世界中が熱狂したあの名作アニメが待望の実写映画化!
日本が世界に誇る不朽の名作『攻殻機動隊』のハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』をご紹介します。
CONTENTS
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ)
【原題】
Ghost in the Shell
【監督】
ルパート・サンダース
【キャスト】
スカーレット・ヨハンソン、北野武、ピルー・アスベック、ジュリエット・ビノシュ、マイケル・ピット、チン・ハン、ダヌシア・サマル、ラザルス・ラトゥーエル、泉原豊、タワンダ・マニモ、桃井かおり、福島リラ
【作品概要】
士郎正宗のコミックを押井守監督が映画化したSFアニメの傑作『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』を『スノーホワイト』でその名を知られるルパート・サンダースが実写映画化。
主演にスカーレット・ヨハンソン、共演に北野武、ピルー・アスベック、フランスの名女優ジュリエット・ビノシュらを起用。
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のキャスト一覧
少佐 / スカーレット・ヨハンソン
ロブ・ライナー監督の『ノース 小さな旅人』(1994)で映画デビューを飾ったスカーレット・ヨハンソン。
1996年には『のら猫の日記』でインディペンデント・スピリット賞主演女優賞にノミネート、2001年には『ゴーストワールド』でトロント映画評論家協会の助演女優賞を受賞するなど、若くしてその才能に注目が集まりました。
コーエン監督のフィルムノワールの秀作『バーバー』(2001)
その後、コーエン兄弟監督作『バーバー』のレイチェル役で強い印象を残し、『ロスト・イン・フラストレーション』(2003)では、英国アカデミー主演女優賞受賞を受賞するなど、数々の賞レースに名を連ねることに。
以降もウディ・アレン監督の『マッチポイント』、『アベンジャーズ』シリーズ、リュック・ベッソン監督作の『LUCY/ルーシー』など、数々の話題作に出演し、いまだ30代前半ながら実力派女優としての地位を確立しました。
そんなスカーレット・ヨハンソンが『ゴースト・イン・ザ・シェル』で演じているのは、主人公の少佐役。
原作では草薙素子という名で知られているこのキャラクターですが、本作ではあくまで“少佐”という呼び名なのだそう。
少佐は、幼い頃に脳と脊髄の一部を除く全身を義体化した女性型サイボーグであり、映像化された様々な作品群ではそれぞれ異なる個性を有しているため、本作『ゴースト・イン・ザ・シェル』ではどのようなキャラクター設定となっているのかに注目していですね。
それと同時にスカーレット・ヨハンソンのアクションシーンが満載ですので、もちろんそちらも必見です!
バトー / ピルー・アスベック
1982年生まれのデンマーク人俳優ピルー・アスベックは、人気テレビドラマ『コペンハーゲン/首相の決断』などに出演していることで有名。
アカデミー賞外国映画部門ノミネート『ある戦争』(2015)
映画では『特捜部Q キジ殺し』(2014)、第88回アカデミー賞外国語映画賞にもノミネートされた『ある戦争』(2015)、『エイプリル・ソルジャーズ ナチス・北欧大侵略』(2015)などに主要登場人物として出演しています。
彼の名が世界的に知られるようになったのは、リュック・ベッソン監督の『LUCY/ルーシー』(2014)のリチャード役でしょう。(この時スカーレット・ヨハンソンと共演している)
この作品で一躍評価を高め、本作『ゴースト・イン・ザ・シェル』では少佐の相棒バト―役を演じています。
筋肉の塊のような(ある意味脳みそまでも?!)パワー型サイボーグのバトーをピルー・アスベックがどのように表現するのか楽しみですね!
荒巻 大輔 / 北野武
もはや説明不要の世界的著名人である北野武さん。ということで、ここでは海外映画への出演に絞って見ていきます。
ハリウッド初進出を果たしたのが、ロバート・ロンゴ監督、キアヌ・リーブス主演の映画『JM』(1995)。
俳優・北野武の世界進出作品『JM』(1995)
実は純粋に洋画への出演のみという点に限ると、『JM』くらいしかないんですね。これは少し意外な事実でした。
もちろんジャン・ピエール・リモザン監督の『Tokyo Eyes』(1998)などと他にもあるにはあるのですが、舞台が日本で北野さんはヤクザ役ということなので、少しニュアンスが異なりますよね。
となると今回は『JM』以来のハリウッド作品への出演になるという訳です。
そんな北野さんが本作で演じているのは、内務省公安9課の長である荒巻大輔。
押井守監督の『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』に基づいているのならば、少佐やバトーの指揮官であり、共に現場にも出るようなタイプですが、本作ではどんな荒巻像を北野さんが描いて見せてくれるのでしょうか…楽しみですね!
オウレイ博士 / ジュリエット・ビノシュ
『ゴダールのマリア』(1985)で映画デビューを飾ったフランス人女優ジュリエット・ビノシュ。
同年のアンドレ・テシネ監督作『ランデヴー』ではロミー・シュナイダー賞を受賞するなど、若くしてその才能を認められることに。
ビノシュは永遠の映画女優だ!『汚れた血』(1986)
レオス・カラックス監督の『汚れた血』(1986)でシュザンヌ・ビアンケッティ賞を受賞したことで、一気に国際的知名度を獲得し、フィリップ・カウフマン監督の『存在の耐えられない軽さ』(1988)でアメリカ進出を果たします。
その後、『ポンヌフの恋人』(1991)でヨーロッパ映画賞女優賞、『トリコロール/青の愛』(1993)でヴェネツィア国際映画祭女優賞とセザール賞主演女優賞、『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)でベルリン国際映画祭銀熊賞とアカデミー助演女優賞をそれぞれ受賞するなど、世界中の様々な賞を総なめにしました。
2010年にはアッバス・キアロスタミ監督の『トスカーナの贋作』でカンヌ国際映画祭の女優賞を獲得し、世界三大映画祭のすべての女優賞を受賞した現代最高の女優としてその名を世界中に知らしめています。
これまであまりSF作品には縁がなかったジュリエット・ビノシュですが、ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』(2014)に出演するなど、近年ではこういったジャンルでもちらほら見られるようになりました。
本作『ゴースト・イン・ザ・シェル』では、映画オリジナルキャラクターであるオウレイ博士を演じています。
ビノシュの今回の役どころは、主人公の少佐に対して重要なメッセージを与える脇役。
彼女だからこそできるキャラクターでもあります。芸術性の強い作品から娯楽映画までど名女優ジュリエット・ビノシュに演じられないものなどないでしょう。
そのようなビノシュ自身を描いたような映画『アクトレス 女たちの舞台』は彼女のファンにはオススメです。
クゼ / マイケル・ピット
俳優であり、ミュージシャンでもあるマイケル・ピットは、テレビドラマの『ドーソンズ・クリーク』シリーズ(1999)に出演し、人気を博しました。
その後大ヒットした舞台を映画化した『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(2001)に出演し、俳優としてその名を知られる存在に。
ロックミュージシャン最後の2日間を描いた!『ラストデイズ』(2005)
2005年にはガス・ヴァン・サント監督の『ラストデイズ』でニルヴァーナのカート・コバーンをモチーフにしたキャラクターであるブレイク役を務めたことで高評価を獲得し、様々な映画へ出演することに。(同時にバンド活動も始めた)
そんなマイケル・ピットは本作で演じているのは、クゼという男。アニメ『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』に登場したクゼ・ヒデオと同じキャラクターなのかどうかはまだ明らかになってはいません。
元自衛隊員で完全な義体を有するクゼをストーリーにどう絡めてくるのか?そしてマイケル・ピットがどう演じているのかに期待しましょう!
トグサ / チン・ハン
シンガポール人俳優のチン・ハン。2000年代からハリウッド進出を果たし、『ルーシー・リューの「3本の針」』(2005)や『ダークナイト』のラウ役などで知られていますね。
クリストファー・ノーラン監督の名作『ダークナイト』(2008)
その後も『2012』(2009)や『永遠の僕たち』(2011)、『コンテイジョン』(2011)、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)、『インデペンデンス・デイ: リサージェンス』(2016)といった話題作に出演しています。
そんなチン・ハンが『ゴースト・イン・ザ・シェル』で演じているのは、元刑事のトグサ。
原作の設定としては、情報収集能力や洞察力に長けているのものの義体化率が最も低く、戦闘能力はあまり高くないというものですが、本作では一体どんなトグサ像となっているのか…楽しみですね。
サイトー / 泉原豊
1970年生まれの泉原豊さんはオーストラリアを中心に活動している俳優です。
話題となったスティーブン スピルバーグ、トム ハンクス製作指揮のドラマ『ザ・パシフィック』では出演の他にもミリタリーアドバイザーにも抜擢されるなど、戦争映画には欠かせない存在。
2017年6月公開が待ち遠しい!『ハクソー・リッジ』(2016)
『ウルヴァリン: SAMURAI』(2013)や『レイルウェイ 運命の旅路』(2014)へ出演している他、日本では2017年6月公開予定のメル・ギブソン監督作『ハクソーリッジ』でスタントマンとして活躍しているのだそうですね。
そんな泉原さんは、本作で狙撃のプロフェッショナルであるサイトーを演じています。各アニメ作品によってキャラ設定が微妙にことなっているため、今回はどんなサイトーなのか、そして日本での知名度が海外よりも低いという逆転現象が起きている泉原さんは一体どのように演じてくれるのかに注目が集まっていますね!
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』の監督と脚本家紹介
監督:ルパート・サンダース
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』で監督を務めるのはルパート・サンダースです。
元々はテレビ業界でCMディレクターとしてキャリアをスタートさせたルパート・サンダース。
『ゴースト〜』と視覚効果で類似点も見られる!
『スノーホワイト』(2012)
そんな彼が一躍注目を浴びたのは2012年に公開された『スノーホワイト』です。
日本でも観客動員数が29万人を突破、週末興行成績は約3億7000万円超に達し、初登場第1位を獲得するほどの大ヒットを記録しましたね。
短編作品は他にもあるものの代表作と言えば『スノーホワイト』1本のみというルパート・サンダースは、じつは『攻殻機動隊』の大ファンなんだとか。
監督曰く、この作品を「『酔いどれ天使』と『ブレードランナー』の混合」だと表現しているよう。
『酔いどれ天使』(1948)は戦後の日本を見事に描き出した傑作であると同時に、黒澤明監督と三船敏郎さんが初めてコンビを組んだ作品としても有名な作品です。
一方の『ブレードランナー』(1982)はリドリー・スコット監督の代表作で、レプリカントと呼ばれるアンドロイドをテーマにしたSFの傑作中の傑作。
『ブレードランナー』を引き合いに出すのは良く分かるのですが、果たして『酔いどれ天使』がどのように作用していくのか…興味深い所ではありますね。
脚本:ジョナサン・ハーマン、ジェイミー・モス
伝説のピップホップグループは必見!『ストレイト・アウタ・コンプトン』(2015)
ジョナサン・ハーマンの名を一躍世に知らしめたのは、2015年の映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』でしょう。
『ストレイト・アウタ・コンプトン』は、今なお熱い支持を受けている西海岸のヒップホップグループ“N.W.A”のグループ結成から解散、さらにはその後を描いている伝記映画。
脚本家の一人として参加したジョナサン・ハーマンは、2016年の第88回アカデミー賞で脚本賞にノミネートされ、注目を集めました。
一方、デヴィッド・エアー監督の『フェイク シティ ある男のルール』(2009)で脚本を務めたジェイミー・モス。
一説によるとマシュー・ヴォ―ン監督作の『X-MEN: ファースト・ジェネレーション』(2011)で当初は脚本に携わっていた(クレジットはされていない?!)という話もありますよね。(定かではありませんが…)
この2人が果たして士郎正宗さんの原作『攻殻機動隊』をどのように脚色し、オリジナリティを出しているのか…注目です!
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』のあらすじ
21世紀、第4次世界大戦後に世界は統一され、高度に科学技術が発展したアジアの巨大都市。
人間と機械の境が消えていく現実に直面して、人はサイバー・パーツで身体の保持のみならず、拡張をするまでに進化を遂げた…。
2069年。軍需企業ハンカ・ロボティクス社は、政府との共同の諜報部隊結成プロジェクトを行い、脳以外の全身を機械(サイボーグによる義体化)した人間兵器の開発に成功。
ハンカ社の極秘プロジェクトNo.2571の責任者オウレイ博士は、実験の成功に万感の思いを抱き、個体を愛しそうに見つめていました。
やがて、個体はミラ・キリアンと名付けられ、事実上ハンカ社の支配下にある電脳テロ犯罪を取り締まる公安9課に配属されると、「少佐」と呼ばれ多忙な任務に着任します。
ある日、少佐は未然に電脳テロ防止するため、アフリカ某国の大統領と、ハンカ社のオズモンド博士の会食を監視。
すると、オズモンド博士に給仕していた芸者ロボットが突如襲撃を始めます。少佐は公安9課の荒巻部長の制止もきかず、テロ襲撃現場へと突入。芸者ロボットや武装テロ集団の一掃に成功します。
しかし、すでにオズモンド博士は脳をハッキングされた後に、芸者ロボットに亡き者にされたいました。
まだ、動きを制止しない芸者ロボットを確認した少佐は留めの破壊をするが、「ハンカと組めば破滅する」と最後のメッセージを残します。
この戦闘で負傷を負った少佐はハンカ社で義体の蘇生手術を受けた後、自宅へと帰宅すると、自分と同じようなロボットを破壊した行為の喪失感と、残されたメッセージ、「ハンカと組めば破滅する」について考えていました。
それには他にも理由があり、この日もネコの幻影をが見えた少佐は、時折に自分が見てしまう幻覚と、何か関係性があるのではないかという捜査官としての直感…。
しかし、オウエン博士たちからは脳と身体の不具合で起こすバグである言われていることから、素直に信じる少佐は処方された脳と身体を適合の促進する薬を脊髄から注入すると公安9課へと向かいます。
荒巻部長が率いる公安9課では、少佐の同僚であるバトー、トグサ、イシカワ、サイトー、ラドリヤ、ボーマンの7人が集まり、芸者ロボット襲撃の黒幕は「クゼ」という男に操られていることを突き止めます。
軍のカッター長官は、荒巻に「クゼを探し出せ」と命令。バトーと少佐は、クゼの元へのデータ転送された芸者ロボットが押収されているハンカ社へ行きます。
そこで少佐はクゼの居場所を発見したいことから、危険な捜査である電脳ダイブで芸者ロボットの電脳の奥深くへと調査をします。
電脳内に残されたクゼを知るヒントを摑めたものの、クゼによって仕掛けられたトラップがあり、身の危険があった少佐だが、バトーとダーリン博士に助けられ無事に現実に生還。
少佐とバトーは電脳ダイブで突き止めた情報である、クゼがロボットの再プログラムを行ったサイバー・パーツの闇取引を行うクラブ「サウンドビジネス」に捜査へ向かいます。
無事に潜入捜査を始めた少佐とバトーでしたが、強面なやくざに不審者と気付かれますが、彼らを一網打尽にした彼らは、クラブのある建物の奥へと捜査をしていくます。
先陣を切って単独で潜入していた少佐は、建物の最奥部でクゼらしき人物を発見。しかし、その瞬間に爆弾が爆発。
少佐とバトーは負傷。これを機にバトーは義眼を装備することになります。
一方で軍のカッター長官は荒巻に、少佐を勝手に芸者ロボットへ電脳ダイブさせたことを責め立てます。公安9課は少佐があっての組織であること警告します。
さらに、クゼはハンカ社へと反撃を開始。極秘プロジェクトNo.2571に関わったダーリン博士を殺害。
公安9課メンバーがかけつけたが時既に遅く、次なるクゼの標的がオウレイ博士へと魔の手は伸びていました。
それを知った少佐とバトーたちは彼女の擁護に向かいます。
一方のクゼはゴミ収集車のドライバーの脳を遠隔操作すると、オウレイ博士の乗った自動車に追突させて抹殺を試みます。
車は横転したもののオウレン博士は無事。しつこく清掃員たちは彼女に向かい銃撃の弾丸を撃ちまくりますが、現場に到着した少佐とバトーは現場へ駆けつけ、オウレイ博士は一命を取り留めます。
その後、署内へと逮捕連行したドライバーを尋問で追い詰めますが、男の脳にはクゼが仕込んだ偽りの記憶しかありません。
しかし、公安9課もクゼの逆探知の特定に成功。しかし、直後ドライバーは、クゼの声で少佐にメッセージを残して生き絶えます。
少佐とバトーが現場へ急行。アジトの中には車座に座り込んだ何十人もの人間の心を介して、電脳空間に繋がれるようになっていてました。
映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』感想と評価
この作品は、もちろんご存知だとは思いますが、押井守監督の1995年に公開された、日本の劇場用アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の実写化です。
ハリウッド版との出来を比べて甲乙を述べることばかりが話題になっていますが、それはそれとして、今作品のみの評価で今回は注目をしてみましょう。
スカーレット・ヨハンソンが演じる草薙素子こと、少佐は、脳を除く身体の欠落によって自我を失いかけて不安を抱いています。
ゴースト・イン・ザ・シェルとは一言で言えば、身体を持たない脳が幽霊として生きる話です。
例えば、少佐が身体への執着を見せたのは彼女が街角で見つけた娼婦に、生身の人間であるか確かめた後、娼婦の身体を愛しそうに触れる場面がありました。
少佐が娼婦の顔に触れている行為に対して「どんな感じ?」と尋ねると、娼婦は「不思議な感じ…」と返答。
身体性を失った幽霊(脳)が生きている生身の人間(娼婦)に触れる、それは過去に自身も所有していた生身の人間の皮膚とはどのようなものだったのか。
また、現在は生身の人間に触れることは義体を通してでしか感じられない脳のみしか肉体を所有していないこと。
さらには、娼婦はその身体を最大の道具に商売することも、身体性の欠落した少佐にとっては触れることに大きな意味があるのでしょう。
身体を失い幽霊となってしまった脳。この時点での少佐は生きているのか死んでいるのか彷徨っているのです。
ましては彼女は自らの意思で望んで義体化の身体になったのではありません。
少佐はハンカ社の“人体実験”によって、身体から脳を隔離して義体化されてしまったからです。
映画の冒頭シーンでは、ハンカ社に移動式ベットで実験室に運ばれる場面で、草薙素子の右手は酸素マスクを外そうとしている様子が見られました。
彼女の身体は酸素低下を引き起こし、脳を解離させなくてはならないほど負傷していなかったと考えられないでしょうか。
もちろん、その場面では、実験へ向かうをアナウンスコール音声は、生命は危機的な状況であることを述べてはいました。
しかし、マスクを外そうをしていることから、少なくとも身体の全てが激しく損傷しているようには見えませんし、無理矢理に“人体実験”を行なったものでしょう。
ハンカ社という組織は常に義体化の人体実験のためには身体を探して行なっていたことは犯罪行為です。
しかしそのようなことも、手を組んでいた政府にとっては、反体制の犯罪行為を行なう集団の排除解体する目的もあり、“人体実験”ことは政府も了解済みで行われていたのです。
そんな義体化された少佐(草薙素子)をオウレイ博士は母親のように優しく慰める言葉がありました。それは9課に配属され任務を遂行する少佐の負傷した傷の手当する場面で見られます。
少佐が過去の記憶がフラッシュバックする悩みをオウレン博士に相談すると、過去の記憶を思い出せないことではなく、「人間であるかどうか決めるのは記憶の有無ではなく、これから何をするか」と言います。
少佐が自身の存在について、自我が生きているのか死んでいるのか悩みながら、人間か機械か、改造人間としての化け物なのか彷徨っていたのです。
物語の終盤に素子が愛しかった恋人からの犯罪行為への誘いに対して、彼女が“正義”の守るために任務を遂行することを決意して、拒否します。
草薙素子が過去に拘って生きる女性ではなく、人間として自立しながら、「今、何をするか」を達成しようとした瞬間です。
そのことは素子が母親に再会をした際に「もう、ここに来なくていい」と告げて母親から抱擁される場面でも覚悟を見せています。
また、9課の荒巻部長が任務を行なう少佐に対して、当初は電脳通信で任務遂行を管理されている組織として、集団行動が出来ない問題行動をとる人物だと認識。
9課メンバーの役割として、ハンカ社の送り込んだ義体化の人間としても半信半疑の存在だったのでしょう。
しかし、ラストシーンでは「少佐、お前に任せる」と、少佐への単独行動の任務を承諾します。
物語の冒頭の人体実験のシークエンスの後、少佐が犯罪現場に突入していく場面と類似させた高所からのダイブシーンで違いを見せた場面です。
少佐が過去の記憶や出来事に自分の存在の証を求めるのではなく、これから何をしていくのか、自分で決めていくと理解しているからです。
これらを通して草薙素子が成長した物語として帰結します。
この作品では、人間や義体化の真の価値観とは何んであるか。人間の価値を過去の生まれや育ちではなく、生きていることの意味は、今、何をしてどのように判断するかを人間の尊厳においていたのではないでしょうか。
つまりは、日本の足のない幽霊が怨念を抱えて、「うらめしや〜」と過去の出来事に拘らないことで、真の人間の持つ人生の経過を判断する姿勢を問いかけたのです。
なぜなら幽霊は「うらめしや〜」という恨みがこの世にないと存在しないものだからです。
少佐は過去を捨て人間になったことを観客に見せたかったことが、この映画のテーマだったのでしょう。
最後になりますが…、今作のルパート・サンダース監督は、作品について『ピノキオ』の持つ要素の類似性を見出していました。
記憶と『ピノキオ』については『歴史の未来』という映画でもその要素が見られ、お薦めの作品です。
まとめ
待望の実写映画化となった『ゴースト・イン・ザ・シェル』ですが、日本人からするとかなり不安要素が大きいというのが正直なところではないでしょうか。
そんな不安を抱くあなたに朗報を少しだけ。実はこの作品、アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995)を手掛けた押井守監督が撮影現場に足を運ぶなど、アドバイザー的立ち位置で関わっているようなのです。
押井監督は様々な現場を見た上で、主演のスカーレット・ヨハンソンに高評価を与え、攻殻機動隊という作品群の中で一番ゴージャスな作りになるのではとの予想も口にしているのだとか。
熱狂的なファンが多いアニメシリーズ多いだけに、厳しい目で見られることも予想されますが…一体どのような仕上がりになっているのでしょうか?!
注目の劇場公開は2017年4月7日(金)より始まります!ぜひ劇場で確かめましょう!