『THE INFORMER/三秒間の死角』は2019年11月29日よりロードショー。
クライム、スリラー映画の中でもとくに人気が強い作品といえばいわゆる“脱獄もの”。
今回は、欧州の文学賞に輝いてきたベストセラー小説『三秒間の死角』を、「ジョン・ウィック」シリーズのプロデューサーがを映像化した映画『THE INFORMER/三秒間の死角』についてご紹介します。
ジョエル・キナマン 、ロザムンド・パイクら豪華キャストで送られる手に汗握る“脱獄もの”です。
CONTENTS
映画『THE INFORMER/三秒間の死角』の作品情報
【日本公開】
2019年(イギリス映画)
【原題】
The Informer
【監督】
アンドレア・ディ・ステファノ
【キャスト】
ジョエル・キナマン 、ロザムンド・パイク、クライヴ・オーウェン、コモン、アナ・デ・アルマス、ヨアンナ・カチンスカ、エドウィン・ド・ラ・レンタ 、サム・スプルエル、エイラム・オリアン、カーマ・メイヤー、マテウシュ・コシチュキェヴィチ、ピーター・パーカー・メンサー、アルトゥーロ・カストロ、アブドゥル=アハド・パテール
【作品概要】
監督は『エスコバル 楽園の掟』(2016)のイタリア出身のアンドレア・ディ・ステファノ。
主演は『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)『スーサイド・スクワッド』(2016)、リメイクされた『ロボコップ』(2014)の主演を務めたジョエル・キナマン。
FBI捜査官役には『ゴーン・ガール』(2014)でアカデミー賞はじめ数々の映画祭で主演女優賞にノミネートされたロザムンド・パイク。
同じくFBIの上官役には『クローサー』(2004)でゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞で助演男優賞を受賞、『エリザベス : ゴールデン・エイジ』(2007)や『ジェミニマン』(2019)と様々な映画で存在を光らせるクライヴ・オーウェン。
主人公の妻役には『ブレードランナー 2049』(2017)でのジョイ役が記憶に新しいアナ・デ・アルマス。
また、NY警察の刑事役はグラミー賞受賞者であり、『スーサイド・スクワッド』(2016)や『ジョン・ウィック : チャプター2』(2017)など俳優としても活躍するコモンです。
映画『THE INFORMER/三秒間の死角』のあらすじとネタバレ
ピート・コズローは収監されていましたが模範囚であり、特殊部隊に所属していた経験からFBIに目をつけられ、特殊捜査員として活動していました。
彼は今ニューヨークを拠点にしたポーランド系の麻薬組織を追っており、この任務が服役を免除されるための最後の任務でした。
FBIはこれをチャンスに麻薬組織を一網打尽にするつもりなのです。
組織はつながりのある大使館の領事から大量の薬物を受け取り、ピートは女好きの同僚と運んでいる最中でした。
しかし同僚は途中でブツを売りに行くといい、その取引先は売人になりすましたニューヨーク市警の刑事でした。
ピートは刑事の正体を見抜き、同僚が殺してしまったためにFBIの計画は崩壊します。
別ルートで麻薬組織を追っていたニューヨーク市警は刑事殺しの犯人を探し始め、殺された刑事の上司グレンズはピートの存在、その背後にあるFBIの存在を嗅ぎつけました。
ニューヨーク市警を敵にまわしたことに組織のボスは激怒し、ピートに再びベールヒル刑務所に戻り、そこで客を集め組織が頂点に立てるよう画策しろと命じます。
FBIはピートを見捨てようとしていましたが、ウィルコックス刑事はピートに組織や客のリストを入手するように言い、ピートの家族である妻のソフィアと娘のアンナの安全を約束。
一方でグレンズ刑事はソフィアにコンタクトを取り、危険が迫ったら連絡するように伝えました。
映画『THE INFORMER/三秒間の死角』の感想と評価
本作はスウェーデン出身の作家アンデシュ・ルースルンドとベリエ・ヘルストレムが2009年に発表した小説『三秒間の死角』。
ベリエ・ヘルストレムは自身も服役した経験を持ち、犯罪の防止を目指す団体KRISを設立。
そのKRISをドキュメンタリーの製作のために訪れたジャーナリストのアンデシュ・ルースルンドと意気投合して小説を執筆し始めました。
二人の処女作『制裁』(2004)は最優秀北欧犯罪賞であるガラスの鍵賞を受賞しました。
犯罪や闇社会の裏側を知るエキスパートの二人による原作をもつ映画『THE INFORMER/三秒間の死角』。
残念ながら、映像、台詞、展開含め、 本作に他作品と一線を画す突出した要素は見られませんでした。
青や黒が印象深い硬質な映像、息をつかせぬ展開が続きますが、それはいわゆる“脱出もの”“家族を守る父の奮闘もの”にとどまるばかりで真新しさは無く、何度も何度もハリウッドで作られてきた作品の抽出、コピーだという印象が拭えません。
本作で特筆すべきはキャストたちの演技力とキャラクターの持ち味です。
本作には“友情”ともくくれない奇妙で不思議な深さのあるウィルコックスやピートの関係、強い愛情と信頼でピートを支え続けるソフィアという夫婦の関係など、魅力的な女性キャラクターが登場します。
その分、“強い女/強いであろう女”というキャラクター以上を提供するプロット、セリフを込めて欲しかったと感じました。
主役のピート・コズローを演じるジョエル・キナマンはその美男っぷりを全編で魅せてくれます。
もう一歩演出面の踏み込みがあれば、“かっこいい”以上の、共感や憎たらしさなどの、多面性のある強い印象が残ったんではないでしょうか。
まとめ
“家族を愛するイケメンが無双して脱出する”といったチープでシンプルな印象が拭えなかった『THE INFORMER/三秒間の死角』。
スティーヴン・キングの『シャイニング』のように原作の小説と大きく異なるも映画版は傑作となる作品も、ジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』を『裏切りのサーカス』として新たな重み、深みのある作品と昇華することができた映画もあります。
小説とは異なり、映像、照明、音楽と様々なある種の言語で表現ができる映画という媒体で物語を再構築するならば、もっと何かできなかったのかと感じてしまうのが正直なところです。
ですが、原作の持つ緊迫感や、ジョエル・キナマン 、ロザムンド・パイク、クライヴ・オーウェンといった実力派俳優たちの存在感が本作を牽引しています。
映画『THE INFORMER/三秒間の死角』は2019年11月29日よりロードショーです。