2017年12月16日より、下北沢トリウッドにて「歳末青春大セール!ティーンムービー傑作選」という特集上映が行われます!
日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営するGucchi’s Free Schoolによる選りすぐりの傑作ティーンムービー8本が勢揃い!
今回ご紹介する映画は約200本の映画を引用し、青春学園映画の魅力に迫った『ビヨンド・クルーレス』(2014)です。
CONTENTS
1.映画『ビヨンド・クルーレス』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
Beyond Clueless
【監督】
チャーリー・ライン
【キャスト】
ナレーション:フェアルーザ・バーク
【作品概要】
アメリカの青春学園映画黄金期は『クルーレス』(1995)で始まると言われているが、その1995年から『ミーン・ガールズ』公開の2004年までの200本以上の作品を引用し、青春学園映画の魅力を分析。
映画が描く高校時代という特別な期間の様々な問題を考察する青春映画論映画。
2.映画『ビヨンド・クルーレス』のあらすじ
© 2014 Beyond Clueless LLC
プロローグ
「高校はまるで催眠術だ」というナレーションから映画はスタートします。いくつもの映画の登校シーンが矢継ぎ早に重ねられていきます。
校舎に向かう生徒たち。廊下にはロッカーが並び、生徒たちが溢れています。
「校舎に向かう姿は終わりのない儀式のようだ」
この章でメインに取り上げられる映画は『ザ・クラフト』(1996 アンドリュー・フレミング監督)です。
不思議な力を持つ少女サラは、悩みを抱えたいじめられっ子三人組と親しくなる。
彼女たちは、四人で黒魔術を行い、パワーをたくわえ、次々と目的をかなえていくが、四人の結束が増すにつれ、次第に個の力が弱くなっていく。
三人と距離をとろうとするサラだったが、三人は彼女を許さない。凄絶な魔術合戦が行われるが、サラが抜けた分、三人の力は弱まっており、ついに三人は力を失ってしまう。
四人の関係の変化、物語の終焉を「高校の魔術が溶けた」と読み解きます。
第一章 居場所を見つける
新学年が始まると、生徒たちは似た者同士で集まります。この章は、校内の「派閥」に関する言及でスタートします。
『洗脳』(1998 デヴィッド・ナッター監督)のカフェテリアのシーンが登場。登場人物が、学校の「派閥」を説明しています。
「運動部」「オタク」「スケボー連中」そして「学校の頂点に立つスター生徒たち」。
ここでは『ミーン・ガールズ』(2004 マーク・ウオーターズ監督)、『クルーエル・インテンションズ』(1999 ロジャー・カンブル監督)などが紹介されます。
正しい派閥に属していれば高校生活は安泰です。派閥に関する反対はほとんど表面化しません。が、中に「異端児」が現れ、派閥という秩序が狂う場合があります。
登場する映画は『ラスト・サマー』(1997 ジム・ギレスピー監督)、『シーズ・オール・ザット』(1999 ロバート・イスコヴ監督、レイチェル・リー・クック出演)など。
この章の最後は”週末のパーティー”についてです。親が留守の子の家で行われる週末のパーティーをさして「組織化された儀式」と言及しています。
オタクは玄関で足止め。入れてもらえないという悲しいシーンも。
第ニ章 本能が目を覚ます
『バブル・ボーイ』(2001 ブレア・ヘイズ監督)はジェイク・ギレンホール主演。免疫機能がないジミーは過保護の母親に無菌室に入れられ育てられました。
そんなジミーの前に現れた少女。彼女に恋した彼は移動式無菌室を自ら作り外へ。命を懸けて移動式無菌室からも脱出します。
まさに「殻をやぶる」瞬間。「規則は破られた」とナレーションが入ります。
この章では「性の目覚め」に焦点があてられています。性に目覚めると人間は本能的にそれを遠ざけようとします。自分との闘いが始まります。
『アイドル・ハンズ』(1999 ロッドマン・フレンダー監督)は、薬物漬けで消極的なティーンの右手に悪霊が取り憑くホラーもの。意思を持った手は本能のまま行動していきます。
「性の目覚めは度々惨事を起こす。目覚めたくないという気持ちが芽生える」
性への目覚め、性への衝動に対峙するティーンを描いた作品として、思春期の女性の体の変化を狼男に見立てる『ジンジャー・スナップス』(2000 ブレット・サリヴァン監督)や『ガール・ネクスト・ドア』(2004 ルーク・グリンフィールド監督)が取り上げられています。
「ティーンの性は悪ではない。何を学ぶかが大事だ」
以下、第三章「自分を見失う」、第四章「出発点に立つ」第五章「前へ進む」と続きます。
メインで取り上げられる映画は『パラサイト』(1998 ロバート・ロドリゲス監督)、『ファイナル・ディスティネーション』(2000 ジェームズ・ウォン監督)、『13 ラブ 30 サーティン・ラブ・サーティ』(2004 ゲイリー・ウィニック監督)、『ニコルに夢中 ドライブ・ミー・クレイジー』(1999 ジョン・シュルツ監督)等々。
そしてエピローグ。ある映画で締めくくられますが、果たしてその映画とは?!
3.映画『ビヨンド・クルーレス』の感想と評価
冒頭、矢継ぎ早に、登校シーンばかり集めた映像が登場します。
恥ずかしながら、私、一つも作品名がわからなかったのですが、廊下を歩く生徒たちの映像になると、今や大スターのあの顔、この顔も登場してきます。ローラー・パーマーの姿も(『ツイン・ピークス/ローラー・パーマー最期の7日間』)!
引用された青春学園映画は200本以上。ある映画の人物が誰かを探しているようなシーンのあと、別の映画の人物がその視線を受け取るように見える愉快な編集もあり、音楽におけるサンプリングや、ミックステープを思わせます。
青春学園映画に、皆さんはどのようなイメージを持っていますか?
明るく元気、瑞々しく清々しい、おバカだけど憎めない、純情な初恋、勇気を振り絞る落ちこぼれたちetc…。
安直ですが、まずはこんな言葉が思い浮かぶのではないでしょうか?
『ビヨンド・クルーレス』は、そうした学園ものの明るい面ではなく、寧ろ、思春期の若者の内面や葛藤に焦点をあてています。
高校という独特の社会に適応し、いじめから生き抜く、そんなサバイバルという側面もきちんとおさえつつ、主に思春期の性の目覚めに監督のチャーリー・ラインは最も関心を寄せているように思われます。
性の目覚めによる衝動や、それを恥と思う罪悪感、そこから生まれる自分との闘いに注目するのです。
週末のパーティーやプロムという学園映画の定番といわれるシーンと同じくらい、ティーンのキスシーン、ラブシーン(自慰シーンも)がたっぷり登場。圧巻の映像となっています。
青春学園映画の枠組みを客観的に分析しようとするのではなく、映画の中の人物たちへ感情移入するというアプローチが見られます。
監督は、映画の中に自身のかつての姿を見たのでしょう。映画の登場人物に熱い共感が込められています。
4.まとめ
監督のチャーリー・ラインは1991年生まれのイギリス人です。
アメリカの青春学園映画をリアルに体験した世代ではなく、あとで“発見”し、のめり込んでいったものと想像されます。
イギリスの大手新聞「ガーディアン」や、「サイト&サウンド」誌などに記事を書く傍ら、実験的な映画をいくつか制作しています。
ナレーションを担当しているのは、90年代青春映画のスターであるフェアルーザ・バークです。プロローグに登場する『ザ・クラフト』にも出演しています。
『ビヨンド・クルーレス』に関しては、とにかく実際観てもらうのが一番です!
12月16日より、下北沢トリウッドにて「歳末青春大セール! ティーンムービー傑作選」の1本として公開されます。
この作品に込められた切実なる想いを感じ取ってください!!