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Entry 2021/09/14
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映画『GEEK BEEF BEAT』あらすじ感想と評価解説。ラッパーの狐火を主演に鳥皮ささみ監督が脳内でラップにする男と家族の絆を描く|インディーズ映画発見伝19

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

連載コラム「インディーズ映画発見伝」第19回

日本のインディペンデント映画をメインに、厳選された質の高い秀作を、Cinemarcheのシネマダイバー 菅浪瑛子が厳選する連載コラム「インディーズ映画発見伝」

コラム第19回目では、鳥皮ささみ監督の映画『GEEK BEEF BEAT』をご紹介いたします。

劇団「なかないで、毒きのこちゃん」主宰で劇作家・演出家の鳥皮ささみの初監督作。

ラッパーとして活動する狐火が家族から邪険にされ、仕事でも言いたいことが言えず、脳内でラップをすることで鬱憤を晴らす男を演じました。ありふれた日常とラップの斬新さに心が掴まれる映画です。

【連載コラム】『インディーズ映画発見伝』一覧はこちら

映画『GEEK BEEF BEAT』の作品情報

【公開】
2020年(日本映画)

【監督・脚本】
鳥皮ささみ

【キャスト】
狐火、山口まゆ、内田慈、蒼波純、亀岡孝洋、植田祥平、久我真希人、古木将也、森田ガンツ

【作品概要】
鳥皮ささみ監督は劇団「なかないで、毒きのこちゃん」主宰として舞台を中心に演出、劇作家として活動。脚本家として参加した映画『ドキ死』(2018)がMOOSIC LAB 2018短編部門グランプリを受賞。その後初監督作となった『GEEK BEEF BEAT』(2020)がMOOSIC LAB 2019で上映されました。

主演を務めるのは福島県出身のラッパー狐火。映画『cat fire』(2018)にて初主演を果たします。斎藤工監督映画『COMPLY+-ANCE コンプライアンス』(2020)の主題歌も担当しています。

その他娘役には『樹海村』(2021)の山口まゆ、妻役には『SEASONS OF WOMAN』(2020)の内田慈が務めます。

映画『GEEK BEEF BEAT』のあらすじ

宮城県の片田舎。妻の雪子(内田慈)と中学生になる娘の花(山口まゆ)と暮らす36歳の東野春男(狐火)は、口下手で家で邪険に扱われています。毎朝妻に理不尽に怒られ、娘を起こしに行くと出ていけと言われます。

職場でもはっきり言いたいことを言わない、都会から田舎に帰ってきた春男のことを職場の人々はよく思っていません。

そんな春男の唯一の楽しみは現実では言えない日頃の鬱憤を脳内でラップにすることでした。

ありふれた冴えない日々を送る春男でしたが、娘は学校に行かず、家族には危機が迫っていました…

映画『GEEK BEEF BEAT』の感想と評価

毎朝妻には「なんで起こしてくれないの?」と怒られ、何か言っても聞いてもらえず一方的に理不尽に怒られる日々。次第に春男は何も言い返さなくなります。

体調が悪いとしか言わない娘に対しても本当は体調は大丈夫なのか、何故学校に行かないのか、心配している春男ですが、その気持ちを上手く伝えられません。

会社においても、春男は社長ではありますが、従業員からはよく思われていません。あまり仕事をせず無駄話をしている従業員に注意をしようと思ってもうまく言えず、さらに従業員から何も言えないだめな社長だと思われてしまいます。

家族、社会においても立場がなく、言いたいことを言って衝突したり、傷つくことよりは受け流すことを選んだ春男。日頃の鬱憤を脳内でラップにして気分を晴らすことで何とか日々を送っています。

ありふれた春男の日常とアンバランスなラップの場面が印象的です。しかし、“自分の娘が学校に行けなくなっているという家族の危機”に対面した時も、春男は何も言えませんでした。

一方、妻の春子は、モンスターペアレントとも言われかねない勢いで学校側に追及します。その姿を見て春男は思いがけない行動に出るのです。解決策にならないかもしれない、それでも思いを伝えることの大切さに気づくのです。

自分の鬱憤を晴らすため、口では言えないことを脳内でラップにしていた春男が、口にして伝えようと一歩踏み出した春男の姿に家族の絆が強まっていきます。

ありふれた日常を描く場面と非日常のラップの場面の斬新さがこの映画の面白さになっています。

また、ラッパーの狐火は自身の楽曲でも「28才のリアル」、「29才のリアル」と年齢ごとのリアルな感情をリリックにのせて歌ってきました。そんな狐火が本作の楽曲を担当し、リアルな心情を歌い上げます。

リアルな爽快感、日常の鬱憤を晴らしてくれるような爽快感、そして茶目っ気のあるエンディングまで楽しめる一作になっています。

まとめ


鳥皮ささみ監督(C)Cinema Discoveries

劇団「なかないで、毒きのこちゃん」主宰で劇作家・演出家の鳥皮ささみの初監督作『GEEK BEEF BEAT』。

36歳の春男のありふれた日常と現実では言えないことを脳内でラップにするコミカルな演出。またラッパーである狐火が書き下ろしたラップにも大注目です。

鳥皮ささみTwitter
狐火Twitter

次回のインディーズ映画発見伝は…


(C)手塚プロダクション

次回の「インディーズ映画発見伝」第19回は、坂口安吾原作小説を浅野忠信主演で手塚治虫の長男である手塚眞監督が映画化した『白痴』を紹介します。

次回もお楽しみに!

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