前作がスマッシュヒットを記録した『スマホを落としただけなのに』の続編となるパート2。
2018年に志賀晃のミステリー小説を映画化し、北川景子主演のサスペンス映画『スマホを落としただけなのに』。その続編となるのが本作品『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』。
中田秀夫監督が再び演出を指揮して、前作に登場した千葉雄大演じるトラウマを抱えた刑事・加賀谷を主人公におき、“あの連続殺人事件”から数カ月後に起きた新たな事件を描く。
前作に引き続き浦野役を成田凌が演じ、新たなヒロインには「乃木坂46」の白石麻衣が美乃里に扮するほか、鈴木拡樹、井浦新らが共演。特別出演として前作の北川景子と田中圭も集結。
主演は前作にも登場したキーパーソン役を演じた千葉雄大と成田凌。中田秀夫監督の続投で魅せる演出に注目必至です。
するほか、前作のメインカップル田中圭と北川景子も特別出演しています。
CONTENTS
映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』の作品概要
【公開】
2020年(日本)
【原作】
志賀晃
【脚本】
大石哲也
【脚本・監督】
中田秀夫
【キャスト】
千葉雄大、白石麻衣、鈴木拡樹、北川景子、田中圭、原田泰造、井浦新、成田凌
【作品概要】
スマッシュヒットした中田秀夫監督作品サスペンススリラー『スマホを落としただけなのに』の待望の続編。前作に続いて千葉雄大、成田凌がメインキャストを務めるほか、白石麻衣、井浦新、鈴木拡樹などが新キャストとして参加しています。
前作で事件を追った刑事の加賀谷が自らが捉えた連続殺人鬼の浦野と共にダークウェブのカリスマ“M”を追います。
映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』のあらすじとネタバレ
深夜、あるアパートの一室で何者かが世界各地のサーバーを経由して、警視庁公安部のネットワークに不正侵入を図っています。…それから数日後。
連続殺人鬼・浦野による凶行から一年、事件を乗り越えた富田と麻美は晴れて結婚式の日を迎えていました。
二人を浦野から救った刑事の加賀谷は、恋人のみのりを伴って結婚式に出席していました。
富田たちから、加賀谷に救われ、今の結婚に結びついたと聞かされた美乃里は、麻美はから次は二人の番ですねと声をかけられます。
交際を始めて3年が経ち将来を意識する美乃里ですが、加賀谷の態度は煮え切らず、富田たちの幸せの姿を見た後ということもあって、美乃里は思わず将来を考えていないなら別れようと言い出します。
険悪なまま加賀谷と別れたみのりは、友達を呼び出した喫茶店で愚痴をこぼします。
スマホを片手に話をしていると、店専用のフリーWi-Fiがあること知った美乃里は、何も疑わず利用します。
しかし、それは美乃里を尾行していた顔に傷のある男による偽装されたWi-Fiで、男は美乃里のスマホに侵入、個人情報を探り始めます。
一方そのころ、浦野が殺害した女性を埋めていた丹沢の山中から新たな他殺体が発見されます。
浦野の犯行かに思われましたが、被害者女性の失踪直前の髪は茶髪のショート。
浦野のターゲットである長い黒髪の女性という条件から外れてしまいます。
捜査責任者の牧田、そして浦野の事件で加賀谷と組んだ毒島は加賀谷に浦野との接見を命じます。
死刑は免れないにも関わらず、事件の詳細を語ろうとしない浦野。ところが、加賀谷が相手なら語ってもよいと話しているというのです。
浦野が抱える心の闇に思い当たる部分がある加賀谷は、本心では避けたいところですが、事件解決のためと自分に言い聞かせて拘置所に向かいます。
拘置所にいた浦野は白髪になっていたこともあって、より怪しい風貌に変わっていました。
丹沢の山中から新たな他殺体が発見されたことを言い当てた浦野は、犯人はダークウェブの中でカリスマのような存在になっている“M”という謎の人物だと加賀谷に伝えます。
“M”とは何者なのか?という問いかけに詳細は知らないと返す浦野ですが、その一方で、自分に殺人の方法から遺体の隠し方などをレクチャーしたのが“M”だと言います。い
追って新たな男性の他殺体が発見されます。素性を探っていくと男性はかつて“M”の命令で仕事をしていたものの、“M”の正体を探ろうして殺されたということが分かります。そして発見された女性は祖の恋人でした。
浦野の自供を得て“M”のアジトを急襲した警官隊ですが、そこには“M”はおらず、残された冷蔵庫の中に身元不明の遺体が変死体が残されているだけでした。一方、謎の男は美乃里の周辺を探り続けます。
美乃里は加賀谷とのことで悩み続けていました。彼女の勤務先WEBセキュリティ会社の社長の笹岡は親身になって相談になります。この会社はもともと、笠岡と加賀谷が設立した会社でした。
そんなこともあって、加賀谷と美乃里のこととなると笠岡は他人事とは思えないようです。もう一つ世間を騒がしているのが仮想通貨の流出事件。
何者かによって流出した仮想通貨ですが、JK16と名乗るホワイトハッカーがこの仮想通貨にマーキングを施し、換金できないようにしたのでした。
JK16に“M”名義で脅迫状が届きますが、JK16は相手にしません。ところが“M”に雇われた何者かがJK16を拉致、殺害する事件が起きてしまいます。
再び動き出した謎の犯罪者“M”を捉えられないこと、そしてホワイトハッカーのJK16を見殺しした形になってしまったことで警察に非難の声が集まります。
そこで警察上層部は超法規的措置として浦野に高性能PCとネット環境を提供して捜査に加えさせることとしました。
警察側の担当者は加賀谷です。浦野は協力の交換条件として加賀谷の過去を聞き出します。加賀谷は浦野同様、母親に虐待された過去がありました。そのこともあってホスピスに入っている母親に会いに行くことができないでいます。
事情を知った美乃里は加賀谷と母親との関係を修復しようとしますが、加賀谷はそれを拒みます。
加賀谷と気持ちのすれ違いを感じた美乃里は別れも意識しますが、そんな美乃里に“M”からの脅迫状ともとれるメッセージが届きます。
このことを知った加賀谷は美乃里のスマホを調べると、スパイウェアに感染していることを突き留めます。
これを知った捜査の陣頭指揮を執る牧田はこれが唯一の“M”への接点になると考え、美乃里のスマホを敢えてそのままにしてお取りのようにすることを提案してきます。加賀谷は反対しますが、美乃里は協力を申し出ます。
美乃里のスマホの侵入を逆探知していった浦野は相手のPCにたどり着き、その相手の男の顔を捉えます。その男こそ、美乃里を尾行し続けている顔に傷のある男でした。捜査陣はこの男を“M”と断定して行方を追います。
そんな時、美乃里の出勤途中にその男が現れます。護衛の警官が男を追い、美乃里は一人で出社します。
そのころ、神奈川県警のHPが何者かにハッキングされ、マルウェアを仕込まれます。さらにHPに接触した全ての端末にも感染、パニックが拡がります。加賀谷も対応に追われ、美乃里の危機に動けません。
オフィスに独りでいた美乃里はそこであるものを発見してしまいます。
映画『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』の感想と評価
基本的には同じタイトルの志賀晃の小説を基にしたシナリオとなっていますが、原作では新たに登場した桐野良一というIT業界から転職した刑事が主人公になっているところを、映画では桐野のキャラクターを千葉雄大が演じた加賀谷学刑事に統合しました。
前作『スマホを落としただけなのに』の終盤で示唆されていた連続殺人鬼の浦野と加賀谷刑事との過去の共通点が、今回の『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』で深堀されることもあって、小説以上に物語の“連続性”が濃いものに仕上がりました。
今回の物語が前作のカップル北川景子演じる麻美と田中圭演じる富田との結婚式から始まるところも丁寧な続編感を感じます、また前回が男側が結婚したがり、女性が拒む構図になっていたのを逆転させ、将来を考えるヒロインと躊躇する男側という対照的な構図を作っているのも続編としての位置作りをしっかりとしているなと感じます。
その一方で、前作はいわゆる巻き込まれ型のサスペンスなのに対して、本作は重層的な謎が積み重ねられるミステリー色が強い作風が前面に打ち出されています。
そこに猟奇殺人犯との共同捜査、疑似バディという『羊たちの沈黙』の要素も加わっています。
また、終盤まだ明かされない井浦新の素性などもあり、全編通して張り巡らされた謎で引っ張る映画になっています。
前作で描かれた殺人鬼・浦野とIT系からの転職組の刑事・加賀谷の過去のトラウマの共通する部分と、決定的に違う部分の差で物語が大きく決着するのもの巧みさを感じさせます。
まとめ
前作でも示唆されたトラウマを抱える加賀谷とその恋人の松田美乃里の二人を軸に展開する部分が多いので、北川景子からヒロインを受け継いだ白石麻衣のプレッシャーはかなりのものだったと思いますが、アクションシーンも含めて大健闘していると思います。
本業は今のところアイドル「乃木坂46」なので映画やドラマでの演技の場は限定的なのですが、物語の中で成長していくヒロイン像を確立させています。
一方、主役に昇格した千葉雄大と、最初から怪しいことを前面に出せるようなった成田凌の演技合戦も見応えがあります。
成田凌は前作『スマ落と』に加えて『ビブリア古書堂の事件手帖』(2018)など、立て続けに怪しい人物を演じて、今後、大丈夫なのかと余計な心配をしていましたが、『カツベン!』(2019)などの活躍を見れば大丈夫なようですね。
本作の後に公開の『弥生、三月』でヒロインを支え続ける男性役を演じるということで、陽性な成田凌を楽しむことができるのではないでしょう。2020年も上半期だけで4本の映画が公開されるとあって楽しみが増えます。
そして、何より重圧があったのではと思われるのが主役に昇格した千葉雄大でしょう。
実はスーパー戦隊シリーズ出身なのですが、そんな要素はもはや説明の要らないキャリアを築いていきましたが、ここまで大きな企画・作品で主演と言うのは初めてといってはいいのではないでしょうか。
また前作の脇役からの主役への昇格というのもめったにないことでプレッシャーもあったと思いますが、しっかりと座長として映画を引っ張っています。