アラン・ドロン主演『サムライ』『仁義』などで知られるフランス映画の巨匠ジャン=ピエール・メルヴィル。
彼の生誕100周年を記念して角川シネマ新宿にて、11月11日より特集上映を開催されます。
今回は上映作品7本のあらすじと作品情報、また関連企画が行われるイベント情報をご紹介します。
CONTENTS
1.色褪せないメルヴィル監督作品の魅力
ジャン゠ピエール・メルヴィル(Jean-Pierre Melville、本名Jean-Pierre Grumbach)監督は、1917年10月20日にフランス・パリに生まれ、1973年8月2日に死去。
“ヌーヴェルヴァーグの精神的父親”と呼ばれる映画作家のひとりとしてあげられています。
メルヴィル監督は古典的なギャング映画を通じて、フランスらしい独自のフィルム・ノワールのあり方を確立させました。
それは男たちの美学ともいえる「友情、名誉、忠誠、裏切り」といった要素にこだわり、哲学的に問いかけました。
その影響を最も受けたのがヌーヴェルヴァーグの監督たち。そして、フランス国内だけではなく、サム・ペキンパー、ジョン・ウー、ジョニー・トー、北野武などといった監督たちの作品にも多大な影響を与えたといえます。
また、アラン・ドロンやジャン゠ポール・ベルモンド、フランスのスター俳優のダンディズムを美しく映し出した作品群は、今観ても色褪せない魅力に満ちています。
今回の上映特集ではジャン=ピエール・メルヴィル監督のフィルモグラフィーから代表的な作品を観るまたと無い機会となります。
2.メルヴィル監督の厳選7作品を一挙上映!
『いぬ』のロケ撮影中のジャン=ピエール・メルヴィル監督とセルジュ・レジアニ
今回の特集上映で上映されるのは、メルヴィル監督の40年代作品からまずは2作品。
1946年に制作された劇場初公開となるメルヴィルのデビュー短編『ある道化師の24時間』。1947年に自主制作され、ジャン・コクトーにも高く評価された長編デビュー作の『海の沈黙』。
50年代からは1956年の犯罪ドラマの傑作『賭博師ボブ』。
そして60年代からは3作品。まずは日本では劇場初公開となる、ジャン゠ポール・ベルモンドとエマニュエル・リヴァ主演の1961年の『モラン神父』。
フィルム・ノワールの神髄と呼び声高い、ジャン゠ポール・ベルモンドが警察に仲間を売る密告者を演じた1962年の『いぬ』。
ナチス占領下のフランスでレジスタンス達の抵抗を描いた、1969年の『影の軍隊』。
そして70年代からは、アラン・ドロン、ジャン・マリア・ボロンテ、イヴ・モンタンら豪華三大スターが共演したフィルム・ノワールの傑作1970年の『仁義』 。
これらの傑作、また代表作となる7本を角川シネマ新宿にて11月11日(土)~17日(金)1週間限定公開されます。
3.映画『ある道化師の24時間 (短篇)』
【原題】
VINGT-QUATRE HEURES DE LA VIE D’UN CLOWN
【公開】
1946年(フランス映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
ベビー(道化師)、マイス(道化師)
【作品概要】
モンマルトルで働く2人組の道化師マイスとベビーの1日をドキュメンタリー風に描いた、メルヴィルのデビュー短編。
パリの歓楽街で舞台に立つ男たちの日常をユーモアとペーソスたっぷりに活写。人生の裏街道を生きる者たちを 終生追い続けたメルヴィルならではの傑作!
4.『海の沈黙』
【原題】
LE SILENCE DE LA MER
【公開】
1947年(フランス映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
ハワード・ヴェルノン、ニコル・ステファーヌ、ジャン=マリ・ロバン
【作品概要】
レジスタンス文学の最高峰といわれるジャン・ヴェルコールの同名小説にメルヴィルが感銘を受け映画化した作品です。
登場人物がほとんど会話を交わさず、独白とひとり言のみで進行する異色の心理劇で、戦時下での理想主義が挫折していくさまを処女作と思えない端正な映像で表現しています。
またこの作品は J・コクトーに高く評価され、メルヴィルの出発点として今なお必見の1本。
【あらすじ】
1941年のドイツ占領下のフランス田舎町。そこで老人は姪とともに静かに暮らしています。
やがてドイツ兵が現れると、将校のための部屋を用意しろと理不尽な命令をされてしまいます。
ヴェルナー・エーブルナックと名のる将校は、フランス語で無礼を詫びると、2人とコミュニケーションを計ろうと老人と姪にいろいろと話しかけます。
しかし、沈黙こそがドイツに対する唯一の抵抗だと口を開くことはない…。
5.『賭博師ボブ』
【原題】
BOB LE FLAMBEUR
【公開】
1956年(フランス映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
ロジェ・デュシェーヌ、ダニエル・コーシー、ギー・ドコンブル
【作品概要】
暗黒街に生息する男たち、いわくありげな女たちの人生模様が名カメラマンのアンリ・ドカのモノクロ映像で鮮烈に描かれ、人生の哀感が漂う犯罪ドラマの傑作。
【あらすじ】
モンマルトルを根城に夜毎賭博場をめぐり大金をせしめていく初老の男ボブ。彼はパリの裏社会に精通し、高級アパルトマンで暮らす伝説の賭博師です。
ある日、ボブに耳よりな話が入ります。8億フランの大金がドーヴィルのカジノの金庫に眠っているというのです。
さっそく昔の仲間を巻き込み現金強奪計画を立て始めるボブだったが…。
6.『モラン神父』
【原題】
LÉON MORIN,PRÊTRE
【公開】
1961年(フランス・イタリア映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
ジャン゠ポール・ベルモンド、エマニュエル・リヴァ、イレーヌ・トゥンク
【作品概要】
ヌーヴェルヴァーグの監督たちを陰で支えた名カメラマンのアンリ・ドカによるハイ・コントラストのモノクロ映像、激しさとストイックな要素がせめぎあう演出が画面に異様な緊張感を醸しだす異色作。
『勝手にしやがれ』などで知られるJ゠P・ベルモンドと『ヒロシマ・モナムール』などで知られるE・リヴァの新鮮な存在感も見どころ。
【あらすじ】
ナチ占領下のフランス。田舎町の学校で働くバルニーは、娘の洗礼を機に宗教への興味が湧き教会へ行きます。
彼女の相手をしてくれたのは若く情熱的で勉強家のモラン神父。
ユダヤ系フランス人であるバルニーは無神論者でしたが、モランの話を聞いている内にキリスト教の教義に心惹かれます。
やがてふたりの間には仄かな愛情が芽生えるが…。
7.『いぬ』
【原題】
LE DOULOS
【公開】
1962年(フランス・イタリア映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
ジャン゠ポール・ベルモンド、セルジュ・レジアニ、ジャン・ドザイ
【作品概要】
ベルト付きのトレンチ・コートにソフト帽、どしゃ降りの雨、高速道路を疾走する自動車など、フィルム・ノワール的な要素には欠かせない視覚描写やムード作りに欠かせない小道具の活かし方が絶妙な作品。
話が二転三転するクライマックスの見事さ。メルヴィル・ワールドの神髄に挙げられる傑作。
【あらすじ】
“いぬ”とは警察に仲間を売る密告者。それはギャングの世界ではご法度で、死をもって償わなければならない危険な行為。
刑務所帰りのモーリスは、かつての仲間シリアンを誘って金庫破りの計画に手を染めます。
しかし、なぜか犯行当日に警察へと計画の情報が漏れており、すぐに追われるはめになります。
彼はシリアンが“いぬ”ではないかと疑念を抱きます…。
8.『影の軍隊』
【原題】
L’ARMÉE DES OMBRES
【公開】
1969年(フランス・イタリア映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
リノ・ヴァンチュラ、ポール・ムーリス、ジャン゠ピエール・カッセル
【作品概要】
『昼顔』『サン・スーシの女』などで知られるジョゼフ・ケッセルが、第二次大戦中に出版した仏抵抗運動を小説に書いたものの映画化。
『冒険者たち』『ベラクルスの男』などのリノ・ヴァンチュラ、『年上の女』『告白』などのシモーヌ・シニョレらフランスを代表する名優の緊張感あふれる演技、スリリングなストーリー展開は見事です。
また『カミーユ・クローデル』などのカメラマンとして知られる名撮影監督ピエール・ロムによる端正な映像が、人知れず戦いに死んでいった者たちへの挽歌としてスクリーンに炸裂。
【あらすじ】
ナチス占領下のフランスでレジスタンスとして活動するジェルビエは、処刑が執行される寸前に脱走をはかります。
マルセイユで裏切り者を始末してパリに潜入、ロンドンのド・ゴールと合流するよう命令を受けますが…。
9.『仁義』
【原題】
LE CERCLE ROUGE
【公開】
1970年(フランス・イタリア映画)
【脚本・監督】
ジャン゠ピエール・メルヴィル
【キャスト】
アラン・ドロン、ブールヴィル、イヴ・モンタン、ジャン・マリア・ボロンテ
【作品概要】
クールな美貌のアラン・ドロン、 野性美溢れるジャン・マリア・ボロンテ、アル中でやさぐれた風情を熱演するイヴ・モンタンと、豪華三大スターの個性を最大限に活かしたフィルム・ノワールの傑作。
テールフィンの大きいアメリカ車、たばこの煙が漂うナイトクラブなど、メルヴィルのアメリカ映画趣味が沈んだ色調のカラー映像で描写され、男たちの野望と挫折のドラマ。
【あらすじ】
刑務所帰りのコレーは、店で買ったばかりの車のトランクに脱獄犯ボーゲルが隠れているのを発見します。
互いに相手の素性を察知した2人はスナイパーのジャンセンを仲間に加え宝石店襲撃を企てますが…。
まとめ
“ヌーヴェルヴァーグの精神的父親”と呼ばれ、フランス調なフィルム・ノワールを独自に探求をしたジャン゠ピエール・メルヴィル監督。
短編映画、長編映画のデビュー作、そして傑作、また代表作となる厳選7本を、「ジャン゠ピエール・メルヴィル特集」として上映。
開催日時は、角川シネマ新宿にて11月11日(土)~17日(金)1週間限定公開です。
また、「ジャン゠ピエール・メルヴィル特集」関連企画も連動して開催されるようです。
東京国立近代美術館フィルムセンターでは「生誕100年ジャン゠ピエール・メルヴィル、暗黒映画の美」の展覧会も開催されます。
【会期】
2017年9月26日(火)~12月10日(日)
【会場】
東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(7階)
http://www.momat.go.jp/fc/exhibition/melville/
ドキュメンタリー映画『コードネームはメルヴィル』のオリヴィエ・ボレール監督が長年に渡って収集した資料や、映画公開のポスター、撮影現場のスナップ写真など、貴重な資料が200点以上展示されます。
こちらもまた、ご覧いただけたらと思います。
さらには、アンスティチュ・フランセ日本でもジャン=ピエール・メルヴィル生誕百年記念イベントが企画され、作品上映やシンポジウムなど開催されるようです。
詳細などはホームページをご覧ください。 http://www.institutfrancais.jp/
劇場での映画上映に、フィルムセンターでの展覧会、お見逃しなく!