映画『老後の資金がありません!』は2021年10月30日(土)より全国ロードショー!
老後の資金問題というシリアスなテーマを、ユーモラスに描いた垣谷美雨のベストセラー小説を映画化した『老後の資金がありません!』。
主人公・篤子役はこれまで数々の作品でデキる女性を演じてきた天海祐希が演じ、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018)のヒットも記憶に新しい、前田哲が監督を務めます。
CONTENTS
映画『老後の資金がありません!』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
垣谷美雨『老後の資金がありません』(2011年/中公文庫)
【監督】
前田哲
【脚本】
斉藤ひろし
【キャスト】
天海祐希、松重豊、新川優愛、瀬戸利樹、加藤諒、柴田理恵、石井正則、若村麻由美友近、クリス松村、高橋メアリージュン、佐々木健介、北斗晶、荻原博子(経済ジャーナリスト)、竜雷太、藤田弓子、哀川翔、毒蝮三太夫、三谷幸喜、草笛光子
【作品概要】
「人生100年時代、老後資金に2000万円が必要だと言われている昨今、生きていく上でどんな備えが必要なのか?」……本作は、そうした社会の最小単位である家庭の切実な課題、現代日本が抱える最大の問題に普通の主婦が立ち向かう、痛快「お金」コメディ・エンターテイメントです。
映画『老後の資金がありません!』のあらすじ
主婦・後藤篤子(天海祐希)は、家計は妻に任せきりの夫・章(松重豊)の給料と自身がパートで稼いだお金をやりくりして、フリーターの娘・まゆみ(新川優愛)と、大学4年生の息子・勇人(瀬戸利樹)を育て上げました。
節約をモットーに、自分に許した小さな贅沢と言えば、月謝5000円のヨガ教室程度。憧れのブランドバッグも我慢して、老後の資金をコツコツと貯めてきたのです。
身の丈に合っていたはずの篤子の生活が、突如綻び始めたのは、舅の葬儀代400万円近くの支払いを押し付けられてからです。その後はパート先をリストラ、さらに章の会社がまさかの倒産し結婚30周年目前、夫婦そろって失職するハメに。
果たして篤子は、この絶対絶命のピンチを切り抜けることができるのでしょうか?
映画『老後の資金がありません!』の感想と評価
天海祐希が困難に立ち向かう主婦を好演
主婦の後藤篤子(天海祐希)は、夫の章(松重豊)、娘のまゆみ(新川優愛)、息子の勇人(瀬戸利樹)の4人暮らし。節約をモットーとし、地道に生活をしてきました。子育ても落ち着き、パートタイムで働きながらヨガ教室へ通うのを楽しみにしています。
しかし入院中だった舅が亡くなったことで穏やかな日々が一変、章の妹・志津子(若村麻由美)から喪主を押し付けられ葬儀代400万円を負担することに。それに加えて篤子はパート先からリストラされ、さらに夫の章の会社も倒産してしまいました。
老後のための貯金はみるみる減っていき、後藤家の家計を預かる篤子は窮地に追い込まれます。そんな中、姑・芳乃(草笛光子)への仕送りが難しくなったことを機に、図らずも同居することになり、浪費家の芳乃に振り回される日々が始まります。
元宝塚歌劇団のトップスターでかっこいい女性の代名詞の天海が地味な主婦役…? と最初は違和感を覚えましたが、家族に翻弄される主婦をユーモアたっぷりに演じており、思っていた以上にフィットしていました。
そして多少の愚痴を言いながらも、常に家族のことを思いやっている篤子の優しさに癒されます。家計は篤子にまかせっきりでお金に無頓着な夫・章の会社が倒産した時も、ショックで硬直するものの、第一に章の身を心配し「とにかく無事に帰ってきて!」と言うところは、なんとなくホッとさせられます。
家族に振り回され、テーマが「お金」という重いものでありながら、なぜかクスッと笑いながら観ることができるのは、天海のコメディーセンスがなせるわざです。かっこいい女性を演じてきた天海が地味であたふたする主婦を演じているところは新鮮ですが、ヨガ教室のシーンでは抜群のスタイルを披露しています。
草笛光子のコメディエンヌぶりに爆笑
本作では天海を取り巻くさまざまな個性豊かなキャラクターが登場してきますが、中でも姑・芳乃を演じる草笛光子が圧巻です。
章の母である芳乃は、長年浅草で老舗の和菓子屋を切り盛りしていました。「いいもの」に目がないため、年金生活になっても浪費癖がぬけません。篤子たちと同居することになり、引っ越しをしてきた芳乃の持ち物の多さに度肝を抜かれます。
篤子が用意する節約感満載の夕食に辟易したのか「私に任せて!」とデパ地下で高級食材を買い込んでくる姿には、篤子の立場になって「やめてくれ~~」とつぶやいてしまう人もいるのではないでしょうか。
でも明るく前向きで新しいもの好きの芳乃は、とてもチャーミングで憎めません。篤子が通っているヨガ教室にちゃっかり一緒に通うところは、とてもお茶目です。
芳乃のマイペースぶりに手を焼いてしまう篤子ですが、次第に芳乃のペースに引き込まれていきます。その最たるものが、ヨガ教室仲間であるサツキ(柴田理恵)から頼まれて、ある計画を芳乃と企むところです。
「ベテラン女優の草笛さんがここまでやるのか!」と驚いてしまうシーンでは、爆笑必至。草笛がおしゃれに、そしてキュートに天海を振り回す芳乃を演じています。
個性豊かな脇役陣たち
登場シーンは少ないものの、インパクトのある脇役陣も物語の要となっています。脇役陣が主人公の篤子をせりふで圧倒する場面が多いのもこの物語の見どころの一つです。
舅の葬儀を担当する葬儀社のベテラン社員・本間(友近)は、豪華な葬儀を売り込もうと弾丸トークで篤子を圧倒します。
章の妹、志津子(若村麻由美)は正論を振りかざす「ザ・小姑」。負けじと応戦する篤子との嫁VS小姑のバトルが描かれます。
篤子の娘でフリーターのまゆみが結婚相手として連れてきたヘビメタのバンドマン・松平琢磨(加藤諒)は、独特のいで立ちと価値観で、篤子を呆然とさせます。
そしてサツキに頼まれて芳乃と3人で計画した企みでは、区役所職員の森口(三谷幸喜)とサツキの実の父親・大泉健三(毒蝮三太夫)を交え、ハラハラドキドキ、爆笑の会話劇が繰り広げられます。
こうしてみるだけでも、脇役と言ってしまうのは申し訳ないほど豪華なキャストでこの作品は彩られています。少しの登場シーンではありますが、強烈なインパクトを残している脇役陣の演技にも注目です。
まとめ
「老後を快適に過ごすためには2000万円が必要」とニュースで報じられることも多いですが、本作ではお金にまつわるシビアな話が満載です。経済ジャーナリストの荻原博子が実名で登場し、耳が痛くなるような話が描かれているのも事実です。
不運な出来事が重なった篤子一家ですが、「捨てる神あれば拾う神あり」とはよく言ったもので、篤子一家にも新たな出会いがありました。いろいろなことを経験した中、篤子は新たな価値観を見出していき、そして篤子のまわりの人たちも固定概念を捨てて新たな生活を送ろうと決心します。
篤子に新たな出会いがあったのは、家族のことを第一に考える思いやりのある女性であることが一番の要因だと感じました。
氷川きよしが歌う主題歌「Happy!」を聞きながら、一つの概念にとらわれずに生きていくことがまさに「Happy!」なのかも…と温かい気持ちになった作品でした。
映画『老後の資金がありません!』は2021年10月30日(土)より全国ロードショー!