Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

アニメーション

Entry 2021/09/14
Update

【ネタバレ】GHOST IN THE SHELL攻殻機動隊|解説考察と結末のあらすじ感想。日本アニメ史上の最強の名作として“SF映画に影響”を与える

  • Writer :
  • 糸魚川悟

独創的な映像で自我への葛藤を描いたSFアニメ映画の金字塔

「超能力によって半月型に壁が凹む」という描写を世界で初めて描いたとされる大友克洋による漫画『童夢』。後に大友克洋は漫画とアニメーションで『AKIRA』を手掛け世界に名を知られるようになります。

このように日本はアニメーションや漫画の分野で世界に影響を与え続けており、名作と呼ばれる作品が数多く発信され続けてきました。

今回はその中でも「SF」という分野において、名だたる映画監督やハリウッドを代表する大ヒット映画に影響を与えたとされる『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の作品情報


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

【公開】
1995年、2008年(攻殻機動隊2.0)、2021年(4Kリマスター版)

【監督】
押井守

【脚本】
伊藤和典

【キャスト】
田中敦子、大塚明夫、山寺宏一、大木民夫、仲野裕、玄田哲章、家弓家正

【作品概要】
「アップルシード」や「ドミニオン」などの著作で知られる士郎正宗による漫画『攻殻機動隊』をアニメ映画化した作品。

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984)や、『機動警察パトレイバー the Movie』(1989)で高い評価を受けていた押井守が監督を務めました。

アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のあらすじとネタバレ


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

人の脳をインターネットに繋ぐ「電脳化」と呼ばれる技術が一般化した未来社会。

公安9課に勤める草薙素子少佐は、公安6課が捜査を進めるプログラマーのガベル共和国への亡命を阻止するため、外交官を光学迷彩を使い射殺します。

数日後、外務大臣の通訳の女性が電話回線を経由し、電脳をハッキングされる事件が発生。

巷で噂される国際的なハッカー「人形使い」がガベル共和国との秘密会談を襲撃する算段だと疑う公安9課の荒巻は、草薙にハッキングツールの利用者を拘束するように命じます。

公安9課のトグサが運転するトラックで武装準備をする草薙は、人形使いの裏にいるのはガベル共和国の前軍事政権の長だったマレスなのではないかと疑っていました。

公安9課のイシカワとバトーはハッキングが公衆電話を使って行われており、犯人がゴミの回収業者であることを突き止めます。

回収業者の男性は自分の妻の電脳をハッキングするという名目で、外交官の電脳のハッキングを手伝わされており、彼を操っていた男は、公安9課の存在に勘付き市場を逃げ回りますが、草薙に拘束されます。

しかし、拘束した男も回収業者の男性も人形使いによって偽の記憶を植え付けられており、彼らから人形使いを追うことは出来ませんでした。

ある日、深夜の高速道路で「メガテクボディ社」で作られた義体(サイボーグ)が発見され拘束されますが、その義体には電脳が差されていないにも関わらず「ゴースト」が存在しているようでした。

いくつもの攻性防壁を突破し、工場で違法に義体を作っただけでなく、AIにゴーストを持たせるプログラムを作り出せる高い技術力を持った人間が犯人であり、草薙は強い興味を惹かれます。

荒巻の元に公安6課の中村が現れ、拘束した義体の回収を要求します。

トグサは公安6課の人間の入館時の映像を不審に思い、申請された2人以外に光学迷彩を使ったサイボーグが侵入していることに気づき、草薙に忠告。

一方、中村が連れてきたウィリス博士は義体の中にいるゴーストが、人形使いであることを公安9課に話します。

すると拘束されていた義体は突如喋りだし、自分が人形使いであることや自分の意思で公安9課の前に現れたことを話し始めました。

すると、突然その場を光学迷彩を着た何者かが襲撃し、人形使いは連れ去られてしまいます。

トグサは人形使いを連れ去ったバンに発信機を打ち込み、バトーが車を追跡します。

トグサの推理を聞き、この騒動の首謀者が公安6課の中村であることに気付いていた草薙は公安6課の狙いが人形使いであることに気づきます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』のネタバレ・結末の記載がございます。『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

荒巻は部下のイシカワの報告から、人形使いはガベル共和国の政権交代に介入するため外務省が「2501」と呼ばれるプロジェクトで作り出したAIであり、そのAIが制御不能となったため公になる前に公安6課に回収を命じたことを悟ります。

二手に分かれた公安6課の工作員を追うバトーと草薙。

バトーは工作員の確保に成功しますが、バトーの追っていた車には人形使いは乗せられていませんでした。

もう一台の車は草薙を待ち伏せるかの如く廃墟に入っていきます。

応援を待つべきでしたが、人形使いに強く惹かれる草薙は人形使いが政治利用される前に、そのゴーストにアクセスしてみたいという気持ちから単独で奪還を試みます。

公安6課の工作員は光学迷彩を装備した多脚戦車で待ち構えており、装備に劣る草薙は追い詰められてしまいます。

そこにバトーが駆けつけ多脚戦車を破壊すると、腐れ縁である草薙の願いを聞き満身創痍の彼女の義体を車に乗せられていた人形使いに接続。

すると人形使いは自分が外務省によるプロジェクトの中、インターネット上で自然発生したAIであることを話し始めます。

ネット上で知られていた天才的ハッカーの面を持つ草薙に人形使いは惹かれており、公安9課に近づいたと告白。

人形使いはAIでありながらも生命の根幹である死と子孫を儲けることを求めており、そのために草薙のゴーストと融合することを求めます。

自身が高額な全身義体であり、定期的なメンテナンスを受けるために政府の駒となることを半ば強制されていることに諦めの気持ちも抱いていた草薙は、果てのないネットの世界を体現した人形使いとの融合を受け入れます。

しかし、公安6課は人形使いを回収できないのであれば破壊しようと目論んでおり、狙撃手を使い人形使いと草薙の義体を撃ち抜きました。

20時間後、草薙の電脳はバトーが庇ったことで破壊を免れており、バトーが闇ルートで手に入れた少女の義体の中に電脳を差し込まれ、彼の隠れ家で目を覚まします。

バトーに人形使いと融合したのかを問われる草薙は、人形使いと呼ばれたAIも草薙と呼ばれた女性も既に存在しないと言います。

今回の一件は草薙の表向きの死と公安6課の中村の査問、及び外務省大臣の解任で決着が付き、人形使いの存在は闇に葬られました。

バトーは草薙に車の鍵を渡すと暗証番号が「2501」であると伝えます。

草薙は「2501」をいつか再会するときの合言葉にするとバトーに約束すると、セーフルームを去ります。

街を見下ろす草薙は、自由となった身でどこに行こうかに想いを巡らせると「ネットは広大だわ」と呟きました。

アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の感想と評価


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

名だたる映画に影響を与えたSF映画の名作

人の脳が直接インターネットの世界に繋がるという世界観を描いた士郎正宗による漫画『攻殻機動隊』は、押井守によって映像化され日本のみならず世界で話題となりました。

ハリウッドで活躍する著名な映画監督の中にも本作のファンは多く、ウォシャウスキー姉妹が『マトリックス』(1999)を製作するうえで本作を参考にしたことは広く知られています。

技術が明らかに現代よりも発展している未来でありながら、廃墟だらけの市街が描かれるサイバーパンク的な要素と、発砲し続けることで銃内部の部品であるバレルが高熱化し、交換の必要が発生すると言う戦闘描写まで、マニアックな知識をふんだんに取り入れた本作。

しかし、その一方で原作のコミカルな雰囲気をなくし、淡々と物語を進めることで原作と映画での明確な線引きを行っており、『攻殻機動隊』の持つ哲学性にフォーカスを置いた作品となっていました。

「人形使い」と「ゴースト」


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

「ゴースト」とは身体のみならず脳までもが機械化および電子化される劇中世界において、自己や自我を構成する、人が人であるための「魂」のような概念を指しています。

プログラムによって作られた高度な人工知能が制作可能になった未来では、AIと人間とを明確に区別するのは「ゴースト」の有無のみ。

ですが「ゴースト」を持つAI「人形使い」が登場したことで、主人公の草薙素子の中にはある疑念が生まれることになります。

全身が政府所属の義体(サイボーグ)である彼女は、政府の所属を抜けると記憶も義体も失うことから、自分自身の「個」を構成するものに対し、疑問を覚えていました。

一方で、「人形使い」も「ゴースト」を宿した自分を「生命」であると考え、生命を持つものとしての運命を全うすることを望みます。

2人の自我への葛藤はシリーズ通しての命題とも言え、草薙が人形使いと出会わなかった世界を描いたアニメシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』にも引き継がれています。

哲学者デカルトの残した「我思う故に我在り」を、未来社会をテーマに描いたような哲学的テーマが魅力的な作品でした。

まとめ


(C)1995 士郎正宗/講談社・バンダイビジュアル・MANGA ENTERTAINMENT

ブラック・ウィドウ』(2021)のスカーレット・ヨハンソンが主演し、ハリウッドで実写化もされた映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』。

草薙とバトーの再会の合言葉「2501」が重要な意味を持つことになる本作の続編映画『イノセンス』(2004)も高い評価を受け、「攻殻機動隊」シリーズは世界で存在感を高めています。

そのきっかけともなった本作は、2021年9月17日(金)より全国劇場で4Kリマスター版上映予定

公開から25年以上経っても未だ色褪せることのないSFアニメの名作を、是非とも4K画質で鑑賞してください。





関連記事

アニメーション

『グッバイ、ドン・グリーズ』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。花江夏樹×梶裕貴×村瀬歩が声で紡ぐ「ひと夏の冒険」

『宇宙よりも遠い場所』いしづかあつこ監督が贈る、 ひと夏の冒険の物語。 『時をかける少女』(2006)や『サマーウォーズ』(2009)など、アニメ映画といえば不思議と夏を題材とした作品を思い浮かべてし …

アニメーション

ダンまち映画ネタバレ感想『劇場版ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢』冒険者のベルが女神アルテミスを救う!

運命に選ばれた冒険者が女神と約束を交わす冒険譚 桜美かつしが監督を務めた、2019年製作の日本の冒険ファンタジーアニメ映画『劇場版 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか オリオンの矢』。 …

アニメーション

『オオカミの家』あらすじ感想と評価考察。“ミッドサマー”アリ・アスター絶賛アニメーションは“ホラー・フェアリーテイル”!

ストップモーション・アニメ『オオカミの家』は2023年8月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開 チリの2人組監督クリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの初長編作品ストップモ …

アニメーション

映画『この世界の片隅に』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【考察から読む3つの偉業を解説】

2016年は日本映画が大豊作の年でした。庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』の人気に始まり、新海誠監督の『君の名は。』の興行成績を塗り替え爆進中と話題作が続きました。 実は、その後をじわじわと追いかけてい …

アニメーション

映画『きみと、波にのれたら』あらすじネタバレと感想。湯浅政明が独創のアニメーションで紡ぐ青春ラブストーリー

映画『きみと、波にのれたら』は2019年6月21日より全国ロードショー公開 『夜明け告げるルーのうた』『夜は短し歩けよ乙女』など、その独創的な作風のアニメーションと世界観が国内外で高く評価されている、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学