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映画『機動警察パトレイバー the Movie』ネタバレ感想と考察評価。4DXにて30年を経て傑作アニメが蘇る

  • Writer :
  • 糸魚川悟

『機動警察パトレイバー the Movie』は2020年7月17日(金)より全国ロードショー公開中!

続編として実写作品になっただけでなく、今もなお定期的にイベントが開催されるほどの人気を誇る「機動警察パトレイバー」シリーズ。

その中でも特に人気の高い『機動警察パトレイバー the Movie』(1989)が30年の時を経て再びスクリーンで上映開始

今回は座席の振動や水の演出を体感できる「4DX」として初の上映となる本作をネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『機動警察パトレイバー the Movie』の作品情報


(C)HEADGEAR/EMOTION/TFC

【公開】
1989年(日本映画)

【監督】
押井守

【キャスト】
古川登志夫、冨永みーな、大林隆介、榊原良子、池水通洋、二又一成、郷里大輔、井上瑤、千葉繁

【作品概要】
1988年に「メディアミックス」という形でOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション)と漫画で発売及び掲載された「機動警察パトレイバー」シリーズの初の映画化作品。

監督を勤めたのは後に『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)で世界的な名声を得ることになるアニメ映画界の巨匠、押井守。

映画『機動警察パトレイバー the Movie』のあらすじとネタバレ

ある日の夕暮れ、「方舟」の先端で1人の男が嘲笑を浮かべつつ海へと飛び込みました。

1990年代、ロボット技術が飛躍的に向上し、世間では二足歩行型作業機械「レイバー」が様々な業種に取り入れられ活躍を続けていました。

国が2000年代を象徴するプロジェクトとして掲げる、東京湾を横断する道路の建築を含む巨大建築計画「バビロンプロジェクト」にも多くのレイバーが起用され、期間の短縮に貢献。

海上にはバビロンプロジェクトに利用するレイバーの整備を行うプラットフォーム「方舟」が用意され、着々と建築は進められています。

レイバーの誕生と普及は俗に言う「レイバー犯罪」の増加につながり、警察はこれに対抗するため特科車両二課中隊、通称「特車二課」を設立。

自身の搭乗するレイバーである「98式AVイングラム」愛称「アルフォンス」をこよなく愛する泉野明と、レイバー産業の最大手企業「篠原重工」の創業者を父に持つ篠原遊馬はそんな特車二課に着任し数年が経過していました。

1999年の夏、都内では無人のレイバーが暴走し街に被害を及ぼす事件が多発。

特車二課第1小隊の不在により、遊馬と野明の所属する第2小隊は多忙を極めており、出動のない日はないほどでした。

第2小隊は住宅街で暴走する土木用レイバーの鎮圧のため出動、ひとりでに動くレイバーを止めるため遊馬の指示により隊員の太田が回路を破壊し動作を停止させますが、電源が落ちたはずのレイバーが再起動し再び暴走を始めました。

怒り狂った太田がイングラムに搭載されたリボルバーカノンを住宅街で乱発したことでレイバーは破壊され、一応の鎮圧には成功。

これまでの暴走事件は「運転者の過失」として処理されてきましたが、遊馬は目の前で見た「無人レイバーの再起動」が腑に落ちず、第2小隊隊長の後藤喜一に調査を進言し、1人事故の調査を始めます。

翌日、徹夜で事件を調べ続けた遊馬は後藤に「無人暴走」したとされるレイバーの全てに篠原重工が社運をかけて発表と販売を行ったレイバー用のOS(オペレーティングシステム)「HOS(Hyper Operating System)」が採用されていることを報告し、HOSの危険性を世間に公表すべきだと進言します。

しかし、「カミソリ後藤」と呼ばれる警察組織きっての切れ者である後藤は原因がHOSであることに既に行き着いていました。

さらに後藤はHOSをほぼ1人で製作した男であり、世界で天才と呼ばれるプログラマーの帆場暎一が「方舟」で自殺したことを話し、この一連の事故が1人の男によって引き起こされたテロであることを示唆します。

既に作業用レイバーの8割に導入されているとされるHOSはバビロンプロジェクトの根本となる物であり、篠原重工の社運をかけて発売された商品でもあることから政府と篠原重工は確たる証拠が出ない限り黙殺する方針を貫いていました。

後藤が既に気づいていたことに呆気を取られる遊馬は後藤より引き続きの調査を依頼され、暴走のトリガーを探るべく様々な要因を検索します。

後藤は遊馬だけでなく知り合いの松井刑事に「帆場暎一」と言う男の身辺調査を依頼していました。

生前、篠原重工だけでなく所属していた大学などありとあらゆる場所の情報を削除していたとされる帆場はなぜか転居履歴だけは残しており、松井はその転居履歴を遡り調査を進めます。

帆場の住んでいた場所はどれも再開発により更地にされるようなボロボロのアパートであり、帆場の生活の様子を確かめることは出来ませんでしたが、その全ての住居から東京都心に聳えるビル群を眺めることが出来ました。

一方、遊馬はレイバーの暴走のトリガーが人間には感知の出来ない低周波であることに行きつき、特定の周波数の低周波によってレイバーが暴走することを確信します。

遊馬は、父の会社である篠原重工の重役であり自身の育ての親ともいえる実山に、篠原重工が自ら会見を開きHOSの運用を停止させるように求めました。

特車二課の詰め所に戻った遊馬は課長である福島から独断行為の懲罰として2週間の謹慎を命じられます。

政府は篠原重工から同様の報告を受けましたが、篠原重工のバビロンプロジェクトに対する重要性からお咎めをせず、あくまでも篠原重工による無料アップデートを実行しHOSのコードを無害なものに上書きすると言うことで手打ちとする決定をします。

納得の出来ない終わり方に不満を告げる遊馬に対し、後藤は天才が勝利を確信し命を経った計画がコードの上書きで収まるはずがないと言い、謹慎中に帆場の真の計画を探るように命じました。

松井から証拠の何一つない住居の数々や、帆場の産まれた家に残された聖書の一部の文言を聞かされた後藤は、帆場が聖書になぞらえた犯罪を起こそうとしていることを確信。

特車二課のシステムを担う整備士シバシゲオの部屋に籠り調査を続ける遊馬とシバは、やがて帆場が仕組んだ恐るべき「真の」計画に行きつくことになります。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『機動警察パトレイバー the Movie』のネタバレ・結末の記載がございます。『機動警察パトレイバー the Movie』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

暴走したレイバーたちは今まで工事現場などの音によってたまたまその周波数の低周波が発生し暴走が引き起こされていただけでした。

しかし、シミュレーションプログラムの検証によって、風速40メートルの風が東京湾に上陸した時、海上に浮かぶプラットフォーム「方舟」の立体構造建築が起こす共鳴反応によって都内全域に暴走を引き起こす周波数の低周波が響き渡ることが分かります。

再開発やバビロンプロジェクトの進行によって都内には数千にも及ぶレイバーが存在しており、その全てが暴走すれば確実に首都は崩壊します。

折悪く風速40メートルを越える台風の上陸が迫り、後藤は警察上層部に帆場の建てた計画を報告しますが、MITによる帆場のプログラム解析が終わっていないこともあり警察上層部は「台風期間内における都内全域のレイバーの利用停止」という措置に留めようとしていました。

かつて暴走したレイバーが自動で再起動したことから、HOSに汚染されたレイバーは停止した段階からも起動する可能性を後藤は告げますが上層部は決定を変えようとはしません。

なおも食い下がる後藤は海法部長から「台風がしでかすことなら何が起きても仕方ない」と言う言質を取り付けました。

後藤は特車二課第2小隊と海外より今回の任務のために来日した香貫花クランシーを含めた面々に共鳴反応によって低周波を作り出してしまう海上プラットフォーム「方舟」の破壊を命令。

海法部長から言質を取り付けたとはいえ、政府の掲げるプロジェクトの要を破壊することは帆場の犯罪を立証できなければ重罪となりますが、隊員たちは何もせず首都の破壊を眺めることを良しとせずイングラムを搭載した高速艇で「方舟」へと向かっていきました。

第1小隊の隊長である南雲しのぶと共に隊員を見送る後藤は、帆場の計画が「首都の崩壊」か「方舟の破壊によるバビロンプロジェクトの後退」を選択させる成功段階を迎えてしまっており、帆場の自殺前に帆場に辿り着けなかったことを後悔します。

そして後藤は「方舟」の破壊における各署との衝突を避けるため裏周りへと向かいました。

台風の接近により退避命令が出され既に無人となっている「方舟」に辿り着いた第2小隊は「方舟」を護衛するガードロボットを破壊しながら中央制御室を制圧し、共鳴反応を抑えるために各セクションのパージを開始。

そのころ、MITではHOSの解析が終了し帆場のテロ行為が立証されたことで第2小隊の行動に正当性が生まれますが、既に台風がピークに差し掛かり救援部隊を出すことが出来なくなっていました。

風速40メートルの台風が近づき、HOSに接触していた「方舟」の中央制御システムも暴走を始めます。

野明と太田の搭乗するイングラムはシバの機転によってHOSに書き換えられていなかったため暴走を避けることが出来ましたが、「方舟」内のレイバーたちが次々と暴走。

遊馬の案で野明は中央制御システムに頼らない手動点火装置を使い、全連結部分のパージに向かいます。

一方、香貫花クランシーが搭乗する「零式イングラム」はHOS制御であったために暴走し、太田の乗るイングラムを破壊し中央制御室を襲いました。

野明によって全連結部分がパージされ「方舟」は崩壊、レイバーたちは海の藻屑となりますが、零式イングラムは崩壊を免れており野明と対峙。

後継機である零式イングラムに野明の乗る98式AVイングラムは歯が立ちませんが、野明はイングラムを犠牲にしHOSに汚染されたプログラムの存在する回路を直接ショットガンで破壊することで零式イングラムの動作を停止させます。

そして台風が明け、崩壊した「方舟」の上で喜ぶ第2小隊の面々を後藤と南雲がヘリコプターで迎えに来ました。

映画『機動警察パトレイバー the Movie』の感想と評価


(C)HEADGEAR/EMOTION/TFC

後に世界的な名声を得るアニメ映画界の巨匠押井守が、その地位を手にする契機となった作品『機動警察パトレイバー the Movie』。

「機動警察パトレイバー」シリーズ初の劇場版として公開された本作は第7回日本アニメ大賞を受賞しただけでなく、公開から30年が経過した現在でも愛され続けています。

本作は「帆場暎一」という狂気の天才が仕掛けたテロを、警察きっての切れ者「後藤喜一」が特車二課の仲間を使い解決しようとする頭脳戦を徹底的に、そして理知的に描写。

様々な製品がコンピュータープログラムを根幹としている現代でも本作の描いた「サイバーテロ」は通用し、押井守の先見の明の凄さを改めて感じることが出来ます。

「BABEL」や「方舟」、そして「E.HOBA」など「帆場暎一」の作り出した犯罪に散りばめられた「聖書」のワード、そして「帆場暎一」の犯罪の意味とは。

程よく考察の余地を残す、秀逸な脚本に彩られた本作は何度観賞しても楽しめる作品です。

4DX版感想!東京湾決戦を全身で体感せよ!

30年の時を経て「4DX」としてスクリーンに戻った『機動警察パトレイバー the Movie』は、軍用レイバーの暴走を描く物語の冒頭から地鳴りのように激しい揺れが鑑賞者を襲います。

銃撃戦、そして車やレイバーの走行など本作の上映に対して鑑賞者の期待する「4DX」の演出がしっかりと行われており、それだけでも充分に至福の体験。

しかし、本作の「4DX」としての本領発揮は物語の終盤にあり、嵐の中で大量のレイバーと戦闘する「東京湾決戦」では、屋外のシーンでは風と雨が常に巻き起こり、戦闘シーンでは絶えず振動が起きるといった演出により自身も戦場である「方舟」に上陸しているかのような没頭感を得ることが出来ました。

まるでアトラクションのような体感をすることが出来る「東京湾決戦」は、長年のファンたちのみならず本作に興味のあるすべての方に体感してほしいと自信を持ってオススメ出来る4DX上映作品です。

まとめ


(C)HEADGEAR/EMOTION/TFC

いかがでしたか。

良質な脚本が光る1989年の傑作SF映画『機動警察パトレイバー the Movie』が大スクリーンで、しかも「4DX」で体感できるのは劇場だけ!

嵐の中の「東京湾決戦」は風と雨が吹き荒れるため、寒がりの方はぜひ羽織るものを準備して劇場に足を運んで下さい。

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