映画『パピチャ 未来へのランウェイ』は2020年10月30日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほかロードショー!
第72回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」正式出品や、第45回セザール賞2冠、新人監督賞と有望若手女優賞に輝いた映画『パピチャ 未来へのランウェイ』。
“暗黒の10年”といわれる1990年代の内戦下のアルジェリア。ファッションデザイナーを目指す女子大生ネジュマとその友人たちは、イスラーム原理主義の台頭によりテロが頻発し、女性はヒジャブの着用を強要するポスターが貼られ、弾圧が厳しい。
自分たちの自由と未来のため、命がけでファッションショーを行おうとする、ムニア・メドゥール監督が自ら体験をもとに映画化した感動作です。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』の作品情報
【公開】
2020年(フランス・アルジェリア・ベルギー・カタール合作映画)
【原題】
Papicha
【監督・脚本】
ムニア・メドゥール
【キャスト】
リナ・クードリ、シリン・ブティラ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、ザーラ・ドゥモンディ、ヤシン・ウイシャ、ナディア・カシ、メリエム・メジケーン
【作品概要】
タイトルの「パピチャ」は“愉快で常識にとらわれない自由な女性”という意味を持つアルジェリアのネットスラングからきています。
監督を務めるのは自身も90年代のアルジェリアで過ごし、フランスへと逃れた経験を持つムニア・メドゥール。本作で描かれていることの多くは実体験に基づいたもので、本国アルジェリアでは当局により、上映禁止となってしまったが、米アカデミー賞国際長編映画賞アルジェリア代表として認められました。
監督が自身を投影したという主人公・ネジュマ役を演じたリナ・クードリ自身もアルジェリアで生まれ、フランスへ移住。本作での演技が認められ、第45回セザール賞有望若手女優賞を受賞し、ウェス・アンダーソン監督の『The French Dispatch』にも出演が決まっている期待の女優。
ネジュマの親友・ワシラ役を演じたのはヨーロッパで有名なインフルエンサー シリン・ブティラ。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』のあらすじ
1990年代のアルジェリア。ファッションデザイナーになることを夢見る大学生のネジュマは親友のワシラと共に大学の寮を抜け出し、ナイトクラブのトイレで自作のドレスを売っていました。
大学には兄が決めた人との結婚を控え、もうすぐ大学をやめなくてはいけないサミラと、ビザを取得してアルジェリアから出国しようとしているカヒナという友人もいます。
ある日、ネジュマとワシラの2人がタクシーに乗ってクラブに向かおうとしていると、途中検問につかまってしまいました。銃を持ち、威圧的な態度で検問をされます。なんとか検問を通り抜けクラブに辿り着いた2人はいつものように自作のドレスを売り、クラブで踊ったあと、迎えを頼んでいたはずのタクシーを待ちますが、タクシーが来ません。
そんな2人に若い男2人組が声をかけ、送ってくれると言います。ネジュマは渋っていましたが、やむなく送ってもらうことにします。
しかし、寮住まいだとバレると貧乏なのがバレて相手にしてもらえないと思った2人は大学の寮の近くに住んでいると嘘をつきます。ワシラはその男性2人組みの一人に一目惚れしてしまいます。
ただ好きな服を着て、好きなように過ごしている2人ですが、そんな2人を快く思う世の中ではなく、アルジェリアではイスラーム原理主義が台頭し、テロが頻発していました。
大学の門の壁にも女性は正装であるヒジャブの着用をするべきと書かれたポスターが大量に貼られ、世間ではヒジャブを着用していない女性が殺されてしますという事件が頻発していました。
しかし、好きな服を着て何がいけないのかと、ネジュマは反発し、自作の服の材料を買いに行く洋服屋の店主にも、仕事するのではく、結婚して家にいるのが身のためだ、神に身を委ねればいいと言われてしまいます。
またネジュマ自身は父を亡くし、ネジュマの母と姉が働いている環境であったこともあり、男性がいない家庭は飢死すれば良いのかと店主に問いかけます。
ネジュマがバスに乗っていると女性はヒジャブをつけるべきだと言い、ヒジャブをつけていない女性に強制的にヒジャブを配り始めました。
怒りに震えたネジュマはいますぐバスを止めてくれといい、バスをおり、雨の中実家に向かって歩き始めました。
実家の近くで歩いているネジュマを見つけたネジュマの姉の車に乗せてもらい、ネジュマは実家に帰ります。
その後、ネジュマにとって悲しい事件が起きてしまい、ネジュマはファッションショーをしようと決意しました。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』感想と評価
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』で描かれていたのは、抑圧され、当たり前の権利が認められていない理不尽さを訴える術もない閉塞感。しかし、そのような状況でも、強い意志と勇気を持って自分なりの方法で闘おうとしているネジュマらの強さです。
その姿にきっと観客のあなたの心も震えることでしょう。
街中に貼られているポスター、街中も安心して歩くことが出来ない、ヒジャブをつけていない、肌を露出しているという理由だけで殺されてしまう。“暗黒の10年”といわれる1990年代のアルジェリアでは、テロが頻発し、罪もなき人々が大虐殺されたといわれています。
そんな時代の真実を実体験を基に浮き彫りにし、男女差別の問題、それに対する批判が込められています。
ネジュマが頑なにアルジェリアを出ていくつもりはない、ここは私の国だ、ここで闘う必要がある、と叫んでいました。その叫びは言わずもがなムニア・メドゥール監督自身の叫びなのでしょう。
“アルジェリア”で生き闘うことに意味があるのです。
海外に移住したところで偏見は変わりません。
国ではなく、人々の考え方の問題なのです。この“暗黒の10年”を忘れない、また世界にも知ってもらう必要がある。しかし、本作はアルジェリアでは当局によって劇場で上映することはかないませんでした。
ネジュマ、そしてムニア・メドゥール監督の闘いはまだ終わってません。今でも抑圧され、自由を手に入れようと闘っている少女はいるのです。
まとめ
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』は、ムニア・メドゥール監督の実体験に基づくアルジェリアの“暗黒の10年”の真実。
そこで描かれたのは、友人らと笑い合うネジュマの姿は等身大の女子であり、その輝く姿を見ていると尚更、抑圧され、自由を奪われなくてはならない理不尽さに憤りを感じることでしょう。
自由の声をあげることは殺される危険が伴います。殺されるなら黙って言うことを聞いて、耐えることしかないのが一般的な人間の弱さであり側面でもあります。
例えば劇中で描かれていた、ネジュマの親友であるワシラは好きな恋人のために露出が多い服装をやめ、彼の言いなりになっていました。サミラも兄に決められた結婚に従うつもりでいます。
そのような中で、自由の声をあげ闘おうとしたネジュマに人々は胸を打たれ、そんなネジュマに勇気づけられ、行動を起こそうとした人々がいたからこそ、ファッションショーを行うことが出来る。
暴力に屈せず闘う彼女らの姿、それを見事なまでに描いた映画『パピチャ 未来へのランウェイ』は、全世界の希望となるでしょう。
映画『パピチャ 未来へのランウェイ』は2020年10月30日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラスト有楽町ほかロードショー!