若者に圧倒的支持がある作家Fの小説『真夜中乙女戦争』が
2022年2022年1月21日(金)実写映画に!
作家Fが、平凡な大学生の「私」が黒服という謎の男に出会って、「真夜中乙女戦争」と名付けられた犯罪計画に巻き込まれる姿を描いた小説『真夜中乙女戦争』。
鬱屈した大学生の心の描写を詳細に書き表した小説が、『弱虫ペダル』(2020)の永瀬廉(King&Prince)主演で、実写映画化されます。
上京して1人暮らしを始めた大学生の“私”が、同好会の先輩に憧れを抱き、妙に気が合う黒服と出会い、それまでの生活が一変していきます。
監督・脚本は『チワワちゃん」(2019)『とんかつDJアゲ太郎』(2020)の二宮健。 映画公開は、2022年1月21日(金)です。
スリリングな『真夜中乙女戦争』の原作小説をあらすじネタバレを交えてご紹介します。
小説『真夜中乙女戦争』の主な登場人物
【私】
W大学に入学した若者。大学生活をつまらないと思っています。
【先輩】
私が入ったサークルの女性の先輩。
【黒服】
私が知り合った謎の男の学生。夜型の映画好き。ある計画を企てます。
【佐藤】
私の同級生。
小説『真夜中乙女戦争』のあらすじとネタバレ
もし大学1年生の4月の頃の自分に戻れたならば、どんな後悔を大人は語るだろうと、私は思っています。
4月、新しい生活に淡い期待を抱きながらW大学に入学した私ですが、人生になんの意味も感じられないつまらない講義が続く毎日に、私の期待はあっけなくはじけてしまいました。
大学が始まって10日たちますが、つまらないと思う日々に加えて、自分を理解してもらえないことで、夜は一睡もできません。
私は刺激のあるサークルに入部しようと思い、個性なサークルが数多存在する中、「かくれんぼ同好会」というサークルを選びました。
文字通り、会員同士がかくれんぼをして遊ぶという同好会です。東京駅構内でかくれんぼをした時は、駅構内のゴミ箱の中に潜伏。
サークルの会員に見つかるより先に鉄道警察職員に見つかって職務質問を受けることになってしまいました。
不審者と思われても仕方がない私が、事務所に連れて行かれようとしたその時、女性の”先輩”が現れて「この子、あたしの弟です」といって、私の頬をぶん殴り、そのおかげで解放されました。
私は助けてくれた先輩とラインの交換をしました。先輩に興味を持ったけれども、彼女は誰にでも優しくて誰からも好かれている人でした。
私だけに優しいわけではない。私は急激にサークルへの熱が冷め、東京タワーをひとりで眺めてため息をつく日が多くなります。
けれども、先輩から「もう寝ちゃった?」というラインが来た日には、東京に来て初めてよく眠れました。
私はいつも眺める東京タワーに恋文を書き、オフィシャルサイトに送りました。すると東京タワーから展望台のチケットが2枚送られてきました。
つまらない講義とくだらないバイトに明け暮れる毎日……、私は自分の生き方に悩み始め、眠れない日を送っています。
先輩に会いたいと思っても、自分が先輩と話す価値があるのかとか、そんな考えも浮かんできます。
先輩は私を好きではない。それは正しいこと。でも、私は先輩に会いたい。話がしたい。私は自分の気持ちを見つめます。
「言葉も、おまえも、役に立たない」。
「会いたい」と言うのに1秒もいらないはずなのに、その4文字を口にするのは何万時間もかかるように思われました。
「すべてが終わる、お前には意味がない」。
呪文のような言葉が、私の頭を駈け廻ります。
講義もバイトもない日の日課として、私は文学部図書館に行って勉強します。
6月のある夜、大学構内で喫煙所のベンチに座り込んでいると、向こうの暗闇から全身黒づくめの学生が現れて話しかけてきました。
そして私の手を取り裏門へ走り出し、盗んだバイクで夜中の明治通りを猛スピードで走りました。
ある日、「映画館を作る」目的で、黒服と私は歌舞伎町の外れにある廃墟ビルの一室を小型映画館に改造しました。
いつの間にか廃墟には1匹の白猫が住むようになり、私と黒服はこの私設映画館で毎夜映画を見て過ごします。
ある日、「俺たちが生きていた証拠を残そう」と黒服が言い、真夜中の映画館に他の人間を招待することにしました。
黒服は客への対応がよく、どんな客も黒服に心を許します。夜を好む人間たちが、1人また1人と増えていきました。
そんな時、先輩から「君と寝る夢を見た」とラインが届きました。私は先輩を例のチケットで東京タワーに誘って、デートを楽しみました。
一方、同級生で同郷人、唯一の私の友人の佐藤は、前期の履修科目を全てAでクリアし、大手広告代理店のインターンに行くことになりました。
順調に社会人としての一歩を歩み始めた佐藤が苦しむ顔が見たくなった私は、ありったけの悪意を佐藤に伝えます。その夜、黒服は戦争を開始しました。
大学の7号館の屋上からドローンを飛ばして『ワルキューレの騎行』をスピーカーで流す奇襲作戦ですが、実際にはあっという間に爆音のワルキューレは鳴りやみ、もとの静寂に戻りました。
この作戦は失敗したとも成功したとも言えません。
何一つ破壊できなかった黒服は、この作戦の結果を観ても懲りません。「これから大学を地獄にしてやる」黒服はそう宣言します。
鞄の中から「真夜中乙女戦争」と書かれた分厚い書類の束を私に見せました。
小説『真夜中乙女戦争』の感想と評価
小説家Fの小説『真夜中乙女戦争』は、大学生の恋とテロ計画を中心に描かれていました。
主役となる「私」を始め、あこがれの女性「先輩」も、私を虜にする「黒服」も名前をもたず、唯一、私の友人「佐藤」だけが名前を持ち、リアル感を醸し出します。
「私」は学校を卒業したら会社に入って、恋をして結婚して、普通の家庭を持つことを望んでいる真面目な大学生です。
「就職」という人生の節目や岐路を見つめ、何をどうすればすればいいのかわからないのに、それを教えてくれる人はいません。
答えを見つけられない自分が嫌になったり、目標をどこに見据えればいいのかわからずに迷走したり、周りの友人と比べて不安になったり…。
精神的にとても苦しい思いをする私ですから、大学の勉強をやみくもにしてみても、虚しさしか感じられませんでした。
作品では、若者たちは、胸に抱えたどうしようもない虚しさを「東京をぶっ壊す」という犯罪で晴らそうとしていました。
このようにこの時期特有の屈折した若者の心理を、「手に入れようとしても手に入れられないものほど愛おしい。そんなものに憧れたまま死ぬか、それから目を逸らして生きるか、目を逸らさず、それをぶっ壊すか」。と、「私」を通して作者は書き表しています。
‟東京をぶっ壊す”。それはテロともいうべき犯罪ですが、失敗してもとにかく動き出して何かをやれ!という、若者に向けたエールのようにも思えます。
一方、大事な登場人物とでもいうべき「東京タワー」も忘れてはいけません。
物言わないけれども、しっかりと私の心の声を聞いてくれる相手が、東京タワーでした。それは、私の心の拠り所だったのかもしれません。
見ているだけで何かを諭してくれるような存在は、心の支えとなるべき大切なものだと思い知らされます。
たとえそれが悪夢を呼びこむ始まりだとしても、精神の糧となるものを持っているのと持たないのとでは、生きていく上で大きな違いとなるのですから。
映画『真夜中乙女戦争』の見どころ
『真夜中乙女戦争』は、一人の大学生の恋と現実社会への鬱憤を描いた小説です。
映画化にあたり、『弱虫ペダル』の永瀬廉が主役の「私」を務め、「私」の憧れの先輩には『貞子』(2019)の池田エライザ。私を虜にする黒服は『アルキメデスの大戦』(2019)の柄本佑が演じます。
ストーリーの中心は「私」が大学生活で遭遇する先輩への恋心と、黒服との東京滅亡計画。計画が進むと先輩まで命を絶たれることになります。
小説のラストでは、「私」は究極の選択を迫られ、黒服よりも先輩への愛を取ります。映画では、この選択をするまでの心の葛藤がどう表現されるのか、興味津々です。
また、東京タワーのある芝公園を始めとする爆破予定される都内各所の風景や、先輩と「私」が初めて一緒に入った和風喫茶「都路里」なども登場するのかどうか、楽しみの一つとなっています。
映画『真夜中乙女戦争』の作品情報
【公開】
2022年(日本映画)
【原作】
F:『真夜中乙女戦争』(KADOKAWA)
【脚本・監督】
二宮健
【キャスト】
永瀬廉、池田エライザ、篠原悠伸、安藤彰則、山口まゆ、佐野晶哉、成河、渡辺真起子、柄本佑、小島健
まとめ
真夜中を愛する者は乙女である。真夜中を憎む者もまた乙女である。乙女は女だけではない。男だって乙女である。
(中略)
寂しいのに嬉しい、楽しいのに切ない、幸福なのに虚しい。その矛盾の中で沈黙を選ばざるを得なかった者は乙女である。
(中略)
死にたいと願うのも、生きたいと願うのも乙女だ。断言する。純真無垢な子女ばかりが乙女ではない。
(中略)
永遠に記憶に残るような思い出を欲して。さもなくば、世界の終わりを待ちながら。我々乙女は、戦争をする。
小説冒頭にはタイトルにも使われた「真夜中」「乙女」「戦争」という言葉が入った戦線布告とも言える文章が載っています。
若者の屈折した心理は当事者でなければわからないことも多い。ですが、本作ではそれを先輩という女性への憧れと東京タワーへの崇拝にも似た気持ちで表現されていました。
爆破計画などやはり犯罪ですが、世界をぶち壊したくなるほどの爆発的なエネルギーを持って前進しなさいという、作者からのメッセージと受け取れる作品でした。