「限定ジャンケン」「人間鉄骨渡り」など、数々の命がけのゲームを制してきたカイジが、政府の陰謀を阻止する為、新たなゲームに挑む『カイジ/ファイナルゲーム』。
『カイジ/人生逆転ゲーム』『カイジ2/人生奪回ゲーム』に続く、佐藤東弥監督による「カイジ」シリーズ完結編に、主演の藤原竜也を始め、実力派俳優が終結。
原作者の福本伸行が、完全オリジナルの脚本に参加した事でも注目の、本作の魅力をご紹介します。
映画『カイジ/ファイナルゲーム』の作品情報
(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
【公開】
2020年公開(日本映画)
【監督】
佐藤東弥
【脚本】
福本伸行、徳永友一
【キャスト】
藤原竜也、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎、松尾スズキ、生瀬勝久、天海祐希、山崎育三郎、前田公輝、瀬戸利樹、篠田麻里子、金田明夫、伊武雅刀
【作品概要】
1996年に連載が開始した人気漫画「賭博黙示録カイジ」、3作目の実写映画作品。暴走する政府の陰謀に、数々の修羅場を潜り抜けてきた男、カイジが立ち向かいます。カイジ役には、過去2作に続き、藤原竜也が続投。共演に、福士蒼汰や新田真剣佑など注目の若手俳優の他、吉田鋼太郎や伊武雅刀などの、ベテラン俳優が脇を固めます。
映画『カイジ/ファイナルゲーム』あらすじとネタバレ
(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
2020年、東京オリンピック終了後の日本は、絶望的な不景気を迎えます。
カイジは、派遣の建設現場で働いていますが、日当の7割を搾取される、酷い扱いを受けます。
また、元時計職人の病弱なシングルマザーが、その場で解雇された事を理由に、カイジを先頭に従業員たちが抗議をしますが、派遣会社の社長、黒崎は聞く耳を持ちません。
少ない日当を持って帰宅していたカイジですが、偶然通りかかった居酒屋で販売されている、缶ビールを目にします。
不景気の日本は、インフレ状態になっており、缶ビールも1本1000円という、絶望的な金額になっています。
少ない日当で、缶ビールを買ってしまったカイジは、路上で缶ビールを開け、味わっていました。
そんなカイジに、ある人物が声をかけます。
それは、カイジが金融グループの、帝愛の地下施設で、強制労働をさせらていた際に、カイジのグループの班長だった、大槻でした。
大槻は、成功すれば大金を得る事ができる、若者救済イベント「バベルの塔」を攻略する事を考えており、かつて帝愛の幹部たちを相手に、さまざまな勝負を制してきた、カイジを仲間に誘います。
「バベルの塔」とは、関東のどこかの高層ビルに建てられた塔を登り、塔の先にある報酬を、最初に掴んだ者が勝ちというゲームです。
報酬は、億単位の賞金を手にする事ができる「電卓」か、人生を変える情報が書かれている「カード」のどちらかを選べます。
「バベルの塔」が、どこに建てられるかは、当日まで極秘なうえ、開催当日は、大勢の若者が押しかける為「事前に塔の位置を知らない限り、攻略は不可能」と、カイジは感じていました。
ですが、大槻は独自のルートから、「バベルの塔」建設現場の情報を掴んでいました。
「バベルの塔」開催当日、若者たちは、横浜のとある高層ビルを目指して、一斉に走っていました。
イベントに参加したカイジは、途中から別ルートを進み、「バベルの塔」が建設されているビルの、向かいのビルの屋上に到着します。
大槻とカイジの作戦は、「バベルの塔」を登るのではなく、向かいのビルから鉄骨をかけて、そこを渡って「バベルの塔」の頂上に飛びつく作戦でした。
ですが、別の若者達が飛ばしたドローンや、カイジの作戦に気付いた、若者の妨害にあい、思うように進めません。
意を決したカイジは、鉄骨の先から飛び降り、見事「バベルの塔」を制覇します。
報酬の「電卓」と「カード」のうち、カイジは、人生を変える情報が書かれている「カード」を選びます。
カイジは「カード」に書かれた場所に向かい、豪華な山荘に辿り着きます。
中に入ると、関西で行われた、若者救済イベントを運だけで制覇した、桐野加奈子がいました。
加奈子は、カイジが「電卓」ではなく「カード」を選んだ理由を伺います。
カイジは、億単位の報酬がある「電卓」を選んだ者が、これまで全員、強盗殺人などの事件に巻きこまれていた事から「今の日本で、大金を持っている情報を与えるのは危険」と判断し、「カード」を選んだのでした。
カイジと加奈子の前に、若者救済イベントの主催者、東郷と秘書の廣瀬が現れます。
東郷は「電卓」ではなく「カード」を選ぶ若者を待っており、「2人に、ある計画に協力してほしい」と依頼します。
かつて、不動産王として有名だった東郷は、日本政府のある動きを察知していました。
1500兆円という負債を抱えた日本政府は、国民の貯金額の総資産が1500兆円である事に注目。
国民の資産を「貯金封鎖」する法案を可決させ、国が全てを奪い、国の借金を相殺させるという計画を立てていました。
そして「円」に代わる新たな通貨で紙幣を発行し、それを一部のエリート層だけが所持する事で、一般の国民を無一文にしようとしている事が判明します。
長年、国のエリート層に属していた東郷は、自分の余命を感じ取り「最後の国民への罪滅ぼし」として、「貯金封鎖」を止めようとしています。
「貯金封鎖」を提案したのは、首相主席秘書の高倉という男でした。
高倉は10日後の「天明の儀」という祭りごとの際に、全ての政治家に賄賂を渡し、法案を成立させようと企んでいます。
東郷は、高倉の計画を潰す為に、政治家に高額の賄賂を渡そうとしていましたが、高倉が予定している賄賂の1000億に比べ、東郷の資産は500億。
そこで、東郷はカイジの「野心」と加奈子の「運」に目を付け、数日後に賭博場施設「帝愛ランド」で開催されるゲーム「最後の審判~人間秤~」で勝ち、高倉に対抗できるように、資産を増やすように依頼をします。
「全ては、エリート階級だけの話」と、当初は依頼を断ったカイジですが、廣瀬は「最後の審判~人間秤~」の対戦相手の写真を見せます。
そこに映っていたのは、カイジ達に不当な扱いをした、派遣会社の社長、黒崎でした。
以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『カイジ/ファイナルゲーム』ネタバレ・結末の記載がございます。『カイジ/ファイナルゲーム』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
黒崎から資産を奪う事を目的に、東郷に協力したカイジと加奈子は、廣瀬に連れられて「帝愛ランド」へ向かいます。
そこで、「最後の審判~人間秤~」のルールを聞かされます。
「最後の審判~人間秤~」は、対戦者同士の総資産を比べ、総資産が多かった者が勝ち。
ですが、自身の総資産の他、「Family(家族)」「Friend(友人)」「Fixer(出資者)」「Fan(観衆)」の「4つのF」から協力を受ける事ができます。
「Family(家族)」「Friend(友人)」「Fixer(出資者)」から、新たに資産の融資を受ける事ができ、最終的に「Fan(観衆)」が投げ入れた投げ銭などの多さも、勝敗を左右します。
そして、負けた方は、勝った方に全ての資産を奪われてしまいます。
カイジ達は「帝愛ランド」の中を散策し「ドリームジャンプ」というゲームを見学します。
「ドリームジャンプ」は、体にロープを付けた参加者10名が一斉に飛び降り、ロープにロックがかかった1人だけが助かるという、参加者は全員自殺志願者の酷いゲームでした。
カイジは、明らかな嫌悪感を抱きます。
東郷は「最後の審判~人間秤~」に向けて、資産家に協力を取り付けていきます。
ですが、過去に多数の愛人を作っていた東郷は、家族の反感を買い「Family(家族)」だけ、協力者がいませんでした。
カイジは、廣瀬から「東郷が過去に、愛人に預けた幻の絵画があり、それがあれば大きな資産になる」と話を聞き、幻の絵画を探して、居住区の無い人達が集まる地域を訪ねます。
ですが、東郷の愛人は亡くなっていた事が判明します。
そこへ、居住区の無い人達を一掃する為、警官隊を引き連れた高倉が現れます。
乱暴を働く警官隊に抵抗した事で、カイジは取り押さえられてしまいます。
高倉は「生産性の無い者は、この国から消えろ」と主張し、カイジに「今度のゲーム、楽しみにしているよ」と語りかけます。
カイジは、高倉が自分の存在を知っていた事に違和感を覚えながら、東郷の屋敷に戻ろうとします。
しかし、帰宅途中に、カイジは複数の若者たちに襲われ、スタンガンで気絶させられた後、連れ去られてしまいます。
目を覚ましたカイジは、借金で差し押さえられた工場の中にいました。
目の前には「バベルの塔」の参加者だった若者達がおり、「あの賞金で工場を再生させる予定だった」とカイジに伝え、カイジが持っているとされる現金を奪おうとします。
若者達の無計画ぶりに呆れたカイジは「そんな無計画だと、クズの人生繰り返すだけだ!生まれ変わってもお前らはクズ!」と説教を始めます。
カイジの迫力に、心が折れた若者達は泣き始めますが、カイジは若者達を「最後の審判~人間秤~」攻略の仲間に引き込みます。
また、派遣切りにあってしまった病弱なシングルマザーにも、カイジは声をかけます。
そして、迎えた「最後の審判~人間秤~」当日。
勝負は、会場の中心にある大きな時計が、12時10分から17時10分を指す間に行われ、最終的な資産が多かった方の勝ちとなります。
最初の判定では、東郷の資産が黒崎の資産を上回っていました。
ですが、「Family(家族)」「Friend(友人)」「Fixer(出資者)」では、事前に東郷へ協力する事を約束していた協力者が、次々と黒崎に寝返っていき、黒崎の資産が東郷へ迫っていきます。
違和感を覚えたカイジは、事前に東郷の協力者へ、黒崎が圧力を与えていた事を知ります。
しかし、それは、黒崎に情報を流していた、東郷側の裏切り者がいたという事になります。
そこへ、廣瀬が東郷の資産である、幻の絵画を持って現れ、黒崎側につきます。
廣瀬は、東郷が過去に子供を産ませ、認知しなかった愛人の息子でした。
自分の母親を捨てた東郷を恨み、復讐をする為に秘書として、東郷の懐に潜り込んでいたのです。
廣瀬が持って来た幻の絵画が鑑定されます。
黒崎は、10億以上の資産を期待しましたが、絵画の価値は無く、得たのは欠けた金貨一枚でした。
廣瀬が持ってきた幻の絵画は、過去に東郷が廣瀬の母親の為に描いた絵画で、絵のモデルは廣瀬の母親でした。
東郷は「君の母親が、お金以外の価値を教えてくれた」と語り、廣瀬は困惑します。
また、黒崎は幻の絵画に価値が無い事へ失望し、怒りを廣瀬にぶつけます。
廣瀬は、手にした金貨を東郷の秤に投げますが、金貨は会場の中央にある、時計の長針に乗ってしまいます。
「最後の審判~人間秤~」の勝負の行方は、最終審判の「Fan(観衆)」にゆだねられます。
観衆は、30万円の投げ銭を持っており、投票した方が勝てば、投げ銭が倍になって返ってくる為、勝利が濃厚となった黒崎に、次々と投げ銭が投入されます。
絶体絶命のピンチを迎えた東郷を救う為、カイジが動き出します。
カイジは、ゲームの行方が悪くなった時を考え、保険として10億円を預かっており、「帝愛ランド」のギャンブルに全てを賭け、資産を増やす一か八かの大勝負に出ます。
しかし、カイジの動きを読んでいた黒崎が、「帝愛ランド」のギャンブルを全て封鎖しており、残っているのは「ドリームジャンプ」だけでした。
全ては、黒崎がカイジの息の根を止める為の、周到な計画だったのです。
「ドリームジャンプ」に挑むしかなくなったカイジは、金融業を営む遠藤と再会します。
元々、帝愛で働いていた遠藤は、借金を背負ったカイジに救済のチャンスとして、ギャンブルの道に引きずり込み、カイジが数々の修羅場を経験するキッカケを作った人物です。
遠藤は「ドリームジャンプ」攻略には「事前に、ロープがロックされる番号でも分からないと無理」と伝えますが、遠藤の言葉をヒントにカイジと廣瀬、加奈子が動きます。
「ドリームジャンプ」に挑む事になったカイジは、遠藤の情報から「当たり番号を設定する装置」を無力化させる為に、廣瀬に電源をショートさせます。
これで、当たり番号が前回と同じになった為、加奈子はゴミ箱を探り、その日に換金された、唯一の当たり番号を探します。
カイジは、自身が挑む「ドリームジャンプ」の番号を選択しようとしますが、当たり番号を伝えにきた加奈子が取り押さえられてしまいます。
加奈子の口の動きから、カイジは「9番か10番」で迷います。
一方、「最後の審判~人間秤~」では、観衆全員が黒崎を支持していました。
勝ちを確信した黒崎は、観衆を馬鹿にした態度を見せるようになります。
圧倒的不利な状況となった東郷は、度重なる心労から倒れ、そのまま命を落とします。
黒崎は、「ドリームジャンプ」に挑んだカイジが、外れ番号である10番を引いた事を知り、勝利を確信します。
そこへ「ドリームジャンプ」を攻略し、資産を増やしたカイジが戻ってきます。
当たり番号に迷ったカイジですが、加奈子の手の動きから、当たり番号が「9番」である事を読み取り、攻略に成功したのです。
ですが、すでに時計の針は17時10分を指しており、黒崎の勝利が決まっていました。
カイジは、ここにも仕掛けをしていました。
元時計職人のシングルマザーを、メンテンナンス中だった「最後の審判~人間秤~」に忍び込ませ、時計を事前に操る仕掛けをしていたのです。
カイジが、会場の時計を5分進めていた為、勝敗を決める時間まで、残り5分残っている事になります。
カイジは「バベルの塔」に参加していた若者達に、ドローンを操作させ、増やした資産を次々に東郷の秤に乗せていきます。
黒崎の勝利が分からなくなった事と、黒崎の庶民を馬鹿にした態度が反感を買い、観衆の支持は東郷に集まります。
5分が経過し、両者の最終資産が測られる事になります。
カイジは、病院に搬送された東郷を引き継ぎ、自身が秤の上に乗ります。
最終的なジャッジは、僅差で黒崎となりますが、時計の長針に乗っていた金貨が、カイジの乗った秤の上に落ち、最終的に東郷の資産が黒崎を上回りました。
黒崎は、まさかの敗北に取り乱しますが、帝愛の黒服に捕まり、連行されます。
「最後の審判~人間秤~」を制したカイジ達ですが、そこへ高倉が姿を見せ、すでに「天明の儀」が終了し、政治家達へ賄賂が渡された事を伝えます。
カイジ達は「貯金封鎖」を止める事ができませんでした。
絶望に浸るカイジ達ですが、東郷から預かっていた携帯電話に連絡が入ります。
政治家達は、これまでの通貨「円」と、新たな通貨となる紙幣を交換し、資産を牛耳る事を計画しており、新たな通貨が積まれたコンテナ内にいました。
この事は極秘の為、紙幣の交換が明るみになれば、政治家達の失職は免れません。
東郷は、用意した1000億円で、政治家達のいるコンテナの出入り口と、紙幣の入ったトランクの暗証番号を変えるように手配していました。
コンテナ内に閉じ込められた政治家達は、高倉に助けを求めます。
困惑する高倉の前に、カイジ達が現れます。
カイジは、自身が記憶している「コンテナがある建物の出入り口」「コンテナの中」「新通貨の紙幣が入ったトランク」3つの暗証番号を賭けて、「貯金封鎖」を解除する為のゲームを高倉に挑みます。
ゲームは、高倉が得意とする「ゴールドジャンケン」。
「ゴールドジャンケン」とは、3回勝負のジャンケンの内、1回は必ず純金を握って「グー」を出さないといけないルールです。
純金を握った「グー」で勝った場合は、その純金を獲得できます。
カイジの出した条件は、高倉が1回勝つごとに、暗証番号を1つ教えますが、カイジが1回でも勝てば「貯金封鎖」を解除するという内容です。
高倉は「あいこでも、自分の勝ちとなる」と条件を出し、カイジの挑戦を受けます。
カイジは、1回目の勝負は負けてしまい、2回目の勝負は金塊を握ったグーで、あいこにされてしまいます。
そして、後の無い最終戦で、カイジは金塊を握っていないグーで勝利します。
金塊の重さは約2.5キロ。
カイジは、高倉が金塊を握った時の、相手の手の動きの違いで、勝負手を読んでいた事を見破っていたのでした。
しかし、最終戦でカイジが賭けていた「新通貨の紙幣が入ったトランク」は、次の日の正午に自動で解除される仕組みになっていた事から、高倉は「貯金封鎖」を解除せず、その場を立ち去ります。
次の日、高倉の予告通り「貯金封鎖」が発動します。
ですが、政治家達が手にした「新通貨の紙幣」が、古い紙幣にすり替わっていた事から、政治家達は「貯金封鎖」がデマだった事にし、無かった事にします。
一連の事態をカイジの仕業と気付いた高倉は、カイジに裏側を伝えられます。
東郷は、紙幣の印刷局を買収しており、最初からトランクの中には、古い通貨の紙幣が入っていました。
カイジ達が挑んだ勝負は、紙幣をすり替える為の時間稼ぎだったのです。
絶望した高倉は「全ては、この国を救う為だった」と主張しますが、カイジは「救おうとしたのはエリートだけ」と一蹴し「国が苦しいなら、皆で泥水すすって生きて行けばいいじゃねぇか」と伝えます。
政治家達は、盗撮されたコンテナ内の様子を、全国に放送されてしまい失脚します。
カイジは、政治家達からすり替えた、大金の入ったトランクを山分けします。
最後に、加奈子は「好きなトランクをカイジが選んでいい」と伝え、カイジは迷わず大きなトランクを選びます。
居酒屋で、1人で豪遊していたカイジは、トランクの中を確認すると、大金がペットボトルにすり替わっていました。
実は、加奈子は「帝愛ランド」で遠藤に会った際に「自分にも、分け前を渡す」ように言われていました。
遠藤は、トランクの1つを加奈子にすり替えさせて、最後はカイジに選ばせるように伝えていました。
カイジを心配する加奈子に、遠藤は「あんなに底辺が似合う男もいない」と言い放ちます。
自身のトランクがすり替えられていた事を知ったカイジですが、やけになってビールを飲み続けるのでした。
映画『カイジ/ファイナルゲーム』感想と評価
(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
人気漫画「賭博黙示録カイジ」の、3度目の実写映画化にして、完結編となる本作。
2009年の『カイジ/人生逆転ゲーム』では、「限定ジャンケン」から「Eカード」という原作の流れを映像化し、続く2011年の『カイジ2/人生奪回ゲーム』では、原作屈指の人気エピソード「人食いパチンコ沼」を中心にしたストーリーとなっていました。
そして、約9年の時を経て映像化された『カイジ/ファイナルゲーム』は、原作者の福本伸行による、完全なオリジナルストーリーとなっています。
何故、9年ぶりにカイジの登場となったのか?という部分がありますが、それは「カイジ」シリーズの持つ特色にあります。
1作目の『カイジ/人生逆転ゲーム』が公開された時、「カイジ」シリーズは大人気の漫画になっていました。
また、同時期に「勝ち組」「負け組」という言葉が、世間で一般的に使われる言葉として広まっています。
この時期に、多くの若者が「負け組」というカテゴリーに気が付けば当てはまり、1%ぐらいしかいないといわれる「勝ち組」が作った仕組みや、ルールで、社会に勝負をしなければならなくなりました。
この、何とも言えない理不尽な格差に、不満や疑問を多くの人が抱えていた時、登場したのがカイジです。
カイジは、エリート層が自らの楽しみの為だけに、下層階級を競わすゲームに参加します。
ですが、最終的には、カイジは高見の見物をしていたエリート層を引きずり落とし、エリート層に有利だったルールの盲点をつき逆転します。
この展開が非常に爽快で、作品の魅力となっています。
2020年の、現在の日本を見てみると、政治家は自分達の利益優先でしか動かなくなり、エリート層による価値観の押し付けが顕著になっています。
一般庶民を明らかにないがしろにしている、今の日本で、カイジが新たな物語を刻むのは必然と言えるでしょう。
本作に登場する日本政府は、国の借金を、国民の資産で相殺する為「貯金封鎖」を実施して、国民の資産を全て奪おうとします。
この展開に「そんな事、ある訳ない」と思えれば良いのですが、現状の日本政府だと、本当にやりかねないという、何とも言えないリアリティーがある為、日本政府の陰謀に立ち向かうカイジに、自然と感情移入をしてしまいます。
本作では4つのゲームが登場しますが、物語の中心は「最後の審判~人間秤~」となっています。
人間の価値を、資産で決めるというゲームの内容が、現在の日本社会への皮肉とも感じ「人間の本質」について考えさせられてしまいます。
「最後の審判~人間秤~」は、勝負を始めるまでの準備が勝敗を分けるゲームなので、カイジのその場の閃きというより、「人食いパチンコ沼」を攻略した時のように、カイジが事前に張り巡らせた仕掛けが、状況を打破する展開となります。
権力を使用し、自分の有利な展開に持ち込む黒崎と、圧倒的不利な状況を打破する、カイジのイカサマがぶつかり合います。
中には「時計に仕掛けをしておく」など、強引と感じる部分もありますが、そこもカイジの魅力でしょう。
「人食いパチンコ沼」の時は、ビルを傾けていますから。
本作で、カイジが最終的に戦う事になるのは、政府の人間である高倉です。
そして、全ての勝負がついた時、カイジが高倉に語る言葉が「正論」と捉えるか「ただの理想」と捉えるか、それは観客に委ねられています。
今作が、映画「カイジ」シリーズの最後となりますが、最後は裏切られてしまう、カイジの最終的な詰めの甘さは健在ですよ。
まとめ
(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
映画「カイジ」シリーズは、出演する豪華俳優たちの熱演も魅力となっています。
今回も、カイジを演じるのは藤原竜也で、少ない給料でビールを買い、心から味わっている様子は、まんまカイジです。
対する、高倉を演じる福士蒼汰は、知的で冷酷な雰囲気を出しており、2人が激突する「ゴールドジャンケン」は、シンプルながら迫力のある戦いとなっており必見です。
2019年に話題を呼んだ『ジョーカー』も、広がる格差をテーマにした作品で、第72回カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞した作品『パラサイト/半地下の家族』も同様のテーマです。
他にも、ホラーテイストで格差問題や貧困問題を扱った『Us』など、広がる格差問題をテーマにした作品が多い中、ほぼ同時期に、カイジの新作が誕生した事は、非常に興味深いですね。
作品の内容はエンタメ色の強い作品で、過去作を知らなくても楽しめるようになっていますので、これをキッカケにカイジの世界に触れてみてはいかがでしょうか?