ドイツで大ヒットを記録した感動の実話を映画化し、笑って沁みて元気になるハートフルなエンターテイメント『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』。
突然、先天性の病気で95%の視覚を失った青年サリーは、「5つ星ホテルで働きたい」という夢を叶えるため、目が見えないことを隠して一流ホテルの研修生を始めます。
しかし、歌声美人のローラに憧れたことから、完璧のはずだった偽装計画が徐々に綻びだすと…果たして、無謀とも呼べる夢は叶うのか?さらにローラとの恋の行方は?
CONTENTS
1.映画『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』の作品情報
【公開】
2017年(ドイツ映画)
【原題】
Mein Blind Date mit dem Leben
【監督】
マルク・ローテムント
【キャスト】
コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、ヨハン・フォン・ビューロー、アレクサンダー・ヘルト
【作品概要】
視力の95%を失うも、残り5%の弱視と仲間の協力を得ながら、5つ星ホテルで働きたい夢を持った青年の実話を映画化。
演出は『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』のマルク・ローテムント監督。
主人公のスリランカ人のサリー役にコスティア・ウルマン、サリーを支える研修生仲間のマックス役のヤコブ・マッチェンツ、そのほかヨハン・フォン・ビューロー、アンナ・マリア・ミューエたち共演。
2.映画『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』のあらすじ
ドイツ人の母とスリランカ人の父の間に生まれたサリヤ・カハヴァッテ、通称サリー。
彼は父母、そして美しい姉と4人暮らし。サリーは学校を卒業した後の夢は、立派なホテルマンになることでした。
ところがある日、突然、授業中に黒板の前に立ったサリーは、視界がボヤけてクラスメートの顔や、手にした自分のノートの文字を読むことができない事態となります。
教師からはふざけてるのなら、サリーにもう発表しなくてよいから席に戻れと注意を受けます。
その放課後、診療所の医師から診断された結果は、先天性の網膜剥離の病気と宣告。彼は手術を余儀なくされてしまいます。
医師の腕もあって手術は無事に成功。しかし、95パーセントの視力を失い、残された視力はわずかに5パーセント。
そんなサリーの状態を見た父は、苛立ちながら障がい者の学校に転校しろと冷たくあしらいます。
サリーは「普通の学校を出て、一流ホテルで働きたい」という、自分の夢を決して諦めたくはありません。
彼に寄り添い理解のある母と姉の協力を得て、サリーは必死となって、大学入試を目指す中高一貫の教育のギムナジウムの学習に努めます。
学校では黒板を前に教鞭をとる教師の話を、サリーは続けて暗唱することで、ノートに筆記できなくとも覚えてしまいます。
また自宅ではわずかに残された視力で、ルーペを片手に学習意欲を消して落としません。
その甲斐あって丸暗記作戦は大成功。5段階評価の2.7の成績で、サリーは見事に学校を卒業。
嬉しさと喜びを何よりも母に伝えたいと急いで帰宅したサリーは卒業証を片手に喜びを伝えますが、視力のないサリーの前に座っていたのは憮然と座る無言の父親でした。
やがて、今度は目標にしていたホテルマンになろうと、ドイツのホテルに次々に願書を送ります。
しかしながら視覚障がいのあることを正直に伝えた願書は、ことごとく断られてしまいました。
サリーは視覚に障がいのあることを秘密にして、今度はミュンヘンにある五つ星の一流ホテルに願書を送ります。
すると、なんと面接の機会を得ることができました。姉のサポートもあって、サリーは研修生になるチャンスを掴むことができました。
しかし、そんな彼の前に課題や困難が次々とやってきます。果たしてサリーは、ホテルマンに成ることができるのでしょうか…。
3.映画『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』の感想
サリヤ・カハワッテの著書「My Blind Date with Life」は、10代の頃にほぼ全盲に近くなってしまった実話に基づいた物語。
サリーの父親をはじめ現実的であれと告げる周囲の助言に意を介さず、夢のホテルで働きたいと、圧倒的な意志の強さと立ち直る力を持って、逆境を乗り越えていった男の軌跡と言えるでしょう。
はじめに本作を見ていた筆者は、この作品が実話であることを知りませんでした。荒唐無稽な若者のサクセスストーリーに、まるで映画『ロッキー』ばりのよくできた脚本でエンターテイメントだなと感じていました。
ところが、「え ⁉︎」、実話なんだと知った時に「マジか⁉︎」と声を漏らしました。
そんな巧みな物語を作り上げたのは、脚本家ルース・トーマスが物語の基礎を書き、もう1人の脚本家オリヴァー・ツィーゲンバルグがコメディ調を味付けをしたそうです。
それを見せ方の演出でマルク・ローテム監督が、サリーのホテルマン研修生としての課題や困難や、そして秘密の特訓などで、まるでロッキー的な物語へと昇華させています。
演出を手掛けたマルク・ローテム監督は次のようなコメントをしています。
「サリヤ・カハヴァッテの実話は冒頭から僕を奮い立たせた。この真実は素晴らしく、僕たちを幸せな気持ちにしてくれる悲喜劇的な素材だ。皆笑い、泣き、希望を持ち、絶望もする。それだけでなく、本作には魅惑的な五つ星の豪奢なザラザラした世界とキッチンや休憩所といった厳しいバック・ステージの世界の対比がある。サリヤとマックスの友情あふれる相棒関係は大いなる情愛と深い信頼を築いている」
マルク監督の述べるように、「皆笑い、泣き、希望を持ち、絶望もする」の現実の持つ実話の強さは、きっと、あなたも歓喜させること間違いなしです。
なかでも面接の際にサリヤによって助けられたマックスとのその後の友情関係は、本作の最大の魅力あるモチーフになっていますので注目してください。
ほかにもこの作品では、主人公サリヤが移民であったスリランカ人の父を持つことで、数回にわたり、意図的に周囲の人たちから名前をわざと間違えられる場面が出てきます。(例えば“カハヴァッテが、カワサキとかね”)
また、ホテルの厨房では、視力の弱いサリヤを助けるアフガニスタン移民も登場します。
マルク・ローテム監督は、これらの移民に関することも次のようにコメントしています。
「作品の中には移民の物語も含まれる。この物語でサリヤのいわゆる「障がい」は大なり小なり僕たちそれぞれが持っている欠点の鏡だ。サリヤの「騙し方」は人生を切り抜けるために僕たちの多くが使っている小さな企みや傷を表しているんだ」
この映画が単に視覚障がいのある人物を主人公にしただけでなく、移民問題を入れたことで二重構造のメタファーをもたせています。
誰しも何がしかのコミュニケーションの断絶を前に、サリヤのように見えないのではなく、真実を見ないようにして相手に障がいを与えている完璧ではない存在かもしれない。
そして、人生の困難を前にして、“小さな企みや傷”があるというのです。
これこそ本作が実話の映画化であり、笑って泣けるハートフル・エンターテイメントに引き上げた要点でもあります。
まとめ
この作品の見どころは、まだまだたくさんあるのですが、もう1つだけあげるならサリヤの握手に注目しましょう!
サリヤはお姉さんが教えた握手をなかなか覚えずておらず、握手をする場面は笑いとともにあります。しかし、彼が心から握手を求めた人物は?サリヤの心境を深く察することのできる粋な場面ですよ。
さて、映画『5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生』の主演サリヤ役(サリー)は、『誰よりも狙われた男』にも出演して、エスニックな野性味と端正な甘いマスクが魅力のイケメン俳優コスティア・ウルマン。
彼を支えるモテモテ研修生だけどちょっと難ありのマックス役に、多数の演技賞に輝く若手俳優ヤコブ・マッチェンツ。本当に絶妙な友情コンビ!
また、研修生の鬼教官クラインシュミット役には、名優ヨハン・フォン・ビューローもお忘れなく注目です!
さらにはサリヤの憧れのシングル・マザーのローラ役のアンナ・マリア・ミューエが好演。
ローラの可愛い息子との“宇宙人サリヤとのサッカー”などなど、劇場で鑑賞してくださいね。
本作は2018年1月13日より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
ぜひ、お見逃しなく!