Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ホラー映画

Entry 2021/08/23
Update

映画『人肉村』ネタバレあらすじ感想と結末考察。ホラー界の新境地でワトソン兄弟の悪夢のような恐怖を描く

  • Writer :
  • 金田まこちゃ

人肉を食べる兄弟に捕まった男女4人が体験する血みどろの恐怖を描いた映画『人肉村』

デヴィッド・フィンチャーや三池崇史を尊敬する、カナダの新鋭監督エイドリアン・ラングレーが、サスペンスの名作『セブン』(1995)を意識して製作したと言われる映画『人肉村』。

執拗に獲物を追いかけてくるワトソン兄弟も怖いですが、そもそも、このワトソン兄弟とは何者なのでしょうか? ワトソン兄弟の長男オーウェン演じるサイモン・フィリップスの怪演が光ります。

世界各国のファンタステック映画祭で高い評価を得ている、映画『人肉村』の魅力をご紹介します。

映画『人肉村』の作品情報


(C)2020 UNIT XIX INC ALL RIGHT RESERVED

【日本公開】
2021年公開(カナダ映画)

【原題】
Butchers

【監督・脚本】
エイドリアン・ラングレー

【共同脚本】
ダニエル・ワイセンベルガー

【キャスト】
サイモン・フィリップス、マイケル・スワットン、ジュリー・メインビル、アン=キャロライン・ビネット、ジェームズ・ヒックス、フレデリック・ストーム、ニック・アラン、サマンサ・デ・ベネデ、ブレイク・キャニング、ジョナサン・ラージー

【作品概要】
車の故障で孤立した4人の若者が、殺人一家である、ワトソン兄弟に遭遇したことで始まる、悪夢のような恐怖を描いたホラー映画『人肉村』。

ワトソン兄弟の長男オーウェンを、『ゲヘナ』(2019)『レベル15』(2015)などの、サイモン・フィリップスが怪演しています。

カナダのTV界で若手演出家兼カメラマンとして注目されていた、エイドリアン・ラングレーが、製作、監督、脚本、撮影、編集を手掛け、本作でホラー作品デビューを果たしています。

映画『人肉村』のあらすじとネタバレ


(C)2020 UNIT XIX INC ALL RIGHT RESERVED

レジャーから帰宅している、ジェナ、テイラー、マイク、クリスの4人の若者。

クリスは車内ではしゃいでおり、ジェナ達をカメラで撮影しています。

運転しているマイクは不機嫌で、クリスの撮影を何度も止めさせようとします。

マイクと恋人関係にあるジェナも、マイクがテイラーと浮気をしていることを知っており、終始不機嫌な表情を浮かべています。

順調に車は走っていましたが、突然ラジエーターが故障し、車が動かせなくなります。

困ったマイクは、近くのガソリンスタンドを探して、テイラーと2人で歩き始めます。

残されたクリスとジェナは、2人の帰りを待ちますが、その間にジェナがトイレに行きたくなります。

草むらに入ったジェナは、草木に張り巡らされていたワイヤーに引っ掛かります。

それは、近くに住む殺人一家、ワトソン兄弟が張った罠で、次男のオズワルドは、ジェナの存在に気付きます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『人肉村』ネタバレ・結末の記載がございます。『人肉村』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2020 UNIT XIX INC ALL RIGHT RESERVED

ガソリンスタンドを探していたはずのマイクとテイラーは、草むらでキスをしていましたが、何者かに写真を撮影されます。

不気味に感じながらも、マイクとテイラーは「ワトソンのガソリンスタンド」へ辿り着きます。

そこには、オーウェンと名乗る男がいましたが、マイクは「ラジエーターは、ここには無い」と伝えられます。

その代わりに、レッカー車を呼んでもらうことになりますが、喋り方や仕草が不快なオーウェンを、テイラーが毛嫌いし、1人で出て行ってしまいます。

ガソリンスタンドに1人残されたマイクは、レッカー車の到着を待っていましたが、オーウェンに背後から殴られて気絶します。

その後、ガソリンスタンドに戻って来たテイラーも気絶させたオーウェンは、ボロボロのトラックにテイラーを乗せて何処かに走り出します。

マイクとテイラーを待っている間、オズワルドに写真を撮られたクリスとジェナは、オズワルドを追いかけます。

その途中で、クリスはマイクとテイラーの浮気現場を撮影した、写真を見つけます。

クリスが、恋人のテイラーに裏切られたことを悲しんでいると、草むらからオズワルドが現れ、クリスは刃物で切り付けられます。

クリスはジェナを逃がしますが、オズワルドに両足を切られ、動くことすら出来なくなります。

逃げたジェナは、通りかかったボロボロのトラックに助けを求めます。

しかし、それはオーウェンのトラックで、乗り込んだジェナも捕まってしまいます。

ジェナが目を覚ますと、テイラーと共に両手を拘束され、ミートフックに吊るされた状態になっていました。

オーウェンは、ワトソン兄弟の長男で、ジェナとテイラーに「ここで、俺達に逆らったらどうなるかを見せる」と言います。

すると、オズワルドがクリスを連れて来て、ジェナとテイラーの前でクリスの首をへし折ります。

オーウェンは、この周辺を通る人を捕まえて肉に加工し、ワトソン兄弟の三男、オックスフォードの食糧にしていました。

オックスフォードは危険な存在の為、常に牢屋に入れられており、不気味なうめき声が小屋中に響いています。

オズワルドはクリスを食料にする為、小屋の外に出て行きます。

オーウェンもガソリンスタンドに戻り、捕まえたマイクに拷問を加えて楽しんでいました。

ジェナは、拘束具が古くなっていることに気付き、ワトソン兄弟がいなくなった隙をついて、テイラーと共に拘束具を破壊し逃げ出します。

逃げたジェナとテイラーは、故障した車の場所に戻りますが、そこにはレッカー車のドライバー、ウィラードがいました。

ジェナとテイラーは事情を話し、ウィラードに、近くの街まで逃がしてもらうことになります。

ですが、実はウィラードはワトソン兄弟の親戚で、ジェナとテイラーはワトソン兄弟の小屋に連れ戻されます。

さらに、逃げたことに怒り狂ったオズワルドが、テイラーの首を斬り、殺してしまいます。

ウィラードは、ジェナを部屋の中に閉じ込めます。

ウィラードは、感情的になってテイラーを殺したオズワルドを怒り「お前は馬鹿だ」と罵ります。

ジェナが閉じ込められた部屋には、セレステという女性もいました。

セレステは数か月前にワトソン兄弟に捕まり、性欲のはけ口とされていた為、ワトソン兄弟の子供を妊娠していました。

ジェナは、逃げ出した時に手に入れた刃物を隠し持っており、それで縛られたセレステを助けようとしますが、ジェナが目を離した瞬間に、セレステが自分に刃物を突き刺し、死んでしまいます。

そこへオズワルドが小屋に入って来て、セレステの死にショックを受けます。

ジェナは、その隙にオズワルドへ刃物を突き刺し逃げ出します。

小屋の外には、戻って来たオーウェンのトラックが停められていました。

トラックへ逃げ込んだジェナは、縛られてトランクに入れられていたマイクに気付き、助け出します。

そのまま逃げようとしたジェナですが、トラックの中に置いてあった銃を見つけたマイクが、ワトソン兄弟に復讐する為、小屋に戻ってしまいます。

ジェナもマイクを追って小屋に戻ると、マイクがオーウェンを射殺していました。

しかし、小屋に残っていたウィラードが襲いかかってきて、マイクに刃物を突き刺し殺します。

ジェナは落ちた銃でウィラードを射殺し、トラックの場所に逃げ出します。

オーウェンとウィラードがやられたことで、オズワルドはオックスフォードを解き放ちます。

不気味な容姿のオックスフォードは、凄まじいスピードでジェナを追いかけてきます。

ジェナは、間一髪でトラックに逃げ込み、助かったかと思われましたが、オズワルドが銃を撃って窓を割り、窓から入って来たオックスフォードに食い殺されてしまいます。

映画『人肉村』感想と評価


(C)2020 UNIT XIX INC ALL RIGHT RESERVED

ホラー映画のお馴染みの要素として「殺人一家」「食人」という要素がありますが、新たな食人一家の恐怖を描いたのが、映画『人肉村』です

こういった作風のホラー映画で、重要な部分となるのが、殺人一家のキャラクターとなります

殺人一家で言えば、映画『悪魔のいけにえ』(1974)に登場する、レザーフェイスが代表的ですね。

では『人肉村』の殺人一家、ワトソン兄弟はどうか?と言うと、やはりレザーフェイスほどのインパクトは無いですが、見事に、それぞれのキャラは立っています

まず、長男のオーウェン。

彼は兄弟の中で一番社交性のある男で、憎たらしい程、口が立ちます

自身が営んでいるガソリンスタンドに、迷い込んで来た人を捕獲し、小屋に連れ去る役割を持っています。

シェイクスピア作品を暗記しているなど、かなり知的で頭がいいのですが、獲物になった人間を「肉の塊」と呼び、ジェナの髪の匂いをおもいっきり嗅ぐなど、絶妙な気持ち悪さを兼ね備えています。

次男のオズワルドは、オーウェンとは対照的に、獣のような男です。

オーウェンの言いなりになっており、命令されたことは着実に行うだけでなく、平気で人に刃物を突き刺す残虐性も持っています

と言うより、罪の意識そのものが無いようで、オーウェンはオズワルドを馬鹿にしながらも、狂っている部分を感じて、恐怖を抱いているようです

そして三男のオックスフォードは、怪物のような容姿をしており、もはや人間なのかも判別できません

オーウェンもオズワルドも人の肉は食べませんが、捕まえてきた人達を、このオックスフォードの食料にしているようです。

また、女性であれば監禁し、兄弟の性欲のはけ口にされてしまうので、絶対に関わりたくない兄弟です。

このワトソン兄弟に捕まってしまった、ジェナたち4人の若者が「果たして、逃げ出せるのか?」というのが、本作の見どころとなっています。

逃げたと思っても、また兄弟の小屋に連れ戻されてしまうなど、『悪魔のいけにえ』のような展開が続くのですが、最終的にジェナはオックスフォードに食べられてしまいます

エイドリアン・ラングレーは『セブン』のタッチを狙ったことを公言していますが、ラストのカメラワークは、『セブン』のラストにかなり近いですね

とは言え、ジェナは助かると思ったので、このラストには驚愕しました。

ただ、考えてみると、ブレーキのような役割を果たしていた長男のオーウェンと、親戚のウィラードが死んでしまった為、残されたのは、罪の意識を持たない、狂人のオズワルドと、オズワルドの言うことだけを忠実に聞く怪物、オックスフォードだけとなりました。

ワトソン兄弟の中でも、最凶の2人が残ってしまった訳ですが「この後に、彼らはどんな生活を送るのか?」とか想像すると、このラストシーンはかなり怖いですね。

まとめ


(C)2020 UNIT XIX INC ALL RIGHT RESERVED

ワトソン兄弟のキャラが目立つ、映画『人肉村』。

どうやらワトソン兄弟にとって、亡くなった母親が大きな存在となっていたようです

本作の冒頭でオーウェンは「母は厳しかったが、公平だった」と語っていますが、兄弟を見る限り、とてもそうは思えません。

さらにウィラードからも「お前らが生きていられたのも、母親のお陰」と言われていますが、この3人兄弟を育てた母親は、どんな女性だったのでしょうか?

殺人が母親の教えなのか? それとも、母を亡くし生きていく術として、殺人を始めたのか?など、ワトソン兄弟はまだまだ謎が多いです。

そんな謎の存在に捕まえられ、命を握られるという『人肉村』の展開はかなり怖いですし、不快な作品と言えますが、そこが魅力となっていますね


関連記事

ホラー映画

こどもつかいキャストとあらすじ!滝沢秀明映画の舞台挨拶や試写会は?

“悪いオトナに「死」を届ける…簡単なおつかい…” 『呪怨』の清水崇監督が再び世界を震撼させる究極のホラー映画『こどもつかい』をご紹介します。 CONTENTS映画『こどもつかい』の作品情報映画『こども …

ホラー映画

樹海村ネタバレ感想|犬鳴村の遼太郎&明菜の再登場シーンを考察解説!“別世界線”説からみえる避けがたき呪いと死

映画『樹海村』は2021年2月5日(金)より全国ロードショー公開! 2020年に大ヒットした『犬鳴村』に続く「恐怖の村」シリーズ第2弾であり、「自殺の名所」と知られる富士・青木ヶ原樹海、インターネット …

ホラー映画

映画『真・鮫島事件』ネタバレあらすじと感想考察。ガチ怖を解説するとオンラインを使用する若者たちの呪いと運命が深掘りができる⁈

新たな鮫島事件『真・鮫島事件』は2020年11月27日(金)より全国公開 2001年に、ある書き込みがキッカケで、インターネット上で様々な憶測が飛び、「語ってはならない事件」として都市伝説化した「鮫島 …

ホラー映画

映画『ハッピーボイスキラー』感想とラスト考察。動画無料視聴方法も

アメリカ版ポケットモンスターにて、ピカチュウの声優を担当することが決まったライアン・レイノルズ。 デッドプールでやりたい放題のうえ、愛嬌あるピカチュウを演じるなんて…と、考えるだけで不安な方の気持ちを …

ホラー映画

映画『ポゼッション』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

その怪物を生んだのは、愛か…狂気か…。 フランス映画界の至宝イザベル・アジャーニの咆哮が響き渡る『ポゼッション』をご紹介します。 CONTENTS映画『ポゼッション』の作品情報映画『ポゼッション』のあ …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学