連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第12回
日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はアクションから始まる』。
第12回は、シルヴェスター・スタローン主演の1982年公開作『ロッキー3』。
スタローンの出世作となった人気シリーズ第3作を紹介します。
【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『ロッキー3』の作品情報
【日本公開】
1982年(アメリカ映画)
【原題】
Rocky III
【監督】
シルヴェスター・スタローン
【脚本】
シルヴェスター・スタローン
【製作】
アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ
【製作総指揮】
ハーブ・ナナス
【撮影】
ビル・バトラー
【キャスト】
シルヴェスター・スタローン、タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザーズ、バージェス・メレディス、ミスター・T、トニー・バートン、ハルク・ホーガン
【作品概要】
シルヴェスター・スタローンを一躍トップスターにしたアカデミー賞作品『ロッキー』(1976)のシリーズ第3作目。前作『ロッキー2』(1979)でついにチャンピオンとなったロッキーの前に、新たなる強敵が立ちはだかります。監督・脚本・主演は、前作に引き続いてスタローンが担当。
タリア・シャイア、バート・ヤング、カール・ウェザーズ、バージェス・メレディスといった前作からの主要キャストも続投し、新たなライバル役としてミスター・Tに加え、プロレスラーのハルク・ホーガンもゲスト出演。アメリカのロックバンド、サバイバーが歌う主題歌『アイ・オブ・ザ・タイガー』も大ヒットしました。
映画『ロッキー3』のあらすじとネタバレ
参考映像:『ロッキー3』のサンダー・リップス戦
凄絶な死闘の末、アポロ・クリードを倒しヘビー級チャンピオンとなったロッキー・バルボア。
一躍ヒーローとして大衆、マスコミから熱烈に歓迎された彼は、それから3年の間に10度の防衛を記録し、妻エイドリアン、息子ジュニアら家族との幸せに満ちた日々を過ごしていました。
そんなロッキーに一人のボクサーが猛追します。
その男クラバー・ラングは、パワフルなファイトでランキングを上げていき、テレビを通じてロッキーに挑戦をアピールしていました。
それを知ることもなく、プロレスラーのサンダー・リップスとのチャリティーマッチに出演し、喝采を浴びたロッキーに、出身地のフィラデルフィアから功績を称えるブロンズ像が市の博物館前に設置されることに。
その除幕式に出席したロッキーは、感謝のスピーチの最後に引退を宣言します。
付き添っていたエイドリアンは驚くも、夫の決断に納得したその時、観衆の中にいたクラバーが姿を現し、「弱い選手ばかりを選ばずに、世界ランク1位の俺と戦え」と挑発。
最初こそ拒否したロッキーでしたが、エイドリアンをも侮辱するクラバーに怒り、挑戦を受けることに。
しかし、トレーナーのミッキーは「今のお前では3ラウンドしか持たずに負ける」と言い放ちます。
「クラバーの言う通り、弱い選手と防衛戦を組んでいた」と告白し、どうしてもやるならトレーナーを降りるとまで言い放つミッキーを説得し、試合に向けてトレーニングを始めたロッキー。
ですがその中身は、マスコミへのパフォーマンスを目的とした、見せかけなものばかりでした。
そして試合当日、突如ミッキーが心臓を押さえて倒れてしまいます。
不安な思いに駆られながらリングに上がったロッキーでしたが、精神的支柱を欠いたショックに加えて、クラバーの圧倒的なパンチ力の前に成す術もなく、わずか2ランドでKOとなります。
試合を終え、ミッキーが横たわる控え室に戻ったロッキー。
「KOで決着がついた」と囁くと、ミッキーは笑みを浮かべ、そのまま息を引き取るのでした。
ミッキーの葬儀を終え、身も心もどん底に叩き落されたロッキーの前に現れたのは、アポロでした。
アポロは、「お前が負けたのはハングリー精神を失ったからだ」、「お前は、俺と戦った時にあった“虎の眼”を取り戻す必要がある」と、クラバーとのリターンマッチに向けてトレーナーを買って出ます。
ロッキーはエイドリアンとポーリーを帯同し、アポロが通っていたカリフォルニアのボクシングジムで、再起を図ることに。
しかし、トレーニングに一向に身が入らず、アポロを激怒させてしまうのでした。
映画『ロッキー3』の感想と評価
参考映像:『ロッキー3』のクラバー戦
当初は最終作として製作された『ロッキー3』
本作『ロッキー3』は、チャンピオンとなったロッキーの転落、そして再起が描かれます。
巨万の富を得て大邸宅(名ボクサーのモハメド・アリの邸宅を借りて撮影)に住み、CM出演もこなすなど、名実ともに成功者となったロッキーでしたが、その代償として、ボクサーに必要な勝利への執着心を知らず知らずのうちに失ってしまう。
そこに立ちはだかるのが、かつての自分が持っていたハングリー精神をまとった男クラバー・ラングでした。
つまりロッキーは、過去の自分と対峙し、それを乗り越えて真の勝利者となっていくのです。
そのため『ロッキー3』は当初、シリーズ完結編として製作されました。
師匠ミッキーの死や宿敵アポロとの友情、さらにエイドリアンの妻としての精神的成長といった、主要人物たちのドラマ要素を高めているのも、シリーズの区切りをつけようとした意図が見られます。
『ロッキー3』のちょっとしたトリビア
参考映像:『ロッキー3』のクラバーの挑発シーン
劇中で、フィラデルフィア美術館の大階段(通称「ロッキー・ステップ」)に設置されたブロンズ像の除幕式で、クラバーがロッキーを挑発するシーンがあります。
そのクラバーを演じたミスター・Tは、『ロッキー3』をプレミア上映で実の母親と鑑賞しました。
ところが、息子の役柄をよく把握していなかった彼女は、このシーンでクラバーがエイドリアンを侮辱するのに激怒。
息子とクラバーを完全に同一化してしまい、「私は、女性に失礼な言葉を言う人間に、お前を育てた覚えはないわ!」と言って劇場を飛び出してしまったそう。
また、本作撮影のために製作されたロッキーのブロンズ像を、主演のスタローンは感謝の意を込めて、撮影終了後にフィラデルフィア美術館にそのまま寄贈しようとしました。
しかし美術館側が、「これは映画の小道具だから美術品ではない」と拒否したことで、地元フィラデルフィア市民が猛抗議する事態に。
その抗議を受け、像はいったんフィラデルフィアの屋内競技場ワコビア・スペクトラム(現在は閉場)に置かれた後、ロッキー・ステップの下に移設され、現在では屈指の観光スポットとなっています。
そして物語は『ロッキー4/炎の友情』と『クリード チャンプを継ぐ男』へ
参考映像:『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)
公開時のキャッチコピーでも完結編と銘打たれていた本作『ロッキー3』でしたが、フタを開けるとシリーズ最大のヒット(公開時)となったことで、次作『ロッキー4/炎の友情』(1986)が製作されることに。
さらに本作でのラスト、ロッキーとアポロのスパーリングシーンは、アポロの遺児アドニスが主人公の『クリード チャンプを継ぐ男』(2015)にもつながります。
ストーリーラインに2つの分岐点を生んだ『ロッキー3』は、「ロッキー」シリーズにおいても大きな意味を持つのです。
次回の連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』もお楽しみに。
【連載コラム】『すべての映画はアクションから始まる』記事一覧はこちら