2017年12月16日より、下北沢トリウッドにて「歳末青春大セール!ティーンムービー傑作選」という特集上映が行われます!
日本未公開映画の紹介、上映を企画・運営するGucchi’s Free Schoolによる選りすぐりの傑作ティーンムービー8本が勢揃い!
今回はその中の1本、デトロイト郊外に暮すティーンの「お泊まり会」の一夜を描いた『アメリカン・スリープオーバー』をご紹介します。
1.映画『アメリカン・スリープオーバー』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
The Myth of the American Sleepover
【監督】
デビィッド・ロバート・ミッチェル
【キャスト】
クレア・スロマ、マーロン・モートン、アマンダ・バウアー、ブレット・ジェイコブセン、ジェイド・ラムジー、ニキータ・ラムジー、エイミー・サイメッツ
【作品概要】
デビィッド・ロバート・ミッチェル監督が、2010年に発表した長編監督デビュー作。
夏が終わろうとしているある日、デトロイトの郊外に住む何組かのティーンたちは、お泊まり会を催していた。
一目惚れした少女を探す少年、お泊まり会を抜け出して男友達のパーティーに行く少女、高校時代の後輩を訪ねて行く大学生など、それぞれの想いが夜を駆け抜けていく。
2.映画『アメリカン・スリープオーバー』のあらすじ
デトロイトの郊外に住むマギーは友人のベスと一緒に街のプールにやってきました。
夏が終われば彼女たちは高校一年生になります。今年の夏も去年の夏とたいして代わり映えもなく、なんとなく何かやり残したような、物足りなさを感じていました。
マギーがさっきから気になっているのは、プールサイドを掃除している監視員の男性でした。彼女の視線を感じたのか、男性は顔をあげ、二人の視線がぶつかりました。
ロブは母親の買い物につきあってスーパーマーケットでカートを押していました。むこうから同じく母親と来たらしい金髪の少女がカートを押してくるのが見えました。
すれ違う際、二人は互いに視線を交わし、そのまま遠ざかっていきました。ロブは彼女に一目惚れしてしまいますが、それっきり言葉を交わすこともなく別れてしまいます。
クラウディアは最近、引っ越してきたばかり。陸上の練習に参加した際、一学年上のジャネルからお泊まり会に来ないかと誘われます。
新学期前に友達を作っておきたいから参加したいと言うと、彼氏も賛成してくれました。
スコットは、シカゴの大学に通っていますが、高校時代から付き合っていた彼女と別れてしまい、大学に通う意欲を失くしていました。
母親のいいつけで高校にいる妹、エマを迎えに行った際、懐かしの母校の掲示板に自分の写真を発見します。
プロムの日、双子のアビー姉妹と話している写真でした。彼は写真を取り出すと、ポケットにしまいます。
マギーとベスは、ダンスレッスンを受けていました。明日は街のパレードで、そこでダンスを披露するのです。
その仲間からお泊まり会に誘われました。「お泊まり会だなんて」とマギーが言うと、ベスは「面白そうじゃない」と言います。
二人が自転車に乗っていると、知り合いの青年が庭の芝刈りをしているところに出くわしました。
彼は、今晩、友人のパーティーに行くのだそう。マギーは会場の住所を教えてもらいます。
ロブはスーパーで会った女の子のことが頭から離れません。
親友と一緒に仲間の家に一泊するため荷物を持って歩いていると、前からエマたち女子三人が枕を持って歩いてくるのが見えました。
お泊り会に行くという彼女に他校の子も来るの? とロブは尋ねました。
親友はスーパーの娘の話しをばらしてしまいます。エマは「のぞきに来たら? 居るかもしれないし」と微笑みました。
スコットはエマからアビー姉妹がミシガン大学の新入生を対象にしたお泊まり会にいることを聞き出し、車に飛び乗りました。
日も暮れて夜のとばりが降りてきました。それぞれの想いが動き出します。
朝が訪れた時、彼らはどんな気持ちでそれを迎えるのでしょうか!?
3.映画『アメリカン・スリープオーバー』の感想と評価
夏休みも終わりに近づき、想い出づくりとばかりにあちらこちらでお泊まり会が開催されます。
正直、彼らにとって「お泊まり会」が本当に楽しかった時期は既に過ぎてしまっているでしょう。
実際、主要人物は、ほぼ、途中で外へ飛び出しています。もう彼ら(彼女たち)は無邪気な子どもではないのです。
けれど、画面に映し出される、彼ら(彼女たち)にはまだあどけなさが残り、大人っぽい体つきをしているように見える少女たちも、きゃしゃな部分を多分に残しています。
カメラは時に驚くほど、接近して彼ら(彼女たち)をアップでとらえます。
子どもではないけれど、かといって大人でもない。そんな微妙な年頃の彼ら(彼女たち)を映画は眩しそうに見つめ、慈しむようにスケッチしていきます。
失われてしまえば二度と戻れない、この大切な時を、どれほど人は自覚しているのだろう? そんなせつない想いも感じ取ることが出来ます。
それにしても、そんな彼ら(彼女たち)を描くのに「お泊まり会」というモチーフの絶妙さといったら!大人になってしまえば、「お泊まり会」など開きたくても開けなくなってしまうのですから。
彼ら(彼女たち)は、この夏の終わりの一夜で何をして、何を選択するのでしょうか!?
まとめ
本作は、デビィッド・ロバート・ミッチェルが、何年もかかって資金を集め制作した、彼の長編映画監督デビュー作品です。
2014年には『イット・フォローズ』を監督。ジャンルはホラー映画ですが、デトロイトを舞台に、ティーンエイジャーの不安な心や友情を描き、『アメリカン・スリープオーバー』との共通点も多い作品になっています。
本作ではまったくつながりのないグループのエピソードを重ねていく際、車の動きや音楽などを使い、見事につなげていく初長編監督作品とは思えない巧みな演出をしていますので、そのあたりも是非注目してみてください。
夏だというのに、暑さを感じさせず、寧ろ涼し気な印象さえ与える透明感ある映像は、2017年度の第89回アカデミー賞で作品賞、脚色賞、助演男優賞に輝いた『ムーンライト』(2016)の撮影監督、ジェームズ・ラクストンによるものです。
暮れゆく街中を二人の少女が自転車で走るシーンはとりわけ素晴らしく、街が次第に暗くなり、夜に包まれて行く様子を、ブルーを基調とした色合いで非常に美しく撮っています。
出演している俳優はほぼ無名の新人ばかりで、初々しく、瑞々しい演技を見せてくれます
下北沢トリウッドやアップリンク渋谷を始め、各地で劇場公開され(筆者も、最近惜しまれつつ閉館した京都の立誠シネマで観ました)、高い評価と人気を得て、BDも発売されました。
12月16日より、下北沢トリウッドにて「歳末青春大セール! ティーンムービー傑作選」の1本として公開されます。
上映権が本年末で切れるため、今回が最後の上映になるかもしれません。
この貴重な上映機会を是非お見逃しなく!