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Entry 2020/08/03
Update

Netflix映画『ブルージェイ』ネタバレ感想と考察解説。大人のラブストーリーをアレックス・レーマン×マーク・デュプラスが描く

  • Writer :
  • 山田あゆみ

ロマンス映画『ブルージェイ』はNetflixで配信中!

映画『ブルージェイ』は、2016年に米国で限定公開されました。かつての恋人同士が偶然の再会を果たし、過去の思い出を振り返りながら互いの消せない記憶を辿る大人のラブストーリーとなっています。

本作の監督はアレックス(アレクサンドル)・レーマンが務めました。グレタ・ガーウィグとの共演作『ハンナだけど生きていく!』や『ハッピーニートおちこぼれ兄弟の小さな奇跡』など、数多くの監督作品を持つのマーク・デュプラスが製作、脚本、出演をしています。

『オーシャンズ8』や『ミスターガラス』など、様々なジャンルでの活躍が見られる女優サラ・ポールソンとのダブル主演作です。
 

映画『ブルージェイ』の作品情報

(c) Netflix

【配信】
2016年(アメリカ映画)
 
【監督】
アレックス(アレクサンドル)・レーマン
 
【脚本】
マーク・デュプラス

【キャスト】
マーク・デュプラス、クルー・ギャラガー、サラ・ポールソン
 
【作品概要】
2015年1月にデュプラス兄弟がNetflixと4本の映画製作の契約を結び、本作がその1作目です。(ちなみに2作目が『パドルトン』(2019))

デュプラス兄弟というと、共に映画監督、製作を行う兄ジェイ・デュプラス、弟マーク・デュプラスのふたり。
『ストーリーオブマイライフ』のグレタ・ガーウィグが注目を集めるきっかけとなったマンブルコア映画(低予算、台本無しで撮られた作品)の代表的人物です。

第41回トロント国際映画祭でプレミア上映されたのち、全米の映画館1館で公開されましたが、日本国内での上映はされていません。映画評価サイトRottenTomatoesでは批評家支持率91%。観客スコア77%。IMDbでは総合スコア7.3/10(レビュー数13017)、批評家スコアのMetascoreは69を獲得しています。(2020年7月28日時点)
 
監督のアレックス・レーマンは、『ザ・チャイルド:悪魔の起源』(2010)、『ピラニアリターンズ』(2012)、『しあわせの灯る場所』(2014)の撮影を担当しており、本作に続き映画『パドルトン』でデュプラス兄弟とNetflixとの製作映画の監督脚本を務めている人物です。
 

映画『ブルージェイ』のあらすじとネタバレ

中年男性ジム(マーク・デュプラス)とアマンダ(サラ・ポールソン)はスーパーで偶然再会を果たします。ぎこちない挨拶を交わすふたり。

10代のころ恋人同士だったふたりの間には懐かしさと互いを探るような空気が流れます。

スーパーを出てカフェに移動し、近況報告をし合うふたり。ジムは病気だった母を亡くし、乾式壁の事業を叔父と行ってると話します。

妊娠した妹に会いに故郷を訪ねていたアマンダは既婚で、夫の前妻との息子がふたりいることを話します。

未婚のジムは彼女の話を聞きながら涙が止まらなくなります。そのわけは本人にもわからないと笑顔で茶化していました。

昔話に花を咲かせながら歩き、辿り着いたショップにはふたりが学生当時に店主だった男性が居ました。驚きと喜びで興奮するアマンダとジム。

自分たちのことを覚えているか試したいと、当時ふたりでしていた世界各国のビールを買う遊びを始めます。

ふたりのことを思い出した店主は、「有名なカップルだった」と感激して話します。もう結婚して24年になると嘘をついてしまったふたりでしたが、嘘ながらもあたたかな空気が流れます。

ショップを出て河辺でお喋りをはじめるふたり。

ジムは叔父とのトラブルで失業したことを打ち明けます。アマンダが昔好きだったピンクと紫のジェリービーンズを残してくれたジムに、言葉にできない愛しさで溢れた表情を向けるアマンダ。

妹の家に向かう途中だったアマンダは妹からの「いつ帰ってくる?」というメールに対して少し考えて、ジムの家に行きたいと切り出します。

ジムの家に着いたふたりはジムの母が残した恋愛小説について話して笑い合います。家のベランダで夫と電話をするアマンダに笑顔で手を振ったジムですが、アマンダは気まずそうに体を背けてしまいます。

再び部屋に戻ったふたりは高校時代のジムの洋服や当時のノートを見て懐かしさに浸りながらしゃべります。

ジムのノートにはアマンダへの愛の告白の詞や手紙がありました。アマンダはジムの目を盗み、手紙をそっと自分のポケットに忍ばせます。

当時録音したカセットテープをふたりでおもしろ半分に聞き始めます。ふざけて録音した自作ラップが聞こえてきて笑うふたり。そして、ふたりで40周年を迎えた夫婦ごっこをしたときの会話が聞こえてきました。

特別なディナーを用意したアマンダにサプライズでプレゼントを用意したジム。ふたりにはこどもが2人いる設定で仲睦まじい内容の会話でした。その音声をふたりは懐かしみながらもどこか悲しげな表情で聞いていました。

テープの中のディナーを再現するようにアマンダはあり合わせのもので食事を用意します。そこへ帰宅した夫を装ったジムが入ってきてふたりで他愛のない話で盛り上がります。

もし夫婦生活を送っていたらという仮定のなかでロマンティックな会話を楽しみます。

ムードたっぷりな音楽でダンスした後は、ヒップホップミュージックでノリノリに飛び跳ねながら踊り騒ぎます。ふたりとも10代に戻ったようなはしゃぎっぷりです。

踊り終えると、互いにヘッドマッサージをしてリラックスして過ごします。

保護犬の施設での仕事についてアマンダは語り始めました。思い入れのある大好きな犬グレイハウンドを扱いたいけれど、仕事としてはできていないことへのわだかまりを吐露します。

そんなアマンダの話を黙って聞きながら、ジムはさりげなく励ましました。

以下、『ブルージェイ』ネタバレ・結末の記載がございます。『ブルージェイ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

夜が更けて車の荷台で毛布にくるまり寝そべりながら星を見上げるふたり。

アマンダは少し前から抗うつ剤を飲んでいることを打ち明けます。家庭に不満はなく、幸せなはずなのに病んでしまい、誰にも言えないでいること、そして5年間泣くことができていないと……。

「どんな私でも大丈夫だと思わせてくれてありがとう」とアマンダが伝え、ジムはこんな関係は他になかったと伝え気持ちを確かめ合います。

キスをしたふたりは盛り上がり、そのままベッドへ向かいますが、急に我に返ったアマンダは帰ると言い身支度をはじめます。

止めようとするジムともみあいになり、先ほどポケットに入れたアマンダ宛の手紙が床にひらりと落ちてしまいます。

ジムは涙ながらに「自分の手紙だったのに、そして自分の子でもあったのになぜあんなことをしたんだ」と取り乱してアマンダに詰め寄ります。(ふたりは予期せぬ妊娠の後、中絶により子を失っていたのです)

アマンダは泣き崩れるジムをなだめ、優しくジムの頭を撫でました。

夜が明けて駐車場へ向かうふたり、アマンダは当時を振り返り話しはじめます。

自分がどうしようと悩んでいるときに、ジムは変な皮肉まじりの冗談ばかりの手紙と風船をくれた。そこで自分たちには子どもは育てられないと思ったと言います。

そこでジムは先ほどの手紙をアマンダに渡します。当時渡すはずだった手紙には「アマンダ愛してる。一生君を愛し続ける」と書いてありました。そのときには怖くて渡せなかったと打ち明けるジム。

涙がこぼれているのに気づいたふたりは笑い合います。5年間決して泣くことができなかったアマンダが、ボロボロと涙をこぼしていたのです。

止まらない涙と思い出を噛みしめながらふたりは深呼吸して見つめ合います。

映画『ブルージェイ』の感想と評価

本作に出てくるのはほぼふたりの男女のみです。そしてふたりの思い出が語られるシーンがほとんどなのに、全く回想シーンがありません。しいていえばカセットテープの音声くらい。

かつて愛し合ったふたりがどれほど仲睦まじく、どんな些細な思い出も互いに大切に想っているのかというのは、さりげないセリフや行動が感じさせます。

マンブルコア映画の代表的人物であるマーク・デュプラスによる脚本と製作なので、そのナチュラルさは彼の意図によるものかもしれませんが、アマンダ役のサラ・ポールソンとのふたりのコンビネーションは本当に素晴らしいです。

懐かしさと愛しさと切なさが混在したふたりの奥深い演技は、とても筆舌に尽くしがたいものでした。

特に印象深いのがディナーシーンでジムのおかしな話し方に、アマンダが食べていた卵をふきだしてしまったシーン。これはアドリブというかハプニングではないかと思うほどナチュラル!

心が通じ合う恋人同士には、価値観や趣味が違ったとしても共通の笑いポイントがあったり、相手の言うことがツボにはまっておかしくて仕方がなくなってしまうタイミングがあるものではないでしょうか?

それだけ相手に心を開き、素で向き合っているというしるしかもしれません。ジムとアマンダの間には確かにその信頼と愛情が見て取れるのです。

ふたりの演技を引き立たせるには全編モノクロであることは必然であるように感じられるし、寒そうにも暖かそうにも見える木々や湖の輝きがより美しさを増して物語を唯一無二のものにしています。

まとめ

本作は10~20代より30代以降の人に刺さる作品かもしれません。なぜかというと、過ぎ去った人生の苦い部分を振り返り、愛おしむ物語だからです。

消せない過去を抱え、決していいことばかりじゃない人生を歩むふたり。絶望を感じても人生は続く。思いがけない出会いや別れを繰り返して。

余計な演出やセリフは一切なしに、アマンダが作中で言ったように「どんな私でも大丈夫」と思わせてくれる作品です。

日本で劇場公開されなかったのが惜しい秀作。Netflixユーザーはぜひチェックしてみてください。



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