満を持して、新生「晴風」出港!
仲間と一緒なら、どんな危機(ピンチ)も乗り越えられる。
圧巻の海上戦と重厚な艦船描写、そして海に生きる少女たちの青春を描き人気を博したアニメ『ハイスクール・フリート』がスクリーンに帰ってきました!
テレビシリーズでは登場しなかった艦船「大和」「信濃」「紀伊」も登場。さらにスケールアップされた迫力の艦隊戦が繰り広げられます。
それでは、映画『劇場版 ハイスクール・フリート』、全速前進、ヨーソロー!
映画『劇場版 ハイスクール・フリート』作品情報
【公開】
2020年(日本映画)
【総監督】
信田ユウ
【監督】
中川淳
【原案】
鈴木貴昭
【脚本】
鈴木貴昭、岡田邦彦
【キャスト】
夏川椎菜、Lynn、古木のぞみ、種﨑敦美、黒瀬ゆうこ、久保ユリカ、澤田美晴、菊地瞳、田中美海、丸山有香、田辺留依、中村桜、彩月ちさと、大地葉、宮島えみ、山下七海、藤田茜、小林ゆう、高森奈津美、相川奈都姫、清水彩香、福沙奈恵、小澤亜李、金子彩花、新田ひより、大橋歩夕、麻倉もも、伊藤かな恵、大津愛理、阿澄佳奈、雨宮天、鶴岡聡、五十嵐裕美、森永千才、高橋未奈美、長縄まりあ、楠木ともり、天野聡美、富田美憂、鈴代紗弓、大空直美
【作品概要】
テレビシリーズ・OVAを経て、ついにアニメ『ハイスクール・フリート』が待望の映画化。
テレビシリーズを手がけた信田ユウが総監督を、『劇場版 ポケットモンスター みんなの物語』や『劇場版 七つの大罪 天空の囚われ人』の演出を手がけた中川淳が監督を担当。さらに脚本は、原案・鈴木貴昭とテレビシリーズ脚本を担当した岡田邦彦が共同で手がけています。
映画『劇場版 ハイスクールフリート』あらすじとネタバレ
「晴風」クラス解散危機の騒動から3ヶ月。
横須賀女子海洋学校には舞鶴・呉・佐世保の各女子海洋学校を代表し、「大和」「信濃」「紀伊」の3隻が来航。文化祭と体育祭をかねたイベント「競闘遊戯会」が開催されていました。
「晴風」艦長兼クラス委員長の岬明乃(夏川椎菜)は副長兼クラス副委員長の宗谷ましろ(Lynn)と共にクラスの面々が催す出店やイベントを廻り、時に手伝い、時にトラブル解決に追われていました。
そんな中、二人は横須賀では見かけたことのない少女に出会います。
屋台のたこ焼きを物ほしそうに見つめる少女にたこ焼きを買い与える明乃とましろに、少女はスー:本名スーザン・レジェス(大空直美)と名乗ります。
父親を探すために日本に来たというスーと親しくなった二人ですが、指導教官の古庄薫(豊口めぐみ)から呼び出されます。
古庄の所を訪れた二人は、彼女から教習艦「比叡」の艦長を務める学生が休学すること、後任の艦長にましろの名が挙がっている事を告げられます。
急な申し出にましろは驚きながらも、心の中では艦長への憧れと「晴風」を離れることへの寂しさがせめぎあっていました。そして明乃もまた、ましろが「晴風」からいなくなるのでは動揺します。
古庄の元を後にした二人は、公園で焚き火をしながら魚を焼いているスーに遭遇します。
公園で野宿しようとしているスーを気遣い、一緒にいようとする明乃のために、ましろはテントと寝袋を用意。三人はテントに泊まることにします。
スーは明乃とましろの様子が昼間と違うことを指摘します。二人は彼女の指摘に上手く答えられずに夜は更けていきます。
翌日、競闘遊戯会二日目、各学校対抗の競技会が開催されていました。
明乃とましろ、「晴風」航海長の知床鈴(久保ユリカ)、記録員の納沙幸子(黒瀬ゆうこ)らとともに内火艇による障害物競走に出場します。
鈴の操舵と幸子の分析で障害を回避しながら進む「晴風」チームですが、ましろは前日の艦長推薦の話に注意を欠いてしまったことで接近する魚雷に気づけず、「晴風」チームは下位でレースを終えます。
続く競技も「晴風」の面々は活躍自体はするものの、良い成果は残せませんでした。
そして迎えた個人戦競技「盤上模擬戦」。自由参加ではあるものの、「各艦の艦長が出場する」という暗黙のルールが存在するこの競技にましろは出場を決意、明乃にも出場を促します。
ましろは各艦長が出場する「盤上模擬戦」を通じて、自身の艦長の素質、そして、これまで背中を見てきた明乃に自分の力がどれだけ通じるかを試そうとしていたのです。
その頃、スーは廃棄予定の小型フロートを牽引するためのタグボートに乗り込んでいました。そしてタグボートの自動操船を解除、フロートを規定のコースから外し移動させ始めます。彼女は無線機によって何者かから指示を受けていました。
映画『劇場版 ハイスクール・フリート』の感想と評価
本作は2016年4月から6月にかけ放送され、2017年にはOVAも製作された『ハイスクール・フリート』の劇場版になります。
2000年代後半からアニメ作品の題材としてミリタリー物が見られるようになりましたが、本作はそんな「ミリタリー×美少女」物の中でも一線を画す作品ではないでしょうか。
特に、世界観の設定が入念に考えられており、日露戦争後、メタンハイドレートの過採掘により国土が水没したことにより、世界有数の海上国家となった日本で多発する水難事故、横行する海賊行為に対応するため「ブルーマーメイド」が設立されたという背景設定の中で物語が紡がれています。
そして劇場版にあたる本作では、テレビシリーズでは深く語られなかった「世界観」により切り込むような内容となっていました。
劇中で登場した海上要塞や海上プラントは本作の世界観により深みを持たせると共に、海賊の存在、その被害の深刻さを描くことにより、作品のテーマが「艦船に関する学園もの」というよりも「海の安全を守る少女たち」の物語であると強調しています。
それを示すように、劇中で流れるニュースでも海賊被害を知らせるものや海上プラントでの事故等、世界観のリアリティを持たせ、そことなく観客にも意識させる演出が取られていました。
また、本作はミリタリーファンにとっても興味深い作品になったのではないでしょうか。
特に本作では大和型戦艦が4隻登場しますが、実際の3番艦「信濃」は建造途中で空母へと設計変更、「紀伊」に至っては計画のみで建造されない幻の戦艦として知られています。
しかし本作では4隻が並んで航行、何よりも海上要塞へ砲撃を行う際の46センチ砲、4隻合わせて合計36門による砲撃は圧巻の一言に尽きます。それだけでなく、劇中では発射する砲身を入れ替え繰り返し砲撃を行う「交互射撃」が披露されるなど、マニアには堪らない演出となっています。
登場するキャラクターたちにも、テレビシリーズからの成長が見られると共におなじみの姿を見せてくれました。
特筆すべきは明乃とましろの関係性の変化です。
二人が入浴する場面では無意識にまったく同時の動きをしていたり、スーが焚き火を行っていたところに行き当たった場面では阿吽の呼吸で焚き火を消火、まさに以心伝心といった感じでした。テレビシリーズで幾多の困難を、明乃とましろが時に衝突しながらも乗り越えてきたことが垣間見えます。
それだけに、ましろの「比叡」艦長への打診によって生まれるであろう関係性の変化に戸惑い、苦悩する二人の姿が深く描かれていました。
その他にも、留奈の見当はずれなことわざの引用や、ミーナと幸子の「仁義なき」広島弁でのやり取り、麻侖の法被など、おなじみの光景でシリーズファンを楽しませてくれています。因みにラッパ手である楓のラッパ演奏が上達しているので、そこも注目してみてください。
さらに、スマートフォン向けゲームアプリ「ハイスクール・フリート 艦隊バトルでピンチ!」に登場するキャラクターである榊原つむぎ、長澤君江、高橋千華、山辺あゆみも登場しています。それぞれワンカットの登場ではあるものの、個性を存分に発揮し本作を彩っていました。
まとめ
映画『劇場版 ハイスクール・フリート』のキャッチコピーの一つとして、「仲間と一緒なら、どんな危機(ピンチ)も乗り越えられる」という言葉が挙げられています。
テレビシリーズから、「晴風」の面々は数々の危機(ピンチ)に見舞われてきました。そのたびに一致団結し、乗り越えてきた訳ですが、本作ではこれまで直面したことの無い最大の危機を迎えました。
これまでもそうだったように、本作でも「晴風」は不可能と思えるような状況でも、乗員全員で奮い、励まし、知恵を絞り、困難に打ち勝ってきました。そうして紡いできた「絆の強さ」が「晴風」にとって最大の武器では無いでしょうか。
テレビシリーズでの明乃の台詞で「越えられない嵐はないんだよ!」と言う言葉がありました。
この言葉は、絆の力を何よりも信じる明乃だから言えるのかも知れません。そして、そんな絆の力の強さ、大切さがこの作品に込められているのではないでしょうか。