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Entry 2021/06/05
Update

シドニアの騎士 あいつむぐほし|ネタバレあらすじとラスト結末の感想。内容は人類の存続を賭けた壮絶な闘いを描くアニメーションの完結編!

  • Writer :
  • 糸魚川悟

大人気漫画のアニメ化シリーズ堂々の完結編!

2015年に第39回講談社漫画賞を受賞し、全15巻で完結したSF漫画『シドニアの騎士』。

どこか優しさを感じさせるキャラクターデザインの裏で、唐突なヒロインの死やさまざまな容赦のない設定が読者を揺さぶる大人気の本作は2014年からアニメの放送が始まりました。

そしてアニメシリーズ2期を経て公開された『シドニアの騎士 あいつむぐほし』(2021)は、物語の完結作として多くの犠牲の上で成り立つ平和への道程を深く考えさせてくれる作品でした。

アニメ映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の作品情報


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

【公開】
2021年(日本映画)

【総監督】
瀬下寛之

【監督】
吉平直弘

【キャスト】
逢坂良太、洲崎綾、豊崎愛生、金元寿子、櫻井孝宏、大原さやか、新井里美、子安武人

【作品概要】
二瓶勉によるSF漫画『シドニアの騎士』をアニメ化したシリーズの劇場版第2作。

アニメシリーズで監督を務めた瀬下寛之が総監督を務め、瀬下寛之監督作品で副監督や演出でタッグを組んできた吉平直弘が監督を務めました。

アニメ映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』のあらすじとネタバレ


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

太陽系を破壊した謎の生命体「奇居子(ガウナ)」との果てのない戦いを続けながら、人類が永住可能な「惑星セブン」を目指す移民船「シドニア」。

惑星セブンをガウナの母船「大シュガフ船」から奪取する前哨戦として「惑星ナイン」をシドニアが制圧してから10年の月日が流れました。

掌握した惑星ナインの軌道上では、大規模なガウナとの戦闘は行われず、人類はかりそめの平穏を享受していましたが、艦長の小林は永住の地である惑星セブンを目指すことを諦めてはいませんでした。

戦力に圧倒的な差があり、多重の構造の中に埋まった弱点を破壊できる兵器がないことから、惑星セブンの軌道上に鎮座する大シュガフ船との戦闘は不可能だと思われていました。

しかし、かつてシドニアを崩壊寸前にまで追い込んだ科学者の落合による研究データから東亜重工は、あらゆる構造体を貫通する超兵器「重力子放射線射出装置」を完成。

大シュガフ船を破壊可能な兵器を手に入れたことで小林と副司令の緑川は本格的に惑星セブンの奪取計画を始動します。

重力子放射線射出装置は、計り知れぬ破壊力を持つ代償として莫大なエネルギーを必要とします。

シドニアのエネルギーだけで最大出力での発射コストを担うことは出来ず、緑川は高いエネルギーを持つ「惑星エイト」をガウナから奪い、惑星エイトから1年かけて必要エネルギーを吸い上げる計画を立案。

第1段階の惑星エイトを奪取するため、平和な10年間で採用された新人操縦士たちを前衛とした「衛人隊」を向かわせます。

惑星エイトに巣食うガウナは新人操縦士のみで掃討可能でしたが、新たに増援として現れた高い知性を持ち合わせた4体の「知性型ガウナ」には「一八式衛人」の自動操縦を先読みされてしまい、次々と操縦士が戦死していきます。

全滅寸前に追い込まれた前衛でしたが、その場に「シドニアの騎士」と呼ばれるエースパイロット谷風長道と対ガウナ用の融合個体兵器として生み出された白羽衣つむぎが現れ、知性型ガウナを2対破壊し惑星エイトの奪取を完遂。

エネルギーの吸い上げが始まる頃、岐神海苔夫率いる岐神開発は新たな融合個体である「かなた」の起動実験を始めます。

しかし、岐神は過去に死んだはずの落合に血線虫を通して精神を乗っ取られており、実験の目的は起動したかなたに自身の精神を移し人類の種を越えた究極の生命体となる落合の策略でした。

かなたに精神を移した落合はガウナとは対話をすべきであると小林に主張し、大シュガフ船の破壊を目指すシドニアに反旗を翻し船の破壊を開始。

小林は直ちに衛人隊に出撃を命じますが、あらかじめ落合は衛人に爆弾を仕掛けており、長道は意識不明の重体となります。

落合は向かってくる衛人を撃破しながら、重力子放射線射出装置を体内で形成しシドニアの完全破壊を目論みますが、つむぎがその身体を使って砲身を支えることで、シドニア側の重力子放射線射出装置を最低出力で発射。

撃破には至らなかったものの、負傷した落合は回復を優先しシドニアの追跡範囲外へと逃走しました。

数日後、病院で目を覚ました長道はつむぎが負傷したことを聞き培養槽へと駆けつけます。

長道に好意を抱くつむぎは長道が駆けつけてくれたことに喜びますが、その一方で自身が兵器であり長道がシドニアのために心配しているのだと悲観。

その様子を見た小林は体長15メートルを越すつむぎに普段は禁止していた居住区への立入り許可を与え、長道はつむぎと共にシドニア内の海をデートします。

つむぎは人間と同じ姿で長道と会いたかったと泣き始めますが、長道は人間であろうが身長差があろうが関係なく、つむぎのことを愛しているとお互いの関係を確かめ合いました。

エネルギーの充填時間も含め当初の計画では大シュガフ船との接敵は1年後の予定でしたが、大シュガフ船が猛スピードでシドニアへ向かって直進したことで予定より接敵までの時間が半年間短縮してしまいます。

落合の洗脳から解き放たれた岐神はパイロットとして、エースの働きを見せる長道に嫉妬し、落合を解き放ってしまったことを悔み、かつて同じ隊に所属し戦死した山野栄子の弟である稲汰朗の率いる衛人班に誘われ、今度こそシドニアを守るために行動することを決めます。

大シュガフ船との決戦が迫り、小林は長道の前に現れこれまでのすべてを長道に話し始めます。

小林は不老不死の研究によって700年以上も生きているものの、元々は落合や落合の暗躍を止めたエースパイロットの斎藤ヒロキと同期の普通の女子に過ぎませんでした。

ヒロキの活躍がシドニアの意思決定を司る首脳陣の目に留まり、換装用のクローン人間として作られた人間こそが長道でした。

小林はシドニアのためと言い聞かせ、若い操縦士や長道を死地に送り込んでいることを後悔する言葉を発しますが、長道は小林がいたからこそここまでたどり着くことが出来たと感謝を述べます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『シドニアの騎士 あいつむぐほし』のネタバレ・結末の記載がございます。『シドニアの騎士 あいつむぐほし』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

大シュガフ船の接近が迫り、緑川は惑星エイトの恒星に設置されたエネルギー送信機の回収を指示しますが、大シュガフ船は7000体を越える大量のガウナを恒星に差し向け始めます。

つむぎを筆頭とした回収部隊はたちまちガウナに取り囲まれ窮地に陥りますが、大シュガフ船はシドニアに向けても数万以上にも登るガウナを放出。

小林は重力子放射線射出装置の発射を諦め逃走し、被害者を最小限に収めるかの判断を迫られますが、これまでの犠牲を無駄にしないためにも踏みとどまり、この戦いを最後にすべく決戦を命じます。

長道はシドニアのためにつむぎの救出を諦め防衛に当たろうとしますが、かつて敵対していた岐神の「シドニアは任せろ」と言う言葉を信じ、1機だけ製造された「二零式衛人」に乗り込みつむぎの救出に向かいます。

長道は生き残った回収部隊の中から大部分を負傷したつむぎを回収し培養槽へと保護。

一方、2対の知性型ガウナに苦戦する衛人隊の前に大シュガフ船の破壊を阻止しようとする落合が現れ、戦場は混沌と化します。

落合は恒星のエネルギーを使い重力子放射線射出装置を発射し衛人もガウナも関係なく殺戮を行い、知性型ガウナ1対と100機を越える操縦士を殺害。

長道はエネルギー送信機を奪う落合を殺害し送信機の回収を行うため、二零式衛人でしか耐えられない高温となる恒星の中心部付近へと突入します。

その頃、圧倒的な量のガウナに押され、衛人隊はシドニア居住区への知性型ガウナの侵入を許してしまいますが、岐神と稲汰朗が力を合わせ知性型ガウナを破壊。

二零式衛人の耐熱温度がいかに高くとも操縦席は生命が維持できないほどの高温になることを把握する落合は、高熱地帯に長道を誘い出し殺害しようと目論みますが操縦ミスを装った動きで攻撃を誘引した長道に反撃され融合個体の弱点を晒してしまいます。

落合は人類の更なる発展や、戦死した長道の初恋の相手である星白の復活を約束するなど長道に命乞いをしますが、「シドニアの騎士」であることを誇りに思う長道に殺害されます。

落合を倒すための動きによって操縦席は高温となり長道は生きることを諦め、自動操縦に切り替え送信機をシドニアへと送ろうとします。

その時、長道の危機を聞いたつむぎが培養槽を脱出し長道の下へと駆けつけ、自身が衛人に覆いかぶさることで隙間を塞ぎ操縦席の温度を下げることに成功。

しかし、負傷していたつむぎは高温に耐えられる状態ではなく、長道に感謝を述べながら崩壊していきました。

エネルギー送信機を受け取ったシドニアは長道の親友である観測隊のイザナが発見した弱点に重力子放射線射出装置を発射し大シュガフ船に大打撃を与えますが、重力場を使った防衛機構でトドメを刺すには至りませんでした。

衝突が間近に迫り窮地にシドニアは陥りますが、実はシドニアの居住区そのものが大きな砲身となっており、シドニア全体を使った渾身の一撃である「主芯軸重質量砲」を使い大シュガフ船を撃破。

悲願である惑星セブンの奪取が成功しシドニアは歓喜に満ちますが、戦いの果てにつむぎを失った長道は悲観に暮れていました。

イザナの母親であり研究者であるユレは二零式衛人につむぎの一部が残っていることに気づき、イザナの懇願によってユレは落合が精神を移した技術を用いてかつてガウナが取り込んだ星白を模し作成した個体につむぎの精神を移します。

ある日、長道の前に星白が現れ、長道はその精神がつむぎであることに気づくと「おかえり」と再会を喜びました。

数年後、シドニアは惑星セブンへの定住希望者を残し新たな旅に向かうことを発表。

つむぎとの間に長閑と言う娘を授かった長道は惑星セブンに定住することに決め、シドニアのクルーに別れを告げます。

緑川は女性から男性へと性を移し、イザナと結ばれながらもシドニアの司令へと昇進していました。

長道はシドニアと共に旅を続けることに決めた緑川とイザナに別れと言い、シドニアの防衛を岐神に任せます。

シドニアは新たな旅のため惑星セブンを出発。

長道はつむぎと長閑と共に、惑星セブンから宇宙へと旅立っていくシドニアを見送りました。

アニメ映画『シドニアの騎士 あいつむぐほし』の感想と評価


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

容赦のない展開に引き込まれる「二瓶勉」の世界観

異常なまでの背景の書き込みと建築物が無限に積み重なる独特な世界観で展開されるSF漫画『BLAME!』で、日本のみならず世界で有名となった漫画家の二瓶勉。

『BLAME!』の連載終了後『BIOMEGA』などの作品を経て連載が始まった『シドニアの騎士』は、二瓶勉の持つ物語の容赦のなさが前面に出ている作品でした。

アニメ1期となる部分ではヒロインとなる星白との恋愛模様が描かれたと思いきや、エースパイロットの岐神の嫉妬による策略にハマり星白が死亡。

ヒロインの唐突な死亡に読者やアニメファンは衝撃と絶望を受けました。

その後も登場人物の死や民間人の虐殺は突如物語上に襲来し、作中全体に「二瓶勉」らしさを見せつけます。

そして完結編となる本作では、二瓶勉作品のお馴染みの兵器である重力子放射線射出装置がついに登場。

同兵器をメイン武器として扱う『BLAME!』の長編アニメ化をも手掛けた瀬下寛之と吉平直弘だからこそ描くことのできるド迫力の発射シーンは、容赦のない物語に風穴を開けてくれるような感動を与えてくれるファン必見のシーンとなっていました。

SF作品だからこその独特な恋愛模様


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

『シドニアの騎士』の魅力は大迫力の戦闘シーンだけでなく、他作ではなかなか見ることのできない恋愛模様にもあります。

第1期のヒロインである星白の死後、長道はさまざまなキャラクターと関係を深めていきます。

しかし、その恋愛模様はSF作品だからこそ描くことのできるといえるほどに独特なものでした。

人類の存続が目的となる移民船「シドニア」の機構によって人類は遺伝子組み換えが行われており、恋愛相手が決まるまで性別は決定せず、相手を決定後に人物の性別が決まります。

そのため、アニメ第2期では長道は親友のイザナの女性化を目撃し、関係を急接近させていきます。

それ以降も、長道の前にはクローンによって同じ個体を持つ仄などSFでしか見られない設定の恋愛相手が登場

そして完結編となる本作では、人工的に生み出された体長15メートルを越える兵器「つむぎ」と情を深めることになります。

激しい戦いの果てに、長道の恋愛がどこにたどり着くのかも大注目です。

まとめ


(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工重力祭運営局

多くの犠牲の果てについに目前となった人類の永住の地「惑星セブン」。

未来の平和のためにさらなる犠牲を生むことを正義とするか悪とするか。

戦いにかり出される若者の生と死を題材とし、今ある平和の意味を今一度考えさせてくれる『シドニアの騎士』。

その戦いの果てを描いた完結作となる『シドニアの騎士 あいつむぐほし』は絶賛公開中。

最先端の技術で描かれるド迫力の戦闘シーンをぜひ劇場でご覧になってください。





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