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Entry 2021/01/25
Update

映画『ミッドナイト・ファミリー』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。闇救急隊員の実態とメキシコシティの現実を追うドキュメンタリー

  • Writer :
  • 鈴木友哉

闇営業の救急車で生活をするメキシコの家族に密着

本作『ミッドナイト・ファミリー』は、闇営業の救急車で生計を立てているメキシコ人家族を追ったドキュメンタリー映画です。

2019年に開催された第35回サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門にて、映画監督ルーク・ローレンツェンが撮影賞を受賞した作品です。

また同年の米国アカデミー賞ドキュメンタリー部門にもリストアップされるほど、その内容は注目度が高い作品と言えます。

ルーク・ローレンツェン監督は、メキシコ人一家が私営運営する闇救急車の仕事を作品のモチーフにすることで、最前線の医療現場の問題のみならず、格差社会とその生活の一端もあぶり出しています。

メキシコの医療問題を映像で捉えたドキュメンタリー映画『ミッドナイト・ファミリー』をご紹介します。

映画『ミッドナイト・ファミリー』の作品情報

(C)Family Ambulance Film LLC

【日本公開】
2021年(アメリカ・メキシコ合作映画)

【原題】
Midnight Family

【監督】
ルーク・ローレンツェン

【キャスト】
ホアン・オチョア、フェル・オチョア、ホセ・オチョア、マヌエル・エルナンデス

【作品概要】
映画『ミッドナイト・ファミリー』は、映画監督ルーク・ローレンツェンがメキシコシティの闇救急車の無許可営業で生活を立てるオチョア家に密着したドキュメンタリー。メキシコ医療の現実をあばき、法に触れてまで医療で生活費を工面するメキシコ人家族に密着した作品です。

人口900万人のところ公営として走行している救急車が、45台未満しかないメキシコシティ。ほとんどの救急車は、私営で営業している闇の救急車です。

本作は、サンダンス映画祭で米国ドキュメンタリー特別審査員賞を受賞したほか、米アカデミー長編ドキュメンタリー賞のショートリストに選出されました。

映画『ミッドナイト・ファミリー』のあらすじとネタバレ

(C)Family Ambulance Film LLC

救急車の車窓から見たメキシコシティの深夜の風景。車内から一人の少年ホアン・オチョアが出てきます。彼は17歳の少年です。ストレッチャーに付着している血痕を綺麗に、ウエットティッシュで拭いています。

慌ただしい救急搬送の毎日ですが、少年ホアンにとって、仕事の間に恋人と電話するのが、何よりも息抜きになります。

短い休憩時間に、恋人のジェシカに電話をかけ、先ほど搬送した患者の容態を事細かに話しました。

しかし、彼女にはしばらく電話連絡がなかったことを責められます。ホアンは、母親が死にその子どもも重体という大変な状況下だったため、連絡ができなかったと言い訳をするのに必死です。

メキシコ・シティの人口900万人に対して、公営の救急車は45台未満しかありません。ほとんどの救急医療は、無許可の私営救急隊員が請け負っているという、厳しい現実があります。

ホアンの家族であるオチョア家族も闇営業の救急隊として毎年、何百人もの患者の搬送にあたっているのです。

以下、『ミッドナイト・ファミリー』ネタバレ・結末の記載がございます。『ミッドナイト・ファミリー』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)Family Ambulance Film LLC

オチョア一家は一報が入ると、現場へと急ぎます。今夜も救急車を走らせ事故現場へ。事故現場では、負傷者が救急隊によって処置されていました。

患者はストレッチャーに乗せられて、車内で治療を受けます。負傷者は足が痛いと言うばかりで、名前を言いません。

血で汚れた車内を清掃するのも彼らの仕事でした。病院に搬送した負傷者たちと代金の交渉をしますが、その家族には費用を払えるだけのお金はありません。

また慌ただしい夜がやって来ます。今晩は雨のようですが、オチョア家には天候なんて関係ありません。患者がいる限り、彼らは出動しなければなりません。

他のライバルに先を越されたら、稼ぎが減ってしまいます。どの救急隊員たちも、どちらがいち早く現場に到着できるのかと競い合っているのです。

それでも、現場へと急いでいる時は緊張しています。17歳で救急車を運転しているホアンは、安全運転を念頭に入れていました。

現場に到着すると、顔中血まみれの若い女性がいます。ショックのあまり、まともに会話もできません。号泣しながら、救急車の代金が高いかどうか聞いています。

医療保障のない少女にとって、救急医療にお世話になること自体が、負担となってしまいます。泣き叫ぶ少女が、落ち着くまで抱き締めて欲しいと懇願しました。負傷者の心のケアをするのも、彼らオチョア家の仕事のひとつです。

闇救急車の隊員は、警察の摘発と戦うこともしばしあります。仲間の救急隊員は、レッカー車を呼ばれたこともあると言います。

許可がないと、闇救急車は走行も運営もできないのです。ホアンは、許可が下りれば通常に営業できるので、許可証を取得したいと話します。

食事をする時の彼らは、至って普通の家族です。ですが、要請が入れば、彼らは皆、救急車を飛ばして現場へ急行します。

命を救う現場は、一刻を争います。次の事故現場では少年が泣き叫んでいました。病院に到着しても、患者が溢れて受け入れてもらえません。

母親は、近くの病院に行くようにと指示を出します。親子を無事に搬送することができ、彼らはまた次の負傷者のために、深夜のメキシコシティを疾走します。

一日の終わりに、売上を計算します。どれだけ稼げても、支払いや賄賂でほとんど残りません。彼らにとっての贅沢は、少し高めのトルティーヤを食べることでした。

ある時、許可証不所持のため、ホアンが逮捕されました。なんとか警察から解放されましたが、彼は許可証があっても、警察から古い救急車はダメだと注意を受けると話しました。

また、違う場所から要請が入りました。次の現場では、野次馬の人だかりができています。けが人は、建物の4階から落下した子どもでした。顔面蒼白の母親が、力なく救急車の助手席に乗り込みます。

救急車は、夜の街を猛スピードで走りますが、重篤患者を運んでいるのに、どの車も道を譲りません。病院に到着前に患者は死亡してしまいました。それでも、オチョア家には遺族に対して、搬送代を求める仕事が残っています。

そして、今夜もオチョア家は、メキシコシティの夜を、救急車で全速力で駆け抜けて行きます。

映画『ミッドナイト・ファミリー』の感想と評価

(C)Family Ambulance Film LLC

『ミッドナイト・ファミリー』は、メキシコの闇医療チームの活躍を扱った作品で、第35回サンダンス映画祭のドキュメンタリー部門で撮影賞を受賞しています。

撮影賞受賞作品だけあって、救急隊員や負傷者を捉えたカメラアングルは、見応え十分です。動きの激しい映像には、まるでアクション映画のようなスピード感があります

オチョア一家は毎晩、救急隊員として大都会を走り回っています。ですが、彼らは、無許可の救急車使用の闇営業者。その背景には、人口900万人に対して、公営の救急車が45台未満という現状がありました。

また、負傷者たちの複雑な家庭環境が、露呈される会話にも注目です。作品の中盤で、オチョア家は、鼻から出血している少女を処置します。

彼女は骨折しているにも関わらず、家庭の心配をします。保険に加入していないため、治療費が高くなることに気を揉んでいるのです。親に気を遣い泣き叫ぶ姿に、胸が締め付けられます。

本作は2019年製作の作品ですが、今彼らの救急搬送の現場が、どのように変化しているのか想像もできません。オチョア一家は現在、どのような生活を送っているのか、気になるところです。

まとめ

(C)Family Ambulance Film LLC

闇営業の救急車で生活を送るメキシコ人家族の姿を追いかけたドキュメンタリー映画『ミッドナイト・ファミリー』をご紹介しました。

メキシコの救急現場にカメラを向けた本作は、メキシコの医療問題や格差社会のあり方を見る人に問いかけています。

違法性の高い救急車の運営は、警察からの摘発対象ですが、オチョア家のような救急隊員がいなければ、メキシコの医療現場が成り立たないのも事実です。

メキシコが抱える医療問題を国家が解決しない限り、オチョア一家は毎晩、負傷者のために救急車を走らせなければならないのでしょう。

負傷者も生活困窮者が多いのですが、オチョア一家も生活が懸かっています。

貧困の中で人の命と自分たちの生活を守り抜くしたたかな闇救急隊のオチョア一家を通して、医療現場の逼迫を映し出す映像からも、学ぶべきことがとても多い作品でした。

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