ニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングのタッグでおくる映画『ドライヴ』
第64回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、ライアン・ゴズリングのキャリアの中でも印象的な作品となった映画『ドライヴ』。
極限まで研ぎ澄まされた世界観と寡黙で哀愁を帯びたドライバーのキャラクター像は、ライアン・ゴズリングが企画・脚本段階からキャラクター造形に携わり、監督・スタッフらと共に造り上げたそう。
更にテクノミュージックを効果的に用いることにより、静から動へと移り変わりバイオレンスを帯びていくコントラストを強めています。
映画『ドライヴ』の作品情報
【公開】
2011年(アメリカ映画)
【原題】
Drive
【監督】
ニコラス・ウィンディング・レフン
【脚本】
ホセイン・アミニ
【原作】
ジェームズ・サリス
【キャスト】
ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン、クリスティーナ・ヘンドリックス、ロン・パールマン、オスカー・アイザック、アルバート・ブルックス
【作品概要】
監督を務めるのは映画『プッシャー』(1996)でデビューし、『ブロンソン』(2008)、『ヴァルハラ・ライジング』(2009)などで知られるニコラス・ウィンディング・レフン。本作で2011年・第64回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞。
寡黙なドライバー役を演じたのは『きみに読む物語』(2005)、『ブルーバレンタイン』(2011)のライアン・ゴズリング。アイリーン役には『17歳の肖像』(2010)、『わたしを離さないで』(2011)のキャリー・マリガン、アイリーンの夫役には『アレクサンドリア』(2011)のオスカー・アイザック。更にロン・パールマン、アルバート・ブルックスと名優が脇をそえる。
映画『ドライヴ』のあらすじとネタバレ
シャノン(ブライアン・クランストン)が営む整備工場で働き、時には映画のスタントマンをこなし、卓越したドライビングテクニックを活かして夜は逃がし屋として働くドライバー(ライアン・ゴズリング)。
逃がし屋の仕事では、何があっても5分は待つ、引き受けた仕事を終えたらもう関わらないとルールを決め、人と関わらず物にも固執しない孤独な生活を送っていました。
ある日、アパートの隣に住む人妻アイリーン(キャリー・マリガン)とその息子ベニシオ(カーデン・レオシュ)と顔見知りになります。
そして後日スーパーで再び会い、家まで荷物を持っていってあげたドライバー。世間話をし、ドライバーが整備工場で働いていることを知ったアイリーンは車の修理を頼みにドライバーの仕事場にやってきます。
ドライバーの知り合いがやってきたことに驚いたシャノンの計らいで、ドライバーがアイリーンとベニシオを家まで送り届けることになります。
少しドライブしようかと提案したドライバーは川辺まで車を走らせます。3人で過ごす穏やかな時間は今まで孤独に生きてきたドライバーの心に温もりを与えてくれる幸せな時間でした。
しかし、その平穏な日々に変化がやってきます。刑務所に入っていたアイリーンの夫・スタンダード(オスカー・アイザック)が出所してくるのです。
映画『ドライヴ』の感想と評価
映画『ドライヴ』において印象的なのは、究極なまでに研ぎ澄まされたシンプルなストーリーを、ドライバー役のライアン・ゴズリングをはじめとした役者陣の演技、そして静と動のコントラストでしょう。
シンプルだからこそグッと引き込まれる研ぎ澄まされた演出が観客の心を掴みます。
まず印象的なのが冒頭です。ネオンに照らされた街並みを見下す一室でドライバーが電話をしているシーンから始まり、逃がし屋の仕事にかかるドライバーの様子を描きます。
必要最低限の言葉しか発さないドライバー。強盗をのせ逃走中のシーンは劇伴を使わず、仕事を終えたドライバーが闇夜に消えたところで、オープニング曲であるKavinskyの「Nightcall」が流れます。
そしてドライバーの顔と共にタイトルが映し出されるというシンプルながらも観客の心をグッと掴む演出になっています。
もう一つ印象的なシーンはドライバーとアイリーンがエレベーターで口付けを交わすシーンです。
エレベーターに乗る前に、アイリーンに真実を話し、2人を守るから一緒に逃げようとドライバーは言いますが、動揺したアイリーンに平手打ちされてしまいます。その後2人は会話することなく、エレベーターに乗り込みます。
エレベーターにいた男のジャケットの内側に銃を持っていることに気づいたドライバーはアイリーンに口付けをしつつも、アイリーンを庇うように移動していることがわかります。
そのシーンをスローモーションと音楽で美しく演出し、音楽が止んだと共にドライバーが急変し、男を壁に叩きつけ、その顔を潰れるほど踏み潰します。
その様子を言葉もなく恐怖の表情で見ていたアイリーンは、エレベーターが開くとともに外に出て呆然と立ち尽くします。
立ち尽くすアイリーンを振り返って見つめるドライバーの表情。哀しみ、絶望、諦め…何とも言い難い表情を浮かべるドライバーの表情は、役作りにこだわり、監督らと話し合いを積み重ねていたライアン・ゴズリングだからこそ演じることが出来た表情と言えるでしょう。
アイリーンとドライバーは見つめ合い、何の言葉も発さず、静かにエレベーターの扉が閉まります。エレベーターに乗り扉が閉まるまで、セリフは一切ありません。
ドライバーが男を踏み潰す音と、その息遣いが聞こえてくるのみです。このシンプルな演出、そしてライアン・ゴズリングとキャリー・マリガンの表情で魅せる美しさが観客に強く訴えかけてくるのです。
まとめ
ニコラス・ウィンディング・レフン監督とライアン・ゴズリングのタッグでおくる極限まで研ぎ澄まされた映画『ドライヴ』。
監督のセンスを感じさせる静と動のコントラスト、寡黙で孤独なドライバーえお演じるライアン・ゴズリングの演技力がこの映画の魅力となり、観客の心を惹きつけます。
また、オープニングで流れるKavinskyの「Nightcall」をはじめ、劇伴を使わないシーンと印象的なテクノミュージックなどを駆使したシーンと使い分けることで静と動のコントラストをつけています。
寡黙なドライバーが一変し、狂気を帯び、暴力的になる様も映画全体の静と動のコントラストを印象づける要素となっています。
脚本段階から監督やスタッフらと話し合い、ドライバーの仕草や発する言葉まで作り上げていったライアン・ゴズリングの役者としての凄みを感じさせる一作とも言えるでしょう。