連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第24回
今回ご紹介する映画『陰陽師: 二つの世界』は、中国のオンラインゲーム会社が開発した、大ヒットモバイルゲーム「陰陽師本格幻想RPG」を実写映画化した、ファンタジーアドベンチャー映画です。
天地開闢(てんちかいびゃく)のころ、人間と妖(あやかし)がまだ共存していた時代に、9つの頭を持つ蛇妖「相柳(そうりゅう)」が“妖皇”となるため、妖怪を率い人間世界に襲いかかります。
それに対抗する陰陽師たちは神器「涂山剣(そざんけん)」を造り、相柳を討ち“鱗石(りんせき)”に封じ込めると、妖怪を追放し人間の住む城内と妖域に棲み分けるようになります。物語はそこから100年余り経った平京城が舞台です。
見どころは3か月かけて作られた、5,000平方メートルのスタジオに、晴明と妖が暮らす家や中庭を精巧に再現したセット、日本でお馴染みの妖怪がデジタルキャラクター製作され、キュートな姿で登場します。
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CONTENTS
映画『陰陽師: 二つの世界』の作品情報
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
【公開】
2021年(中国映画)
【原題】
侍神令 The Yin-Yang Master
【監督】
リー・ウェイラン
【監督】
チェン・イーウェン
【キャスト】
チェン・クン、ジョウ・シュン、チュー・チューシャオ、シェン・ユエ、ウィリアム・チャン、ワン・リークン、ワン・ツーシュエン
【作品概要】
2002年のカンヌ映画祭の“ある視点部門”に出品された『小さな中国のお針子』で共演し、中国映画界で人気の高い俳優、チェン・クンが安倍晴明、ジョウ・シュンが百旎(びゃくじ)役を務めます。
美術プロデューサーには『CASSHERN』(2004)、『GOEMON』(2008)を手掛け、台湾・中国を中心に映画プロダクション・デザイナーとして活躍する、赤塚圭仁が担当しゲームの世界観を壮大に作り上げています。
映画『陰陽師: 二つの世界』のあらすじとネタバレ
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
西京城には人間と妖怪を分かつ陰陽師が修練する陰陽寮があり、そこには城内に現れた妖怪を封印する封妖庫、そして蛇妖「相柳」の魂を鱗石にして封印した“鱗石禁地”があります。
ある晩、“鱗石禁地”に不穏な動きを察知した、陰陽師と老師達が駆けつけると、鱗石を封印した金塔が熔解し、晴明を残し多くの陰陽師たちが死亡していました。
晴明は「慈沐(じぼく)師兄が亡くなった・・・。」と狼狽えながら老師に伝えると、晴明1人だけ生き残ったことに不信を抱いた西残長老は、「血は争えない!おまえはやはり悪妖だ!」と、晴明の仕業と決めつけ攻撃をしかけます。
晴明は弁明もできないまま、他の陰陽師や老師に反撃しそのまま呪を唱え、別の場所へ移動し逃げてしまいました。
そこに百旎(びゃくじ)が現れ惨事の仕業は晴明だと告げられますが、信じることができません。西残長老は百旎に内官を目指すなら、情けをかけぬよう叱咤します。
晴明、百旎、慈沐は幼いころから、陰陽寮で学び修行していた学生で、慈沐は晴明と百旎にとって兄弟子の関係でした。
7年後の平京城、“鬼祭”の時期に源博雅は皇室への献上品を護送する“金吾衛”に志願し、家来を率いて城外へと出発しました。城外は妖域となり出たものは、命の保証がありません。
一行が森の中を進みしばらくすると、行く手に靄が立ち込め周囲に何者かの気配を感じます。博雅の乗る馬、献上品を載せた荷車を牽く馬も怯えて暴れだすと、前方から怪しい影が現れました。
それは3つの顔を持つ妖のふりをした、3匹のかまいたちで献上品をねらった妖賊でした。博雅はかまいたちと闘い、最後の1匹と一騎打ちになるところで晴明が現れ阻止されます。
晴明は妖から命を助けた礼に、宝物をもらうと品定めをはじめると、博雅は妖の仲間だと見破ります。しかし、晴明の呪によって宝物は守れず、根こそぎ他の妖達に盗まれてしまいました。
晴明は山奥の森に屋敷を建て、式神となった妖たちと平穏に暮していました。
その頃、陰陽寮では西残長老をはじめとした長老達が、鱗石禁地で祈祷を唱えています。外では双子の烏天狗が侵入しています。
西残長老が妖封庫の異変に気づき駆けつけると、烏天狗の呪にかけられた陰陽師が、他の陰陽師たちを惨殺していました。百旎の解呪で事態はおさまりますが、烏天狗の狙いは“鱗石”でした。
鱗石禁地に戻ると金塔は熔かされ、鱗石は烏天狗に奪われてしまいます。百旎は弓矢を放ち逃げた烏天狗を撃ち落とすことに成功しますが、鱗石はかまいたち達に奪われてしまいます。
追手の陰陽師は烏天狗を追い詰めますが逃げられ、鱗石を奪ったかまいたちをみつけるも、かまいたちは鱗石を飲み込み、奪還できませんでした。
烏天狗はアジトに戻ると女の妖怪に、何者かが差し向けた3匹の鼠妖(かまいたち)によって、鱗石を横取りされたと報告します。
晴明のところに戻ったかまいたち達は、晴明に事のいきさつを説明します。鱗石を飲み込み様子のおかしいかまいたちを見た晴明は、口の中から吐き出された妖気によって、相柳の声を聞きます。
「鱗石はついに陰陽寮の外へ出た。私をこの世に甦らせよ。それがおまえの宿命だ」
何を飲んだのか知らない晴明は、異変をおこしたかまいたちを小屋に封じ込め、鱗石に異変があったことを察すると、妖域に行くと式神たちに伝え出かけていきます。
一方、陰陽寮では西残長老が“陰陽頭(おんみょうのかみ)”に、鱗石無きあと妖封庫が騒がしくなり、護法だけでは抑えられなくなってきたと伝えます。
さらに鱗石を盗んだのは偶然ではなく、晴明の差し向けた眷属であろうと言います。7年前の雪辱を果たしにきたと考えたのです。
根拠は烏天狗が禁地の場所と、金塔を溶かす“手印”を知っていたことです。西残長老は晴明を裏切り者として、捕えて厳罰にするよう求めますが、百旎には迷いがあると口をついて言います。
そして百旎は西残長老に「立場をわきまえよ。私はすでに決断している」と告げました。
Netflix映画『陰陽師: 二つの世界』の感想と評価
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
Netflixでは2021年2月に「陰陽師: とこしえの夢」を配信したので、その続編が早くも配信なのか?と、思った方も多いと思われますが、本作は夢枕獏の原作ではなく、2016年にリリースされた、スマートフォンアプリゲーム「陰陽師本格幻想RPG」を基に実写化した作品になります。
リリースされ4年が経った今も根強い人気があり、コアなファンから多く愛されているがゆえ、ゲームの世界観を大切にすることが課題になっていたようです。
リー・ウェイラン監督をはじめ、招集されたアートディレクター達が造り上げた、陰陽師の世界観は背景の精密さ、デジタルキャラクターの繊細な表情の機微まで、観る者の感情をグッと引き込む力があると感じました。
人間だからこそ“善道”から“悪道”へと変貌する
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
慈沐は優秀な陰陽師として、師からの信頼も厚く弟弟子への気配りや面倒もできる、お手本的な存在でした。
一方、晴明は妖の血を引く半妖で捨て子という、人間から蔑まれる存在でしたが、本来具わっている“妖力”は人に恐怖を与えると共に、野心のあるものにとっては嫉妬の対象となりました。
慈沐は自分は“優秀”であると、いう自覚があったがゆえに、下等な晴明に底知れぬ力が具わっていることが許せず、虎視眈々とそれ以上の力を得ようと、善道を捨て悪道へと躊躇なく進んでしまいました。
妖怪の思考は単純です。忌み嫌われる悲しみや、自然界への感謝や慈しむ気持ちは深いものでした。
つまり晴明には人への尊敬や感謝、妖が感じる万物への愛着の両方が具わっていたため、人間が抱いてしまう嫉妬や差別がありませんでした。
力こそ全てと転換してしまった慈沐は、“力で天下を抑えたい”と悪道に進み、かつて晴明に「人間も妖怪も自制できないと、身を滅ぼす」と諭したことを自ら示してしまったのです。
RPGゲームが生んだ、新解釈の“安倍晴明”
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
「陰陽師」の安倍晴明といえば、母は白狐の化身“葛の葉(くずのは)”で、師匠は“加茂忠行”が定番といえるでしょう。
ところが本作は、ゲームの中に登場する晴明が基になっています。その設定は都で天才陰陽師と名高く、過去の記憶は失われていて、ゲームを攻略しながら思い出していくものでした。
“謎”の多くすることで、晴明のイメージを固定せず、自由な発想で描く晴明なのでしょう。
映画の中の晴明もこれまでとは趣が違います。蛇妖の血を引くのか?と思わせたり、特定の“師匠”も付けないことで、鑑賞者(プレイヤー)が師匠になります。
クエストを攻略させ、鍛錬し育てるというRPGスタイルを、博雅や神楽との出会い、涂山剣を手に入れる、相柳の惑わしをどう受けるかで運命が変わる・・・そんな表現したのでしょう。
まとめ
Netflixオリジナル映画『陰陽師: 二つの世界』
映画『陰陽師: 二つの世界』はゲームの世界観のファン、「陰陽師」のファンがどのような感想を持つのか?鑑賞後の評価にも興味関心が深まる作品でもあります。
本作は中国人の制作者が中心となって、日本の平安絵巻を描いています。海外の映画で表現される日本は、どこか滑稽でありえない表現も多くありますが、本作は平安時代に出てくる日本の妖怪、城下町の雰囲気を大きく損なうことはありません。
日本の妖怪が出てくるファンタジー映画として、秀逸かつ日本へのリスペクトを感じさせる作品なので、なんの予備知識もない人が観て純粋に楽しめる作品です。
あえていうならば観賞者が、妖怪のように単純でピュアな気持ちで観れるか?人間の忌まわしい本性と向きあうことになるのか?感じた気持ちが“二つの世界”に分かれる・・・そんな作品であるともいえるでしょう。
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