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Entry 2020/03/11
Update

NETFLIX映画『ARQ時の牢獄』ネタバレ感想と最後ラストの考察。タイムリープの新たな方向性を指し示す|SF恐怖映画という名の観覧車93

  • Writer :
  • 糸魚川悟

連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile093

一定の時間のループを描いた、いわゆる「タイムリープ」系の映画は主人公がさまざまな行動を取ることで起きる変化を楽しめるエンターテイメント性の高い作品が多いといえます。

今回はそんな「タイムリープ」系の映画の中でも、独自の視点から「次にどうなるのか」に興味を持たせることに成功した意欲作『ARQ 時の牢獄』(2016)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

映画『ARQ 時の牢獄』の作品情報


NETFLIX映画『ARQ時の牢獄』

【日本公開】
2016年(NETFLIX独占配信映画)

【原題】
ARQ

【監督】
トニー・エリオット

【キャスト】
ロビー・アメル、レイチェル・テイラー、ショーン・ベンソン、グレイ・パウエル、ジェイコブ・ニーエム、アダム・ブッチャー

【作品概要】
NETFLIXの主導で製作されたトニー・エリオット監督によるSF映画。

本作のヒロインであるハンナを演じたのは映画『トランスフォーマー』(2007)に出演し、NETFLIXのオリジナルドラマシリーズ「ジェシカ・ジョーンズ」でメインキャストを務めたレイチェル・テイラー。

映画『ARQ 時の牢獄』のあらすじとネタバレ

朝6時16分、一緒に寝ていたハンナの横で何かにうなされ飛び起きたレントンは、突然部屋に侵入してきたガスマスクの男たちに殴られます。

決死の思いで逃走したレントンでしたが、階段から転げ落ちたことで頭を打ち死亡します。

朝6時16分、飛び起きたレントンは再び押し入ってきたガスマスクの男たちに殴られハンナと共に監禁されてしまいます。

男たちのリーダーは自身のことをファーザーと名乗り、ソニーとブラザーと言う2人の男と共にレントンに仮株券を渡すように求め、部屋を出ていきます。

監禁部屋にはファーザーの仲間であるカズという男の死体があり、カズは何かによって感電死しているようでした。

拘束を自身で解いたレントンは「トーラス」というエネルギー系大企業に勤めていた際に、自身が開発した「ARQ」と呼ばれる永久機関装置を盗み出し研究を進めていたことをハンナに話し、ファーザーたちがARQを狙っていると予想します。

手に装備できる簡易エネルギーリアクターを武器として持ち、ファーザーたちを襲うレントンでしたが、ナイフで刺され相打ちになってしまいます。

再び朝に目覚めたレントンは捕まり脱出後、ハンナと協力し毒ガスを使いファーザーたちを殺害しようとしますが、ハンナが躊躇ったことで失敗してしまいます。

捕らえられたレントンは仮株券の在処が金庫の中であることを言い、全ての仮株券を渡します。

顔を見られたことでレントンを殺害しようとするブラザーに対し、ハンナは一般人の犠牲は出せないと銃を収めさせます。

実はハンナはファーザー側の人間であり、エネルギーの利権を独占し世界を支配下に置こうとするトーラスに対抗する反政府組織「ブロック」のメンバーでした。

その後、レントンはなぜかソニーに射殺され、再び朝に戻ります。

ARQが時間のループを作り出していることを理解したレントンは、捕まった後にハンナに全てを話し、かつてハンナがトーラスに捕らえられ激しい拷問を受けたことや、トーラスから逃げたレントンが自身を見捨てたと勘違いをしていることを知ります。

ハンナを説得し共に逃げるべくファーザーたちを捕らえるレントンでしたが、ハンナがブロックのために行動することを辞めようとせず、銃を使いARQを破壊しようとしたことからレントンは自身が身代わりとなり死亡します。

再び朝に戻ったレントン、しかし今回は状況が違い、なぜかハンナも前回の記憶があるようでした。

ファーザーたちに捕まり、2人きりになったハンナは自身が見てる風景を夢のように思います。

レントンからARQによる時間のループのことを説明されたハンナ。

レントンは死体となっているカズがARQに触れたことで死亡し、カズがARQに触れた朝の6時16分から9時25分までの間を時間がループしていることに気が付き、前回のループでハンナがARQを撃ち関わったことでハンナもループに加わったと考えます。

ハンナは無限のエネルギーとループを生み出すARQをブロックに欲しいと訴えますが、レントンはブロックにもトーラスにも渡さないと固辞します。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『ARQ 時の牢獄』のネタバレ・結末の記載がございます。『ARQ 時の牢獄』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

しぶしぶ納得し、とりあえずこの場を乗り切ることを考える2人でしたが、ハンナの仲間であるはずのソニーが突如ハンナとファーザーを殺害します。

実はソニーはトーラスに雇われた傭兵であり、ARQを取り戻すために動いていました。

レントンはあえて殺害され、同じ時間の朝に戻ります。

ループの記憶を持ちながらもブロックのためにARQを使うことを譲らないハンナと別れ、1人でソニーの殺害を目論むレントン。

一方でハンナはファーザーを説得しソニーを殺害しようとしますが、その魂胆を見抜かれソニーにファーザーを殺されてしまいます。

ハンナ見捨てたと見せかけ後ろから奇襲するレントンによってソニーを倒すことに成功しますが、レントンを敵だと認識しているブラザーによって殺害されてしまい、またしても失敗してしまいます。

次に始まったループでは、いつもと違いファーザーたちが押し入ってこず、家内を捜索するとファーザーとブラザーが既にソニーによって殺害されていました。

ソニーが記憶を引き継いでいることを確信したレントンは、ループ時のARQと自分たちの位置によって記憶の引継ぎが決まることを理解します。

ソニーを倒すため部屋を出るレントンはいざという時のためにARQの自爆暗号「SKY」をハンナに教えます。

カズの死体を使った陽動に引っ掛かりソニーに捕まってしまったレントンとハンナ、ソニーはトーラスの兵隊を呼んだ上でARQを止めようとしますが、レントンが自らの命を使った反撃によりソニーとレントンは死亡し再びループが始まります。

次のループではソニーは感電死するはずのカズを助け、ファーザーとブラザーを殺害。

カズもソニーと同様にトーラスに雇われた兵士でした。

シアン化ガスを使った罠でソニーとカズの殺害に成功したレントンはARQのループログを解析し、記憶にないレントン自身のメッセージ映像を発見。

映像を疑問に思うレントンでしたが、カズの死体を使った罠にかかりハンナが死亡してしまいます。

その場でARQを止め全てを終わらすこともできましたが、ハンナを見捨てきれずもう一度ループすることを決めます。

9回目のループが始まり、部屋にファーザーとブラザーが押し入ってきました。

カズとソニーがいないことを確認すると、ハンナはファーザーとブラザーを説得しようとARQの真実を話します。

2人は前回から記憶を保持していたため、ソニーの裏切りを納得しレントンとハンナを手伝うことを了承しました。

しかし、ファーザーとブラザーが裏切ることを想定したカズとソニーはレントン達4人を包囲し拘束します。

自身が優位な状況でループを終わらせるためARQを止めるように求めるソニーでしたが、レントンはARQを使いわざと停電を起こし、ファーザーとブラザーは死亡してしまいますがレントンとハンナは脱出することに成功します。

家から出たレントンでしたが、ARQをトーラス社に渡すわけには行かないと決意し、家へと戻ります。

ハンナと共に決死の思いでカズとソニーを殺害したレントンは、トーラス社の部隊が迫っていることを知り、命を諦めトーラス社にARQを渡さないように破壊しようと考えます。

しかし、ログを確認するとこのループは9回に1回記憶ごとリセットされるシークエンスを何回も繰り返しており、実は既に数千回以上ものリトライを繰り返していたことが明らかになります。

ARQをここで破壊してしまうと、トーラス社にARQを渡さないことは出来ますがハンナと自分は死んでしまうと考えたレントンは、一番良いハッピーエンドを迎えるまであきらめないことを決意し、次のシークエンスの自分たちに全てを託すためメッセージを残します。

押し入ってきたARQのロボットに殺害されたレントン。

朝6時16分、レントンの横で眠るハンナは何かにうなされベッドから飛び起きました。

映画『ARQ 時の牢獄』の感想と評価

『恋はデジャ・ブ』(1993)や幾度となく映画化された「時をかける少女」のように「タイムリープ」をメインとした映画は多く存在します。

SF映画やサスペンス映画での「タイムリープ」系の作品は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)や『ハッピー・デス・デイ』(2019)のようにタイムリープの能力を持つのは主人公のみであり、主人公はその利点を活かしさまざまな困難に立ち向かっていく様子が描かれます。

襲い掛かる数多の困難に主人公が「タイムリープ」の力を活かしどう立ち向かうのかが、見どころである従来の作品。

しかし、本作『ARQ 時の牢獄』は全く違った観点から「タイムリープ」の面白さを引き出しており、およそ90分の間、画面に引き込まれる作品でした。

本作では主人公は「タイムリープ」を自由に起こせるわけではなく、機械が想定外の動きにより同じ時間を延々と繰り返しているだけとなっています。

ですが、その「タイムリープ」の記憶を主人公だけが引き継いでおり、序盤はテロリストたちを相手に有利に事を進めますが、徐々に「ある事情」により記憶を共有する相手が増えてくることになります。

中盤以降の「タイムリープ」後も記憶を持った人間たちが増えていくことで発生する心理戦の数々が非常に面白く、「負けが確定した際にどのようにタイムリープを持続させるか」を敵味方共に考える展開は全く新しいものでした。

まとめ

「タイムリープ」以外の要素でも定期的に行われるこれまでの前提を覆す「どんでん返し」が物語を引き立てる『ARQ 時の牢獄』。

ワンシチュエーションであり、上映時間も短い作品ではありますが、充分に満足できる新感覚のSF映画です。

次回の「SF恐怖映画という名の観覧車」は…

いかがでしたか。

次回のprofile094では、頭に携帯の破片が入った青年が未知の能力に目覚めるSF映画『iBOY』(2017)をネタバレあらすじを交えご紹介させていただきます。

3月18日(水)の掲載をお楽しみに!

【連載コラム】『SF恐怖映画という名の観覧車』記事一覧はこちら

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