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Entry 2021/12/18
Update

映画『消えない罪』ネタバレ感想とあらすじ結末の評価解説。サンドラ・ブロックが演じる罪を背負い生き抜く姿とは|Netflix映画おすすめ78

  • Writer :
  • 秋國まゆ

連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第78回

2021年11月26日(金)に劇場公開を迎え、2021年12月10日(金)にNetflixで配信された映画『消えない罪』。ノラ・フィングシャイトが監督を務めたイギリス・ドイツ・アメリカ合作のR15+指定のヒューマンドラマです。

殺人の罪で服役し出所した女性が、かつて置き去りにせざるを得なかった生き別れの妹を捜していく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。

刑期を終えても、世間は過去の罪を許してはくれないという現実を描いた、サンドラ・ブロック主演映画『消えない罪』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。

【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら

映画『消えない罪』の作品情報


Netflix映画『消えない罪』

【配信】
2021年(イギリス・ドイツ・アメリカ合作映画)

【脚本】
ピーター・クレイグ、ヒラリー・サイツ、コートネイ・マイルズ

【監督】
ノラ・フィングシャイト

【キャスト】
サンドラ・ブロック、ヴィンセント・ドノフリオ、ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・バーンサル、リチャード・トーマス、リンダ・エモンド、アシュリン・フランシオーシ、ロブ・モーガン、エマ・ネルソン

【作品概要】
2019年第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)を受賞し、『システム・クラッシャー 家に帰りたい』(2019)で注目されているドイツの新鋭ノラ・フィングシャイトが監督を務めました。

「スピード」シリーズや『ゼロ・グラビティ』(2013)などで知られるサンドラ・ブロックが主演を務め、製作にも携わっています。

映画『消えない罪』のあらすじとネタバレ


Netflix映画『消えない罪』

保安官マック・ウェラン殺害の容疑で逮捕され、20年間服役していたルース・スレイターは、模範囚であったために早期出所しました。

仮釈放中のルースはまず、保護観察官ヴィンセント・クロスが手配したチャイナタウンにあるシェアハウスに身を置き、社会復帰のために働き口を探しました。

服役中に溶接と大工の資格を取ったルースは、大工の仕事をしようとしましたが、前科があるせいでなかなか働き口が見つかりません。

そこで仕方なく、ルースはクロスの友人がいるという水産工場で働くことに。同僚のブレイクはルースに良くしてくれて、のちに短期間ではあるものの友情を築きました。

さらにルースは、チャイナタウン近くのサウス・キング通りにある教会で工事しているのを見かけ、1人作業していた男性に声をかけます。その彼はNPO法人の職員で、寄付金を使って教会をホームレス用の施設にする工事を行っていました。

ただ作業員を解雇してしまったため、工事現場は人手不足な様子。それを聞いたルースは、男性職員に大工としての腕前を見せ、働かせて欲しいと頼みます。

その結果、ルースは水産工場の仕事と、大工の仕事をかけ持ちすることに。その傍ら、ある理由で置き去りにしてしまった、生き別れの妹ケイティを探していました。

ルースは図書館にあるパソコンを使って調べた結果、ケイティに関する情報は得られなかったものの、彼女と暮らしたワシントン州スノホミッシュ群にある家が、既に売りに出されていることが分かりました。

ルースは早速、その家に行ってみましたが、既にその家には人が住んでいました。その家に妻のリズと息子2人と暮らしている弁護士ジョン・イングラムは、家をぼうっと見つめるルースに声をかけます。

ジョンの好意に甘え、家にあがらせてもらったルースは、ケイティと過ごした思い出に浸る一方で、事件当時のことを思い出してしまいました。

素性を隠したまま、足早に家から離れようとするルースを呼びとめ、近くのバス停まで車で送ると言ってくれたジョン。実は彼は、ルースと挨拶した時からずっと、彼女が嘘をついていたことに気づいていたのです。

「何が狙いだ?」と言うジョンの問いに対し、ルースはこう答えました。

「親の死後、妹とあの家に住んでいた」「でも行政機関の介入があって、妹は養子に。妹に手紙を出したけれど返事がなく、生きているのかも分からない」

そう言うと、ルースは車から降りてバス停へ向かいました。ジョンは葛藤の末、ルースを呼びとめ、自分の名刺を渡しました。

大工の仕事を始めたルースの元へ、彼女の様子を見に来たクロスが訪れ、こう言いました。

「どこへ行こうと、お前は警官殺しの殺人犯だ。いい加減受け入れろ」

一方その頃、大学生になったケイティはピアニストとしての才能があり、ホールでの公演に向けて練習に励んでいました。

ところが、ルースが出所した日、車を運転していたケイティは突如襲った眩暈で蛇行運転し、左から来た車に気づかず衝突。

肋骨が折れ左肩を脱臼し、脳震盪まで起きてしまうほどの重傷を負ってしまいます。しばらくの間入院したケイティは、退院後は養父母マルコム夫妻とその娘エミリーが暮らす家で静養することにしました。

一方、ジョンとリズはそれぞれ別の場所で、ルースが保安官殺しの殺人犯で、その現場となったのが今住んでいる家であることを知りました。

リズは当然、ルースからの依頼は断り、この家に二度と来させないようジョンに頼みました。ところが、情に脆いジョンはルースに出直すチャンスを与えたいと、彼女の依頼を引き受けることにしました。

ルースが犯した罪を知る者は、ジョンたち以外にも2人いました。それはマックの息子キースとスティーヴです。

キースは警官の伝手を使って、ルースが出所したことを知り尾行・監視を開始。彼女がチャイナタウンに住んでいることも、水産工場と大工の仕事を掛け持ちしていることも知っていました。

そこでキースは、家庭を持ったスティーヴの元を訪れ、ルースに復讐しないかと持ちかけます。

マックの死後、彼の死に心を病んだキースたちの母親は酒浸りになり、結果家を失いました。今はキースは母親と同居し、酸素マスクをつけて寝たきりの状態になってしまった彼女を看病していました。

スティーヴは最初、兄であるキースの誘いを断りましたが、直接ルースと会ってからは考えが変わりました。

ルースがいる工事現場に侵入し、ケイティの写真を見て妹がいることが分かったスティーヴは、キースにこう言いました。

「兄貴の言う通り、やはり(自由になったあいつに対して、不幸になった俺たち遺族は)不公平だ。あいつには妹がいる、同じ目に遭わせよう」

以下、『消えない罪』ネタバレ・結末の記載がございます。『消えない罪』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


Netflix映画『消えない罪』

ウェラン兄弟の計画など露知らず、ルースは思い切って、友情を築いたブレイクに殺人を犯したことを告白。

ブレイクは驚きのあまり言葉を失い、ルースを拒絶します。挙げ句の果てに、ブレイクはそのことを職場で話してしまったのです。

あっという間に噂は広まり、警官を父に持つ同僚の女性パティからルースは突如暴行され、「警官殺し!」と非難されてしまいます。

クロスの説教を身に染みて感じたルースは、暴行された際に水浸しの床に携帯を落としてしまい、壊れてしまったことに更に気落ちしました。

そんな彼女と会ったクロスは、「ケイティの養父母となら面会できる」と、ジョンからの伝言を伝えます。

実はこの間、ルースの弁護士となったジョンから手紙が届いたマルコム夫妻は、ルースに会うべきかどうか話し合っていたのです。

「わざわざ人殺しと会う必要はない」と断固反対するケイティの養父マイケルに対し、「キャサリンのためになるなら、私たちだけでも会うべきだ」と主張するケイティの養母レイチェル。

その結果、ルースからの求めに応じ、ジョンの事務所でルースと面会することにしたマルコム夫妻。しかし、2人は気づきませんでした。

この会話を聞いてしまったエミリーが、のちに2人が隠していたルースからケイティ宛の手紙全てを見つけ出し、涙を流すことになろうとは………。

後日。何とかジョンと連絡を取ったルースは、クロスの助言通り身綺麗にして、ジョンの事務所で待つマルコム夫妻と面会しました。

マルコム夫妻は重い口を開き、ジョンを介してルースにこう言いました。「キャサリンには、トラウマのせいでうちにくる前の記憶がない」

「キャサリンには音楽の才能があり、愛する家族と安定した生活もあるいい人生だ」「人生を立て直したいのだろうが、キャサリンに何の得がある?」

ルースはケイティが自分のことを覚えていないと知り、思わずマルコム夫妻に詰め寄っていきます。

「ケイティ、いやキャサリンは、母が産後亡くなって、私が育てました。父は何もせず、人生を諦めて自殺しました」

「5歳になるまで育ててきた私のことを覚えていないなんて、そんなの信じられない」

「福祉課に私が送った手紙は?ケイティは読んだ?捨てた?燃やした?」

「こっちは20年間、狭い監獄で返事を待ち続けた」「私の存在まで消すな!私は存在する!」

ルースの追及と暴言に耐えきれず、裁判所を立ち去ろうとするマルコム夫妻でしたが、レイチェルは最後に「手紙は燃やしていない」とだけ言いました。

自暴自棄となってしまったルースは、工事現場て散々暴れた後、職場で話しかけてきてくれたブレイクにも八つ当たりしてしまいますが、彼から驚きの告白をされたのです。

「俺も犯罪者だ、1年半前に刑務所から出てきた」「仮釈放中だろう?犯罪者とはとつるめない。こうして立ち話しているだけで違反になる」

「ついしゃべっちまって、噂が広がった。本当にすまない」


Netflix映画『消えない罪』

仕事が終わり、帰路につくルースの元に、1本の電話がかかってきます。電話の主はエミリーでした。

エミリーは学校をサボり、両親には内緒でルースと会いました。ベンチの隣に座ったエミリーに、ルースはケイティとの思い出を語ります。

「私も学校に行きたかったけれど、妹が幼かったから家にいて、学校ごっこをしていた」

「農場に住んでて、馬がいた。その馬の名前は、妹の好物だったチーズ」「妹は面白い子で、どんなふうに成長したんだろう。何してるかな」

それを聞いて、エミリーはケイティがピアノが凄く上手であることや、記憶はあるけれどルースのことは知らないことを伝えます。

ただエミリーは、ケイティが事件当時のことや、ルースとの思い出を断片的に悪夢として見て、思い出すことは言いませんでした。

エミリーは帰り際、「今日ホールで4時からリハーサルがある。見てあげて」とだけ伝え、その場を立ち去っていきました。ルースを監視・尾行していたスティーヴが、エミリーを尾行していたとは知らず………。

ケイティの自宅を突き止めたスティーヴは、妻と赤ん坊が待つ家へ帰宅。

電話が繋がらないキースが、妻と不倫をしていたのを目撃します。激怒したスティーヴはキースに暴力を振るった後、実家へ向かい銃を持ち出しました。

ルースはジョンに「自分1人でケイティに会いに行っていいのか、ジョンと同伴の方が良いのか」聞こうと連絡するも、連絡は一向に繋がりません。

事務所にもいなかったため、ルースはジョンの家を訪ねることに。ルースの姿を見たリズは、彼女を追い払おうとします。

「私の夫は、あなたに出直すチャンスをあげたのに、あなた自身がそれをダメにした」「あなたは身勝手すぎる。妹を苦しめたのはあなたなの、被害者づらしないで」

そう怒鳴るリズと口論していくにつれ、堪えきれず涙を流すルース。そんな彼女を見て、リズは本当は何があったのか尋ねました。


Netflix映画『消えない罪』

父親が自殺してもなお、ルースとケイティはその家に住み続けていました。しかし、銀行のものになったからと言って、行政機関の職員コーリーは姉妹に退去するよう求めます。

そこへ駆けつけたマックも加わり、電話越しに揉めるルース。彼女の傍らには、当時5歳だったケイティがいました。

ケイティは勝手口のドアが開く音が聞こえ、咄嗟に銃を持って恐る恐る勝手口へ向かいます。するとそこで、勝手口のドアから無理矢理入ってきたマックと遭遇し、ケイティは彼目掛けて銃を発砲。

マックを殺したのは、本当はケイティだったのです。銃声を聞いて駆けつけたルースは、血を流して倒れているマックと、反動で倒れたケイティを見て状況を把握し、妹を守るために自分がやったことにしました。

その後、ルースはケイティを腕に抱え、銃を使ってコーリーを脅し、車を強奪。レストランに入って、ケイティにパンケーキを食べさせ、マックを殺させてしまったことを詫びました。

しかしこの時、人を殺したショックからか、ケイティはマックを撃ったことを覚えていませんでした。

「何があっても、私はずっとあなたを愛している」そう言ったルースは葛藤の末、ケイティを置き去りにし、追ってきた警察官に投降しました。

ルースの表情から、何か複雑な事情があったのだろうと悟ったリズは、彼女をホールまで車で送りました。

ルースがホールへ向かう途中、彼女の元に1本の電話が。電話の主はスティーヴで、ルースは「ハーバー島の16番通り。そこに1人で来ないと妹を殺す」と脅迫されます。

ルースはリズに頼んでそこまで送ってもらい、到着後はスティーヴの指示に従い、彼が立てこもっている建物へ1人で向かいました。

スティーヴと直接対峙したルースは、彼が誘拐したのがケイティではなく、彼が妹だと勘違いしてしまったエミリーであることに気づきます。

本物のケイティはホールにいて、昔姉妹の腕に描いたピアノの鍵盤で弾いた曲をリハーサルで弾いていました。

ルースが間違いを指摘しようにも、スティーヴは聞く耳を持ちません。ですが、ルースと話していて、スティーヴにも心境の変化が訪れたのでしょう。

「その子はまだ子供よ、解放して」「俺だってあの時子供だった。そこで妹の死を見届けろ」

「あなたのお父さんは説得してきた時、“息子の部屋に泊まってもいい”と言ってくれた。親切だった」「お前が父さんを語るな」

「お父さんのことは、本当にごめんなさい。でもこんなことをして、本当に気が済むの?」「人生は続かない、何もかも失うだけよ」

復讐する気満々で突きつけた銃口を、スティーヴはルースの頭から外しました。スティーヴが蹲っているうちに、ルースはエミリーのそばに駆け寄り、彼女を後ろに庇いながら先に脱出するよう促します。

その後、エミリーはリズの通報で駆けつけた警察官たちに保護され、しばし見つめ合っていたルースとスティーヴが身柄を拘束されました。

その時のルースの姿は、ケイティを庇って自ら投降した時と全く同じでした。しばらくしてクロスが現場に駆けつけ、何の容疑もかけられていないルースを引き取りました。

クロスの車に乗り込む直前、ルースはエミリーが誘拐されたことを聞いて駆けつけたマルコム夫妻と一緒にいるケイティと目が合いました。

ケイティは自らルースの元に駆け寄り、笑みを浮かべてゆっくりルースに抱きつきました。

ルースも堪らず、ケイティを抱き締め返します。抱き合う姉妹の脳裏に浮かんだのは、姉妹仲良く暮らしていた時の思い出でした。

映画『消えない罪』の感想と評価


Netflix映画『消えない罪』

妹を守るために罪を被ったルース

物語の前半までは、家の退去を拒んだルースが、無理矢理家の中に入ってきた保安官を射殺した殺人犯として描かれています。

それが物語が進んでいくにつれて、保安官を撃ったのは、実は姉と姉と一緒に暮らす家を守ろうとしたケイティだったことが明かされました。

ただ、撃った本人であるケイティは、自分が人を殺したという事実が受け入れられず、恐怖心からその時の記憶を消えてしまいます。

ルースはケイティが何も覚えていないならばと思い、まだ幼い妹を守るために罪を被り、殺人犯として投獄される道を選んだのです。

今も昔も変わらず、最愛の妹を大事に想っているルースの姉妹愛に、誰もが感動することでしょう。

父を殺された復讐心に燃えるスティーヴ


Netflix映画『消えない罪』

殺された保安官の息子スティーヴとキースは、仮釈放されたルースへの復讐心に燃えています。

ただ計画直前、キースが自分の妻と不倫していたのを知ったスティーヴは、そのことに対する怒りと復讐心でいっぱいになってしまいます。

そのせいで、物語の前半まで理性的に思えたスティーヴは、間違えてエミリーを誘拐してしまった事実に気づきませんでした。

仮釈放されたルースへの世間の風当たりの強さは見ていてとても辛いですが、同じくらいかそれ以上、スティーヴたち被害者の遺族は辛い目に遭ってきたのだろうと考察できます。

まとめ


Netflix映画『消えない罪』

妹を守るために保安官殺しの罪を被った主人公が、生き別れの妹を探しながら、過去の罪に向き合っていくヒューマンドラマ作品でした。

結局、ケイティは最後までルースの名前を呼ぶことはありませんでしたが、リハーサル中にルースのことを少しずつ思い出していく様子が描かれています。

だからこそケイティは、物語のラストで自らルースのそばに駆け寄り、彼女に抱きついたのでしょう。

またエンドロール前に「アンフォーギヴンに基づく」というテロップが流れますが、本作はイギリスのテレビドラマ『アンフォーギヴン 記憶の扉』(2009)に基づいて描かれています。

ただ『アンフォーギヴン 記憶の扉』では、ルースは15年間服役していたことになっており、ケイティの養父母の姓がベルコムで、ケイティがルーシーと名付けられていました。

運命に翻弄される姉妹と、復讐に燃える兄弟を描いたヒューマンドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。

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