映画『ビルド・ア・ガール』は10月22日(金)より全国ロードショー!
毎日に悶々とした平凡な女子高生が、音楽ライターとなり想像もしなかった様々な世界を見ていく姿を描いた映画『ビルド・ア・ガール』。
イギリスのジャーナリストによる小説を原作とした本作は、90年代イギリスの華やかな音楽業界に飛び込んだ一人の少女が、音楽ライターとして活躍する中で自身の立場に悩みながらも成長していくさまを描いた物語。
原作者のキャトリン・モランが脚本を担当、イギリスのコーキー・ギェドロイツ監督が作品を手掛けます。またキャストには若手のビーニー・フェルドスタインのほか、イギリスの俳優陣が脇を固めています。
映画『ビルド・ア・ガール』の作品情報
【日本公開】
2021年(イギリス映画)
【原題】
HOW TO BUILD A GIRL
【監督】
コーキー・ギェドロイツ
【キャスト】
ビーニー・フェルドスタイン、パディ・コンシダイン、サラ・ソルマーニ、アルフィー・アレン、フランク・ディレイン、クリス・オダウド、エマ・トンプソン
【作品概要】
1990年代イギリスの音楽業界に飛び込んだ一人の平凡な女子高校生が、辛口音楽ライターに変貌を遂げながらも、人生に悩みながら成長していく姿を描ぎます。原作はイギリスでジャーナリスト、作家とマルチに活動するキャトリン・モランの小説。
『嵐が丘』(1939)『Stella Does Tricks(ステラの企み)』(1996)のコーキー・ギェドロイツ監督が作品を手掛け、原作者のモランが脚本を担当します。
『レディ・バード』(2017)『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』(2014)などのビーニー・フェルドスタインが主人公のヒロインを担当、他にも『マイ・ベスト・フレンド』(2015)などのパディ・コンシダイン、『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011)などのアルフィー・アレン、『いつか晴れた日に』(1995)などのエマ・トンプソンら、イギリスの俳優陣が名を連ねています。
映画『ビルド・ア・ガール』のあらすじ
1993年、平凡な日常に悶々とした日々を送っていたジョアンナ(ビーニー・フェルドスタイン)は、家族7人でロンドン郊外に住む16歳の想像力豊かで文才に恵まれた女子高生。
ある日詩のコンテストで自分の作品が受賞候補に選ばれるも、テレビ出演で緊張し大恥をかいた揚げ句に、家族崩壊の危機に陥ります。
この現状を打開すべく奮起したジョアンナは、音楽情報誌「D&ME」のライター募集に応募。一人でロンドンにのり込み強気に攻めることで、ついにライターの仕事を得ることに成功します。
そしてそれまで見たことのない音楽の世界に魅せられる中、取材で出会ったロックスターのジョン(アルフィー・アレン)に夢中になります。
ライターへの道は紆余曲折しながらも、ついに時の人へと変貌を遂げるジョアンナ。ジョンへの思いが、以後のその道に大きな波紋を呼ぶとも知らずに…
映画『ビルド・ア・ガール』の感想と評価
本作のファンタジックな雰囲気を醸し出しながらドギツいブラックユーモアを織り交ぜた展開からは、イギリス作品らしいコメディテイストをたっぷりと味わうことができます。
一方で、本作には現代社会に向けての重要な課題の提起も見られます。それはメディア、マスコミといった存在の恐ろしさという点にあります。
80年代初頭は音楽が世界的、社会的に大きな関心を集めました。特にこの時代のイギリスではMTVの出現に伴い、プロモーションビデオを活用した斬新なプロモーション展開で、イギリス出身のアーティストたちがいわゆる「ブリティッシュ・インベージョン」なる勢力をもって世界に侵攻していきました。
こういった動きの裏で、同国ではインディーズでの音楽制作に携わるミュージシャンも多く存在しており、80年代に台頭した多くのアーティストたちが徐々に注目を失っていく一方で、地道に活動を続け、彼らが日本の音楽メディアからインタビューを受ける際などでは、本国のメディア露出を風刺するようなコメントも多く見られる傾向にありました。
劇中で主人公ジョアンナが1990年代の音楽シーンに飛び込む序章に出会ったバンド、マニック・ストリート・プリーチャーズは、イギリス・ウェールズ出身の実在のバンド。
デビューアルバム『ジェネレーション・テロリスト』をリリースする前に「30曲入りの2枚組のデビューアルバムを発表し、世界中でナンバーワンにして解散する」などといった刺激的なコメントを発表し、メディアからは物議を醸しました。
このように、この時代のイギリスは音楽的には現在でも支持者を集めるクリエイター的な側面を持つ一方で、刺激的なコメントやキャッチフレーズ、プロモーション展開でリスナーたちを挑発、それに対しメディアが様々な批評を加えるという、創作の現場とは全く関係ない場面での衝突があちこちで見られました。
ジョアンナはアマチュアの文筆からいわゆるプロの「音楽ライター」へと変貌を遂げていくわけですが、物語の展開ではある意味純粋な音楽リスナーの視点を持ち、音楽と接していきます。
ところが彼女は音楽ライターとして活動するにあたって付きまとう様々なしがらみに悩まされ、自身の正直な感性にまで背を向けていくことになります。
その結果彼女が大きく被った喪失感は、まさに「正直な自分」を失ったことにあります。
音楽を楽しむリスナーたちは、感性を捻じ曲げて描かれたアーティスト像に対して音楽を聴く前から彼らへの興味を失い、悪評によってアーティストたちは自身の創作意欲をそぎ落とされる……。
こうした状況に置かれる彼女の姿は、メディアやマスコミというものが人々の意識をコントロールするという危惧があることを示しているようでもあります。
オンライン化が社会的に急速に広がっている現在。「知りたい」と思う現場の様子を直に知ることができない様々な要因がはびこる中で、本作は音楽に限らずメディアやマスコミという媒体を介して、人々が遠くのことを知るということに強い不安をおぼえさせられます。
そして人々はどうメディアやマスコミというものに向き合っていくべきなのかを、深く考えさせられるものとなっています。
まとめ
主演のビーニー・フェルドスタインは、本作では非常に地味な表情を見せたオープニングから、徐々に派手なルックスで奔放な性格を持った女性へと変貌する姿を見せています。
フェルドスタインは、プライベートではクィア(性的少数者、彼女の場合は同性愛者であることを示す)であることを公言しており、ガールフレンドであるプロデューサーのボニー・チャンス・ロバーツとの仲睦まじいツーショット写真を公に堂々と公開していることなどもよく知られています。
決して美人とはいえないながらも、時にキュートでセクシーと思わせる彼女のルックスは、日本のタレントである渡辺直美を彷彿するところもあり、どこかユーモラスな雰囲気を持ちながらも、同性から強い支持を集められそうな雰囲気もあります。
こうした彼女の本質的な一面は、主人公ジョアンナの人間像作りにも大いに反映されているようです。本作に彼女が出演したことは、それだけでも大きな意味があり、今後の出演作にも大いに期待できるところであります。
ジョアンナが高い文才を持ちながらもそれを存分に発揮できないもどかしさに悶々とする表情、対して大きく頭角を現し輝いていく表情。
彼女が劇中で演じたジョアンナからは、映画から発せられるメッセージを深く考えざるを得ないでしょう。
映画『ビルド・ア・ガール』は10月22日(金)より全国ロードショー!