連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第65回
2021年10月27日(水)よりNetflixで独占配信された映画『意のままに』。『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』(2018)のケイト・シーゲルが、ジェイソン・オマラ、デュレ・ヒルと共演した映画です。
仕事も私生活も行きづまってしまったジェン。ある有名な催眠療法士の助けを借りて楽になろうとしますが、それは危険な「マインドゲーム」の始まりでした。
催眠術によって知らず知らずのうちに他人に操られるという、理不尽な恐怖がつまったサスペンス映画『意のままに』をネタバレあらすじを交えてご紹介します。
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映画『意のままに』の作品情報
【配信】
2021年(アメリカ映画)
【原題】
Hypnotic
【監督】
マット・エンジェル
【キャスト】
ケイト・シーゲル、ジェイソン・オマラ、デュレ・ヒル、ルーシー・ゲスト、ジェイミー・M・キャリカ、ターニャ・ディクソン=ウォーレン、ルーク・ロデリック、デボン・ダルトン
【作品概要】
監督のマット・エンジェルは、ドラマシリーズ「CSI:ニューヨーク7」「CSI:マイアミ10 ザ・ファイナル」をはじめ、「ダニーのサクセス・セラピー」(シーズン2)、「S.W.A.T」(シーズン3)などに出演しています。映画『オープンハウスへようこそ』(2018)で監督・製作・脚本を務めた上、出演もしています。また、この映画には父親であるダン・エンジェルが共に製作に携わっています。
脚本のリチャード・ドヴィディオは、スティーブン・セガール主演の『DENGEKI 電撃』やハル・ベリー主演の『ザ・コール〔緊急通報指令室〕』など数々の作品で脚本を務めている人物です。
本作で催眠によって患者を操る医師役を演じたジェイソン・オマラは、ドラマシリーズ「CIA:ザ・エージェンシー」「CSI:マイアミ2」をはじめ、「グッド・ワイフ」(シーズン5)などに出演。またアニメ『バッドマン:バッド・ブラッド』『ジャスティス・リーグ:ダーク』などの声優としての活躍も見られる俳優です。
映画『意のままに』あらすじとネタバレ
職場から警察に電話をかけて「彼に見られている気がする」と助けを求めるアンドレア・ボーウェンという女性。帰ろうとしたものの、乗ったエレベーターの壁が次第に迫ってきて助けを呼んでも叶わず、押しつぶされてしまいました。
友人のジーナの新居パーティにやってきたジェン。元婚約者のブライアンがいて気まずく感じていました。
ブライアンにはゴマアレルギーがありました。ゴマが入っているパーティの料理に気付かず食べようとしたブライアンを、ジェンは寸でのところで止めてどうにかことなきを得ます。
またパーティでジェンは、ジーナから精神科医のコリン・ミードを紹介されました。
その日の帰り、なりゆきでブライアンと再び関係を持ってしまったジェン。後日そのことをジーナに相談していると、ミード博士によるカウンセリングを勧められました。
半信半疑でミード博士の元へ行き、カウンセリングを受けるジェン。カウンセリング中、かつてブライアンとの間に身ごもった子を妊娠6ヶ月で死産してしまったことを打ち明けたジェンに、催眠療法をしようとミード博士は提案しました。
体感では数分程度だったにも関わらず、実際は1時間も催眠療法を受けていたジェン。
やがてジェンは週に1度ミード博士の催眠療法を受けるようになり、治療の開始から3ヶ月ほどの月日が経過しました。催眠療法のおかげで気分がよくなったと感じるジェンは、ジーナにそのことを話します。ジーナも、ミード博士のカウンセリングを受ける予定になっていると答えます。
ミード博士とベッドで横になる夢を見て目覚めたジェン。ショッピングセンターで偶然ミード博士に会ったジェンは、カフェに行き、ミード博士の身の上話を聞きます。
ミード博士は過去に結婚していたものの、妻と死別したことを告白。またジェンにブライアンを夕食に招くよう勧め、それで過去のトラウマから脱却できると伝えました。
記憶が途切れて目が覚めた時、ジェンは自宅の食卓に座っており、夕食の最中でした。目の前の椅子が倒れていて、バスルームに行くとブライアンが倒れていました。
ジェンが作った料理の中にゴマが入っていたせいで、ブライアンはアレルギー反応によって意識不明の重体に陥っていました。その日のディナー用のレシートを見ると、そこには「ごま油」を買った記録が残っていました。
記憶が戻ったジェンは、ミード博士から電話を受けていたことを思い出します。「火をつけろ」と言われてごま油をつかって料理をし、ブライアンが苦しんでバスルームに行く姿をただ見ていたことを思い出しました。
ミード博士のことを怪しんだジェンがインターネットを使って調べると、過去の不可解ないくつかの事件についての記事が出てきました。その記事では、催眠療法を受けていた女性の死、そしてその女性に対しミード博士がストーカー行為をしていたという事実が記されていました。
当時の事件の担当刑事ロリングに話を聞きに行ったジーナとジェン。ミード博士の過去の事件については捜査は打ち切りになり、真相は究明できなかったと告げられます。
また過去にミード博士が催眠療法を行っていたアンドレアという女性が、エレベーター内で心臓発作を起こし死んだ時の監視カメラ映像を見せられました。
アンドレアは「黙諾」という極度の恐怖状態に陥り、その結果呼吸困難となって死んでしまったのだとロリングから説明を受けるジェンとジーナ。そしてロリング刑事から、ミード博士には関わらないほうがいいと忠告を受けます。
つい先日ミード博士の催眠療法を受けたと明かしたジーナ。ジェンがブライアンのことを心配しているという内容を明かしていました。お互いミード博士に近づかないようにしようと約束して分かれました。
ジェンは、ミード博士の元へ会話内容を録音する目的で治療に訪れました。「落ち着くために催眠療法を受けたい」と騙して、催眠療法中の音声の録音を始めます。
ロリングもミード博士にまつわる事件の捜査を再開しました。すると黒髪・長髪の女性が3人もミード博士の催眠療法後に死亡していたことが判明しました。
催眠療法後、帰りの車で録音内容を聞くジェン。そこにはミード博士に催眠状態かけられてから「ミードのことを怪しんでいて、音声を録音をしている」と自白させられた自身の声が残っていました。
警察へジーナと行ったこともミード博士に知られていると分かり、急いで同じく車を運転中のジーナに電話をします。しかし電波が悪く電話は切れてしまいました。
運転中のジーナの元にミード博士から電話がかかってきます。「こうして世界は終わる」と告げられると、ジーナの胸元にはタランチュラの姿が現れます。
助手席の夫には、タランチュラどころか何も見えません。クモ恐怖症であるジーナに、ミード博士は催眠をかけていたのです。パニックに陥ったジーナは、交通事故を起こして死んでしまいました。
ロリングはミード博士の元に訪れます。ジーナの事故の件や、過去に閉所恐怖症の治療をアンドレアに行っていたことなど聞き出します。
催眠療法は睡眠不足に効くから良かったらどうかと、ミード博士に誘われたロリング。ロリングはミード博士のオフィスにあったスプーンをこっそりと持って帰りました。
ロリングは捜査のことでジェンの部屋を訪れます。そしてロリングが帰ったすぐあと、ミード博士がジェンの部屋に押し入ります。ミード博士に止まれと命令されると、催眠のせいで身動きが取れなくなってしまいました。
警察に話したことも知っており、ジェンを脅しに来たミード。しかし、何もせずに帰りました。
一方、ロリングは自宅で見知らぬ女性に襲われます。その女性は、ジェンがミード博士の診察を受けたときに見かけた彼の患者でした。
必死に抵抗し、女性を殴りどうにか命を取り留めたロリングでしたが、ケガを負い病院に入院します。後日ジェンはロリングの病室を訪ねました。
ロリングは、警察内でも「催眠」を行うということ……事件の目撃者が車のナンバーを見ても忘れてしまうが、催眠療法で思い出させることがあると話し、ミード博士の催眠療法中の会話を思い出せないか、ジェンに試したいと頼み込みます。
ロリングが手配した女性カウンセラーの元へと行き、催眠をかけられるジェン。しかしジェンは息ができずにもだえ苦しみ始め、夢の中で「1010HEAVENサリバン邸」という標識と家が見えたところで目を覚まします。
女性カウンセラーはジェンの記憶の中に、ミード博士が真実を隠蔽するための「安全装置」を無数に仕込んでいることがわかったと話します。ジェンは何がきっかけで発動するかわからない催眠暗示を、無数にかけられていたのです。
それらの暗示自体は取り除けないものの、新たな暗示をかけることができると女性カウンセラーは提案し、それを施しました。
映画『意のままに』の感想と評価
「惜しいところ」が多いサイコスリラー映画
本作は、催眠術によって犯人から「意のままに」操られてしまう女性の恐怖を描いています。ストーリーはまさに「鉄板」というべき内容ですが、そのテンポの良さと俳優陣の演技にハラハラさせられる作品となっています。
主人公のジェンは私生活も仕事もうまくいっていない時に、友人から紹介されたミード博士による催眠療法を受けます。しばらく続けるうちに再就職が決まり、気分も上向きになっていきました。しかし、元夫が目の前で死んでしまったことから博士のことを疑い始めます。
ミード博士が死んでしまった妻と似た容姿の女性をターゲットにしていることは、刑事の捜査で明らかに。犯行動機が分かり、あとは彼との攻防戦が見どころになるわけですが、その最終的な決着が「催眠の上書き」というのは若干都合が良すぎるように感じられます。
またミードの催眠療法中の音声をジェスが録音をしにいって逆に警察にいったことなどを告白させられるシーンです。まんまと全て白状させられてしまい、行った意味は何だったのかと思わずにはいられません。しかし、こういった自ら墓穴を掘る場面は展開を起こすために必要ともいえるので、目をつぶることはできます。
また、登場人物たちの心理的葛藤などに関してもなにか描写があればよりドラマに深みが出たのではないでしょうか。一度死産した経験のあるジェスと、妻に先立たれたミード博士、ミード博士の逮捕を過去に一度逃した刑事のロリング。それぞれの過去の心の傷が交錯するような物語があってもより面白かったように思いました。
主演ケイト・シーゲルの説得力ある演技
ツッコミどころは多少ある本作ですが、主演のジェスを演じたケイト・シーゲルの鬼気迫る演技は見どころといえます。
ケイト・シーゲルは、ホラー映画に多数出演している女優です。『パラノーマル・アクティビティ』や『透明人間』などで知られるホラー映画界の重鎮ジェイソン・ブラムがプロデュースした『オキュラス/怨霊鏡』に出演しており、ケイトの夫であるマイク・フラナガンが監督を務め、トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門観客賞を受賞しています。
2016年にNetflixで配信された『サイレンス』では、マイク・フラナガンが監督・脚本を務め、ケイト・シーゲルは主演兼共同脚本を務めました。また、2021年9月24日からNetflixで配信開始されたドラマシリーズ「真夜中のミサ」にも出演しています。
そんなホラー映画の経験豊富な彼女だからこそ、安定感のある演技によって説得力ある作品を作り出せるのでしょう。
まとめ
催眠術を扱ったサイコスリラー映画としての斬新さは少ないものの、テンポ感は良く飽きることなく最後まで観ることができる映画でした。ただサイコスリラー系作品が好きでよく観る人にとっては、少し物足りなく感じるかも知れません。
こういった作品を普段見ない方や、怖すぎる描写やショッキングな映像が苦手な人にとっては、そこまで刺激がなく観やすいのではないでしょうか。
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