Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ラブストーリー映画

映画『アンナ(1966)』あらすじネタバレと感想。2019年にデジタルリマスター版にて復刻リバイバル

  • Writer :
  • もりのちこ

世界がアンナに恋をした。
伝説の女優アンナ・カリーナ、幻の傑作。

『アンナ』は始め、1966年、フランス国営放送が初のカラーテレビ番組として製作した作品でした。

主演のアンナ・カリーナは『気狂いピエロ』などゴダール作品のミューズとして活躍。その名は、ココ・シャネルにより命名されています。

日本では1998年に幻のフィルムとして劇場公開され、パリのおしゃれとポップな音楽に、東京の渋谷系ブームが合わさり、それはもう「痛快ウキウキ通り」でした。

そして2019年、デジタルリマスター版で21年ぶりに『アンナ』が帰ってきました。今の時代にも色あせず、キラキラ輝き続けるアンナ・カリーナ。

ポップでおしゃれなドリーミング・ミュージカル『アンナ-デジタルリマスター版-』を紹介します。

映画『アンナ-デジタルリマスター版-』の作品情報


(C)INA – 1966

【公開】
1996年製作・日本公開:1998年
4Kデジタルリマスター版:2019年(フランス)

【監督】
ピエール・コラルニック

【キャスト】
アンナ・カリーナ、ジャン=クロード・ブリアリ、セルジュ・ゲンズブール、マリアンヌ・フェイスフル

【作品概要】
21年ぶりに、4Kでリマスター作業された『アンナ-デジタルリマスター版-』が公開となりました。

伝説の女優アンナ・カリーナの魅力が満載のこの作品は、その後のポップカルチャーに多大な影響をもたらしています。

また、劇中のポップなミュージカル音楽を手掛けたのは、出演も果たしているセルジュ・ゲンズブールが担当しています。

映画『アンナ-デジタルリマスター版-』のあらすじとネタバレ


(C)INA – 1966

スケルトンの上着を羽織り、壁にペイントしながら踊るパフォーマンス集団。その姿はとてもエネルギッシュです。

ここはパリ。斬新でお洒落なデザインが溢れる街。風刺のきいた広告撮影が行われています。

広告代理店の社長セルジュは、駅での広告撮影に来ていました。カメラの後ろに列車が到着します。

テンポ良く続く撮影は、ホームに降り立つ一般女性をも巻き込み、シャッターが切られました。

駅に降り立ったその女性はアンナです。田舎からパリに夢を抱きやってきました。

無造作にまとめられた髪に黒縁の丸型眼鏡のアンナは、ホームに降り立った瞬間、撮影クルーにぶつかり眼鏡を外していました。

事務所に戻り写真現像に入ったセルジュは、駅の構内で撮影したポスターに映り込んだ一人の女性に魅せられます。

一目で恋に落ちたセルジュは、町のいたる所にポスターを張り、あらゆる資金を使いパリ中を探し回ります。

一方アンナは、パリでの職も決まり新たな道を歩み出していました。アンナの就職先は、なんとセルジュの会社の色彩部でした。

セルジュの噂は会社中に広がります。「プレイボーイの社長が、見ず知らずのポスターの女性に恋をし狂っている」。

以下、『アンナ-デジタルリマスター版-』ネタバレ・結末の記載がございます。『アンナ-デジタルリマスター版-』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)INA – 1966
アンナは、町中に張られたポスターは自分だと気付いていました。そして、セルジュの思いにも。

しかし、セルジュの方は、アンナの存在に気付きません。こんなに側にいるのに。

アンナは孤独で憂鬱でした。「私の恋はだまし絵の中、彼は何に惚れているの?私は一人。何も起こりはしない」。

諦めの悪いセルジュを心配し、叔母たちはテレビ広告を打ち、大々的に意中の女性を探しに乗り出します。

すると、「あれは私よ!」と、パリ中のオシャレ女性たちがセルジュの元へ押し寄せます。以前ならモテることに喜びを感じていたセルジュでしたが、意中の彼女に会えなければ意味がありません。

アンナと偶然、町で会うセルジュ。「確か、イラスト係の子だよね」。「まだ、バカなこと続けているの?知り合わない方が良いかも」。

アンナの真の姿を見ようとしないセルジュ。「先はわからないけど、今は彼女に夢中なんだ」。

町で別れる2人。セルジュは焦っていました。酒に溺れ、夢にまで見ます。目を閉じた先には、アンナの姿がありました。

セルジュはその日、会社の写真に写り込んだアンナを見つけます。眼鏡を外したアンナの写真に恋焦がれた彼女の姿を見たセルジュは、確信します。

アンナを探し、会社にやってくるセルジュ。しかし、彼女は去った後でした。

彼女と初めてあった場所、駅に向かいます。「なぜ、言ってくれなかったんだ。僕は別の女性を探していた。なんてバカなんだ」。

アンナはすでに列車に乗り込んでいました。駅のホームを探し回るセルジュ。走り出す列車。2人の再会は叶いませんでした。

走る列車の中でアンナは呟きます。「彼に一言、言いたかった。ジュテーム」。眼鏡を外し、涙を浮かべたアンナは微笑みます。

映画『アンナ-デジタルリマスター版-』の感想と評価


(C)INA – 1966
製作時から53年経った現在でも、観るものを魅了し続ける映画『アンナ』。その魅力は何と言っても、伝説の女優アンナ・カリーナの可愛らしさです。

当時のフランス映画ヌーヴォルヴァーグ時代に、ジャン=リュック・ゴダール監督の『気狂いピエロ』などミューズとして君臨したアンナ・カリーナ。

そのチャーミングな風貌と身軽な演技が、日本でもファッション・アイコンとして大人気となりました。

女性が憧れる往年のファッション・アイコンと言えば、永遠の妖精オードリー・ヘプバーンを思い浮かべる方も多いと思います。

そしてカトリーヌ・ドヌーグ、イングリッド・バーグマンなど、女優とファッションは時を経てもなお、アートの世界にインスピレーションを与え続けています。

映画では、随所にちりばめられた、レトロでおしゃれな60年代カルチャーも見どころとなっています。お馴染み、映画で使用されている目と口がドアップとなった「アンナポスター」は、今でも美しく新鮮です。

また、おしゃれなフレンチ映画に欠かせないのが音楽です。フランス語で歌われるミュージカルが、こんなにポップでおしゃれだとは!改めて大発見となりました。

台詞のような歌詞に気持ちをのせて、時に激しくそしてアバンギャルドに歌って踊るアンナ・カリーナに釘付けです。

アンナとセルジュ、それぞれの心情を交互に歌い上げるシーンは、こんなに側にいるのに気付かないもどかしさ、切ない気持ちが盛り上がります。

アンナはセルジュに恋をするにも関わらず、最後までポスターの女性が自分だとは名乗りません。

こんなに側にいるのに、本当の自分を見てくれない孤独感。セルジュの中で勝手に作り上げられた理想の女性に嫉妬していたのかもしれません。

列車の窓から吹き込む風に髪をなびかせ、眼鏡のつるを口に咥え、涙を浮かべ微笑むアンナのラストシーンは極上に美しく好きなシーンとなりました。

まとめ


(C)INA – 1966
日本で1998年に劇場公開されてから、21年。4Kでリマスター作業され再公開となった映画『アンナ-デジタルリマスター版-』を紹介しました。

いつまでも色あせない、ポップでおしゃれなドリーミング・ミュージカル映画。ファッション・アイコンとして多くの女性の憧れ的存在、アンナ・カリーナの魅力が大いに詰まった作品です。

写真に写り込んだ見知らぬ女性に恋をするセルジュのように、あなたも「アンナ」に恋をするかもしれません。

関連記事

ラブストーリー映画

樹木希林映画『命みじかし、恋せよ乙女』あらすじネタバレと感想。名女優最後の出演作となった男女と幽玄の物語

映画『命みじかし、恋せよ乙女』は2019年8月16日(金)より、TOHOシネマズシャンテほか全国順次公開! 2019年秋に惜しまれつつもこの世を去った名女優・樹木希林最後の出演作。 それが、映画『命 …

ラブストーリー映画

『君に届け』ネタバレあらすじ感想と結末の評価解説。三浦春馬と多部未華子で描く恋愛ラブストーリー!

映画『君に届け』は多部未華子と三浦春馬で描くラブストーリー! 2010年に多部未華子と三浦春馬主演で映画化された『君に届け』。 この映画は、12年前に原作漫画を青春映画に定評のある熊澤尚人監督がまとめ …

ラブストーリー映画

『シェルブールの雨傘』あらすじネタバレ感想と結末の考察評価。傑作ミュージカルを動画無料視聴方法も解説!

フランスの大女優である、カトリーヌ・ドヌーヴの若く美しい姿も見れる傑作ミュージュカル『シェルブールの雨傘』。 2017年に公開し数多くの映画賞を受賞した『ラ・ラ・ランド』に大きな影響を与えたことで、再 …

ラブストーリー映画

オムニバス映画『おかざき恋愛四鏡』感想レビューと評価。増本竜馬監督の「タイフーン・ガール」は強烈な主人公を通して“恋愛とは何か”を問う

映画『おかざき恋愛四鏡』は2020年1月24日(金)イオンシネマ名古屋茶屋ほか全国順次公開。 若手の監督とキャストによる、4つの恋愛ストーリーを描いた、映画『おかざき恋愛四鏡』。 それぞれ違う作風を持 …

ラブストーリー映画

【ネタバレ】サイレントラブ|あらすじ内容感想と結末の評価解説。泣けるラブストーリー映画で山田涼介×浜辺美波が紡ぐ“静かな究極の純愛”

光が見えない女性と声が出せない男の静かな純愛物語 『ミッドナイトスワン』(2020)の内田英治が監督・原案・脚本を手がけ、山田涼介と浜辺美波を主演に迎えたラブストーリー映画『サイレントラブ』。 声を捨 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学