1996年9月13日に若干25歳でこの世を去った2PAC。
エミネム、スヌープ・ドッグ、ドクター・ドレーは惜しみないリスペクトを見せ、死してなお、多くのアーティストや音楽ファンを魅了し続けるトゥパック・アマル・シャクール。
映画『オール・アイズ・オン・ミー』は、センセーショナルなゴシップと、常に身の危険と隣り合わせにいた2PACの知られざる真実を描く!
1.映画『オール・アイズ・オン・ミー』の作品情報
【公開】
2017年(アメリカ映画)
【原題】
ALL EYEZ ON ME
【監督】
ベニー・ブーム
【キャスト】
ディミートリアス・シップ・Jr.、カット・グラハム、ローレン・コーハン、ヒル・ハーパー、ダナイ・グリラ、ジャマール・ウーラード、ドミニク・サンタナ、ハロルド・ハウス・ムーア
【作品概要】
1996年にラスベガスで銃撃されて、若干25歳で人生の幕を閉じたヒップホップ界のレジェンド「2PAC」。
トゥパック・シャクールの謎の死までの生涯を描いたクールな伝記映画。
2.映画『オール・アイズ・オン・ミー』のあらすじ
裁判所前の囲みの中で、ブラック・パンサー党員のアフェニ・シャクールは、いわれなき黒人差別の迫害について、強い抗議と無罪判決の正当さを、多くの支援者や白人のインタビュアーに声を荒げます。
彼女の行動は何よりもお腹に身ごもった子どものために闘うのだと母親の叫びでもありました。
やがて時は移り、かつての母親のように刑務所に収監された2PAC(トゥパック・シャクール)。彼は拘束された所内で雑誌のインタビューに答えながら自分の過去について振り返ります…。
ニューヨークのブロンクス。貧しいながらも母親アフェニ・シャクールのもとで知識教育を受けて育ったトゥパック・シャクール。
執拗な迄にブラック・パンサー党員を追いかける警察からの捜査もあり、母アフェニに連れられ住まいを転々とし、1986年に一家はバルチモアに移り住み、トゥパックはバルチモア芸術学校に入学。
その頃から才能を見出された彼はラップに没頭するようになり、数々の詩を書き始めると、愛する彼女に詩を手紙に書き記して贈るような青年になります。
トゥパックは17歳の時にカリフォルニアに移り住み、ラッパーになる夢を追い続け、ラップのメンバーとともにツアー周りのステージの片隅で自分のラップを探し求めます。
ある日のツアー終わりのトゥパックは、自宅にいる母アフェニと妹のもとに向かいます。しかし、その母親は薬物中毒となってしまう有様でした。
やるせない怒りとラッパーへの夢が入り混じりながらも、遂に1991年11月12日に、2PACの名でアルバム「2Pacalypse Now」でソロデビューを果たします。
やがて、ある日のこと、2PACはスタジオで強盗に襲われ被弾。
一命を取り留めるが、それはヒップホップ界史上最悪の東西抗争の始まりだった…。
3.映画『オール・アイズ・オン・ミー』の感想と評価
本作は137分の上映時間があり、一般的な娯楽作品として見るならば、長尺な映画の部類に入る作品かもしれない。
しかし、観ながらその時間に退屈さを感じさせないのは、伝説的なカリスマである、2PAC本人が何よりも退屈な人生など過ごしていなかったことにあるのでしょう。
誰かに屈するような人生を生きていなかった2PACこと、トゥパック・シャクール。
アメリカ社会の闇は、黒人と白人どちらか一方にあるとは言い切れない面もあろうが、最近のハリウッド映画を見る限りでは、謂われなき迫害を受け、なおも強く虐げられる黒人たちが主役の作品のほうが遥かに面白い映画が多い。
この作品は伝記をベースにしているから、隠せない事実もある。
それは映画の終盤で2PACが銃撃され、25歳の若さで人生の幕を閉じる現実です。
それに比べれば137分という上映時間の『オール・アイズ・オン・ミー』が、短いか、長いかは語らずとも明白。
黄色人種である自分が、黒人少年のトゥパック・シャクールの心境に寄り添い、青年の姿の彼に心惹かれ、やがて偉大なアーティストとなった2PACのラップのリズムに魅せられる。
そんな映画に理屈はいらない。楽しむだけだ!
肌の色や人種の話ではなく、左脳だけがAIに取り込まれながら無意味に肥大していく現代社会において、まるで動物になったように右脳を刺激する美しい作品だと言えるでしょう。
暗がりの映画館のスクリーンの前に整然と並ばされた椅子。
そこに見えない鎖で縛られたかのように、身動きができずにいる自分が如何に不自由な価値で生きてる存在なのか気に付かされます。
“それが屈したお前の人生か?” “それでも生きている証なのか?” “マザーファッカー!”
とまるで問いかけられたように感じた時、2PACという人間がいかに金言で雄弁なのかが理解できるでしょう。
2PACと今なおブラザーであり続けるスヌープ・ドッグは、本作について次のように叫ぶ。
2PACが歴史に名を残すには理由がある。それは、彼が歴史を作ったからだ。
彼自身がヒップ・ホップの歴史であり、アメリカの歴史だ。
恐らくみんなが思っている以上に偉大な男だった。
この映画はラッパーとしての2PACだけじゃない、人間としての2PACの話をしているんだ。
彼の真実を語っているこの映画をリスペクトする。 スヌープ・ドッグ
まとめ
映画『オール・アイズ・オン・ミー』のなかでも、“2PACの死は、今なお謎に包まれ”ているようですが…。
そんな真犯人は退屈な野郎だ、決して見逃すな!マザーファッカー!。
そして2PAC役で主演を演じたディミートリアス・シップ・Jrは、4,000人の中からオーディションで選ばれ本作がスクリーンデビュー。彼にも要注目です!
さらには黒人に成りきれなかった?金言シェークスピアの引用や、2PACと母親アフェニとの愛情にも注目してくださいね。(みんな母さんは大切にしろよ!マザファッカー!)
2PACの伝記を描いた『オール・アイズ・オン・ミー』は、2017年12月29日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー。
ぜひ、お見逃しなく!