連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第78回
2021年11月26日(金)に劇場公開を迎え、2021年12月10日(金)にNetflixで配信された映画『消えない罪』。ノラ・フィングシャイトが監督を務めたイギリス・ドイツ・アメリカ合作のR15+指定のヒューマンドラマです。
殺人の罪で服役し出所した女性が、かつて置き去りにせざるを得なかった生き別れの妹を捜していく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
刑期を終えても、世間は過去の罪を許してはくれないという現実を描いた、サンドラ・ブロック主演映画『消えない罪』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら
映画『消えない罪』の作品情報
【配信】
2021年(イギリス・ドイツ・アメリカ合作映画)
【脚本】
ピーター・クレイグ、ヒラリー・サイツ、コートネイ・マイルズ
【監督】
ノラ・フィングシャイト
【キャスト】
サンドラ・ブロック、ヴィンセント・ドノフリオ、ヴィオラ・デイヴィス、ジョン・バーンサル、リチャード・トーマス、リンダ・エモンド、アシュリン・フランシオーシ、ロブ・モーガン、エマ・ネルソン
【作品概要】
2019年第69回ベルリン国際映画祭で銀熊賞(アルフレッド・バウアー賞)を受賞し、『システム・クラッシャー 家に帰りたい』(2019)で注目されているドイツの新鋭ノラ・フィングシャイトが監督を務めました。
「スピード」シリーズや『ゼロ・グラビティ』(2013)などで知られるサンドラ・ブロックが主演を務め、製作にも携わっています。
映画『消えない罪』のあらすじとネタバレ
保安官マック・ウェラン殺害の容疑で逮捕され、20年間服役していたルース・スレイターは、模範囚であったために早期出所しました。
仮釈放中のルースはまず、保護観察官ヴィンセント・クロスが手配したチャイナタウンにあるシェアハウスに身を置き、社会復帰のために働き口を探しました。
服役中に溶接と大工の資格を取ったルースは、大工の仕事をしようとしましたが、前科があるせいでなかなか働き口が見つかりません。
そこで仕方なく、ルースはクロスの友人がいるという水産工場で働くことに。同僚のブレイクはルースに良くしてくれて、のちに短期間ではあるものの友情を築きました。
さらにルースは、チャイナタウン近くのサウス・キング通りにある教会で工事しているのを見かけ、1人作業していた男性に声をかけます。その彼はNPO法人の職員で、寄付金を使って教会をホームレス用の施設にする工事を行っていました。
ただ作業員を解雇してしまったため、工事現場は人手不足な様子。それを聞いたルースは、男性職員に大工としての腕前を見せ、働かせて欲しいと頼みます。
その結果、ルースは水産工場の仕事と、大工の仕事をかけ持ちすることに。その傍ら、ある理由で置き去りにしてしまった、生き別れの妹ケイティを探していました。
ルースは図書館にあるパソコンを使って調べた結果、ケイティに関する情報は得られなかったものの、彼女と暮らしたワシントン州スノホミッシュ群にある家が、既に売りに出されていることが分かりました。
ルースは早速、その家に行ってみましたが、既にその家には人が住んでいました。その家に妻のリズと息子2人と暮らしている弁護士ジョン・イングラムは、家をぼうっと見つめるルースに声をかけます。
ジョンの好意に甘え、家にあがらせてもらったルースは、ケイティと過ごした思い出に浸る一方で、事件当時のことを思い出してしまいました。
素性を隠したまま、足早に家から離れようとするルースを呼びとめ、近くのバス停まで車で送ると言ってくれたジョン。実は彼は、ルースと挨拶した時からずっと、彼女が嘘をついていたことに気づいていたのです。
「何が狙いだ?」と言うジョンの問いに対し、ルースはこう答えました。
「親の死後、妹とあの家に住んでいた」「でも行政機関の介入があって、妹は養子に。妹に手紙を出したけれど返事がなく、生きているのかも分からない」
そう言うと、ルースは車から降りてバス停へ向かいました。ジョンは葛藤の末、ルースを呼びとめ、自分の名刺を渡しました。
大工の仕事を始めたルースの元へ、彼女の様子を見に来たクロスが訪れ、こう言いました。
「どこへ行こうと、お前は警官殺しの殺人犯だ。いい加減受け入れろ」
一方その頃、大学生になったケイティはピアニストとしての才能があり、ホールでの公演に向けて練習に励んでいました。
ところが、ルースが出所した日、車を運転していたケイティは突如襲った眩暈で蛇行運転し、左から来た車に気づかず衝突。
肋骨が折れ左肩を脱臼し、脳震盪まで起きてしまうほどの重傷を負ってしまいます。しばらくの間入院したケイティは、退院後は養父母マルコム夫妻とその娘エミリーが暮らす家で静養することにしました。
一方、ジョンとリズはそれぞれ別の場所で、ルースが保安官殺しの殺人犯で、その現場となったのが今住んでいる家であることを知りました。
リズは当然、ルースからの依頼は断り、この家に二度と来させないようジョンに頼みました。ところが、情に脆いジョンはルースに出直すチャンスを与えたいと、彼女の依頼を引き受けることにしました。
ルースが犯した罪を知る者は、ジョンたち以外にも2人いました。それはマックの息子キースとスティーヴです。
キースは警官の伝手を使って、ルースが出所したことを知り尾行・監視を開始。彼女がチャイナタウンに住んでいることも、水産工場と大工の仕事を掛け持ちしていることも知っていました。
そこでキースは、家庭を持ったスティーヴの元を訪れ、ルースに復讐しないかと持ちかけます。
マックの死後、彼の死に心を病んだキースたちの母親は酒浸りになり、結果家を失いました。今はキースは母親と同居し、酸素マスクをつけて寝たきりの状態になってしまった彼女を看病していました。
スティーヴは最初、兄であるキースの誘いを断りましたが、直接ルースと会ってからは考えが変わりました。
ルースがいる工事現場に侵入し、ケイティの写真を見て妹がいることが分かったスティーヴは、キースにこう言いました。
「兄貴の言う通り、やはり(自由になったあいつに対して、不幸になった俺たち遺族は)不公平だ。あいつには妹がいる、同じ目に遭わせよう」
映画『消えない罪』の感想と評価
妹を守るために罪を被ったルース
物語の前半までは、家の退去を拒んだルースが、無理矢理家の中に入ってきた保安官を射殺した殺人犯として描かれています。
それが物語が進んでいくにつれて、保安官を撃ったのは、実は姉と姉と一緒に暮らす家を守ろうとしたケイティだったことが明かされました。
ただ、撃った本人であるケイティは、自分が人を殺したという事実が受け入れられず、恐怖心からその時の記憶を消えてしまいます。
ルースはケイティが何も覚えていないならばと思い、まだ幼い妹を守るために罪を被り、殺人犯として投獄される道を選んだのです。
今も昔も変わらず、最愛の妹を大事に想っているルースの姉妹愛に、誰もが感動することでしょう。
父を殺された復讐心に燃えるスティーヴ
殺された保安官の息子スティーヴとキースは、仮釈放されたルースへの復讐心に燃えています。
ただ計画直前、キースが自分の妻と不倫していたのを知ったスティーヴは、そのことに対する怒りと復讐心でいっぱいになってしまいます。
そのせいで、物語の前半まで理性的に思えたスティーヴは、間違えてエミリーを誘拐してしまった事実に気づきませんでした。
仮釈放されたルースへの世間の風当たりの強さは見ていてとても辛いですが、同じくらいかそれ以上、スティーヴたち被害者の遺族は辛い目に遭ってきたのだろうと考察できます。
まとめ
妹を守るために保安官殺しの罪を被った主人公が、生き別れの妹を探しながら、過去の罪に向き合っていくヒューマンドラマ作品でした。
結局、ケイティは最後までルースの名前を呼ぶことはありませんでしたが、リハーサル中にルースのことを少しずつ思い出していく様子が描かれています。
だからこそケイティは、物語のラストで自らルースのそばに駆け寄り、彼女に抱きついたのでしょう。
またエンドロール前に「アンフォーギヴンに基づく」というテロップが流れますが、本作はイギリスのテレビドラマ『アンフォーギヴン 記憶の扉』(2009)に基づいて描かれています。
ただ『アンフォーギヴン 記憶の扉』では、ルースは15年間服役していたことになっており、ケイティの養父母の姓がベルコムで、ケイティがルーシーと名付けられていました。
運命に翻弄される姉妹と、復讐に燃える兄弟を描いたヒューマンドラマ映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら