子供に恵まれなかった夫婦が「天からの授かりもの」と信じて育てた子供は、地球に破壊をもたらす者だったという恐怖を描いた『ブライトバーン/恐怖の拡散者』。
スーパーヒーロー作品をホラー映画で描くという「異色のジャンル」という点も見どころです。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで、一躍有名監督となったジェームズ・ガンが、自身の原点であるホラー映画を手掛けた事でも話題の、本作をご紹介します。
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』の作品情報
【公開】
2019年公開(アメリカ映画)
【原題】
Brightburn
【監督】
デビッド・ヤロベスキー
【製作】
ジェームズ・ガン、ケネス・ファン
【脚本】
ブライアン・ガン、マーク・ガン
【キャスト】
エリザベス・バンクス、デビッド・デンマン、ジャクソン・A・ダン、マット・ジョーンズ、メレディス・ハグナー
【作品概要】
ある夫婦が育てた子供が、12歳の誕生日を境に豹変した事で始まる恐怖を描いたホラー作品。
カルト的な人気となったホラー映画『インバージョン移転』で監督と脚本を担当し長編デビューを果たした、デヴィッド・ヤロヴェスキーが監督を担当し「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで知られる、ジェームズ・ガンが製作を担当。
主人公のトーリを、「ハンガー・ゲーム」シリーズや「ピッチ・パーフェクト」シリーズで知られる、エリザベス・バンクスが演じています。
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』あらすじとネタバレ
カンザス州の田舎町「ブライトバーン」で、農業を営んでいる、トーリとカイルの夫婦。
2人は幸せな生活を送っていましたが、子供に恵まれない事だけが悩みでした。
ある夜、激しい地鳴りの後に、農場の近くの森が、真っ赤に燃え上がっている光景を夫婦は目にします。
その10年後。
夫婦は、ブランドンという養子を迎え、大切に育てていました。
成長したブランドンは、夫婦に愛情を注がれ、素直で優秀な子供に育っていました。
ただ、夫婦はブランドンに「納屋にだけは近づいてはいけない」というルールを作ります。
ある晩、眠っていたブランドンは、不気味な声に呼ばれるように納屋に向かい、鎖で施錠された扉を開けようとします。
ブランドンの異変に気付いたトーリに声を掛けられ、ブランドンは我に返ります。
ブランドンの12歳の誕生日。
トーリとカイルは、ブランドンの叔父と叔母にあたる、ノアとメリリーと共に、誕生日を祝います。
ノアは、ブランドンに誕生日プレゼントとして、猟銃を送りますが「子供には、まだ早い」と判断したカイルは、猟銃を取り上げます。
怒ったブランドンは、カイルに反抗的な態度を取ります。
初めて見せるブランドンの異常な様子に、トーリとカイルは戸惑います。
映画『ブライトバーン/恐怖の拡散者』感想と評価
超人的な能力を持つ存在が、正義に目覚めず破壊の道を歩むようになった恐怖を描いた『ブライトバーン/恐怖の拡散者』。
ブランドンは、銃弾は通用せず、飛行能力を持ち、目から熱光線を放って怪力という「スーパーマン」と同じ能力を持っています。
もし「スーパーマン」が超人的な能力を人助けではなく「暴走の為に使い始めたら」と考えただけで怖いですが、その想像を、実際の映像にしたのが本作です。
徐々にブランドンの危険な部分が明るみになる前半と、ブランドンが暴走を始める後半では、違った恐怖を味わえるホラー作品になっています。
スーパーヒーロー映画では、育ての親が、ヒーローが正義に目覚めるキッカケを与える事があります。
本作ではその役目を、農作業を営む夫婦、トーリとカイルのブレイヤー夫妻が担っていますが、ブランドンの暴走を止める事ができません。
ブランドンの変化が理解できず、どう接して良いか分からなくなる夫婦の様子から「家族という形を作る事」の難しさを感じます。
本作では「恐怖を与える立場」となる、ブランドンにも共感できる部分があります。
ブランドンは、突然目覚めた超人的な能力をコントロールできません。
また、思春期の暴走する感情も抑えられず、相談できる相手もいない為、間違った方向へ進んでしまいます。
ラストにブランドンが発する「正しい事がしたい、本当だよ」という言葉から、本当は苦しんでいた事が分かります。
トーリとカイルは、そんなブランドンを信じて、愛情で包もうとしますが、次第に「愛情」という言葉すらも無意味に感じてくるようになり、絶望的とも呼べるラストに向かいます。
ただ、作中で「もし、こうしていれば救えたのではないか?」と思えるような箇所がありますので、ご覧になる際は「自分なら、どう接するか?」と考えてみてはいかがでしょうか?
まとめ
スーパーヒーローをホラー映画として描いた異色の作品『ブライトバーン/恐怖の拡散者』。
地球に破壊をもたらす存在となったブランドンが「本当は何者なのか?」が不明な点も含めて、不気味で恐ろしい作品です。
しかし、本作のテーマは「家族」であり、親が子供を正しい方向に導く難しさと、親に素直に助けを求められない、子供の複雑な心境を描いた作品です。
ブランドンが超人的な能力を使う時は、自分の悪事がバレないように、ごまかそうとした時だけです。
思春期や反抗期の時に、皆さんもブランドンのような経験があるのではないでしょうか?
ブランドンの場合は、度を越してしまっていますが…。
本作の脚本は、製作を担当したジェームズ・ガンの弟であるブライアン・ガンと、いとこのマーク・ガンが担当しています。
ここからも、家族を意識した作品である事が分かります。
『ブライトバーン/恐怖の拡散者』がハッピーエンドだった場合の作品が、スーパーマンの誕生を描いた2013年の映画『マン・オブ・スティール』ですので、併せて鑑賞して、スーパーマンを育てたケント夫妻と、ブレイヤー夫妻の違いを感じてみるのもおススメです。