Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

インタビュー特集

Entry 2020/08/15
Update

【小野莉奈インタビュー】映画『アルプススタンドのはしの方』『テロルンとルンルン』で二人の高校生を演じて思い出したこと

  • Writer :
  • 咲田真菜

映画『アルプススタンドのはしの方』は2020年7月24日(金)より全国順次公開中。さらに映画『テロルンとルンルン』は2020年8月21日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開!

2019年に‟浅草ニューフェイス賞”を受賞した舞台を映画化し、2020年7月24日(金)より全国順次公開中の映画『アルプススタンドのはしの方』。同作にて演劇部員・あすはを演じる小野莉奈さんは、2020年8月21日(金)より劇場公開を迎える映画『テロルンとルンルン』では聴覚に障害を持つ高校生・瑠海を演じています。


photo by 田中館裕介

2作の劇場公開を記念して、このたび小野莉奈さんにインタビューを行いました。『アルプススタンドのはしの方』『テロリンとルンルン』での演技や役作りについて、女優としての今後の展望などを語ってくださいました。

舞台からの続投で安心して撮影に臨めた


photo by 田中館裕介

──『アルプススタンドのはしの方』は舞台版の千秋楽にて映画化されることが発表となりました。実際に撮影では舞台との違いを感じられましたか?

小野莉奈(以下、小野):舞台は出演者が5人しかいませんでしたが、映画は実際に球場で撮影をして、実際に応援をするエキストラの方たちもいらっしゃったので、それだけでも大きな違いを感じました。舞台よりも、よりリアルになった気がします。

映画では、演じ方をナチュラルにしようと思って、声やリアクションが大きくなりすぎないように意識しました。舞台だと、遠くにいるお客さんに見えるように、聞こえるようにと意識するところがありましたが、映画では、よりお芝居を馴染ませたいという気持ちがあったので、監督と相談してそのように決めました。

──城定監督は、舞台から引き続き出演しているメンバーが多いことから、安心感があったとおっしゃっていました。小野さんはいかがでしたか?

小野:それはみんなが感じていたことだと思いますし、私自身も「戻ってきた」という感覚が大きかったです。休憩時間も舞台の時と同じように共演者と話したりして、楽しく過ごしていました。変な緊張感がなかったので、そういう部分でも安心感が大きかったです。

──城定監督の演出はいかがでしたか?

小野:城定監督は、「こういうふうにして」という指摘は特になくて、役者に任せてくれる感じでした。撮影の進め方がすごくてきぱきしていて、判断力が早いなと感じました。例えば今回の撮影は、球場が夕方の5時までしか使えなくて、晴れている日しか撮影できないなど、すごく時間が限られていたんです。でも監督は迷わずに撮影をポンポンと進めていきました。芝居の面でも無駄な時間がなかったので、役に気持ちがスッと入っていける感じがありました。完成した作品を観た時に、エキストラさんもそんなに大勢いたわけではないのに、いっぱいいるように見えたので迫力が違うなと感じました。

安田あすはと上田瑠海、二人の高校生を演じて


(C)2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会

──『アルプススタンドのはしの方』にて小野さんが演じられた安田あすはとご自身に共通する点はありますか?

小野:私も少し冷めているところがあるので、あすはの気持ちが分かりました。たぶん私もあすはと同じ立場だったとしたら、学校の先生に言われて暑い中応援をするなんて嫌だなと思うし、だるいなって感じると思います。そして野球のルールがあまり分からないところも同じなので、あすはに対して、より感情移入ができました。物語の最後、スポーツで頑張っている人がかっこよく見えて、その想いに飲み込まれていくところも、とても共感できましたね。


(C)HIROYUKI MIYAGAWA

──『テロルンとルンルン』でも小野さんは高校生役を演じられています。あすはとは違う雰囲気の上田瑠海という少女ですが、演じられる上で大変だった点はありますか?

小野:『テロルンとルンルン』は、耳に障がいがあり、学校でいじめにあって馴染めない女の子の役でしたので、撮影前は役の気持ちが入りすぎて少し疲れてしまった覚えがあります。でも撮影に入ってからは、監督やスタッフさんたちも親しみやすく、地元(広島県竹原市)の方たちがすごく温かくて、休憩時間をすごく楽しく過ごしました。ただ、撮影のカメラが回るとドッと疲れたりしましたね(笑)。

自分の部屋で声を出さずに泣く場面があったのですが、その時に一人でゆっくり役に向き合える時間を作ってもらうことができました。監督が「準備ができたらで大丈夫だよ」と言ってくださったおかげで、自分の気持ちを紙に書いたりしてじっくり感情を作っていくことができました。そういう環境を与えられて、とてもありがたかったです。

──『テロルンとルンルン』では、岡山天音(朝比奈類役)さんと母親役の西尾まり(上田陽子役)さんとのやりとりがほとんどでした。お二人の印象はいかがでしたか?

小野:岡山さんは最初、あまりお話されないシャイな方なのかなという印象があったんです。ところが、休憩時間に岡山さんから話しかけてくださって、すごく話しやすい方だったので、それからは緊張感なく撮影をすることができました。

西尾さんはすごくフランクな方で、お姉さんみたいでした。撮影の時にどうすればきちんと自分の姿がカメラにおさまるかというような技術的なこともアドバイスしてくださる一方で、西尾さんのお子さんの話をお聞きしたり、プライベートなこともお話できたので、安心感がありました。

観客が明るい気分になれる役を


photo by 田中館裕介

──これからどんな役を演じていきたいですか?

小野:ラブストーリーをやってみたいです。今は仕事を頑張っているので「恋する気持ちってどういうふうなんだろう」と思うところがあるので、役を演じることで、恋する気持ちを楽しめたらいいなと思います。そして、どちらかというと前向きな気持ちになれる役を演じていきたいと思っていて、作品を観てくださった人が、明るい気持ちになってくれるような役をやっていきたいですね。

──『アルプススタンドのはしの方』の見どころについて教えてください。

小野:私自身、完成した作品を観て、最後にグッとくるものがありました。みんなで一生懸命応援するシーンを含めて、本当にその場にいるような気持ちになれるんですよ。今年は高校野球が中止になるという悲しい出来事もありましたが、だからこそこの作品を観て、熱い気持ちを感じていただきたいです。ぜひ作品から、彼女たちの熱い気持ちや高校時代の懐かしい気持ちを味わっていただけたらと思います。

インタビュアー/咲田真菜
撮影/田中館裕介
スタイリスト/瀬川結美子 
ヘアメイク/尾曲いずみ

小野莉奈プロフィール


photo by 田中館裕介

2000年生まれ、東京都出身。2017年8月に木曜劇場『セシルのもくろみ』のスピンオフドラマ『セシルボーイズ』で女優デビュー。

2018年には短編映画『アンナとアンリの影送り』に初主演。同年10月期の火曜ドラマ『中学聖日記』で有村架純が演じる主人公の恋敵役で出演して民放連続ドラマ初レギュラーを果たす。また写真家・丸谷嘉長とのフォトセッション作品『コペルニクス』が作品掲載サイト「Negative pop」にて公開中。

映画『テロルンとルンルン』の作品情報

【公開】
2020年(日本映画)

【脚本】
川之上智子

【監督】
宮川博至

【キャスト】
岡山天音、小野莉奈、川上麻衣子、西尾まり、橘紗希、中川晴樹ほか

【作品概要】
広島県竹原市忠海を舞台に制作された映画『テロルンとルンルン』は、米国カリフォルニア州の「Poppy Jasper International Film Festival」で、最優秀長編映画と映画祭ディレクターが選ぶ優秀作品賞の2つの賞を受賞しました。

監督は、本作が2作目となる新鋭・宮川博至、主演は『ポエトリーエンジェル』(2017)で第32回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞し、その演技力と稀有な存在感で今最も注目を集める若手俳優・岡山天音が務め、聴覚に障害を持つ女子高生を小野莉奈が演じます。

映画『テロルンとルンルン』のあらすじ


(C)HIROYUKI MIYAGAWA

広島県竹原市のある町でのこと。聴覚に障害を持つ女子高生・上田瑠海(小野莉奈)が学校帰りに歩いていると、紙飛行機が飛んできて頭に当たりました。

飛んできたと思われる方向にガレージがあり、小さな窓が閉まるのが見えました。瑠海は飛行機を持ってその窓をドンドン叩きます。ガレージには引きこもりの青年・朝比奈類(岡山天音)がいました。

類はわけあって引きこもり、社会から孤立、聴覚障害者の瑠海はクラスでいじめられ、学校が面白くありません。住む世界から孤立している2人は、次第に窓越しに交流を深めていくのですが……。

映画『アルプススタンドのはしの方』の作品情報

【公開】
2020年(日本映画)

【原作】
籔博晶、東播磨高校演劇部

【監督】
城定秀夫

【脚本】
奥村徹也

【キャスト】
小野莉奈、平井亜門、西本まりん、中村守里、黒木ひかり、目次立樹

【作品概要】
2019年6月に浅草九劇で上演され、同年度内に上演された演劇から選出される「浅草ニューフェイス賞」を受賞した舞台『アルプススタンドのはしの方』の映画版となります。

原作は兵庫県東播磨高校演劇部が上演し、第63回全国高等学校演劇大会で最優秀賞に輝いた名作戯曲。監督は映画・Vシネマの名作を100本以上手がける業界注目の名匠・城定秀夫が務めます。小野莉奈、西本まりん、中村守里、目次立樹が舞台に引き続き出演、平井亜門、黒木ひかりが新たに参加し、青春時代を謳歌し損ねた大人たちのための青春映画の傑作が誕生しました。

映画『アルプススタンドのはしの方』のあらすじ


(C)2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会

高校野球夏の甲子園大会一回戦。夢の舞台でスポットライトを浴びている選手たちを観客席の端っこで見つめる冴えない4人。夢破れた演劇部員・安田と田宮、遅れてやってきた元野球部・藤野、帰宅部の成績優秀女子・宮下。

安田と田宮はお互い妙に気を使っており、宮下はテストで吹奏楽部部長・久住に学年一位を明け渡してしまったばかりです。藤野は野球に未練があるのかふてくされながらもグラウンドの戦況を見守っています。口癖のように「しょうがない」を連発し、最初から諦めていた4人でしたが、それぞれの想いが交差し、先の読めない試合展開とともに、いつしか応援に熱を帯びていきます。

映画『アルプススタンドのはしの方』は2020年7月24日(金)より全国順次公開中。さらに映画『テロルンとルンルン』は2020年8月21日(金)よりアップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開!





関連記事

インタビュー特集

【永野絵梨奈インタビュー】映画『大学生のアルバイト』松田彰監督から学んだ“演技の考え方”と主人公との“旅”で得られたもの

短編映画『大学生のアルバイト』は前編は2023年4月28日(金)より、後編は5月26日(金)より無料配信中! 『つどうものたち』(2019)などの作品で数々の国内外の映画賞を受賞してきた松田彰監督が、 …

インタビュー特集

【田村直己監督インタビュー】映画『七人の秘書THE MOVIE』木村文乃と玉木宏演じる“ロミオとジュリエット”な恋愛模様に注目してほしい

映画『七人の秘書 THE MOVIE』は2022年10月7日(金)より全国東宝系にてロードショー! 要人に仕える、名もなき「秘書」たちが理不尽な目に遭う社会の弱者を救い出すべく、ずば抜けたスキルや膨大 …

インタビュー特集

【中川龍太郎監督インタビュー】映画『わたしは光をにぎっている』詩から継がれる“覚悟”、映画館・銭湯という“場所”

映画『わたしは光をにぎっている』は2019年11月15日(金)より全国公開! 区画整理によって、あらゆるものが失われていく町。そこで働き、人々と交流し、町で暮らし始めた主人公は、避けられない「終わり」 …

インタビュー特集

【鈴木睦海×西山真来インタビュー】映画『カウンセラー』異なるアプローチで演じた二人が42分で辿り着く衝撃の結末

異例の反響を呼ぶ短編映画『カウンセラー』がついに2022年3月より、ユーロスペース渋谷での2週間レイトショー上映が決定! 2021年10月・下北沢トリウッドでの封切り後の同館アンコール上映をはじめ、2 …

インタビュー特集

【アオキ裕キ インタビュー】映画『ダンシングホームレス』新人Hソケリッサ!で“オジサンたち”と人間が生きる根源を踊る

映画『ダンシングホームレス』は2020年3月7日(土)より公開。 路上生活経験者によるダンス集団「新人Hソケリッサ!」を追った、三浦渉監督によるドキュメンタリー映画『ダンシングホームレス』。 本作は、 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学