを回収したブライアン。そこでお前は病的だ、自殺した方が良いと迫るブレイクを目撃します。それは自責の念が見せた妄想でしょうか、それとも狂気が生んだ幻覚でしょうか。

今度はスマホを落してしまい、慌てて捜し始めるブライアン。疲れ果て眠ってしまい、目覚めて急いで家に戻ります。

翌日も彼はいつも通り登校します。そこでブレイクの死を告げられ動揺するリズを目撃したブライアン。

彼女の脇にいた妹オーブリーが、あなたが殺したに違いないと皆の前で叫びます。そしてブライアンは警備員に校長室に連れて行かれました。

そこには父のジョン、ブレイクの母、そしてスクールカウンセラーのパーキンスもいました。ブライアンの日記はブレイクのロッカーから発見されました。彼にいじめられ、日記も奪われたとブライアンは説明します。

彼は昨晩のアリバイが追及されます。日記の内容からブレイクを殺害したと疑われたのです。パーキンスが自分との約束を破り、秘密の日記を読んだと抗議するブライアン。

警察が来るまで拘束される事になった彼は、警備員の腕に噛みつき逃げ出します。

しかし廊下で倒れて泣き出すブライアン。幻覚に現れたブレイクにお前がノートを奪ったからだ、と叫びます。しかしブレイクは彼を大声で嘲笑し続けていました。

気付くとブライアンはベットに縛り付けられています。矯正施設に入れられた彼の前に、ハイランド博士と名乗る人物が現れます。

怯えるブライアンに、これから暴露療法(エクスポージャー療法。患者の恐怖の原因に直面させ、克服させる治療法)を行うと言うハイランド博士。

博士は彼にカメラを向け撮影すると、次は電気ショックを与えます。叫ぶブライアンに構わず、治療は繰り返されました。

疲れ切りベットに入ったブライアンは、自分を撮影した写真を見せられ彼は泣き崩れます。

それから何年経ったのでしょうか。博士は彼に家に帰りたいか尋ねます。まだ少し不安だ、と答えたブライアン。

君はもう自分に対処可能だ、信じなさい。そして父を手助けすれば関係も良くなる。そう告げてハイランド博士は彼を退所させます。

彼が家に戻ると、ジョンは床に倒れています。父は病の影響で、体が不自由で口も利けない状態で生活を送っていました。

食料を買い出しにスーパーに行ったブライアンは、リズと偶然再会します。彼女はブライアンに気付きません。

魚を食べる以外はベジタリアン生活だと言うリズに、自分もペスカタリアン(魚介類は食べる菜食主義者)と話すブライアン。

軽く話し別れようとしたリズに、彼は菜食主義のレストランに行かないかと誘います。承知し名を名乗るリズに、自分はディランだと偽名を告げます。

彼女に以前会ったことがあるかと聞かれ、否定したブライアンは明日の待ち合わせ時間を決めました。

帰宅したブライアンは身動きできない父の前で、亡き母のアクセサリーを漁ります。金が必要だ、これを質に入れると告げたブライアン。

ジョンは不自由な体でベットから起き上がり、電話をかけようとして倒れます。電話線を外したブライアンはこれからデートだと言い、昔自分の誕生パーティーに忙しくて現れなかった父を責め立てます。

そのまま父を放置すると彼はレストランに向かいます。やがて現れ遅れたと詫びるリズ。

連絡したかったが、ブライアンが電話を持っていなくて困ったと話すリズに、今は電話も職も無いと彼は打ち明けます。

冗談めかして刑務所にいたのかと彼女が尋ねると認め、実は刑務所でなく病院にいたと話すブライアン。

彼は気を許したリズと食事を共にします。話題は高校時代の話になると、彼はリズと同じ高校だと打ち明けます。

高校時代にいじめっ子に日記を奪われた。その話を聞いたリズは、目の前のディランと名乗った男は、ブライアンだと気付きました。

驚いた彼女は席を立ち、あなたは異常だと非難します。誰もがブレイクを殺したと知っている、触らないでと叫び立ち去るリズ。

残されたブライアンはかつて両親や精神科医、そしてセラピストの言葉を思い出し苛立ちます。そして我に返って店を後にしました。

人気の無い路地でリズに追いつくと、説明させて欲しいとブライアンは訴えますが、彼女は警察を呼ぶと叫びます。

思わず首を掴み、彼女の頭を強く壁に叩きつけるブライアン。我に返り絶命した彼女に呼びかけます。

自宅に戻ると床に倒れたままのジョンに、なぜ自分を精神科医に委ねた、おかげで自分はこのざまだと叫び、父の体を蹴るブライアン。

その頃ルイス博士は、子供たちの心をケアしてきた成果を講演していました。

ブライアンは顔にメイクすると、運んできたリズの遺体に、奴らを自業自得の目に遭わせてやると告げます。

彼は自分を苦しめた精神科医に復讐を開始します。駐車場にいたルイス博士を襲い助手に阻止され、その腕に噛みつきました。

反撃で首を締められますが、立ち上がったブライアンは助手に切りつけ逃亡します。

バットで殴って拉致したハイランド博士に、暴露療法を体験させると告げ。電気ショックを与えるブライアン。

家族の相談に訪れたと装いケラー博士に近づくと、彼は正体を明かして襲いかかり、過去の行為を責めて博士の首を喰いちぎります。

ラングストン家に帰ってきたオーブリーは、暗く異様な雰囲気の室内に驚きます。父を呼んでも反応はありません。

そこにブライアンが現れます。不気味なメイク姿で明るく話しかける兄に不安を覚え、父に会いたいと訴えるオーブリー。彼は妹を父の部屋に案内します。

ベットの上の父は死んでいました。あなたが殺したと兄に迫るも突き倒されるオーブリー。

ナイフを持って迫るブライアンに、妹はなぜ私を嫌うのかと訴えます。父は自分よりお前を愛した、彼はそう告げました。

あなたには助けが必要だ、と言う妹の腹部にナイフを突き立てたブライアン。お前が俺の人生を壊したと叫びますが、オーブリーはナイフを抜き兄を刺します。

ヨロヨロと部屋を出るブライアン。後を追ったオーブリーは力尽き座り込みます。その彼女にナイフを振り下ろすと、お前は妹ではないと言い捨てたブライアン。

ルイス博士は駆け付けた警官に保護されていました。同じ頃、自宅にいたスクールカウンセラーのパーキンスは、物音に気付きました。

彼女は飼い猫の仕業かと思いました。しかし、彼女の前にブライアンが現れます。

「これから起きる事は、間違いなく日記に書く必要があるなぁ…」。ブライアンの声が響きます。

映画『キラー・セラピー』の感想と評価


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家庭内の様々な問題、精神科医の信頼を裏切る行為、そして彼らの不適切な判断・治療が少年を殺人鬼に変える『キラー・セラピー』

かなり重いテーマを扱った作品ですが、問題のブライアン君の凶行の原動力は、狂気よりも復讐心のように思われる展開。そして最後は怒涛のお仕置きタイムに突入。

そのパワーに圧倒される一方、いま一つ共感を得るキャラクターになり損ねた感があります。少年期の環境や精神医療への問題提起を期待した人は、少々物足りなく感じるかもしれません。

その一方でこれでもか!という程のホラー映画人脈の俳優が出演した本作。実ににホラー映画に対する愛を感じさせられました。

サイコキラー映画、というよりスラッシャー映画に近い雰囲気を持つ本作。振り返ればホラー映画出演俳優陣も、スラッシャー系の作品に出演した方ばかりです。

本作の脚本を自ら書き、製作・監督を務めたバリー・ジェイとはどんな人物なのでしょうか。

フィットネスクラブから誕生した!?


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様々な人物が活躍するハリウッドでも、バリー・ジェイは異色の人物かもしれません。

子供時代はニューヨークに住んでいたバリー・ジェイ。彼は当時から熱心なホラーファンで、8㎜カメラで映画を作っていたと振り返っています。

NYで演劇活動を始め、独学でピアノと作曲を学んだ彼ですが、やがて俳優には向いていないと悟り、80年代前半の20代の頃にロサンゼルスに移って、作詞作曲活動を始めました。

それも成功を収めず他の仕事に就いていた時に、フィットネスの魅力に取りつかれたバリー・ジェイ。

やがてフィットネスのトレーナーとなった彼は、人気インストラクターとなり、友人と共にフィットネスクラブ、Barry’s(Barry’s Bootcamp)を立ち上げます。

このクラブは評判になり、執筆時で世界14か国に50以上のクラブを持つ成功を収めました。しかし彼のハートに潜む、ホラー映画への愛情は消えていません。やがて彼はホラー映画の脚本を書こうと考えます。

そしてフットネスクラブのクライアントには、映画プロデューサーでタレントマネージャのリチャード・アールックら、業界関係者がいました。

彼らのアドバイスを得たバリー・ジェイは脚本を書き始め、時には1日に8時間執筆した、と語っています。そしてベン・ジェホシュアが、共に脚本を書こうと申し出ます。

そして完成した脚本をベン・ジェホシュアが監督した、2015年のホラー映画『選ばれし者』が彼の脚本デビュー作となりました。

翌年完成した『ペイシェント・セブン』の脚本にも参加した彼は、次の脚本作『Ashes』を自ら監督します。こうして異色の経歴を持つバリー・ジェイは、遅咲きの映画監督デビューを果たします。

往年のスラッシャー映画への熱い想い


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年齢の高い、ホラー映画ファンの新人監督の作品と聞けば、トム・マシューズやP・J・ソールズ、エイドリアン・キングら懐かしい顔触れの起用も納得であり、微笑ましくも感じられます。

そして本作の編集のスティン・ファインもまた、彼のフットネスクラブのクライアントの1人。この映画は名実共に、フィットネスクラブが生んだ作品と呼んで良いでしょう。

念願のホラー映画を監督したバリー・ジェイはこう語っています。

「ポジティブな環境を作り、優秀な人たちに囲まれること。これが私が人間として、また映画監督として成長するために学んだことで、今もその環境を持ち続けています」

ホラー映画ファンに限らず、若き日の夢が胸の中に残っている、全ての年配の方に何かヒントになる言葉ではないでしょうか。

『キラー・セラピー』では私の大好きな、ホラー映画に出演した俳優たちと仕事ができたとインタビューに答えた監督。

「私は撮影中は血まみれのキャンディーストアにいる、子供のような気分でした」。彼はそう言葉を結んでいます。

まとめ


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環境や大人の無理解と無神経、そして欲望が少年を蝕み。そして闇落ちするサイコホラーを期待した方には、想像と異なる映画だったかもしれません。

しっかり心理描写を描くなら2時間は必要、と思える題材でした。逆に言えば90分少々で勢いよく描いた『キラー・セラピー』は、スラッシャー映画のノリで楽しむべき作品でしょう。

『バタリアン』や『キャリー』に『ハロウィン』、『13日の金曜日』の往年の俳優たちの登場も、そういった過去作を思い浮かべながら楽しんでください。

P・J・ソールズは長らくホラー映画を中心に俳優活動を続けていましたが、トム・マシューズとエイドリアン・キングは一時期映画から離れたものの、近年活動を再開し元気な姿を見せています。

年配のホラー映画ファンに何かと励みになる作品です。そんなヘンな大人ばかりだから、若い人がブライアンのように歪んでしまうのかも…。本当にそうなら、ゴメンなさい。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2022見破録」は…


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次回の第10回は、マンガ・アニメの原作でもお馴染み、中国の有名な神怪(神魔)小説「封神演義」の世界を映画化!『クラッシュ・オブ・ゴッド 神と神』を紹介いたします。お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2022見破録』記事一覧はこちら






増田健(映画屋のジョン)プロフィール

1968年生まれ、高校時代は8mmフィルムで映画を制作。大阪芸術大学を卒業後、映画興行会社に就職。多様な劇場に勤務し、念願のマイナー映画の上映にも関わる。

今は映画ライターとして活躍中。タルコフスキーと石井輝男を人生の師と仰ぎ、「B級・ジャンル映画なんでも来い!」「珍作・迷作大歓迎!」がモットーに様々な視点で愛情をもって映画を紹介。(@eigayajohn

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