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映画FREAKSフリークス 能力者たち|ネタバレ感想と評価。結末まであらすじからスピルバーグに見込まれたクリエイターを紐解く|未体験ゾーンの映画たち2020見破録22

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  • 20231113

連載コラム「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」第22回

毎年恒例の劇場発の映画祭「未体験ゾーンの映画たち2020」は、今年もヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて実施、一部作品は青山シアターにて、期間限定でオンライン上映されます。

前年は「未体験ゾーンの映画たち2019」にて、上映58作品を紹介いたしました。

今年も挑戦中の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」。第22回で紹介するのは、超能力者一家を描いたSF映画『FREAKS フリークス 能力者たち』

超能力を持つ人々が誕生し国家権力や人類と対決する、という設定はSF物のコミックやアニメ、映画でお馴染みです。近年一番メジャーな作品に「X-メン」シリーズでしょうか。

この定番ジャンルを将来を期待される、若手クリエイターコンビが映画化しました。どの様なアイデア、斬新な表現がこの作品に登場したかをご期待下さい。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら

映画『FREAKS フリークス 能力者たち』の作品情報


(C)2018 ABNORMAL DEFENSE FORCE INC. 2018 RELIANCE ENTERTAINMENT PRODUCTIONS 12 LIMITED

【日本公開】
2020年(カナダ・アメリカ合作映画)

【原題】
Freaks

【監督・製作・脚本】
ザック・リポフスキー、アダム・B・スタイン

【キャスト】
エミール・ハーシュ、ブルース・ダーン、レクシー・コルカー、グレイス・パーク、アマンダ・クルー

【作品概要】
特殊能力者を弾圧する未来社会で、少女の能力の覚醒とその家族の戦いを描く、デストピアSFアクション映画。2007年に放送されたスティーブン・スピルバーグらが主催の、若手映像クリエイター発掘リアリティショー番組「On the Lot」の、ファイナリストに勝ち抜いたザック・リポフスキー、アダム・B・スタイン監督コンビの作品です。

出演はジョディ・フォスター製作・出演の『イノセント・ボーイズ』映画デビュー、『ジェーン・ドウの解剖』に主演のエミール・ハーシュ、大ベテラン俳優で近年は、クエンティン・タランティーノ作品で存在感を見せるブルース・ダーン、SFドラマシリーズ『GALACTICA/ギャラクティカ』のブーマ役、グレイス・パークが共演しています。

ヒューマントラストシネマ渋谷とシネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2020」上映作品。

映画『FREAKS フリークス 能力者たち』のあらすじとネタバレ


(C)2018 ABNORMAL DEFENSE FORCE INC. 2018 RELIANCE ENTERTAINMENT PRODUCTIONS 12 LIMITED

一軒家の窓のカーテンの隙間から外を眺める少女クロエ(レクシー・コルカー)は、停車しているアイスクリームの移動販売車を見つめていました。見つかるぞ、”悪い人”から隠れないと、とその娘を叱る父親のヘンリー(エミール・ハーシュ)。

私はエレノア・リード、7歳。誕生日は3月9…10日。母の名はナンシー・リード…。ヘンリーはクロエに異なる経歴を覚えさせていました。自分の身に何かあれば、隣人のリード家に行って、大金を渡すから娘にして、と告げろとクロエに教えます。

父娘は互いを相棒と呼び、信頼して暮らしていました。絵を描く娘の隣で拳銃を手入れし、外から家の中が見られないよう慎重にカーテンを直すなど、何者かに追われているように振る舞うヘンリーでした。

家に閉じ込めた娘に外界のことを教え、”悪い人”と会話した時怪しまれないよう、誤魔化し方を指導するヘンリー。クロエとポーカーをする時は、大金を賭けて遊びます。

ポーカーのプレイ中、ヘンリーの瞳から血が流れ彼はタオルでふき取ります。娘にも目から血が流れ出したら、必ず教えろと告げてるヘンリー。見事に手を偽り通し、ゲームに勝利したクロエを彼は褒めます。

クロエを寝かせる前に、突然お前は人間じゃない、と怒鳴るヘンリー。しかし彼女は笑って対処します。これは大事な練習だ、と父はクロエに言い聞かせます。

練習しないと”山”行きだね、と答えたクロエに、父は誰に聞いたのだ、自分宛ての郵便物を勝手に読んだのか、と追求します。改めて家の窓を目張りし、郵便物を焼き処分するヘンリー。

暗い部屋…しかし隙間から昼の光が差しています…で眠りにつこうとするクロエは、寂しさを紛らわす為か、ペンで枕に母親の顔を書きます。すると物音が聞こえます。彼女の描いた不気味な絵を貼った壁の先にある扉の、その中から音がしていました。

扉を開けると、そこには鎖につながれた女性(アマンダ・クルー)がいます。その女性もクロエも悲鳴を上げ、パニックになったクロエはその部屋を飛び出し、一心に不気味な女の絵を描き始めます。部屋には同様の絵が無数にありました。

幽霊を見たとクロエが訴え、父はその部屋を探しても誰もいません。一緒にいてと訴える娘にいいと答えたものの、俺は眠れない、眠ったらお前を守れないと言うヘンリー。

クロエが目を覚ますと、外の販売車から流れるメロディが聞こえます。その音色に誘われ彼女が玄関に向かうと、何者かが扉の投函口から本を入れました。クロエが手に取ると、それは「スノーコーンさんと王女」と題された絵本でした。

その飛び出す絵本には、城に閉じ込められたお姫様がお金を手に、移動販売車にアイスを買いに行く姿を描いていました。彼女が窓の目張りを破って外をのぞくと、アイスクリームの販売車が停まっていました。

販売車の前に少女がいます。その子に私にアイスクリームを届けて、と強く念じるクロエ。

すると玄関のドアが叩かれます。その少女ハーパーがアイスを手に立っていました。願いが叶い自分に届けてくれた、と喜びクロエは扉を開けます。

クロエが外に出るのを止めるヘンリー。彼は現れたハーパーに、どうしてこの家に来たのかと尋ねますが、彼女は理由を答えられません。そこに少女の母が現れます。それは臨家のナンシー・リード夫人でした。

ナンシーは自分の名を知るクロエに驚きますが、ヘンリーは誤魔化して扉を閉ざします。今の振る舞いで2人とも死んでいたかもと、娘が外に出ようとした行為を強くとがめます。

罰として娘を、幽霊がいた部屋に閉じ込めるヘンリー。1人遊ぶクロエの前で、臨家の少女エレノアが寝ていました。寝ぼけている少女にママになってとせがみ、エレノアと抱き合い眠るクロエ。

ヘンリーが起こしにきた時、彼女は1人でした。ママは外に出て良いと言ったと告げ反抗するクロエ。娘をなだめる為に彼は、今日買い出しに出た際にアイスを買うと約束します。

ところが戻って来た父は血にまみれ、拳銃を持ち脇腹に傷を負っていました。自ら傷を手当てするヘンリーですが、クロエはアイスを買ってこなかったと怒ります。娘になじられながらも、意識を失ったヘンリー。すると何故か、空中で静止していた鳥が動き始めます。

電灯がつき蛇口から水滴が落ち、映像を映し出したTVは、シアトルの住宅がドローンで爆撃されたニュースを報じていました。外からはアイス販売車の音楽が流れてきます。

クロエは金庫を開けると、山積みの札束から100ドル札を抜き取り、鍵を開け外に出ます。家から出たことの無い彼女に、外の世界は輝きに満ちていました。音楽に誘われるように、アイスクリームを売る販売車へと向かうクロエ。

車では老人(ブルース・ダーン)がアイスを売っていました。クロエに優しく声をかける老人は、彼女が子供に不釣り合いな100ドル札を持っていても驚きません。老人は彼女に、もうパパの言う通りにする必要はないと語り、自分を手伝って欲しいと頼みます。

老人の言葉とアイスに誘われ車に乗ったクロエ。公園に行くと言うと、老人は販売車を走らせます。彼女には車窓から見る全ての風景が新鮮でした。しかし道路沿いには、目から血を流す者を見たら通報しろと訴える、巨大な看板が立っていました。

老人は君は目から血が出るのかと訊ねます。クロエが否定すると、彼はそれは残念だと答えます。車は都市に入り、ビル街の中にある公園に到着します。

クロエと共に公園に入った老人は、彼女をブランコに乗せ遊ばせます。楽しんでいたクロエですが、老人はブランコを勢いよく押し、早く高く振り上げます。怖がるクロエに、勇気を出して飛び降りろと言う老人。

クロエの叫び声と老人の態度に、周囲の人々は不審の目を向けます。ようやくブランコから降りたクロエに、老人はお前のママには特別な力があった、と告げます。そこに警官が近寄り、2人の関係を尋ねました。

クロエに警官を殺し屋だ、と叫ぶ老人。その態度に不審を抱いた警官は銃を向けます。警官に対しあっちに行けと、クロエが繰り返し叫びます。すると警官は銃を収めて立ち去り、クロエは驚きますが彼女の”力”を知った老人は、一緒に大きな仕事をしようと告げます。

2人はアイス移動販売車に戻り、公園から立ち去ります。老人が車で警察無線を傍受すると、”アブノーマル”な子供が公園に現れたと伝えていました。

クロエは車内にある、若い女性の写真に気付きます。誰かと聞かれた老人は、お前のママで私の娘だと告げます。”山”に連れて行かれた娘を、必ず取り戻すと老人は呟きます。その写真を欲しいと言うクロエに、渋りながらも貸してやる言って渡す老人。

車はクロエの家の前に着きます。老人は自分と再会するには、パパが眠っていなければダメだと告げ、アイス販売車の音楽が聞こえたら、この薬をパパの飲み物に入れろと言い、小袋に入った粉末を渡します。

ヘンリーが目を覚ますと何かの波動が発生し、電気が消えます。娘の名を呼びさがすヘンリー。クロエは絵を描いていました。外の世界を知ったクロエは父に不信感を抱いたのか、約束のアイスを買わなかった件を怒り、嘘つきと叫びます。

お前を守りたいという父に、出ていけと叫ぶクロエ。ヘンリーは黙って出て行きます。独り寝床に就いたクロエは、母の写真を眺めていました。するとあの幽霊の出た部屋に、何か気配を感じます。扉は別のものに変わっていました。

部屋の中にかつて幽霊と思った女がいました。クロエはそれが写真の女と気付き、ママと声をかけます。クロエが笑顔を見せると彼女も笑いますが、突然これは現実ではないと、女が叫び出します。部屋から逃げ出すクロエ。もう一度部屋を覗くと、そこには誰もいません。

戸惑ったクロエが父の元を尋ねると、ヘンリーはTVとつないだヘッドホンを付けたまま眠っていました。そのヘッドホンを外し、自分に付けたクロエ。

TVのニュースはダラスが攻撃されて10年だと告げていました。能力者の反乱による攻撃で、多くの犠牲者が出たと告げるキャスターは、能力者は一般に”フリーク”と呼ばれると解説します。

番組に出演したセシリア・レイ特別捜査官(グレイス・パーク)は解説者と語り合い、拘束・隔離された能力者は、マドック山の居住区で暮らしていると説明します。レイは”フリーク”ではなく”アブノーマル”と呼ぶべき者の能力を、恐れず活用すべきと訴えます。

部屋に戻ったクロエは、物音に気付きあの部屋の扉を開きます。すると中から子供たちが飛び出してきました。風景の変わった部屋の中には幾人かの女の子と、クロエが見知った隣のリード家の娘・ハーパーがいました。

ハーパーから見ると、パジャマパーティーをしていた自分の部屋に、突如クロエが現れたと見えるようです。気味悪がる子供たちは、クロエを”フリーク”とはやし立てます。

逃げ出したクロエがもう一度部屋に入ると、光景が変わりそこに監禁された女がいました。クロエはその女にママと呼びかけます。認めようとしなかった女も、クロエが現実の存在で我が子だと信じます。

信じられない、会いたかったと告げる母に、死んだのはママの方だよ、と告げるクロエ。そして彼女はママにどうやって来たのか尋ねます。母は別れてから大きく成長した娘クロエの姿と、現在の状況や会話から、徐々に何かを悟りました。

母はヘンリーの事を訊ね、クロエにはこの部屋に来て欲しくないと告げます。すると母の監禁された部屋の扉の前に、何者かが現れた音がします。気付くと母の姿は消え、1人元の部屋にいたクロエ。

傷の手当てをしていたヘンリーの前に現れたクロエは、死んだと教えられていたママに会ったと叫びます。アイス売りの老人と出会い、今までの父の言動が嘘だと信じた彼女は、隣のリード家に行って普通の子供になると主張します。

思わず父に死ねばいいのに、と言うクロエ。今の言葉を後悔するぞ、と言い返すヘンリー。老人から貰った小袋を手にして考えた結果、その薬を混ぜたジュースを父に渡すクロエ。

しかしヘンリーは臭いとグラスに付着した粉末から、何かが混入されたと気付きます。それを察し逃げようとしたクロエ。彼女の落した袋を拾い、父は何者かが娘にこれを渡したと気付きます。娘を捕えたヘンリーですが、家から出たい一心のクロエは眠れと父に叫びます。

突然、倒れてしまったヘンリー。何かの波動が彼の体に戻っていきます。そしてクロエの目からは一筋の血が流れていました。

金庫を開け札束を掴み家を出たクロエ。そこにアイスクリームの移動販売車が現れ、中から老人が出て彼女の顔の血をふき取ります。彼女の持つ大金を見た老人は、どうするのか訊ねました。

隣のナンシー・リードの家に行き、彼女に新しいママになってもらうと話すクロエ。すると老人は、彼女より良い人に会わせたいと言い、クロエを車に乗せました。

到着すると老人はこれから入る店では、口を聞かないようクロエに言い聞かせます。そして隠れて生き延びようと試み、結局絶滅したユニコーンのたとえ話をして、お前のパパのやり方は間違っていると告げる老人。

老人は神父の格好をすると、クロエを連れ食堂に入ります。そこには警官と共に、”フリーク”を捜索するレイ特別捜査官の姿がありました。

老人は偽名を名乗り、警官を去らせると自分は7年前、教会に捨てられたこの”アブノーマル”の子を、違法と知りながら神の愛で育てたとレイに語ります。”アブノーマル”の抹殺に異を唱えるを発言をした、彼女にこの子を託したいと言います。

レイ捜査官が検査を行うと、確かにクロエは能力者だと判明しますが、老人はその検査から逃れます。老人は如何なる狙いで、孫娘のクロエをレイに差し出すのでしょうか…。

以下、『FREAKS フリークス 能力者たち』のネタバレ・結末の記載がございます。『FREAKS フリークス 能力者たち』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2018 ABNORMAL DEFENSE FORCE INC. 2018 RELIANCE ENTERTAINMENT PRODUCTIONS 12 LIMITED

老人の狙いはクロエと共付き添いとして”山”、マドック山の”フリーク”居住区に行くことでした。それを嫌った孫娘は、言いつけを破り父に教わった偽の経歴を話し始めます。

食堂の調理場に逃げたクロエを老人が追います。嫌がるクロエにマドック山に行き、何としても娘を助けたいと説得する老人。

2人の会話を聞いたコックの目を、老人はいきなりペンで突き刺します。食堂にレイ特別捜査官が集めた警官が待ち伏せていましたが、目から出血したコックを”フリーク”と判断し、警官たちはレイの制止を聞かず集中射撃を浴びせます。

レイが調理場に入った時、老人はクロエを抱き姿を消します。彼の能力は透明化でした。クロエと共にアイスクリーム移動販売車に乗り、この場から立ち去ります。

車の中で老人は、マドック山に作られた”アブノーマル”居住区というのはワナで、そこに集めた”フリーク”を抹殺する場所だと告げます。嫌な場所だがそれでも娘を救うには、何としても行かねばならないと叱りつける老人。

その態度を嫌い、帰りたいと叫ぶクロエ。クロエの特殊能力が発動したのか、老人は運転の自由が利かなくなります。苦しむ老人は抵抗を諦め、クロエの自宅へアイス販売車で向かいます。

突如目の前にクロエの父ヘンリーが現れ、老人は車を停めます。クロエが車を降りるとヘンリーは老人に向かって行きます。ヘンリーが老人に触れると、2人と車はこつ然と消え去りました。

次の瞬間ヘンリーだけが姿を現します。娘を抱え、自宅に戻ろうとするヘンリー。しかしクロエが叫ぶとその言葉に従い、娘を離します。駆け出すクロエの前に突き進む乗用車。

クロエを抱きかかえたヘンリーは、透明のバリアに包まれていました。2人を包むバリアの外側では、ゆっくり時間が流れます。歩いて車の前から娘を助け出すヘンリー。

パパも特別なの、と語りかけるクロエに、お前を守りたかったと答えるヘンリー。彼の特殊能力は自分の周囲の、時間の流れを減速させることでした。妻が捕らわれてから彼は、娘と住む自宅を周囲と異なる時間の流れに置いて、クロエの身を守っていたのです。

その結果クロエは世界から見れば、恐るべき早さで成長していました。彼は娘の能力の目ざめを自覚します。それでもいつか外に出ないとな、と我が娘に告げたヘンリーは、能力を解きクロエが持ち出した札束を掴みます。

臨家のリード家に向かう、疲れ切った表情のヘンリーとクロエ。彼は主人のスティーブンに大金を掴ませ、かねてからの打ち合わせ通り、クロエを引き取らせようとします。

彼女が”アブノーマル”とは知らず、大金を渡されたリード夫妻はクロエを歓迎しますが、その娘ハーパーはクロエが無自覚に発動させた能力を知っており、彼女の受け入れを嫌がります。

クロエの受け入れを巡りリード家がもめ始めると、彼女はナンシー夫人の意識を操作し、愛してると言わせます。その時クロエの目から血が流れ出し、リード家の者は彼女が”フリーク”だと悟りました。

リード家を追われ自宅に戻った2人。そこにあの老人が椅子に拘束されていました。永遠に隠れるつもりかと叫ぶ老人、妻の父であるこの男をヘンリーはアランと呼びます。

例の部屋に隠されたクロエは父と祖父が、それぞれの妻であり娘であるメアリーの生死を巡り言い争う声を聞きます。そこに鎖で拘束された母・メアリーの姿が現れます。彼女は通常より早く育ったクロエを我が子と認め、抱きしめます。

その部屋に、”フリーク”を研究・監禁する施設の守衛が現れ、メアリーを引き立てます。それは将にメアリーが体験している現実でしたが、クロエにはどうする事も出来ませんでした。

ママが生きていると訴えるクロエを、父はその部屋に閉じ込め扉を電動ドリルで固定しますが、クロエの能力で阻止され、出て来た娘を抱きしめるヘンリー。

しかし力を使い過ぎたのか、クロエは血を吐いて倒れます。彼女が目を覚ますと、落ち着きを取り戻した父と祖父アランがいました。メアリーの生死や、隠れ住む事の是非を2人は言い争いますが、クロエは隣のリード家を訪れる警官の姿を目撃します。

呼びかけても反応しない2人に、クロエは自分の能力を使い、警官とナンシー夫人の会話する現場をそのまま家の中に持ち込みます。目の前に起きた光景に驚くヘンリーとアラン。

ヘンリーは現在確かに他の場所で起きた出来事が、ここで展開されていると確認し、アランは彼らの行動に干渉を試みますが無理でした。クロエには人を操る能力だけでなく、遠隔地の出来事をその場にいる様に再現、体感させる能力を持っていました。

ナンシー夫人が警官に、クロエは”フリーク”で殺すよう訴えていました。もう隠れるのは無理だと、ヘンリーに告げるアラン。それでも殺しは嫌だと言うヘンリー。

するとクロエが警官を操り、持っていたペンをナンシー夫人の目に突き立てます。次に警官に銃を抜かせ、自分の頭に向けさせますが父が止めさせます。

応援の警官には目から血を流したナンシーが”フリーク”に見え、その場で彼女を射殺します。自分のせいで娘が人を殺したと叫ぶヘンリーですが、祖父はクロエを抱き姿を消します。

2人を探すヘンリー。クロエが叫ぶと操られたアランが放したのか、彼女が姿を現します。銃を持って祖父を探し求めるアラン。クロエはメアリーの写真を持ってママと繰り返し叫ぶと、そこに施設のベットに縛りつけられた、傷付いたメアリーが姿を現します。

互いを確認し、言葉を交わす母と子。そこにヘンリーも現れ、研究所の職員に発砲しますが何の効果もありません。彼はメアリーの現実を見る事ができても、干渉する事は出来ないのです。しかしこの光景を見て、妻の生存を信じたヘンリー。

そこにアランも現れ、目の前の出来事に驚きます。研究所の職員は今まさに、メアリーを注射で殺そうとしてました。我が子に最期の言葉をかけるメアリーの姿に、何が起きてるのか理解しかねる職員と守衛。彼らの目にクロエらは存在していないのです。

職員の注射を、父と祖父が叫んで止めさせようとしますが無駄です。しかしクロエは職員の意志を操り、自らの首に注射させ絶命させます。

今度は守衛の意志を操り母を解放させ、彼を通じて母に話しかけるクロエ。メアリーを救える可能性見えた時、玄関のチャイムが鳴らされます。とっさに能力を発動させ、対応する時間を稼ぐヘンリー。

玄関のレイ特別捜査官、施設のメアリーの時間も止まっています。ここから逃げようと訴えるクロエ。彼らが逃げるのは簡単ですが、メアリーを施設から救わねばなりません。身支度を整え、和解して今後の計画を練るヘンリーとアラン。

ヘンリーが能力の発動を止め、周囲の時間が動き出します。隣のリード家が”アブノーマル”だと告げ、家を調べたいと入ってくるレイをヘンリーが迎え入れ誤魔化します。その隙にクロエは守衛を操り、母と脱出の手筈を整えます。

レイはヘンリーを疑っていました。自分は優れた”アブノーマル”は兵器として利用できるので、生かす方針だと説明し、娘を差し出すようヘンリーに告げるレイ。一方クロエは、母を死体袋に入れ守衛に運ばせます。

クロエはなんとか警備をすり抜けます。レイの語る能力者の軍事利用は、ヘンリーには許し難い考えでした。そして透明になったアランがレイ捜査官の背後に近づき、密かに彼女から銃を奪い突き付けます。

それに気付いても、何かあればこの家はドローンからの攻撃で、60秒後には破壊されると語るレイ。アランは姿を現し3人はにらみ合いとなりますが、その時クロエは操った守衛で、通りかがった兵士を襲います。

収容施設に警報が鳴り響くと、その音はクロエの能力で3人にも聞こえます。隙を見てレイは銃を奪い発砲、とっさに時間を操作するものの、近過ぎて銃弾が命中したヘンリー。一方姿を消し逃れるアラン。

施設の守衛を操るクロエを見てレイは驚きますが、少女は危険な能力者と判断し銃を放ちます。しかし透明な姿のアランが銃弾を受け、孫娘を庇いました。怒りに燃えるクロエはレイを操り、自ら頭を撃ち抜かせます。

死の直前にして、お前はママの元に行けと告げたアラン。借りていたメアリーの写真を祖父に渡すクロエ。

そこに傷付いたヘンリーが現れます。銃声の原因をレイに問う無線に彼が応じます。クロエは今の騒動で守衛を操る能力は停止したと思い出し、メアリーを襲っていた守衛を改めて支配します。守衛は自ら頭を打ち付けさせられ倒れます。

包囲した警察や軍を挑発すると、ヘンリーは時間の進行を遅くし、それを利用して建物に突入する隊員を射殺します。時間が戻ると突然倒れた隊員に警官らは怯み、時間が稼げましたが、彼らはドローンによる攻撃を要請しました。

徐々に身体能力を取り戻し、施設の出口に向かうメアリー。立ちふさがる警備兵を操り相討ちさせるクロエ。しかし力を使い過ぎたクロエも、負傷したヘンリーも限界に近付きます。そして家にはドローンが放ったミサイルが向かっています。

出口に到達したものの、ゲートが開けられないメアリー。クロエが力を振り絞り叫ぶと、施設の警備兵は追跡を辞め、オペレーターがゲートを開けます。こうして彼女は母を救いました。周囲から銃撃に晒されながらも、娘の位置を感知し地を蹴って高速で飛び去るメアリー。

娘が妻を救ったと悟ったヘンリーは、ミサイルが着弾する直前、最後の力で周囲の時間の進行を緩め、クロエを抱きかろうじて爆発から逃れます。

ガレキの下で父に目を覚ましてと訴えるクロエ。ヘンリーはクロエを自慢の娘と褒め、相棒と呼びこと切れます。今度ばかりはクロエが何度も願っても、父は倒れたままでした。

クロエの潜むガレキの周囲に兵士が近づきますが、空から轟音が迫り兵士は吹き飛ばされます。ガレキを取り除き、クロエを見つけたメアリー。こうして母子は、父の亡骸の前で対面を果たしました。

母にもう恐れて隠れたくない、邪魔する人がいたら戦おうと言うクロエ。娘を抱いたメアリーは空高く舞い上がります。

クロエの目には、固い決意を秘めた光が宿っていました…。

映画『FREAKS フリークス 能力者たち』の感想と評価


(C)2018 ABNORMAL DEFENSE FORCE INC. 2018 RELIANCE ENTERTAINMENT PRODUCTIONS 12 LIMITED

リアリティ番組が生んだ監督コンビの実体験が反映されたSF映画

2007年に放送の若手映像クリエイター発掘番組「On the Lot」。毎週放送される番組のレギュラー審査員は、恋愛映画の名手ゲイリー・マーシャル監督に、「スター・ウォーズ」でレイア姫を演じた女優、脚本監修で映画製作の裏方でもあったキャリー・フィッシャーが務めていました。

各週のゲスト審査員にはマイケル・ベイ、ウェス・クレイヴン監督らが登場、世界中から応募された12000件の応募された作品の中から選ばれた、18名のクリエイターが番組内で課題作を作り、競う内容でした。

その番組のファイナリスト5名に残ったのがザック・リポフスキー、当時番組ではカナダ出身・23歳の特殊効果映像の編集者と、3名にまで残ったのがアダム・B・スタイン、同じく当時フロリダ生まれの29歳の映画編集者と紹介された人物です。

番組でライバルとして出会った2人は良き友人になりました。数年間は別々に働いていましたが、2人でコラボすれば面白い作品が製作できると気付き、共に仕事をするようになります。

その2人が初めて共同で作りあげた映画が『FREAKS フリークス 能力者たち』。当然2人が得意とするSF物ですが映画のアイデアの原点は、誕生したスタイン監督の息子の成長する姿だと、リポフスキー監督は語っています。

一方スタイン監督はその経験を、準備不足のままダメな父親になったと感じた、と話しています。この2人の監督の言葉を踏まえて、映画に登場したヘンリー・クロエ父娘の姿を振り返ると、実感できるものがないでしょうか。

全米のSF映画ファンが納得!?の骨太超能力者ドラマ


(C)2018 ABNORMAL DEFENSE FORCE INC. 2018 RELIANCE ENTERTAINMENT PRODUCTIONS 12 LIMITED

超能力者映画としてありがちな設定、登場する超能力も何かのキャラと同じだ、と過去作との類似点ばかりに目が向いていませんか。

理由はともかくある日突然超能力に目覚める、というのがこの手の映画のお手軽パターン。しかし本作ではクロエの成長を通じ、彼女が新たな世界を発見し、自分に可能なこと試しながら覚え、時に周囲の人間と衝突し関係を結んでいく中で、力を身に付ける形で描いています。

2人の監督は実子の成長という経験を踏まえ、映画がリアルに感じられるように、家族の小さなエピソードを積み重ね、感情を掘り下げることに気を配りました。

そしてクロエが恐怖を覚えた時はホラー、感動を覚えた時はファンタジー、怒りを覚えた時はアクション・サスペンスを描く、見事なジャンルミックス映画を完成させました。

無論ミックスしたジャンルには、新たな形で超能力を表現し、ミクロの視点から仰ぎ見たデストピアを描くSF要素も含まれます。この丁寧な作りがB級映画ファン、特にSF映画ファンから高い評価を得ています。

まとめ


(C)2019 BlESS-FILM LLC. All rights reserved

子供を主人公にし、子供目線にこだわる事で、ジャンル映画が大好きな大人たちを満足させた映画『FREAKS フリークス 能力者たち』。

ところでブルース・ダーンが乗って現れるアイス販売車、アメリカではアイスクリーム・トラックと呼ばれ、派手な色彩と流れる音楽で子供を魅了する存在です。

それゆえにピエロの様に、何故か恐怖を秘めた禍々しい存在として語られる事があります。劇中ではヘンリーが酷い言い草でアイスクリーム・トラックを語り、『ファンタズム』など多くのホラー映画にアイテムとして登場、そのものズバリのタイトルを持つ作品まであります。

クロエの前に現れたアイス販売車が、様々な意味で少女の憧れと恐怖を秘めた対象であり、ブルース・ダーンが如何なる人物かを、謎めいて描く材料にしている事に注目して下さい。

それにしてもこの超能力家族、クロエは例えるならプロフェッサーX級、その母は下手をするとキャプテン・マーベルかダークフェニックス級…。こんなの敵にしたら人類、ガチでヤバイです。

次回の「未体験ゾーンの映画たち2020見破録」は…


(C)2019. 10643467 Canada Inc. All Rights Reserved.

次回の第23回はニコラス・ケイジがリベンジに燃えるアクション映画『ラスト・パニッシャー』を紹介いたします。

お楽しみに。

【連載コラム】『未体験ゾーンの映画たち2020見破録』記事一覧はこちら


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星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
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日本映画大学