ロンドンを仕切る巨悪に、刑務所帰りの元ボクサーの男が挑む!
『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』に出演以降、様々な映画・ドラマに出演し、人気沸騰中の若手俳優サム・クラフリン。
その彼が愛する家族の為に巨悪との対決を余儀なくされる、服役を終えた元ボクサーの姿を熱く演じます。
オリンピック開催後のロンドンを舞台に展開するクライムアクション映画『ロンドン・バーニング』。2020年の東京オリンピックを控える日本にとって、この物語は他人事ではない!?
ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の特集上映「WCC ワンダーナイト・シネマカーニバル2019」内のプログラム「MDGP モースト・デンジャラス・シネマグランプリ2019」上映作品です。
CONTENTS
映画『ロンドン・バーニング』の作品情報
【公開】
2019年(イギリス映画)
【原題】
The Corrupted
【監督】
ロン・スカルペッロ
【キャスト】
サム・クラフリン、ティモシー・スポール、ノエル・クラーク、デヴィッド・ヘイマン、ヒュー・ボネヴィル
【作品概要】
2012年に開催されたロンドンオリンピック。その誘致から開催後までに生まれた利権に群がる犯罪組織とその黒幕に、愛する家族のため立ち向かう事になった男の姿を描く、ハードボイルドな社会派犯罪映画。
主演は『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』や「ハンガー・ゲーム」シリーズで世界的な人気を獲得した俳優サム・クラフリン。近年は『あと1センチの恋』や『世界一キライなあなたに』といった恋愛映画に出演し、多くの女性ファンを獲得している彼が、肉体を改造してアクションに挑みます。
共演は「ハリーポッター」シリーズの「ワームテール(ねずみ男)」ことピーター・ペティグリュー役を演じた名優ティモシー・スポールに、イギリスの大ヒットテレビドラマ『ダウントン・アビー』で「クローリー卿」ことロバート・クローリーを演じたヒュー・ボネヴィル。さらにSFテレビドラマ「ドクター・フー」シリーズのノエル・クラーク、70年代から活躍するベテラン俳優デヴィッド・ヘイマンなど、イギリスを代表する俳優が脇を固めます。
映画『ロンドン・バーニング』のあらすじとネタバレ
2002年、オリンピックの誘致活動が始まったロンドン。
不動産業者の顔を持つ裏社会のボスであるクリフォード・カレン(ティモシー・スポール)は、警察幹部アンソニー・ハモンド(ヒュー・ボネヴィル)から、オリンピック開催の際に買い上げられる土地を聞き出していました。
今からその土地を押さえることができれば、膨大な利益を得る事が可能です。カレンはその土地の買い上げに動きます。
その土地に作業場を持つ男イーモン・マクドナーの元を、部下と共に訪れたカレンは、言葉巧みに土地の売却を承諾させます。しかしイーモンに書類にサインさせると、カレンは彼を殺害。自殺したかのように偽装します。
カレン一味が去った後、作業場に現れた幼いリアムとショーンの兄弟は、父であるイーモンの遺体を見つけます。
2005年、招致活動の結果ロンドンでのオリンピック開催が決定すると、次々と関連施設が建設され、2012年にオリンピックが盛大に開催されます。
オリンピック後に景気が減退する中、関連施設跡地は再開発が計画され、それが新たな利権を生んでいきました。
そして、現在。強盗を働き服役していた元ボクサーのリアム・マクドナー(サム・クラフリン)は、出所の日を迎えていました。彼を迎えるのは弟のショーンです。
ショーンは兄を妻のグレース、息子のアーチーの元に送り届けます。ショーンはカレンが仕切る犯罪組織の下働きをしていました。
アーチーは父リアムとの再会を喜んでいましたが、グレースは現れたリアムがアーチーを混乱させる事を恐れていました。彼女はリアムが保護観察官との面会を済ませ、身を落ち着けるまで距離を置く事を提案します。
リアムもその提案を受け入れ、彼は弟のショーンの下に身を寄せます。そして保護観察官にも会いますが、重犯罪を犯したリアムを雇う職場はありませんでした。
もてあました時間をボクシング・ジムでのトレーニングで過ごすリアム。彼は弟と共に父の墓を訪れます。ショーンの中で父の記憶は薄れていましたが、リアムにとって幼い息子たちを残し自殺した父は、許し難い存在でした。
ロンドン・ニューハム地区の区長が開いたパーティーに不動産業の実業家として招かれたカレンは、オリンピック跡地に低所得者向けの住宅を建設する事を誇らしげにスピーチしていました。
その頃同じ地区の刑事ニール・ベケット(ノエル・クラーク)は同僚の女刑事ジェンマと共に、逃亡中の犯罪者ウォーレンを追っていました。
ウォーレンは学校に逃げ込み発砲。生徒2名が負傷し、混乱に乗じてウォーレンは逃亡します。ニューハム地区の治安は悪化していました。ベケットらの上司であるレイモンド警部(デヴィッド・ヘイマン)は部下を叱責します。
行方をくらましたウォーレンは、カレンの部下でした。組織はヘマをした彼を捕え、カレン自身が殺害します。彼は手下に、ロシア人犯罪組織の仕業に偽装しろと命じます。
カレンはつながりのあるハモンドに、ウォーレン殺害の偽装工作の協力を要請します。一方ハモンドは、警察のチャリティーイベントでのボクシング興行の手配を依頼します。
ボクシングジムを訪れたカレンは、リングで戦っていたリアムに目を付けます。カレンはリアムに当座の金を渡し、イベント内の試合に出場するよう求めます。リアムはその金を妻子に渡す事ができました。
リアムは息子アーチーから、どうして強盗をしたのかを訊ねられます。彼は「大切だと思った物が欲しかったから」「しかし愚かな行為の後、本当はそれより大事なものがあったと気付いた」と答えます。
同じ頃組織に呼び出されたリアムの弟ショーンは、ウォーレンの遺体を解体し始末する作業を手伝わされていました。
やがて警察はウォーレンの死体を発見します。拷問を加えられ、殺害後にバラバラされた死体から、ロシアの犯罪組織が好む手口という結論が下されました。
レイモンドはベケットに、ウォーレンの事件から手を引くよう命じます。しかしその指示には、何か裏があると感じたベケット。
警察のチャリティーパーティーでは、カレンは警察の良き協力者として紹介されます。カレンは自分の住宅建設事業が、低所得者の為になる事業だと強調します。そのパーティーのボクシング興行で、リアムは妻子が見守る中、見事な戦いぶりを見せます。それはカレンやハモンドを大いに満足させるものでした。
カレンはリアムに近寄ると、家族の存在こそ我々を強くすると語ります。そして彼の妻子が建設した住宅に優先的に住めるよう、裏から手を回すと約束します。
一方警察はウォーレン殺害犯として、ロシアの組織犯罪者ルコバを逮捕します。証拠のDNAが検出された事が理由ですが、煙草の密輸しか扱わないルコバが殺人を犯すとは、ベケットには信じられません。
ベケットに記者のナヤンが近づきます。彼も事件には裏があると睨んでいました。ナヤンはベケットに、10年前に内部の腐敗と戦った警官たちこと“影の軍団”が、犯罪組織と警察の癒着を暴く行動を起こし、多くの証拠を掴んだと語ります。
しかし“影の軍団”の告発はうやむやにされ、10年の間に彼らが集めた証拠も散逸したとも。
ベケットは事実確認のために拘留中のルコバと接触しようとすると、彼は留置所で自殺したと告げられます。ベケットには彼が口封じに殺されたとしか思えませんでした。
カレンは約束通り、リアムの妻子を新築の住居に入居させました。新たな生活の拠点を手にして、リアムと妻グレースとの距離も縮まります。リアムは息子の為にも、この場所で人生をやり直そうと語りますが、グレースは犯罪組織と関係のあるカレンに近づくことに危険を感じていました。
その頃ナヤンは、取材のためカレンの自宅を訪問していました。和やかな雰囲気は、ナヤンが「殺されたウォーレンはカレンの持つ会社の一員だった」と指摘したことで一変します。
警察とカレンの会社の癒着、ニューハム区長との関係をナヤンが問うと、カレンは彼を自宅から追い出します。帰ろうとするナヤンを背後から置物で殴り「余計な事に首を突っ込むと、家族の身が危ない」と脅すカレン。
レイモンドの指示に従わず、ベケットはウォーレン殺しの捜査を続行します。その行動は警察内部に敵を作ると、同僚のジェンマは心配していました。
2人はウォーレンの家を見張ります。そこにリアムとショーンの兄弟が現れます。
同じ組織に所属し、幼馴染でもあったウォーレンの死に、ショーンは耐えられず弔問に訪れたのです。しかしウォーレンの家族は、怒って彼を追い出します。その光景を見たベケットは、ショーンが事件解決の糸口になると考えます。
リアムもまた、弟がやっかい事に関わっていると悟ります。そして自身も暮らす弟宅を彼が調べると、隠された拳銃を発見します。
保護観察中の身で犯罪に関われば、リアムは刑務所に逆戻りです。車の中でリアムはショーンを責めますが、ショーンが組織から逃れる術はありませんでした。
争っていた兄弟は、自分たち尾行するベケットの車に気付きます。車内には運搬中の薬物があり、捕まる訳にはいけません。ベケットを撒く事に失敗した兄弟は、車を捨て別々に逃げ出します。
ベケットはショーンを追って捕えると、「逮捕しない代わりに密告者となってカレンの組織の動きを知らせろ」と命じます。ショーンは5000万ポンド以上の価値を持つ薬物が、船でロンドンに到着したとベケットに報告します。
ベケットはレイモンドに情報源を明かさず、ジェンマと共に船を捜索します。しかし巧みに隠された薬物を発見出来ず、捜査は空振りに終わります。
組織を裏切った結果、自分の身に危険が迫ると判断し、組織に収めるべき金をロッカーに隠すショーン。兄リアムに電話をかけると、自分の身に何かあればロッカーの中身を回収しろと伝えます。リアムは驚きますが、電話越しにショーンが、レイモンドとその部下に保護されたと知ります。
リアムはショーンがトラブルに巻き込まれたと察し、妻子に新しい住居を捨て実家に向かえと一方的に告げ、弟を助けに向かいます。
レイモンドは、保護したはずのショーンをカレンの部下に引き渡します。騙されたと気付いたショーンは、自分の運命を悟ります。
映画『ロンドン・バーニング』の感想と評価
「実話に基づく物語」による社会派クライム・アクション
公共事業が利権を生み、そこに犯罪組織が関与する見返りに、利益の一部が権力者の元へと流れていく。
マフィアや暴力団といった、犯罪組織が登場する映画にお馴染みの設定です。冒頭で“実話に基づく物語”と紹介されていますが、事実も映画の様に命が軽く扱われる出来事だったのでしょうか。
本作の脚本はニック・モアクロフト。映画の製作や脚本で活躍している人物で、『輝ける人生』や2020年に公開予定の『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』など、心温まる作品などの脚本も手掛けています。
その一方で、実話を基にしたジョン・ランディス監督作品であり、サイモン・ペグとアンディ・サーキスが主演を務めた『バークアンドヘア』の脚本にも参加しています。
これは19世紀前半にイギリスで起きた「バークとヘア連続殺人事件」、解剖用の死体を医学校に売っていた2人の男が、死体の不足から殺人に手を染めた事件を映画化したものです。
この事件はその奇妙さゆえに当時から、親には子供のしつけに利用され、子供には童謡として歌い継がれるなど、イギリスの大衆文化に大きな影響を与えました。それをブラックコメディ映画として描いたのが『バークアンドヘア』です。
『ロンドン・バーニング』が実話ベースのオリジナル脚本作品であっても、『バークアンドヘア』同様、大いに改変されているものと信じています。
イケメン俳優サム・クラフリンの新たな一面
この映画の主人公であり、愛する家族の為に巨悪に挑むマッチョな男リアムを演じたのは、サム・クラフリン。
今までイケメン俳優としてロマンチックな映画に出演していた彼が、一転ロンドンの犯罪地区に生きる男を熱演。ファンには必見の作品です。
アウトローでありながら家族思いのナイスガイ。でもナイスな性格ゆえに、状況に流されすぎる主人公でもあります。
エリザベス・バンクス監督作のリプート版『チャーリーズ・エンジェル』にも出演のサム・クラフリン。同作でも髭を蓄えた姿で登場します。
本作は俳優サム・クラフリンの“イメチェン”のはじまりとなる作品であり、これもファンには注目ポイントです。
まとめ
そして最後に、映画『ロンドン・バーニング』を「犯罪映画」としてより楽しむなら、影のある役を与えられた共演者たちに目を向けるべきでしょう。
これぞ「悪い親分」の見本であるティモシー・スポール。手の届かない悪党を演じたヒュー・ボネヴィル。善と悪の間で揺れ動くデヴィッド・ヘイマンと、まさに悪役演技の見本市、渋い演技が楽しめます。
さらにその手下も加われば、悪い顔のオンパレード。本作では正義の熱血刑事を演じたノエル・クラークですが、手強いメンツがそろいで大苦戦です。
そういった意味では、本作は確かにイギリス版『アウトレイジ』です。ただし登場人物たちはヘタにガンを飛ばしたり、デカイ声で凄んだりはしません。そこは悪党とはいえ、やはりイギリス紳士なのです。