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Entry 2021/07/26
Update

鬼滅の刃名言/名場面集|柱稽古編/無限城編:ネタバレ有で冨岡の過去×産屋敷の最期を解説【鬼滅の刃全集中の考察21】

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

連載コラム『鬼滅の刃全集中の考察』第21回

大人気コミック『鬼滅の刃』の今後のアニメ化/映像化について様々な視点から考察・解説していく連載コラム「鬼滅の刃全集中の考察」。

今回は「柱稽古編/無限城決戦編」の名言・名シーンをを紹介・解説していきます。


(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

来るべき決戦に備え、隊内の戦力底上げを目的とする「柱稽古」が実施されることとなった鬼殺隊。

炭治郎は稽古の中、冨岡をはじめ柱たちの知られざる想いや過去に触れ、時にその想いに寄り添い、時にその想いに感化されていきます。しかし産屋敷邸を鬼舞辻無惨が襲撃し、これを機に鬼殺隊と鬼たちの雌雄を決する戦いに突入していきます。

柱たちの過去や想いにまつわる名言や、産屋敷の最期の言葉など、胸を打つセリフの数々をご紹介していきます。

【連載コラム】『鬼滅の刃全集中の考察』記事一覧はこちら

「義勇さんは錆兎から託されたものを繋いでいかないんですか?」

炭治郎は柱稽古に参加しようとしない“水柱”冨岡義勇を説得するよう、産屋敷輝哉に託されます。初めは炭治郎を邪見に扱う冨岡でしたが、執拗に追いかけてくる炭治郎に根負けした冨岡は、自身が「他の柱とは違う」その理由を明かします。

冨岡は共に鱗滝の下で修業した少年・錆兎と共に鬼殺隊への最終選別に挑みました。そして多くの隊士候補を助け、最後には自らの命を落とした錆兎に対し、何もできずに生き残っただけの自身は選別を突破できていないと冨岡は捉え、自身を“柱”どころか“隊士”ですらないと決めつけていました。

その事を知った炭治郎は冨岡の苦しみを感じながらも、心に浮かんだこの言葉を投げかけます。

かつて炭治郎を導いた錆兎と冨岡の意外な関係、冨岡がずっと抱いていた心の傷が明かされる重要な場面であり、炭治郎のこのセリフは冨岡の心の傷を払拭するきっかけをもたらした名言でもあります。かつて煉獄の死に際し、彼から「炎」の想いを託され繋ごうと必死な炭治郎だからこそ、この言葉がその心に浮かび上がり、同時に冨岡へ「気付き」を与えることができたのかもしれません。

「お前も繋ぐんだ 義勇」

前述の炭治郎の言葉を聞いた冨岡は、かつての錆兎との会話を思い出します。

幼き日の冨岡は鬼に襲われ、祝言(結婚)を控えた姉・蔦子に守られて生き延びました。しかし蔦子は鬼に殺されたため、冨岡は姉に代わって自身が死ねばよかったと錆兎の前で口にしてしまいます。錆兎は冨岡の頬を叩き、姉は全て承知で冨岡を守ったのだと説いた上で「お前がお前の姉を冒涜するな」と叱咤し、この言葉を続けました。

奇しくも時を経て、同じ内容の言葉を炭治郎に投げかけられ、当時錆兎に叩かれた時の頬の痛みを思い出した冨岡は、最終選別後に錆兎の死を知り、悔しさと悲しさから彼の言葉を忘れてしまっていたことも自覚。冨岡は亡き姉・蔦子と亡き友・錆兎という人を守ろうとしこの世を先に去った二人の想いを繋ぐためにも、“柱”として戦おうと決意します。

亡き友の言葉から決意へと至る感動的な場面であり、真の意味での「“水柱”富岡義勇」が誕生するこの場面。一方でこの場面の直後に描かれた、冨岡の回想の間に変な勘違いをし、彼にざるそばの早食い勝負を持ち掛ける炭治郎と、疑問に思いながらもなぜかその勝負に応じる冨岡のコミカルな場面も忘れてはいけません。

「認められては困ります」/「誰が何と言おうと私は君を認める」

柱稽古に参加した炭治郎は、「鬼殺隊最強」とも称される“岩柱”悲鳴嶼行冥の元へ。その中で悲鳴嶼は刀鍛冶の里での戦いにて、「妹・禰豆子の命」と「里の民たちの命」の選択を迫られた際、迷わず民たちを助けた炭治郎の行動を称賛し「君を認める」と評します。

しかし炭治郎は、自身が禰豆子の命を選択しようとしていた事、禰豆子に背を押される形で民を助けたことを包み隠さず説明し、「認められては困ります」と投げかけます。

それに対し、悲鳴嶼は疑いが晴れたと言いながら「誰が何と言おうと私は君を認める」と口にします。実は悲鳴嶼は里でのできごとの真相を知りながら敢えて賞賛し、炭治郎の真意を確かめようとしていたのです。その理由を尋ねる炭治郎に、悲鳴嶼は自らの過去を明かします。

入隊前は自身が育った寺で孤児たちの世話をしていたが、その孤児達の内の一人が自身のみが助かるために寺へ鬼を招き入れ、他の孤児たちも悲鳴嶼の言葉を虚しく惨殺されてしまったこと。そして唯一生き残った孤児も、事実とは異なる「嘘」を周囲に話し、結果悲鳴嶼は孤児らを殺した殺人犯として投獄されてしまったこと……人間は本質的に自己の保身のため「嘘」を吐くと思い知らされた悲鳴嶼は、それ故に炭治郎の素直な言葉に感銘を受け「認める」と口にしたのです。

自身を飾らない炭治郎らしさ、何より壮絶な過去を持つからこそ炭治郎の本質を見極め、賞賛できたという悲鳴嶼の“柱”としての威厳と人間性が描かれた場面です。またこの悲鳴嶼の壮絶な過去が、後の物語展開における伏線となっているのも注目です。

「これは絶対に俺がやらなきゃ駄目なんだ」

“岩柱”悲鳴嶼による稽古を終え、新たな稽古を受けるため次の“柱”の下へ向かう炭治郎は、訓練を続けている善逸に挨拶へ向かいます。

しかし訪ねた善逸は、いつもと雰囲気が異なっていました。心配しながら何があったと尋ねる炭治郎に「やらなきゃいけないことがはっきりした」と答える善逸。それに対していつものように助力を申し出る炭治郎ですが、善逸はこの言葉を返します。

あまりにいつもと様子が違う善逸ですが、稽古の途中で受け取ったある手紙が原因となっており、なぜそこまで善逸の心境を変えてしまったのかは後の物語で明らかになります。

普段は弱音ばかり吐いている善逸の真剣な表情と力強い言葉から、彼の相当な覚悟が感じられるこの場面。またこの言葉を放った善逸は額から血を流しており、恐らく手紙で受けた知らせに感情を抑えきれなかった結果と考えられます。善逸の張り詰めた表情に気が引き締まり、今後の激闘を予感させられる名言です。

「永遠というのは人の想いだ 人の想いこそ永遠であり不滅なんだよ」

鬼殺隊の本拠地「産屋敷」を突き止め、隊の現当主・輝哉の前に姿を現した鬼の首魁・鬼舞辻無惨。輝哉は無惨と言葉を交わす中で、「永遠を夢見ている」と彼の心中を言い当てます。そして無惨の考える「永遠」が「自身の不滅」であることに対し、輝哉はこの言葉で無惨の「永遠」を否定します。

不老不死の鬼と限りある命を生きる人間との戦いを描いた『鬼滅の刃』。作中では鬼と人間における物事の価値観の違いがたびたび描写されていますが、輝哉と無惨の思う「永遠」の違いはまさに鬼と人間の価値観の違いの極致であり、「想いを繋ぐ」という点がテーマの一つとして描いている本作にとって、この輝哉の名言は非常に意味深いものに感じられます。

またのちに自身の命を引き換えに、無惨の居場所を“柱”たちや炭次郎に知らせた輝哉の行動はいかに仲間を想い信じているかを体現しており、この名言の深みを強めているといえます。

「これで私を追い詰めたつもりか? 貴様らがこれから行くのは地獄だ!!」/「地獄に行くのはお前だ無惨 絶対に逃がさない必ず倒す」

輝哉の命を賭した行動によって無惨の居場所を知った“柱”たちや炭治郎は無惨の元へ殺到し、彼を追い詰めようとします。

しかし無惨は自らの根城「無限城」へと誘い込み、散り散りになっていく“柱”や炭治郎に対し勝ち誇ったように「これで追い詰めたつもりか?〜」と声高に叫びます。その無惨の言葉に対し、炭治郎は無限城へと落ちてゆきながらも「地獄に行くのはお前だ無惨〜」とと叫び返します。

無限城での最終決戦、そして因縁ある炭治郎と無惨の戦いの火ぶたが切って落とされたことを象徴する名言であり、宿敵を前に感情を爆発させ叫ぶ炭治郎はもちろん、無惨が狂気の笑みを浮かべているのも印象的です。

これから始まる壮絶な戦いが、鬼殺隊と鬼の互いの存亡を賭けたまさに「決戦」となることがひしひしと伝わってくる名言です。

「この羽織に見覚えはないか」

無限城の中で、“蟲柱”胡蝶しのぶは“上弦の弐”こと童磨と遭遇。童磨の容姿や喋り方、用いる武器から自身の姉・胡蝶カナエを殺した鬼であることに気が付きます。

信仰宗教の教祖を隠れ蓑に生きてきた童磨の「人間を食べてその者の命を救済する」という身勝手な理屈に怒りを露わにするしのぶ。そんな彼女に対し「つらいことがあったんだね、話してごらん」と口にする童磨に、しのぶの怒りは頂点を超えこの言葉を口にします。

これまで怒りを覚えても常に微笑によって隠していたにも関わらず、この場面では顔に青筋を浮かべながらその怒りを叫んだしのぶ。いつもの穏やかな口調から一変激しい口調で激昂する様には、彼女の怒りの激しさが理解できます。

「関係ありません 立ちなさい 蟲柱 胡蝶しのぶ」

“上弦の弐”童磨に挑むしのぶですが、得意の毒も通用せず、鬼殺隊の“呼吸法”に不可欠な呼吸器系を冒す童磨の「冷気」の血鬼術に圧倒され重傷を負います。

童磨との実力差、姉・カナエが今際の際に「童磨に勝てない」と自身に伝えようとした意味を思い知らされ、しのぶは心が折れそうになります。しかしその時、しのぶはカナエの幻影を見ます。

「立ちなさい」と叱咤するカナエに対し、しのぶは重傷を追い「立てない」と返します。対してカナエはこの言葉を口にし、それを聞いたしのぶは戦う意志を取り戻します。そして続くカナエの激励の言葉を胸に、満身創痍の体を引きづるようにしのぶは童磨へと立ち向かっていきます。

一見すると実の姉でありながら非情な印象を受けるこのセリフですが、のちの「しのぶならちゃんとやれる」という言葉も相まって、妹・しのぶへの強い信頼と想いがあればこその言葉なのだと分かります。また自身も“柱”であったカナエは“柱”の責任を知っている人間であることからも、敢えて妹・しのぶを「蟲柱 胡蝶しのぶ」と呼んだのではないでしょうか。

まとめ/次回の『鬼滅の刃全集中の考察』は……

「柱稽古編」名言/名シーン集と「無限城決戦編」名言/名シーン集その1、いかがだったでしょうか。冨岡が心に抱えた傷や悲鳴嶼の壮絶な過去、輝哉の想いなど、『鬼滅の刃』の物語が最後の舞台へと向かう中で各キャラクターの想いが明らかになっていきます。

中でも、冨岡が自身に課してきた呪縛は亡き友・錆兎への負い目や自らの無力への失望からのものでしたが、それ自体が錆兎の想いに反するものであったと気づく場面では、自身の心の弱さに屈し苛まれてきた冨岡の心中と、それでも鬼と戦い続けてきたという冨岡の心の強さが混然とし、冨岡の特異なキャラクター性やそれまでの意味深な発言が氷解する重要な見どころでもありました。

次回記事では、「無限城決戦編」の名言/名シーンその2をピックアップ。

ついに始まった最終決戦にてそれぞれの戦いが繰り広げられる中、善逸の宿命の戦いや明らかになる“上弦の参”猗窩座の過去、その中で登場する感動的な名言などをご紹介します。

【連載コラム】『鬼滅の刃全集中の考察』記事一覧はこちら




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