今回ご紹介する映画は、『ぼくのおじさん』や『オーバー・フェンス』などで知られる山下敦弘監督の『マイ・バック・ページ』。
キャストに『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』に出演の妻夫木聡と、同じく『ユリゴコロ』に出演の松山ケンイチによるダブル主演。
骨太なのは学生運動をテーマしながら、時代背景を監督独特のオフビートな演出を健在させたことである種の化学反応を起こしています。
1.映画『マイ・バック・ページ』の作品情報
【公開】
2011年(日本映画)
【監督】
山下敦弘
【キャスト】
妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、石橋杏奈、韓英恵、中村蒼、長塚圭史、山内圭哉
、古舘寛治、あがた森魚、三浦友和
【作品概要】
元・朝日新聞社記者の川本三郎によるノンフィクション小説の映画化で、川本のモデル・沢田を妻夫木聡、彼が興味を引く活動家・梅山を松山ケンイチが熱演しています。
一人の新人ジャーナリストが、ある学生運動の活動家と出会うことで、ある事件が起きる様子を淡々と、しかし俳優の熱量で、見ごたえのある作品になっています。
1970年代の学生運動を背景にしながらも、理想と現実の狭間で揺れる男の姿は、時代を問わず見る人の胸を打ちます。
2.映画『マイ・バック・ページ』のあらすじとネタバレ
1969年、沢田は路上でテキ屋の仕事をするタモツの手伝いながらウサギを売っています。
しかし沢田は売り物のウサギを誤って死なせてしまったため、タモツがその落とし前をつけることになってしまいます。
その後沢田とタモツは一緒にウサギを埋めると、沢田は手切れ金としてお金を渡そうとします。
しかしタモツは「そうじゃねえだろ」と静かに返し、失態をした沢田にまた手伝いに来て欲しいと言うのでした。
実は沢田は週刊東都の新米ジャーナリストで、一ヶ月ほど潜入していたテキ屋の手伝いは取材の一環でした。
沢田自身は新左翼運動への取材をしたいのですが、希望した東都ジャーナルには配属されませんでした。
1ヶ月の潜入取材「500円東京放浪の旅」を沢田は会議の場で発表すると、上司から「内容がセンチメンタルすぎる」と彼のテキ屋に感情移入したような内容を批判され、反発します。
1970年。沢田は名画座のオールナイト開けに、そのまま出版社に居座り漫画を読んでいると、週刊東都の表紙モデルを務めている倉田眞子と知り合います。
あるとき、中平は沢田とともに、梅山(本名は桐谷)という活動家を名乗る男の取材をすることになります。
梅山は「京西安保」の幹部と名乗った上で、銃を奪って武装をし4月に行動を起こすと豪語しますが、彼の話を聞いた中平は「あれは偽者だ」と一蹴します。
とりあえず裏を取るという渋々な中平に対し、沢田は直ぐに梅山の元に戻ります。
彼は梅山が宮沢賢治が好きということ、ギターの演奏をした時に「クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル」の楽曲「雨を見たかい」を弾き語る姿をみて、もともと活動家に共感を抱いていた沢田は親密感を覚えます。
3.映画『マイ・バック・ページ』の感想と評価
当時の時代感を出すために、カメラは16ミリという、かなりざらつきのある画が取れるフィルムを使っており、本当に当時上映されいたのかと錯覚してしまうほど。
そして何より、主演2人の演技が非常に魅力を出しています。
沢田は学生運動をする新左翼側に共感を覚えながら、彼らを取材する立場にいるどっち付かずの男。
しかし彼が梅山に感化されたことで、徐々に自分の意思に対して強固な姿勢をとるところは、オフビートの作風の中で徐々に見ているこちらの感情も高ぶります。
けっしてありきたりな反抗をするのではなく、沢田という人物が良く分かる抑揚の効いた、頑固を通り越して狂気さえ感じ取れる表情がすばらしいです。
そんな数々の出来事を経験した沢田が見せる、ラストシーンの涙は必見です。
一方で梅山は周りを魅了する力を持ちながら、いざ行動を起こすとなると自分は何もしない、いわばペテン師のような男です。
前園にも「君は覚悟がない」痛いところをつかれる場面もあります。
参考映像:アメリカン・ニューシネマの代表作『真夜中のカーボーイ』(1989)
しかし唯一、沢田に『真夜中のカーボーイ』の話をしているときは、本心を語っているんだと思い、見ていて鳥肌が立ちました。
「ダスティン・ホフマンが泣くシーン。たまんなかったよ・・・I’m Scared.I’m Scaredって。あれは僕だ」と語るシーンは何度も再生してみたくなるほどグッと来きます。
まとめ
正直私は70年代どころか平成生まれなので、学生運動がなんたるものかなんて、調べても今いちよく分からないところは多いです。
しかしこれが一人ひとりの人間ドラマとしてみると、どんどん登場人物に入りこめるのです。
時代に取り残されまいと、何か行動を起こそうとヤキモキしている人物や、それが過剰になってしまい巻き込まれる人々・・・
なかでも自衛官が襲われるシーンの長回しが、いかに「学生運動が何を生んだのか」を問いかけていてなりません。
あれだけのシーンにも関わらず、恐ろしいほど感情移入を余儀なくされるのだから、監督の技量の凄さも伺える作品でした。
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