Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

Entry 2020/09/07
Update

映画『ヒットマン エージェント:ジュン』感想と考察解説。韓国人俳優クォンサンウ演じるキャラを魅力的にする為に脚本を熟考|コリアンムービーおすすめ指南19

  • Writer :
  • 西川ちょり

売れない漫画家の正体は、対テロ保安局“猛攻隊”の元エージェントだった!

韓国映画『ヒットマン エージェント:ジュン』が2020年9月25日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にて全国順次公開されます。

対テロ保安局“猛攻隊”のエージェント、ジュン。誰もが怖れる暗殺者はウェブ漫画家になるために死を偽装しますが……。

チェ・ウォンソブ監督が手掛け、主演にクォン・サンウを迎え、2020年旧正月に韓国で大旋風を巻き起こした抱腹絶倒のアクションコメディ。実写アクションとウェブトゥーンやアニメーションを交えたユニークな構成が注目を集めました。

チョン・ジュノ、ファンウ・スルヘ、イ・イギョン、イ・ジウォン、ホ・ソンテらも出演しています。

【連載コラム】『コリアンムービーおすすめ指南』記事一覧はこちら

映画『ヒットマン エージェント:ジュン』の作品情報


(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

【日本公開】
2020年(韓国映画)

【原題】
히트맨/英題:Hitman:Agent Jun

【監督・脚本】
チェ・ウォンソプ

【キャスト】
クォン・サンウ、チョン・ジュノ、ファンウ・スルヘ、イ・イギョン、イ・ジウォン、ホ・ソンテ

【作品概要】
韓国を代表する人気俳優クォン・サンウを主役に迎え、チェ・ウォンソブ監督がクォン・サンウの魅力を最大限にイメージして脚本を執筆。

実写アクションとウェブトゥーンやアニメーションを交えたユニークな構成が注目を集めました。チョン・ジュノ、ファンウ・スルヘ、イ・イギョン、イ・ジウォン、ホ・ソンテらが出演。

映画『ヒットマン エージェント・ジュン』のあらすじ


(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

楽しい家族旅行の最中、両親を交通事故で亡くした少年は、国家情報院に拾われ「ジュン」と名付けられました。

ジュンは暗殺要員として育てられ、瞬く間に人間兵器部隊“猛攻隊”のエースとなりましたが、漫画家になるという幼い頃からの夢を捨てられず、任務遂行中に死を偽装して行方をくらませます。

15年後―。ジュンは「スヒョク」と名前を変え、憧れの漫画家になっていました。しかし彼のマンガはまったく人気がなく、いつもひどい感想が書き込まれ、落ち込む毎日です。

たいしたギャラも貰えずバイトと妻・ミナの稼ぎでなんとか日々をしのいでいるありさまです。

連載の打ち切りが決まり自暴自棄になったジュンは、娘のカヨンから自分のことを描けばいいのにと言われたことを思い出し、酔いに任せて暗殺要員時代の機密を漫画にします。

彼が眠り込んでいる間にミナが配信してしまい、翌朝目覚めたときには「面白い!」と大反響を巻き起こしていました。

しかし、漫画を読んだ国家情報院とテロリストに生きていることがバレてしまい、ジュンは双方から命を狙われることに……!

映画『ヒットマン エージェント:ジュン』の解説と感想

(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

クォン・サンウの魅力と個性的な共演者

『ラブ・アゲイン 2度目のプロポーズ』(2019/パク・ヨンジプ)、『鬼手』(2019/リ・ゴン)、そして本作『ヒットマン エージェント:ジュン』と主演作がたてつづけに公開されるクォン・サンウ。

もともと知名度の高いスター俳優ですが、昨今は「二度目の全盛期」と称されるほどの活躍を見せています。

『ラブ・アゲイン 2度目のプロポーズ』ではコメディ、『鬼手』ではシリアスとまったく違う役柄を演じていましたが、本作ではシリアスのちコメディと、クォン・サンウの2つの持ち味を同時に味わうことができます。

「探偵なふたり」シリーズでは恐妻家の推理マニアを演じていましたが、本作でも妻に頭のあがらない売れない漫画家ぶりがおかしく、やっぱりクォン・サンウは恐妻家が似合うなぁと妙に納得してしまいます。

妻・ミナに扮しているのは人気ドラマ『愛の不時着』で、ヒロイン、ユン・セリの兄セジュンの調子のいい妻を好演したファンウ・スルヘ。

本作では売れない漫画家の夫にきつめにあたる気の強い女性を演じていますが、とんでもない出来事に巻き込まれた際の彼女の活躍ぶりは本作でも屈指の見どころとなっています。

また、“猛攻隊”の鬼教官ドキュに扮したチョン・ジュノも、シリアスもコメディもこなす俳優で、本作でもその両面を遺憾なく発揮しています。

人気テレビドラマ『SKYキャッスル』でチョン・ジュノの娘役だったイ・ジウォンが、本作ではクォン・サンウの娘・カヨン役を演じています。カヨンが歌うラップの家族思いのリリックには思わずほろりとしてしまうことでしょう。

笑いとアクションが満載の極上エンターティメント

(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

酔いに任せて描いた暗殺要員時代の機密を題材にした漫画が、ネット配信されてしまい、大反響となったために、生きていることがバレて国家情報院と過去に関わったテロリストの両方から狙われることとなった主人公。

妻をテロリストに、娘を国家情報院にさらわれるという考え得る大きなピンチが訪れ、俄然シリアスになるかと思いきや、ドタバタぶりはさらに加速していきます。

チェ・ウォンソブ監督が「とにかく最後まで休むことなく笑い続ける映画」だと語っているように、爆笑につぐ爆笑へとなだれ込んでいきます。

その一方で、アクションシーン、格闘シーンも豊富で、迫力満点のバトルが展開されます。

クォン・サンウは元“猛攻隊”のエースに相応しい颯爽としたアクションを見せており、さえないのにめっぽう強いジュンという男を絶妙な案配で演じています。

ジャッキー・チェンやチャウ・シンチーが活躍した香港映画のアクションコメディーを彷彿させる極上のエンターティメントに仕上がっています。

ウェブトゥーンが組み込まれた映像の面白さ

(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

実写アクションに、ウェブトゥーンやアニメーションが組み込まれているのも本作の見どころのひとつです。

ウェブトゥーンとは、韓国のデジタルコミック、ウェブコミックの一種です。従来のコミックが、ページごとに描かれているのに対して、ウェブトゥーンはスマホやPCの画面に縦長のストリップで進行していくコミックです。

主人公の描いた漫画ということで、登場するウェブトゥーンはスクロールさせて進んでいく画面が、映画の映像としても映えることがわかります。

キム・イェシンというウェブトゥーン・アーティストが描くウェブトゥーンのジュンはめっぽう格好良く、対するテロリストや“猛攻隊”の仲間たちもシリアスな魅力にあふれています。

ウェブトゥーンでアクションが表現されることで、実写によるアクションもより迫力が増す効果があると同時に、ノワール的でクールな雰囲気のウェブトゥーンとずっこけキャラクターの実際のジュンたちのギャップが、さらなる笑いを誘います。

キム・イェシンは、ジュンが最初に描いていた駄作である『爆笑少林寺』と大反響を巻き起こした『暗殺要員 ジュン』との作品の描き分けも行っており、その部分も是非チェックしてみてください。

まとめ

(C)2020 LOTTE ENTERTAINMENT All Rights Reserved.

監督のチェ・ウォンソブは、2009年の作品『私の愛、私のそばに』(パク・チンピョ)の脚色で認められ、短編映画『Fantastic Couple(英題)』で監督としてデビュー。コメディー映画で才能を発揮してきた監督として知られています。

今作も、「すべてをより面白くするためにはどうすれば良いか」とさらなる面白さを追求しながら脚本を書きあげました。

クォン・サンウ扮する主人公・ジュンと彼をとりまくキャラクターとの絶妙な掛け合いが笑いを誘い、何度も爆笑してしまうことでしょう。

韓国映画『ヒットマン エージェント:ジュン』は2020年9月25日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋他にて全国順次公開です。

次回のコリアンムービーおすすめ指南は…

次回もとびっきり面白い韓国映画をお届けする予定です。

お楽しみに。

【連載コラム】「コリアンムービーおすすめ指南」記事一覧はこちら



関連記事

連載コラム

台湾映画『バナナパラダイス』あらすじ感想と考察評価。ワン・トン監督が描く近代史三部作の2作目は“偽りの人生”を送る男が見たもの|映画という星空を知るひとよ19

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第19回 映画『バナナパラダイス』は中国国共内戦時、国民党軍に身を投じ、軍とともに台湾に渡った青年2人が辿る悲喜こもごもの綱渡り人生を描いたヒューマンドラマです …

連載コラム

韓国映画『暗数殺人』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。実話元ネタ事件の真相と刑事の執念を描く|サスペンスの神様の鼓動32

こんにちは「Cinemarche」のシネマダイバー、金田まこちゃです。 このコラムでは、毎回サスペンス映画を1本取り上げて、作品の面白さや手法について考察していきます。 今回ご紹介する作品は、狡猾な殺 …

連載コラム

サメ映画『スカイシャーク』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。ナチス×ゾンビ×サメの三つ巴のホラーが世界を襲う!|未体験ゾーンの映画たち2021見破録19

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」第19回 これは公開も危ぶまれても当然…という世界の怪作・珍作・トンデモ映画も紹介する「未体験ゾーンの映画たち2021見破録」。第19回はその代表と言 …

連載コラム

映画『ダブル・ライフ』あらすじ感想と解説評価。余園園監督と菊地敦子で描くレンタル夫使用の二重生活の実態|2022SKIPシティ映画祭【国際Dシネマ】厳選特集6

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022国内コンペティション長編部門・優秀作品賞受賞の余園園監督作品『ダブル・ライフ』 2004年に埼玉県川口市で誕生した「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」は、映画産 …

連載コラム

アート・オン・スクリーン『私は、クロード・モネ』印象派の巨匠に迫る体験|映画と美流百科1

連載コラム「映画と美流百科」第1回 はじめまして。この度「映画と美流百科」というコラムを担当することになりました、篠原愛と申します。 このコラムでは、ファッションやアートなどを切り口に、映画を紹介して …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学